「満洲帝國に関する視察報告書」(最終原案)
編集責任者 マキスイ=ハンキ
中央暦1639年2月20日~中央暦1639年2月28日
満洲帝國を視察した結果我が使節団が、見聞きした事項についての報告を取りまとめたので、以下のように報告する。口頭による報告会は大日本帝国のそれと併せて行うため、了承されたい。
一、基礎概略
国号 満洲帝國
国旗 五色旗
国章 蘭花紋章
国歌 満洲国国歌
国花 蘭
面積 1,133,437平方km
人口 181,412,325人
首都 新京
略史(満洲の紀年法にて記載する。中央暦1639年=日本紀元2675年)
元号 中央歴 (西暦)
1555 1931 満洲事変。
大同元 1556 1932 満洲国建国宣言。
康徳10 1567 1943 満華戦争。日本国も同盟国として参戦。
康徳11 1568 1944 満洲帝國憲法発布
康徳34 1591 1967 皇帝崩御。満洲国、日本国と同君連合となる。昭徳改元。
興信27 1639 2015 1月16日。異世界転移。
二、政治経済
主要民族・言語 : 満洲人(人間族)・日本語(大陸共通言語に酷似か?)、漢語、英語
満洲人というのは、ひとくくりにした名称であり、日本人を祖先に持つ日系やロシア人を祖先に持つ露系などと細分化されるらしい。
政治体制 : 立憲君主制 (元首 : 皇帝)
満洲帝國は帝政国家であると主張している。憲法上もそのように規定しているが、皇帝は国内には基本的にいない。すでに報告している通り、満洲帝國皇帝は大日本帝国天皇が兼ねているためである。このため、執政という元首の代行職が置かれている。
統治機構
政府主席
執政兼参議府議長 張彗雲
国務総理大臣 李陽詢
元老院議長 大高重信
衆議院議長 山下博
国務院
行政組織は、我が国と同様の構造を持つといえる。首班である国務総理大臣と国務院閣僚とで構成される国務院内閣とそれを補佐する部(我が国でいうところの局)がある。
参議府
我が国でいうところの長老会議に当たるだろうか。日本の枢密院に権限は酷似しているが、参議府議長は、執政という国家元首を兼ねている。政府が発する命令に対する審査権限が与えられているらしい。
帝国議会
元老院と衆議院とに分かれている。元老院は、地方公共団体と呼ばれている省から選出されている議員と、功績などを基準にして国家から任命される議員で構成されている。衆議院は日本と同じく全国民の代表とのことである。
法院
この国の裁判は、法院という行政機関ではない、独自機関によって行われている。内容は日本と同じような体系である。
通貨
圓という紙幣を持ち、100圓、50圓、10圓、5圓、1圓に分かれる。
角・分の単位の貨幣を持ち、5角、1角、5分、1分の単位に分かれる。
産業
様々な分野に於て、我が国の水準を上回っており、我が国とは比較にならない。これは日本国と同様である。
ただし、日本国と違って、食料を他から輸入して賄っていることはあまりなく、逆に日本に輸出しているようである。我が国が満洲国に対して輸出できる品物は現状では存在しないといっても過言ではない。
三、社会
教育
日本国のそれと酷似しているが、一部違いがある。日本国の中学校や高等学校は男子のみが入学できるが、満洲国のそれは女子の入学も認めている。代わりに日本国の高等女学校に値する教育機関はない。
魔法
日本人と同様に魔法を使うことができない。
四、軍事
陸海空軍に分かれているとのこと。
陸軍
25個歩兵師団と5個の機甲師団を持つ。
歩兵師団は、日本国の師団と同様の編成であるが、機甲師団というのは、戦車の比重を強くした師団とのことだ。こちらにも近衛師団という皇帝守護に当る師団があるが、役割は首都防衛に特化しているとのことである。
日本国軍とは、装備などを共同で開発・使用しているとのことで、これにより開発必要を抑えたり単価を下げたりしているらしい。
武器の輸出について聞いてみたが、武器の扱いには特別な訓練が必要であり、検討はしてみるが、現状では厳しいのではないかとのことであった。
海軍
日本海軍と違って1個の艦隊を有するのみであったが、この一個艦隊でもパーパルディア皇国を打ち倒せるであろうことは疑いがない。
