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國務院官制(康徳四年勅令第百十九號)
制 定:康徳 4年6月5日勅令第119號
最終改正:興信26年4月1日勅令第 79號
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朕参議府ノ諮詢ヲ経テ國務院官制ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
勅令第百十九號
國務院官制
第一條 國務総理大臣ハ皇帝ノ旨ヲ奉ジ各部大臣ヲ統督シ國家行政ノ機務ヲ掌理シ其ノ責ニ任ズ
國務総理大臣故障アルトキハ勅命ニ依リ各部大臣ノ一人其ノ職務ヲ摂行ス
第二條 國務総理大臣ハ官吏ヲ董督シ其ノ任免進退及賞罰ニ関シ皇帝ニ奏請ス
第三條 國務総理大臣ハ其ノ主管事務ニ関シ職権又ハ特別ノ委任ニ依リ院令ヲ発スルコトヲ得
第四條 國務總理大臣ハ行政ノ統一ヲ保チ全局ノ平衡ヲ維持スル為必要ト認ムルトキハ各部大臣ノ命令又ハ處分ヲ停止シ又ハ取消スコトヲ得
第五條 國務總理大臣ハ地方行政ヲ総括シ省長官、新京特別市長及警察總監ヲ指揮監督ス省長官、新京特別市長及警察總監ノ命令又ハ處分ニシテ成規ニ違ヒ公益ヲ害スルモノアリト認ムルトキハ之ヲ停止シ又ハ取消スコトヲ得
第五條ノ二 國務総理大臣ハ國務院ヲ代表シテ國務院提出ノ法律案、予算其ノ他ノ議案ヲ帝國議會ニ提出シ一般國務及外交関係ノ状況ヲ帝國議會ニ報告ス
第六條 行政事務ノ連絡ヲ図ル爲國務院會議ヲ設ク
國務院會議ハ國務總理大臣之ヲ主宰シ各部大臣、國務院官房長官、總務長官又ハ其ノ代理者ヲ以テ之ヲ組織ス
第七條 左ノ各件ハ國務院會議ヲ經ルコトヲ要ス
一 法律案、豫算決算案及豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲スノ件ノ案
二 外國トノ條約及重要渉外案件
三 官制又ハ規則及法律施行ニ係ル勅令
四 各部ノ間主管權限ノ爭議
五 皇帝ヨリ下付セラレ又ハ帝國議會ヨリ送致スル人民ノ請願
六 豫算外ノ支出
七 勅任官及地方長官ノ任命及進退
其ノ他各部主任ノ事務ニ就キ高等行政ニ關係シ事體稍重キ者ハ總テ國務院會議ヲ經ルコトヲ要ス
第八條 國務院ニ民政、外交、財政、軍政、文教、司法、実業、交通、厚生、農務、建設及労働ノ各部ヲ置ク
各部大臣ハ國務總理大臣ノ統督ヲ承ケ其ノ主管事務ヲ掌理ス
各部ノ官制ハ別ニ之ヲ定ム
第八條ノ二 國務院ニ國務院官房長官ヲ置ク親任トス
國務院官房長官ハ國務總理大臣ヲ輔佐シ左ノ事務ヲ掌理ス
一 國務院會議事項ノ整理
二 國務院ノ庶務
三 國務院各部ノ施策ノ総合調整
四 國務院ノ重要政策ニ関スル情報ノ収集調査
五 他ノ所管ニ属セザル庶務ニ關スル事項
第八條ノ三 國務院官房長官ハ國務院官房ノ事務ヲ統轄シ所部ノ官吏ヲ指揮監督シ其ノ進退及賞罰ニ關シテハ國務總理大臣ニ具状シ判任官以下ハ之ヲ專行ス
第八條ノ三 國務院官房ニ左ノ職員ヲ置ク
副長官 二人 勅任
副長官補 三人 勅任
統括官 五人 勅任
參事官 十八人 奏任(内三人ヲ勅任ト爲スコトヲ得)
理事官 二十七人 奏任
祕書官 二人 奏任(内一人ヲ勅任ト爲スコトヲ得)
事務官 百三十七人 奏任
調査官 七十四人 奏任
技佐 七人 奏任(内一人ヲ勅任ト爲スコトヲ得)
属官 五百二十一人 判任
技士 二十三人 判任
第八條ノ四 副長官ハ官房長官ヲ佐ケ國務院官房及各部局ノ事務ヲ監督シ官房長官事故アルトキハ其ノ一人命ヲ承ケ其ノ職務ヲ代理ス
副官房長官補及統括官ハ國務總理大臣又ハ官房長官ノ命ニ依リ國務院官房ノ事務ヲ分掌ス
參事官ハ上司ノ命ヲ承ケ國務ニ參畫シ審議立案及特ニ命ゼラレタル事項ヲ掌ル
