田中「承知しました。では次に、人口です。
我が国民の総人口は、現時点では正確な数字ではございません。というのも、この世界に転移する以前は、世界各地に我が国の国民は、業務や旅行で出国している場合がありまして、その国民はこの転移に含まれておらず、旧世界に取り残されてしまったものと考えられております。転移前の最新の国勢調査、つまり全国民および日本国内に長期滞在する外国人を対象する調査では総人口は、288,343,225人となっております。合計特殊出生率、これは、一人の女性が一生の間に出産する子供の数を表す数字となっていますが、我が国ではここ20年の間2を切る数字が続いております。2を下回れば、自然減を表すものとされており、我が国の人口はここ数年減少傾向にあるとされております。」
リンスイ「ま、まちたまえ。3億近い人数だと。列強パーパルディア皇国ですら、1億人はいないのだぞ。貴国の国土は確かに広いが、私の記憶している限りだと、パーパルディア皇国のほうがより広大な領土があるはずだ。いくらなんでもおかしい。」
田中「人口については、裏付けとなる資料は持ち込んでおりませんので、これ以上説明のしようがありませんが、我が国の公式な記録である国勢調査に基づくものでございます。」
カナタ「外務卿、まずは話の続きを聞きましょう。田中殿、次の数字ですが、これは足すと総人口と同じになりますが、男女別ということですか。」
田中「その通りです。その次は、年齢別の数字となっております。上から90歳以上、80歳以上90歳未満、そこからは75歳以上80歳未満、70歳以上75歳未満と区分けしております。」
カナタ「90歳以上がかなりおりますが、これはエルフ族の数値が多いのですか?種族別の人口はどのようになっていますか?」
田中「種族別といいますと?」
カナタ「田中殿はじめ、あなた方は人間族と見受けられますが、それ以外の獣人族やエルフ族、ドワーフ族といった言語を解し、意思の共有ができる存在ということですが・・・。まさかそのような存在はいないと?」
田中「ええと、我々の世界にはそのような存在はゲーム、いや物語の中の存在です。現実には存在してはおりません。」
不規則発言あり。
リンスイ「よもや、ロウリアのように亜人殲滅を唱えておられるのか?」
田中「いや、殲滅も何も我々の世界に先に挙げられたような種族そのものが存在しないのです。」
不規則発言あり
リンスイ「では、何故このような長寿な人間族がこれほど多く存在するのだ。人間族の寿命は40から50歳あたりだろう。いや、まて、例外的に長く生きる人は確かにいる。不可能ではないのか?」
田中「確かに旧世界においても平均寿命が短い地域というのは存在しました。しかし、それは、栄養状態、衛生環境、医療環境などによって左右されていると考えられております。こういった状況次第でわが国民のような平均寿命を記録することは可能であると思います。」
カナタ「では、我々の国においても、栄養状態などを改善すれば、平均寿命が延びると?」
田中「私は、専門家ではないので断言できませんが、全くの見込みがないとは言えないのではないかと思います。」
カナタ「ふむ・・・。外務卿、我々では真偽のほどは確かめられないのだ。まずは、話の続きを聞こう。」
田中「ありがとうございます。次の産業別人口数についてですが、第一次産業が農林水産業、第二次産業が鉱工業。第三次産業が、サービス業となっています。」
リンスイ「ふむ。第一産業の割合が年々減っていっておりますな。」
田中「はい、産業構造の変化によって、農業人口が年々減少しています。このため、我が国は新世界転移以前多くの食料を外国から輸入していました。この食料の確保は我々にとって喫緊の課題です。」
リンスイ「ふむ、貴国が我が国に求めていることが分かりかけてきましたな。貴国の食料自給率はどの程度ですかな?」
田中「その情報につきましては、私の口から答えることのできる権限を越えておりますので、ご容赦ください。」
リンスイ「なるほど・・・。貴国は国家転移してからの初接触が我が国でしたな。ならば、貴国は幸運ですな。いや神に祝福された国家といってもよいでしょう。我が国は、大地の神の加護を受けておりましてな、穀物や野菜類が特別に手を入れずとも勝手に生えてくるのです。病害虫の心配もなく収穫ができます。貴国の求める量がどの程度かはわかりませんが、かなりの量を我が国で賄えるかと思いますよ。」
田中「おお、これはありがたいお話です。ちなみに資源についてはいかがでしょうか?」
リンスイ「資源とはどのような?」
田中「はい、我が国が必要としている資源も数多くありますが、まずは石油です。石油については何かご存じでしょうか?」
リンスイ「ふむ、石油・・・。どういったものなのでしょうか?」
田中「ええと、そうですね。かつては、石油は燃える水と呼ばれておりました。色は黒くて粘り気のある液体であり、臭気があるともいわれております。」
リンスイ「ふむ、何か知っておるものはおらぬか。」
オランゲ「確か、クイラ王国でそのような物があるとクイラの人間から聞いたことがありますが。」
リンスイ「田中殿、あとでクイラの大使を紹介する。そちらで尋ねてみてはいかがだろうか。」
