大日本帝國召喚   作:もなもろ

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緒戦の航空戦が終わった後の緊急作戦会議です。両軍の状況を描きました。


クワ・トイネ公国西部都市ギム西方防衛陣地 中央暦1639年4月12日午前9時 /大日本帝国東京都首相官邸

ニージェイ山山頂 諸侯軍本営

 

― 東部諸侯軍司令官 アルフレッド・フォン・ジューンフィルア

 

 先ほどのワイバーン隊への攻撃。本陣の全員があっけにとられていた。あのアデムでさえもだ。敵の飛竜は新種だ。クワ・トイネはどうやったのかは知らないが、新種の飛竜を発見し、大事に育ててきたのであろう。それを開戦劈頭のこの局面にぶつけたのだ。わずか5匹しかいなかったが、その威力は十分だ。これで、作戦の根底は覆った。敵は相当に準備してきている。我々だけの装備では不安だ。なにより今回は弓兵を連れてきていない。中距離から攻撃できる弓矢を適度に発射し、敵を疲弊させる。じっくり攻めるべきだ。そう思ったのだが・・・

「では、アデム殿は、尚も正面攻撃に固執されるというのですか。先ほどのクワ・トイネ側の攻撃を貴方もご覧になったはずだ。クワ・トイネは新種の飛竜を発見し、それを前線に配置した。その新種の竜は我々のワイバーンを完膚なきまでに叩きのめした。あの竜の攻撃を我々が受けたならば、敵の陣地の攻略は不可能だ。どんなに犠牲を出しても、最終的に陣地攻略の見込みがあるというのであればまだしも、一方的に兵を失うだけで、作戦の成功が見込めないというのであれば、話は別でしょう。作戦の練り直しが必要です。」

 

 ナンベルハイト男爵がアデムに主張するところは、我々も同じ気分だ。周囲からもその通りという声が聞こえる。

 

「諸侯の方々は、少し亜人共を過大評価しすぎていますな。なるほど、敵は新種の竜を発見し、軍事転用可能なまでに育て上げた。それは私もこの目で確認した。確かに脅威であった。おそらく魔法を操ることのできる竜なのだろう。その威力は我が軍のワイバーンではかなわなかった。それは認めよう。しかし、それはあの竜がすごいのであって、亜人共の能力ではない。諸君らはそこをはき違えている。だから目が曇るのだ。」

 

 アデムが我等を見渡しながら話を続けている。

 

「よろしいか、あれだけの爆裂魔法を放つ竜だ。魔力保有量も大きいとみて間違いはない。なにやら礫のようなものを発出したその魔法もだ。しかし、だからこそ魔力枯渇も早まるとみて間違いないだろう。そして、あの巨体を制御するのはとても難しいのだろうと考える。これは、敵の陣地からあの礫のような攻撃があったことからもうかがえる。」

 

 どういうことであろうか。我等を代表して、グレイブゲルト子爵が、どういうことなのかと問いかけた。

 

「左様。あの陣地からの礫のような攻撃は、新種の飛竜のそれと同じようであった。おそらく飛び立つことに失敗した竜からの攻撃なのだろうと思う。つまりだ、あの竜は6匹いるのだ。そして、そのうち1匹は飛び立つことができない。そんな竜としては、出来損ないではあるが、魔力保有量が多いゆえに前線に持ち込まれた。総合的に考えれば、クワ・トイネの亜人共が保有するあの新竜は6匹しかいないということになる。ここまでで私の分析に異論がある者はいるか?」

 

 アデムが我等を見渡す。だが、その顔は異論は許さないという形相にあふれていた。

 

「つまり、今攻撃を掛ければあの竜は戦場に出てこない可能性が極めて高い。魔力が回復するまでは時がたつのを待つしかない。その時を相手に渡すなど下の下だ。今更攻撃を躊躇するというものの考え方が敵を利するということに諸君は考えを及ぼさなくてはならない。ワイバーン隊による航空攻撃が成功しなかったのは残念だった。わたしもあの時は諸君らと同じようにあっけにとられていた。だが、そうであっても我等は冷静に対処しなければならない。攻撃は事前の作戦通り行う。よろしいな。」

 

 我等は周りを見渡し、不承不承に頷くしかなかった。

 

 

 ――――――

ギム防御陣地本陣・総司令部

 

― 西部方面騎士団団長副官クレマン・ジラール

 

「では、当初の作戦の通り敵を待ち受けるということですか。」

 

 防衛陣地中央左翼配置部隊の指揮官である第一歩兵隊長、モーリス・デムランが参謀長に問いかけた。

 

「そうです。我等の武器弾薬は限りがあります。現在、急ピッチでこの前線に運ぶ計画を実行中ですが、何分輸送能力には限界があります。攻勢に出て燃料弾薬が尽きれば、たちまちこちらが劣勢に立たされる。敵の方が単純な兵力量は多いのです。我等は量的劣勢を質的優位で覆そうとしているのです。それには、攻勢よりも守勢のほうが理にかなっています。この防御陣地は敵の大軍を分散させて攻撃してくるように仕向けてあります。消極的に見えましょうが、我々の戦略目標は、ギム防衛陣地の守護にあります。敵野戦軍の撃滅はその手段であって目的ではないと判断します。」

 

 西部方面騎士団の面々は、非常に残念そうな表情を浮かべている。無理もない。緒戦は一方的な大戦果を挙げたのだ。兵たちの士気はこれまでにないくらいに高ぶっている。この勢いを敵にぶつけて更なる戦果をという声は百人隊長格からも挙がっていた。第二歩兵隊長、レノー・ビガールは、挙手して質問の許可を得る。