理事官及事務官ハ上司ノ命ヲ承ケ事務ヲ掌ル
祕書官ハ國務總理大臣又ハ官房長官ノ命ヲ承ケ機密事項ヲ掌ル
調査官ハ上司ノ命ヲ承ケ調査ヲ掌ル
技佐ハ上司ノ命ヲ承ケ技術ヲ掌ル
属官ハ上司ノ指揮ヲ承ケ事務ニ從事ス
技士ハ上司ノ指揮ヲ承ケ技術ニ從事ス
第八條ノ五 國務院官房ノ内部部局ハ國務總理大臣之ヲ定ム
國務院官房内部部局ノ分科規程ハ國務總理大臣ノ認可ヲ經テ國務院官房長官之ヲ定ム
第九條 國務院ニ總務長官ヲ置ク親任トス
總務長官ハ國務總理大臣ヲ輔佐シ國務総理大臣ノ主管スル行政事務ヲ掌理ス
第十條 第一條乃至第六條ニ掲グル國務總理大臣ノ職務遂行ニ關スル事務ヲ司掌セシムル爲總務廳ヲ置ク
總務長官ハ總務廳ノ事務ヲ統轄シ所部ノ官吏ヲ指揮監督シ其ノ進退及賞罰ニ關シテハ國務總理大臣ニ具状シ判任官以下ハ之ヲ專行ス
第十一條 削除
第十二條 削除
第十三條 總務廳ニ左ノ職員ヲ置ク
次長 二人 勅任
處長 七人 勅任
參事官 二十二人 奏任(内四人ヲ勅任ト爲スコトヲ得)
監察官 九人 奏任(内二人ヲ勅任ト爲スコトヲ得)
理事官 三十六人 奏任
祕書官 三人 奏任
事務官 百十九人 奏任
調査官 八人 奏任
技佐 十九人 奏任
属官 七百三十二人 判任
技士 二十三人 判任
第十四條 次長ハ總務長官ヲ佐ケ官房及各處ノ事務ヲ監督シ總務長官事故アルトキハ其ノ一人命ヲ承ケ其ノ職務ヲ代理ス
處長ハ總務長官ノ命ヲ承ケ處務ヲ掌理ス
參事官ハ上司ノ命ヲ承ケ國務ニ參畫シ審議立案及特ニ命ゼラレタル事項ヲ掌ル
監察官ハ總務長官ノ命ヲ承ケ監察ヲ掌ル
理事官及事務官ハ上司ノ命ヲ承ケ事務ヲ掌ル
祕書官ハ國務總理大臣又ハ總務長官ノ命ヲ承ケ機密事項ヲ掌ル
調査官ハ上司ノ命ヲ承ケ調査ヲ掌ル
技佐ハ上司ノ命ヲ承ケ技術ヲ掌ル
属官ハ上司ノ指揮ヲ承ケ事務ニ從事ス
技士ハ上司ノ指揮ヲ承ケ技術ニ從事ス
第十五條 總務廳ニ官房及左ノ五處ヲ置ク
企畫處
法制處
人事處
統計處
弘報處
第十六條 官房ニ於テハ左ノ事項ヲ管掌ス
一 機密ニ屬スル事項
二 監察ニ關スル事項
三 官吏ノ進退、賞罰及身分ニ關スル事項
四 官印ノ頭發ニ關スル事項
五 官印ノ管守ニ關スル事項
六 法律、豫算、條約、勅令、軍令、詔書、院令等ノ公布及原本(條約及軍令ヲ除ク)ノ保管ニ關スル事項
七 公文書ノ收受、進達、發送及編纂保管ニ關スル事項
八 政府公報ノ發行ニ關スル事項
九 經費及收入ノ豫算及決算ニ關スル事項
十 會計及用度ニ關スル事項
十一 處ノ所管ニ屬セザル庶務ニ關スル事項
第十七條 企畫處ハ左ノ事項ヲ管掌ス
一 重要企畫ノ立案及連絡調整ニ關スル事項
二 重要施策ノ基本的調査及資料ノ蒐集ニ關スル事項
三 重要施設ノ考査ニ關スル事項
第十八條 法制處ハ左ノ事項ヲ管掌ス
一 法律案、勅令案、院令案其ノ他法令案ノ起章及審査ニ關スル事
二 條約案ノ審査ニ關スル事項
第十九條 人事處ハ左ノ事項ヲ管掌ス
一 人事及給與ノ統一調整ニ關スル事項
二 官吏ノ任免、進退及身分ニ關スル事項
三 官吏ノ紀律及賞罰ニ關スル事項
四 官吏ノ養成及訓練ニ關スル事項
第二十條 削除
第二十一條 統計處ハ左ノ事項ヲ管掌ス
一 統計ノ統一ニ關スル事項
二 國勢ノ基本ニ關スル統計ノ統轄ニ關スル事項
三 統計年報其ノ他統計ニ關スル圖書ノ編纂
四 資源調査ノ統轄ニ關スル事項
五 統計職員ノ養成ニ關スル事項
第二十二條 弘報處ハ左ノ事項ヲ管掌ス
一 弘報機關ノ監理ニ關スル事項
二 宣傳ノ計畫ニ關スル事項
三 宣傳ノ連絡統制ニ關スル事項
四 重要ナル對内外宣傳ノ實施ニ關スル事項
五 情報ニ關スル事項
第二十三條
第二十四條 官房及各處ノ分科規程ハ國務總理大臣ノ認可ヲ經テ總務長官之ヲ定ム
附 則
本令ハ康徳四年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