田中「ご紹介感謝します。また、クイラ王国につきましても後ほどご教授ください。」
リンスイ「承った。さて、次は何の数字だ。」
田中「次は、国内総生産の推計であり、国民の経済活動によって生み出された商品等の総額、とお考え下さい。」
リンスイ「118,630,000,000。うむ、もうわしは驚かんぞ。通貨の単位はどうなっとるのかね。」
田中「通貨単位は、円銭厘となっております。10厘で1銭、100銭で1円となっております。1円以下は硬貨によってあらわされます。500銭、100銭、50銭、10銭、5厘、1厘の硬貨が存在します。1円以上は、紙幣で対応となっております。こちらも、1円、5円、10円の紙幣が存在します。」
リンスイ「紙幣というのは、あれかね。紙でできている通貨というのかね。」
田中「その通りです。」
不規則発言あり。
リンスイ「なんともはや。紙で作った通貨など偽造し放題ではないのかね。」
田中「いえ、紙に特殊な技術で偽造されないような仕組みを施しております。こちら、現物をご覧ください。」
リンスイ「どれどれ、ほう、これはまた、こちらの紙と違い、少し厚手ですな。そして、美しい文様だ。むう、この硬貨の彫刻は細かい。」
カナタ「田中殿。この紙ですが、表面がやや凹凸があるように感じますが。」
田中「はい。その紙の凹凸部分ですが、このようにして光にあててみてください。」
カナタ「ふむ、な、なんと、人の顔がみえますぞ。」
田中「はい、これが、先ほど申し上げました紙幣の偽造防止の技術であります。」
リンスイ「首相。いろいろと理解の及ばぬところはありますが、この紙幣の技術一つとってみても日本国というのは、未知の技術を数多く持っているようです。私は、日本政府からの申し出を受け入れ、我が国からの使節団派遣を行いたいと思います。」
カナタ「外務卿の決定を了承します。使節団には、ある程度の権限を与えておいてください。そして、人選は至急でお願いします。」
田中「クワ・トイネ公国からの申し出を受諾いたします。まずは、本国に伝えて、受け入れ態勢を早期に整え、視察地の選定を急がせます。和田さん、お願いします。」
和田書記官、通信のため、一時離席。部屋の隅に移動。
リンスイ「和田殿は、何をしに?」
田中「本国に連絡を取るために一時離席しました。通信状況が不安定なのですが、私どもは、このような機械、携帯電話と申しますが、これで、遠くの人と連絡を取ることが可能です。この部分から相手の声が聞こえ、この部分に自分の声を吹き込めば、相手と話をすることが可能です。このようにして使います。そして、この機械は、声を届けるだけではなく、文字や画像を送受信することもできます。あるいは、計算機の機能や時計といった機能が付いています。我々にとっては必需品ですね。」
リンスイ「ほほう。魔信の技術は我々と同様なのですな。しかし、文字や画像も送受信可能とは。これは、我々も欲しいですな。」
田中「電波という、目に見えない力を送受信する基地局が必要ですので、すぐにとはいきませんが、我が国との連絡手段として貴国国内に基地局を設置させてもらえばと思います。基地局設置の暁には、技術提供とはいきませんが、現物の支給について、本国に希望を伝えさせていただきます。」
リンスイ「よしなに。おや、何か驚いておられるようですな。」
田中「ええ、何か問題が発生したのでしょうか・・・。」
和田書記官、田中一等書記官に報告。
田中「カナタ首相。リンスイ外務卿。突然ではありますが、我が国の外務大臣が、貴国を大至急訪問したいと申し入れております。会談目的は、この世界の常識を教授願いたいとのことです。許可をお願いできますでしょうか。」
リンスイ「大至急と申されますか。して、いつ頃来られるのか?」
田中「可能な限り早く。相手国の接受が整うならば、明日にでもと申しております。」
リンスイ「あ、明日!!しかし、急な話ですな。しかし、1000kmということは、貴国では外務大臣がワイバーンにのってこられるとでもいうのですか?」
田中「ワイバーンというのは、空を飛ぶ動物のことですね。そうではなく、回転翼機という飛行機械です。空を飛ぶ機械と認識していただければと思います。つきましては、飛行着陸許可をお願いしたいのですが。」
カナタ「軍務卿には私から話を通します。外務卿可能ですか?」
リンスイ「特に歓迎の式典などを行わず、準備をする必要がなければ、私としては可能かと思います。」
田中「ありがとうございます。協議の途中ではございますが、外務大臣の受け入れ準備と報告のため、誠に申し訳ありませんが、今日の会談はここまでとさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか。」
カナタ「そうですね。明日は私たちのほうからお答えしなければならないことが多いでしょうから、私たちも若干の準備を行いたいと思います。」
リンスイ「この世界の常識ということでしたな。貴国が用意したような資料は、我々ではとても準備できませんが、いろいろと準備させていただきます。」
田中「恐縮です。では、失礼いたします。」
※議事録は、クワ・トイネ公国側が日本語を認識できず、また翻訳作業も不能のため、日本側出席者の署名のみ。