 

「敵が増強するのを待つということになりはしませんか。今ならば、敵は先遣隊だけのようですし、ここで一気呵成に攻めて、相手を押し返すことができれば、敵は総崩れとなり、我々もより一層の時間を稼げると思うのですが。」

 

 なるほど、先遣隊を押し返すことができれば、相手方には戦力の再編を強いることができる。いつ攻めてくるわからない状況よりも、さらなる補給の時間が稼げるとみることはできるか。しかし、滝沢師団長は異論を呈した。

 

「それは難しいでしょう。敵軍は我等よりも高地に陣取っております。坂を上る我々と坂を下る彼らとでは兵の勢いが違ってくる。坂を下る方が有利です。そして、もし押し返そうとしても彼らが逃げる先はあの隘路となっている街道です。兵が逃げようにも隘路では逃げ切れない。一歩間違えば、死兵となりかねない。小官は既定の作戦に沿って敵に出血を強要し、出血多量に至らしめることこそが重要と考えます。先遣隊が大被害を受ければ、敵本隊も様子を見るということもあり得ましょう。そうしていくことで、補給の時間も稼げると思います。」

 

 満日軍はやはり、持久戦を主張するか。いや、それが当初の作戦だったのだ。計画の変更は認めないという事か、いや、そうではない。

 

「つまり、まだ戦闘は始まったばかりでいたずらに陣立てを変える必要はないという事であり、この大戦果も予想しえた範囲であって、騒ぎ立てるようなものではない、という事なのですね。」

 

 満日軍の将軍が苦笑した。そうか、そうだったな。我等にとっては予想外の大戦果だったが、満日軍にとっては、この戦果は当たり前なのだ。騒ぎ立てる方が愚かであった。

 

「まあ、大意においてはそうですな。我々からすれば、ここで敵ワイバーン隊を文字通り全滅に追いやりたかったのですが、敵さんの形成判断が優秀でしたな。遮二無二突っ込んでこずに引いたのは予想外でしたが、こちらも助かりました。我々の対空兵器は敵のワイバーン隊があのまま突っ込んできていたら、弾切れにもなりかねませんでしたから。我々はまだ綱渡りのような戦いをやっている段階です。焦らず行きましょう。」

 

「そういうわけだ。部下たちをなだめておいてくれ。」

 

 モイジ総司令官が後を引き継ぎ西部方面騎士団の面々に命令した。ここからの敵の行動について確認しておかなくてはならない。

 

「参謀長。敵はこの後どう動くと予想されますか。制空戦は彼らの敗北に終わりました。敵地上軍は、劣勢を跳ね返そうと一気にやってくるでしょうか。それとも様子見と少数の兵で威力偵察のようなものを行うでしょうか。」

 

「それは、敵の司令官の性格にもよると思うが、敵の先遣隊司令官は、地方貴族ということらしいので、徴兵した領民に大きな被害が出ることは避けたいと考えていると私は思っています。ならば、あの制空戦の後です。力攻めはしてこないとは思うのですがこればかりはその時になってみないとわかりません。」

 

「参謀長。敵の陣立ては不明ですが、先遣隊には本隊から派遣された部隊もいるとのことです。装備に金が掛かる重装歩兵の多くは、この本体からの派遣部隊らしいです。本国からは一刻も早いギム制圧を望まれているとのこと。力攻めしてくる可能性はあるのでは。」

 

 李師団長が参謀長と違った意見を出した。参謀長が苦い顔をする。

 

「うーむ。我々としては、小分けしてくれた方が助かるのだがなあ。」

 

 弾薬に不安があるため、一気に大量に消費するよりは、ちまちまと節約しながら戦う方が我々にとっては有利なのだが、敵がどう来るかはわからない。戦闘配置は維持したまま我々は、敵の監視を継続することとなる。

 

 

 ――――――

大日本帝国東京都首相官邸

 

― 信崎慎太郎内閣副書記官長

 

 クワ・トイネ公国ギム陣地から至急電が届いた。ロウリア飛行隊が大挙して越境し、攻撃を開始したとのこと。連合軍は之に対して自衛攻撃を行い、退けたとの内容だった。俺はすぐさま荒池書記官長に報告し、書記官長は総理公邸に連絡し、総理に報告した。総理は、公邸から参内し、陛下に対して前線での戦闘が開始されたことを報告し、対ロウリア宣戦布告の天皇大権発動を上奏した。

 

 上奏後、すぐに官邸に戻った総理は、参集した国務大臣とともに臨時閣議を行い、あらかじめ作成しておいた宣戦布告文書に国務大臣の署名をさせた。徳川外相から駐アルタラス公使及び駐シオス公使に宣戦布告の通告文書を駐ロウリア大使に手交するようにと緊急電が打たれた。時間を考えれば、正午には手続きが終了しているだろう。

 

 帝国が戦争状態に突入する。帝國陸海軍が戦闘状態に突入するのは、俺の親父の世代のポーランド懲罰戦争に在英帝國陸軍が参戦したとき以来だ。しかもあの時は、ほとんど戦闘らしい戦闘を経験していない。

 

 官邸前では、記者たちがたむろし始めた。今はまだ報道管制が敷かれているが、テレビは官邸に不穏な動きありとの一報を既に伝えた。日本国民もロデニウス大陸の情勢についてはいろいろと聞いているだろう。一部の予備役が召集されたという話も出ている。各鎮守府の軍港要港から軍需物資を満載した帝國海軍の輸送艦が出航したとのSNSのつぶやきが飛び交っていた。

 

 予定通りならば、正午に記者会見だ。今日は忙しくなるだろう。

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