附 則【最終改正】
本令ハ興信二十六年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
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國務院各部官制通則
制 定:康徳 4年6月 5日勅令第120號
最終改正:興信21年8月11日勅令第126號
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朕參議府ノ諮詢ヲ經テ國務院各部官制ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
國務院各部官制通則
第一條 本則ハ國務院官制第八條ニ定ムル國務院各部ニ適用ス
第一條ノ二 各部大臣ハ國務總理大臣ノ統督ヲ承ケ主管事務ヲ掌理シ其ノ責ニ任ズ
主管ノ明瞭ナラザル事務又ハ二部以上ニ渉ル事務ニ付テハ國務總理大臣ニ上申シテ其ノ裁定ヲ受クベシ
第二條 各部大臣ハ其ノ主管事務ニ關シ法律又ハ勅令ノ制定、廢止又ハ改正ヲ要スルモノアリト認ムルトキハ案ヲ具シ國務總理大臣ニ提出スベシ
第三條 各部大臣ハ其ノ主管事務ニ關シ國務院會議ヲ要求スルコトヲ得
第四條 各部大臣ハ其ノ主管事務ニ關シ職權又ハ特別ノ委任ニ依リ部令ヲ發スルコトヲ得
第五條 各部大臣ハ其ノ主管事務ニ關シ省長官、新京特別市長及警察總監ヲ指揮監督シ其ノ命令又ハ處分ニシテ成規ニ違ヒ公益ヲ害スルモノアリト認ムルトキハ之ヲ停止シ又ハ取消スコトヲ得但シ重要ナル事項ニ付テハ國務總理大臣ノ指揮ヲ承クルコトヲ要ス
第六條 各部大臣ハ所部ノ官吏ヲ指揮監督シ其ノ進退及賞罰ニ關シ國務總理大臣ニ具状シ判任官以下ハ之ヲ專行ス
第六條ノ二 各部ニ政務次官ヲ置キ勅任トス其ノ定員ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
政務次官ハ大臣ヲ佐ケ政務ニ参画シ帝國議會トノ交渉事項ヲ掌理ス
第七條 各部ニ次官一人ヲ置ク勅任トス
次官ハ大臣ヲ佐ケ官房及各司局ノ事務ヲ監督シ大臣事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理ス
第七條ノ二 各部部務ノ枢要ニ従ヒ其ノ所掌事務ノ一部ヲ総括整理スル勅任官ヲ置クコトヲ得其ノ必要ナル事項ハ各部官制ニ於テ之ヲ定ム
第八條 各部ニ大臣官房及部務ヲ分掌セシムル爲司ヲ置ク
大臣官房及各司ノ事務ヲ分掌セシムル為科及室ヲ置ク
第九條 官房ニ於テハ左ノ事項ヲ管掌ス但シ特ニ司ノ所管ニ属セシメタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
一 機密ニ屬スル事項
二 重要部務ノ連絡調整ニ關スル事項
三 行政ノ考査ニ關スル事項
四 官吏ノ進退、賞罰及身分ニ關スル事項
五 官印ノ管守ニ關スル事項
六 公文書ノ收受、進達、發送及編纂保管ニ關スル事項
七 會計及用度ニ關スル事項
八 資料ノ蒐集ニ關スル事項
九 統計報告ノ調製及刊行物ノ發行ニ關スル事項
十 其ノ他各部官制ニ依リ特ニ大臣官房ノ所掌ニ属セシムル事項
第十條 各部ニ左ノ職員ヲ置ク
司長 一人 勅任
秘書官 奏任
参事官 奏任
理事官 奏任
技正 奏任
事務官 奏任
技佐 奏任
属官 判任
技士 判任
参事官及技正ハ各部官制ノ定ムル所ニ依リ一部ヲ勅任ト為スコトヲ得
各部官制ノ定ムル所ニ依リ勅任官タル技佐ヲ以テ技正ニ代フルコトヲ得
第十一條 大臣官房ニ官房長一人ヲ置キ高等官ヲ以テ之ニ充ツ
官房長ハ大臣ノ命ヲ承ケ大臣官房ノ事務ヲ掌理ス
第十二條 各司司長ハ大臣ノ命ヲ承ケ其ノ主務ヲ掌理シ及司中各科各室ノ事務ヲ指揮監督ス