日本海軍の軍艦と同様に艦隊総旗艦として、日本から購入した戦艦が一隻あり、それ以外には航空母艦、巡洋艦、駆逐艦という艦種で構成されていた。
空軍
空を飛ぶ飛行機を使った軍であり、日本軍の陸軍航空隊と同様の組織とのことである。
戦闘行動について
満洲国では国境紛争が発生している。満洲国の位置は使節団の調査によると、ほぼリーム王国の存在した位置にあたる。このため、北東部をマオ王国、南部を日本国、それ以外をパーパルディア皇国と接していることが明らかである。使節団は前線視察の許可を得た、その際、マオ王国とは、戦闘行動を停止しており、両国は国交樹立に向けた交渉に入っていた。
しかし、パーパルディア方面では、散発的な軍事衝突が起こるらしく、満洲国側でも和平を呼び掛けているが一向に応答がないらしい。使節団は、満洲国軍の戦闘行動の一端を確認できたが、これは日本軍の戦闘においても十分に参考になることであるから特に報告しておく。なお、この報告については。満洲国側の許可を得ての内容報告である。
2月25日の前線視察の際に、国境線を構成する「万里の長城」と呼ばれている、とてつもなく長い城壁を視察する機会を得た。これは、転移する前のこの地域にあった国が建設した国境を守備するための城壁ということで、石造りの壁が延々と続くものであった。本来であれば、国境線よりパーパルディア側5km地点の河川が国境線であるという事であったが、相手側を刺激しないため国境線まで防衛ラインを下げているとのことであった。
戦闘は突然起こった。監視していた兵がパーパルディア歩兵の越境を知らせ、パーパルディア兵に「国境を侵犯しているため、直ちに引き返せ」との大音量の警告を聞かせた。拡声器という人間の声を何倍にも大きくすることができる機械を使用しているらしい。三度目の警告後パーパルディア兵からパンパンと音が聞こえたので、何事かと案内役に聞いたが、パーパルディア軍の攻撃であるとのことであった。マスケット銃が発射される音とのことであった。これに対して、満洲国兵は城壁の上から「機関銃」と呼ばれる銃をパーパルディア兵の前方に打ち放った。この威力たるや、パーパルディア兵のマスケット銃がパンパンという散発的なものに対し、ドドドドというように一人の兵士が何十発という弾を繰り出すのだ。これにより、パーパルディア兵の動きが止まり、後退をし始めた。そして、後退に合わせて、機関銃の照準も前に移動するが、兵に弾を当てることはなかった。
兵の前方に照準を合わせているらしく、兵をむやみに殺傷しないように命令されているらしい。なぜ、そのようなことをしたのか、戦争をしているのではないのかということを聞いてみたが、政治的な配慮ということで、いたずらに兵を殺傷すれば、相手方を硬化させるだけで、和平の可能性を潰したくないためだそうだ。満洲軍の、いや満洲国側の判断については、小職としては、不可解ではあったが、それでも、双方の兵を失わせずに軍を引き帰えさせることができる軍隊というのは寡聞にして知らない。
小職は断言するが、満洲軍そして日本軍の軍隊と戦うようなことがあっては、この機関銃の礫を食らうだけで、相手方の兵には「誇張表現ではなく」一兵の損失も与えることができずに、軍は崩壊するであろう。
小職はここに政府に対して勧告するに、満洲国と日本国との間に軍事同盟を締結して、ロウリア戦に備えるべきである。あるいは、ロウリアとの前線の兵だけでも、日満軍仕様の武装を若干でもよいので配備することを至急実施すべきである。
五、総括
総括として、満洲国も日本国と同様に武力による相手国の支配などは全く考えていないことが感じられる。使節団は全員一致の総意として、日満両国との親善を希望する方向で今後の交渉に当られたいと思う。また、両国との軍事同盟、あるいは武器の供与を目的とした交渉を至急始められんことを強く勧告する。
なお、満洲国はその建国の経緯から日本国との距離が非常に近く感じられ、同君連合という我々にとっては極めて異質な統治体型を有している。我々の常識に当てはめるのであれば、このような政治形態であれば、満洲国は日本国の属国という形にもなるのが常識ともいえるが、日満両国はそれぞれ独立国であり、従属関係にあるわけではないことを、政府関係者には特に留意されたい。