秘書官ハ大臣ノ命ヲ承ケ機密事務ヲ掌リ又ハ臨時命ヲ承ケ各司ノ事務ヲ助ク
參事官ハ上司ノ命ヲ承ケ部務ニ参画シ審議立案及特ニ命ゼラレタル事項ヲ掌ル
理事官及事務官ハ上司ノ命ヲ承ケ事務ヲ掌ル
技正又ハ技佐ハ上司ノ命ヲ承ケ技術ヲ掌ル
属官ハ上司ノ指揮ヲ承ケ事務ニ從事ス
技士ハ上司ノ指揮ヲ承ケ技術ニ從事ス
第十三条 大臣官房及司中各科各室ニ科長室長各々一人ヲ置キ高等官ヲ以テ之ニ充ツ科長及室長ハ命ヲ上官ニ承ケ科務室務ヲ掌理ス
第十四条 本則ニ掲クルモノノ外各部特別ノ職員ヲ置クコトヲ要スルモノハ各部官制ニ於テ之ヲ定ム
秘書官、参事官、理事官、技正、事務官、技佐、属官、技士及前項ノ規定ニ依ル職員ノ定員ハ各部官制ノ定ムル所ニ依ル
第十五條 各部ノ官房及司ノ分科規程ハ國務總理大臣ノ認可ヲ經テ各部大臣之ヲ定ム
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インターネット百科事典『電網完全大百科』
『事務連絡会議』
事務連絡会議(じむれんらくかいぎ)とは、満洲帝國国務院各部の次官級の政府高官で構成される会議である。
・概要
事務連絡会議は、満洲帝國国務院官房長官の主宰により、国務院総務長官、総務次長及び各部次官が出席し、国務院庁舎で開かれている会議である。実際の運営は、総務長官が取り仕切っている。会議は、各部次官の他に国務院官房副長官(事務担当)、総務庁企画処長、法制処長、弘報処長、民政部警務局長、財政部金融局長も構成員である。構成員数は22名となり、この他に宮内府次官、国務院官房統括官(総務担当)及び国務院官房參事官(総務担当)が陪席者として出席している。
事務連絡会議は会議の翌日に開かれる国務院会議に備えて、各部局から提出が予定されている案件を事前に調整する会議として開催されている。定例国務院会議は毎週火曜日と金曜日に行われるため、事務連絡会議は毎週月曜日と木曜日に開かれている。
事務連絡会議に関する事務は総務長官官房が担当している。しかし、国務院会議に関する事務を国務院官房が担当しており、これらは相互に関連しているので、事務煩雑の指摘が長年にわたってなされている。
国務院官房長官が主宰する会議とされているものの、国務院内閣発足直後など特別の場合を除き、国務院官房長官は出席しないのが慣例であり、通常の会議運営は総務長官が取り仕切っている。
特に設置根拠法のない会議であるものの、事務連絡会議で調整がつかなかった案件(反対のあった案件)は、翌日の国務院会議に上程されない慣例があるなど、政府の政策決定過程において重要な位置を占めている。
事務連絡会議は、日本国の次官会議に相当する。
・沿革
事務連絡会議は、満洲国建国時点から法令上の根拠がない非制度的機関として存在した。満洲国建国当初、国務院の各部の長官(当時は大臣ではなく総長)や次官(当時は次官ではなく次長)には、華人が就任した。しかし、実権を持っていたのは、その下の各部総務司長(現在の大臣官房長)に就任していた日本人であった。総務庁は、官制上は国務総理大臣の補佐機関ながら、単に各部局(省庁に相当)の総合調整のみならず、予算や人事権を一手に掌握することで、事実上国政の中枢を担った。これを総務庁中心主義という。日本人による国政運営の為の会議が事務連絡会議であった。満洲国建国の立役者であった関東軍もこの会議を通じて影響力を行使した。
この関係に変化がみられるのが、第3代の国務総理大臣に就任した李康正(り こうせい)の時代(在任期間:(康徳8(1941・昭和16)年8月19日~康徳20(1953・昭和28)年1月25日)の出来事である。彼は、総務長官に総務庁生え抜きの官僚である王志徳(おう しとく・第8代総務長官)を任命した。王は、漢系満洲人であり、日系人以外での初の総務長官就任者となった。王の総務長官在職はわずか1年半であり、そこからまた日系人官僚の総務長官が続いたが、李政権の時代に満系の第11代魯烈豊(ろ れつほう)と漢系の第13代陳海(ちん かい)の長官を輩出することに成功した。
第4代劉忠順(りゅう ちゅうじゅん)国務総理大臣(在任期間:(康徳20(1953・昭和28)年1月25日~康徳23(1956・昭和31)年9月25日)の在任中には中華系長官は就任しなかった。しかし、5代首相アレクサンドル・オーシポヴィチ・ネステレンコ(在任期間:康徳23(1956・昭和31)年9月25日~康徳28(1961・昭和36)年8月15日)の時代にまた総務庁中心主義に変化が見られた。国務院官制が改正され、国務院官房が創設されたのである。これにより、総務長官が名実ともに主宰していた事務連絡会議は、国務院官房長官が主宰することになった。
最もこの段階では、「国務院会議の整理」と「国務院の庶務」のみが国務院官房の権限として挙げられているに過ぎず、総務庁中心主義の下国政の中枢は総務庁が握っていたままであった。総務庁が現在のように国務総理大臣自らの職務権限に基づく事務を処理するための機関となるのは、国務院官制上、国務院官房の権限に「国務院各部の施策の総合調整機能」が追加された第8代国務総理大臣井上秀幸(いのうえ ひでゆき)の時代まで下ってからである。
・事務連絡会議の構成員
各部官職 / 氏名 / 出身民族 / 出身大学等 / 入部官庁 / 前職
総務長官 / 塩野博(しおの ひろし) / 日系 / 建国大学法学部 / 総務庁 / 総務次長
総務次長 / 郭豊(かく ほう)/ 漢系 / 新京帝國大学法学部 / 内政部警務局 / 国務院官房総務官
総務次長 / オトゴンバヤル・アナンダ / 蒙系 / 奉天帝國大学法学部 / 総務庁 / 総務庁企画処長
総務庁企画処長 アルタンエルデネ・ドルゴーン / 蒙系 / 新京帝國大学法学部 / 総務庁 / 国務院官房統括官
総務庁法制処長 / 鄭稲太郎(かく いねたろう)/ 朝系 / 建国大学法学部 / 総務庁 / 総務庁法制処総務科長
総務庁弘報処長 / 徐英文(じょ えいぶん) / 漢系 / 新京帝國大学法学部 / 総務庁 / 警務局情報司次長
国務院官房副長官 / ユスチン・サムイロヴィチ・ブルダエフ / 露系 / 哈爾濱学院法学部 / 実業部 / 総務次長
民政部次官 / 王礼格(おう れいかく) / 満系 / 建国大学法学部 / 民政部 / 民政部審議官
民政部警務局長 / 浦安忍(うらやす しのぶ)/ 日系 / 新京帝國大学法学部 / 内政部警務局 / 内政部警務局次長
外交部次官 / 王儒(おう じゅ) / 漢系 / 建国大学法学部 / 外交部 / 外交部審議官
財政部次官 / 志村承太郎(しむら じょうたろう)/ 日系 / 新京帝國大学法学部 / 財政部 / 財政部会計司長
財政部金融局長 / アーネスト・アラスター・クライヴ / 英系 / 大連帝國大学経済学部・ロンドンスクールオブエコノミクス / 財政部金融局 / 金融局証券司長
軍政部次官 / 江昌伯(こう しょうはく) / 漢系 / 陸軍大学校 / 陸軍 / 軍政部軍務司長
文教部次官 / 劉詞純(りゅう しじゅん) / 漢系 / 建国大学法学部 / 文教部 / 文教部大臣官房長
司法部次官 / 李志文(り しぶん) / 満系 / 建国大学法学部 / 司法部 / 司法部刑事司長
実業部次官 / エヴゲニー・アズレートヴィチ・イグナーチェフ / 露系 / 哈爾濱学院法学部 / 実業部 / 実業部経済政策司長
交通部次官 / 陳大治郎(ちん だいじろう) / 朝系 / 吉林総合大学法学部 / 交通部 / 交通部鉄道司長
厚生部次官/ 宋伯楽(そう はくらく) / 満系 / 長春学院大学医学部 / 厚生部 / 厚生医監
農務部次官 / フロル・オレーゴヴィチ・ゲルギエフ / 露系 / 哈爾濱学院農学部 / 農務部 / 農務部大臣官房長
建設部次官 / ベアトリクス・クンニグンデ・ロンメル(女性) / 独系 / 満洲里帝國大学工学部 / 建設部 / 建設技監
労働部次官 / 木村悟(きむら さとる)/ 日系 / 大連帝國大学法学部 / 労働部 / 労働部審議官
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緊急事務連絡会議文字起こし
総務長官官房作成
会議日時 興信28年1月18日13時30分
会議場所 総務庁秘匿回線・有線方式を使用
(塩野) 定刻になりましたので、緊急事務連絡会議を開催いたします。会議の成立につきまして、オトゴンバヤル・アナンダ総務次長より報告させます。
(アナンダ) 報告いたします。事務連絡会議定数22名中20名の出席を確認しています。欠席者の内、陳交通部次官は日本国へ、ロンメル建設部次官は熱河省へ出張中です。よって、過半数の出席を得ていますので、本会議は有効に成立いたしました。なお、両次官の代理として大臣官房長が出席しております。会議成立の報告を終わります。
(塩野) 緊急の招集で、資料の準備が整っておりませんが、総理より至急開催の指示を承けましたので、さっそく始めます。なお、本会議にはストーニー官房長官が出席しております。ストーニー長官より先ずは議題の説明をお願いします。
(ストーニー) 国務院各部や警察にはすでに外交部からの第一報が来ているかとは思うが、由々しき事態が発生した。フェン王国国内において、我が国の国民がパーパルディア軍隊によって虜囚の憂き目に遭っているとのことだ。総理は大変なお怒りで、至急我が国民の安否を確かめ、彼らの安全を確保するとともに、必要とあらば身柄の奪回を為すよう国務院官房と総務庁に指示された。我々が何を為すべきか、方針を取り纏めたい。私はこれから関係各所へ連絡をとらねばならないので、これ以後の指揮は総務長官に一任します。塩野長官宜しくお願いします。
(塩野) はい。まず、外交部次官。今回の事態に際して分かっていることを報告してください。
(王儒) えー、本日正午より、パーパルディア皇国におきまして、先のアルタラス事変における賠償金受取の式典が開かれておるところなのですが、その席上、パーパルディア皇国側は、フェン王国に滞在する我が国民を日本国民とともに逮捕したということを伝えてきました。逮捕に至った経緯としては、我が国民がフェン王国内のパーパルディア皇国の軍事施設を無断で撮影し、調べたということであります。逮捕は昨日、17日の昼頃行われたということです。現時点では、追加の補充的な説明が行われていないので、詳細な情報が不明ですが、パーパルディア当局に逮捕されているのは3名であるという情報がございます。しかしながら奇妙なことに、日本人の拘束者は203名にも上るということで、我が国民との差異が生じております。この点も追加説明が行われていないので詳細は不明ですが、現在、駐フェン公使館を通じて邦人の安否確認を進めているところでございます。
(塩野) えー、劉次官。
(劉) 追加説明でございます。逮捕されている者の中に映画監督の汪清惇(おう せいじゅん)氏が含まれている可能性が濃厚であるという情報がございます。
(イグナーチェフ) 王次官。貴方の
(塩野) イグナーチェフ次官。まだ、劉次官の説明が終わっていないようですので、被せるのは、
(劉) あ、とりあえず、イグナーチェフ次官の話を続けてください。
(塩野) はー、イグナーチェフ次官、どうぞ。
(イグナーチェフ) 失礼しました。王次官。貴方の先ほどの説明では、劉次官の発言に触れられていないようでしたが、これは一体どういうことですか。
(王儒) 劉次官のご説明の件ですが、外交部としては、現在、汪監督の側と連絡が取れておらず、事実関係が判明していないために、説明は見送らせていただきました。
(李) 事実関係が採れていないというのはなぜですか。連絡など、一瞬ですむでしょうに。
(王礼格) あー、それは私から。よろしいですか、長官。はい、ありがとうございます。現在、フェン西部地域に大規模な通信障害が生じており、その、一帯に滞在する者との間に通信ができなくなっております。現状では、汪監督を含む、フェン西部地域の滞在者、これは旅行者も含みますが、彼らとの連絡が取れなくなっております。
(塩野) 劉次官。フェン西部地域に滞在する邦人、映画撮影の関連人員ですが、概算で分かりますか。
(劉) いや、ちょっとすぐには分かりませんね。満映に問い合わせませんと。ですが、王次官の発言にもありましたように、3名ということはないでしょう。
(塩野) うーむ、となりますと、救出対象も不明ということになります。これは、軽々には動けませんね。
(クライヴ) 塩野長官。総理の指令には身柄の奪回も含まれているようです。警察が早期に動けるように準備を進めておくべきではありませんか。
(イグナーチェフ) ちょっと待ってくれ。警察だと。クライヴ局長、新世界とはいえ相手は正規軍だぞ。いくらなんでも舐め過ぎではないか。長官、軍の特殊部隊が出るべきではないかと思いますがいかがでしょうか。
(塩野) 江中将、いかがですか。
(江) それは、どうかんがえるべきか。他国に軍隊を送るということになるのであれば、どうあっても武力行使ということになります。まずは、フェン王国側の同意を取り付ける必要があるでしょう。それなくしては、侵略ということになりますから、軍の動員は国法上違法と言わざるを得ないと思いますが。
(塩野) 法制処長の見解を。
(鄭) お答えいたします。現在判明している情報に依りますと、フェン王国西部に位置しているパーパルディア軍の駐屯地は、パーパルディア軍が土地の使用権を握ってはいますが、土地そのものの所有権はフェン王国側にあるとフェンとパーパルディアとの間の条約で規定されています。つまるところ、パーパルディアの駐屯地は、パーパルディア皇国に割譲されたものではなく、フェン王国の領土であると法制処は見解を出さざるを得ません。仮に、パーパルディア軍の駐屯地をパーパルディアの土地と看做せば、我が国とパーパルディアはいまだ国交を結んでいませんので、他国への侵略という違法性は若干弱められることとなりますが、本件においては、難しいと言わざるを得ません。
(イグナーチェフ) だが、法制処長。軍隊が越境すれば侵略となってダメだが、警察ならばよいという理由はなかろう。
(鄭) 実業部次官のおっしゃる通りです。我が国の警察組織が国外で行動することを許す国内法上の根拠も国際法上の根拠もありません。
(浦安) 警務局としては、そのような状況下で警察の特殊部隊を動かすことには同意しかねますが。
(李) 司法部としても、警察組織が違法に国外活動するというのを認めるのはできませんが。
(塩野) 企画処長。
(ドルゴーン) 企画処としてはこのように考えています。第一案として、フェン王国内にパーパルディア皇国軍が有する駐屯地では、フェン官憲の行政権が及ばぬ領域となっており、フェン王国の行政権が及ばぬ地となっている。これはもはや同地は、国際法上フェン王国の領土としては認められないため、我が国の官憲による実力を以てしての行動を行ったとしても問題はないとして、動くということです。
(イグナーチェフ) それでは、先ほどの法制処長の説明と矛盾するのではありませんか、総務長官。
(塩野) もちろんこれは最終手段です。そこで、弘報処長。
(徐) はい。現在、弘報処諜報官、国務院官房情報統括官、外交部情報官が意見交換を行い、フェン王国官憲に対して我々の行動を黙認してもらうべく、政治工作を行うというものです。
(ドルゴーン) そのうえで、特殊部隊で強襲を行い、逮捕されている邦人を救出します。
(木村) 機密費を使うということですか。フェンの高官を買収すると。
(徐) 穏便に治めるためにはフェンの高官の同意を取り付ける必要があります。しかし、表立って交渉しているのでは、時が掛かりすぎます。
(志村) 気がかりなことがあります、総務長官。この件、日本国抜きで、我が国単独で行うべきではないとおもいます。パーパルディア側が伝えてきた拘束者数は日本人のそれのほうが邦人のそれよりもはるかに多い。我が国が独自に動いて解決しては、日本国側の面子が立たないのではないですか。フェンの幹部を買収するにしても、我が国単独よりも日本を巻き込んだ方がよいと思いますし、対日協力はどうなっているのですか。
(塩野) 志村次官の発言はもっともですが、今はとりあえず、我が国単独での動きを想定してもらわねばなりません。
(志村) 理解に苦しみますな。警察の特殊部隊を送り込むにしても、我が国単独で運べるのですか。フェンは島国なので、陸路からではないのでしょう。輸送ヘリなどで送り込むのであれば、近いところまでは空母で運んでもらう必要があるのではないですか。確か、こういう共同訓練は日本側と重ねてきているのではないですか。
(ブルダエフ) 総務長官、此処は私から。志村さん、あなたのおっしゃることは確かだが、国務院官房から日本の内閣官房に問い合わせをしているのだが、日本側の動きが鈍い。いや、驚かれるのも無理はない。今、日本国内では、大変な混乱が起こっているのは皆さん承知のことだとは思うのだが、そうであったとしてもだ。この問題、つまり、フェン王国国内の問題ということになるのだが、この問題で動く日本の内閣官房の部署は内閣副書記官長補室の新世界担当第三室という部署なのだが、ここの室長も室長補佐も、つまり、責任者が不在だというのだ。そうですな、王外交部次官。
(王儒) ええ。外交部としては、日本の外務省にすぐさま連絡を取ったのだが、あちらは、総理官邸の指示がないと積極的な行動に出られないということなのです。我が国もそうですが、あちらも外務大臣が国内に不在ですので、大臣抜きでということであれば、総理官邸・内閣官房の指示が要るとのことです。
(志村) ならば、先に外交部は駐日大使館を動かして、総理官邸に向かわせるべきではないですか。話の順序が違う。
(塩野) それでも、我が国の方針については、詰めておく必要があります。
(浦安) しかし、武装した警官隊を国外に動かすという大事です。日本の協力は不可欠です。警察の特殊部隊はヘリ降下の訓練はしていたとしても、空挺降下の訓練はしていません。つまり、輸送機で送り込むことは不可。送り込むのであれば、ヘリしかないです。
(塩野) 江中将。海軍の航空母艦でフェンに警官隊を届けることは可能ですか。
(江) あいにく我が国の保有する空母は、黒竜江の一隻のみ。そして、その空母は現在、整備中です。
(浦安) 総務長官。まずは、対日協力を取り付けるべきです。それなくしては何も始まらない。
(塩野) 已むを得んか。だが、浦安局長。特殊部隊の投入は不可避だろうと思う。総理はあえて、こういわれた。人質を救出せよと。その準備は指令していてくれ。