大日本帝國召喚   作:もなもろ

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ギム防御陣地陸上戦第一幕です。


クワ・トイネ公国西部都市ギム西方防衛陣地 中央暦1639年4月12日午前11時

ニージェイ山山頂 諸侯軍本営

 ― 東部諸侯軍司令官 アルフレッド・フォン・ジューンフィルア

 

 我が諸侯軍と王国陸軍の将兵が敵陣地に攻め入ろうと横帯陣形を構えている。先鋒は王国陸軍が誇る重装歩兵隊1000名だ。

 敵の陣地は縦長の堡塁を幾重にも重ねており、隘路を作り出すことで大軍の侵攻を拒み、陣地正面への攻勢を軽減させている。隘路の数は20ほどあり、50人ずつ重装歩兵が盾を構えながら侵入していく形となっている。隘路を抜けたところで、重装歩兵が横に展開し、盾を使った防御姿勢を取り、その後ろから攻城兵器が敵の門を打ち破る。そして、歩兵隊が陣地内になだれ込むという想定である。

 作戦としてはセオリー通りというところだが、敵の防御陣地は堅固だ。まず隘路で弓兵による足止めが図られることであろう。敵の魔導士はどの程度の数がいるだろうか。弓兵の貫通力強化の魔法を使ってくるだろうことは疑いない。だが、重装歩兵が隘路を通過することができれば兵力量の差で押し切ることは可能だ。それに賭けるしかない。

 

「伯爵、全部隊攻撃予定位置に到着しました。あとは、閣下の御命令で、部隊が前進を始めます。」

 

「わかった。突撃の太鼓を鳴らしてくれ。」

 

 ドーンドーンドーン、ドーンドーンドーン・・・

 続けて三回打ち鳴らし、少し開けて三回打ち鳴らす。これを前進部隊の全てが移動を開始するまで打ち鳴らすのがジューンフィルア伯爵領の、そして東部諸侯軍が取り決めた突撃の合図である。撤退の際はドンドンドン・・・と短い間隔の打音を部隊全員が撤退の動きを見せるまで打ち続ける。ジューンフィルアは、撤退の太鼓を打ち鳴らすことが無いように神に祈った。

 

 

――――――

ギム西方平野 右翼攻撃部隊

 ― グレイブゲルト子爵領ヘンゲン村出身兵士 ガルーデ

 

 ドーンドーンドーン、ドーンドーンドーン・・・

 

「全兵士起立。攻城兵が前進を始めたら、我々はそのあとをついていく形となる。重装歩兵が隘路を突破したら俺たちはそれに続いて、攻城兵を追い越して走り出す。それまではゆっくりすすめ。」

 

 進軍の太鼓が鳴るや百人隊長が座っていた俺らを起立させた。グレイブゲルト子爵軍は敵の陣地の正面右翼の一部を担当することとなった。隘路二つ分を80人程度の兵士が担当する。とりあえず、周りの森の木を一部伐採して即席の盾を作った。重装歩兵が突破し、陣地を確保する。攻城兵が櫓の上から投石や火矢を放ち、城壁を炎上させる。あとは、俺らが突破するって算段らしいが・・・

 結局逃げることはできなかった。ジューンフィルア伯爵様の下に知らせに行った後は、伯爵の部隊が駆け足で進むこととなり、その動きに合わせるしかなかった。そのあとは、原隊に戻ることとなり、今に至る。

 敵は俺らのワイバーン攻撃をいとも簡単に退けた。ぞっとするものがあった。こんな状況じゃ予定通りの攻撃はないと思っていたんだがな。どうも、うちの領主様は反対したらしいが、王国から派遣された将軍様が攻撃を強硬に主張したらしい。その将軍様は前線に出るわけじゃないってのにな。

 

 重装歩兵隊が隘路に侵入した。盾を構えながらゆっくりだ。

 もう敵が目の前にいるってえのに、敵は重装歩兵隊に攻撃してこねえ。なんだ、なぜ攻撃してこねえんだ。まさかびびってんのか。あの時感じた殺気はなんだったんだ。

 

「・・・重装歩兵隊が一部でも隘路を抜けたと判断したら、俺らは走り出す。重装歩兵隊の盾の後に隠れろ。攻城兵の攻撃がやんだら、その時は敵陣に突入する。」

 

 重装歩兵隊は隘路の中ほどを通り過ぎている。装備が重いだろう。敵が攻撃してこないのに速度は変わらない。

 今行くか!? いや、まだか!?いや、今か!!

 その時、突如として、前方の攻城兵の乗る櫓が大音響とともに吹き飛ばされ、俺はその暴風に吹き飛ばされた。

 

――――――

防衛陣地中央左翼

― 近衛歩兵第二連隊第一大隊第二中隊第一小隊長 陸軍中尉 笹野小次郎

 

「引き金にはまだ指を掛けるな。手を開いたり、閉じたり、指を動かしたりしておけ。大丈夫だ。訓練通りにやれば問題ない。」

 

 目の前で第一分隊長の大島軍曹がクワ・トイネの兵士に声を掛け続ける。敵陣のほうで、太鼓の音がリズムカルになったとたんに、敵が動きだした。おそらくあれが進軍の合図だったのだろう。我が陸軍でいうとのことの突撃ラッパに該当するのだろうが、我々現代軍隊は、敵に自軍の意図を察知されるということで、ああいう形の全体号令は行われていない。日露戦争を舞台にした映画「二〇三高地」とかで突撃の際に鳴り響いたラッパを思い出し、ちょっとカッコイイなと思ったのは秘密だ。

 

「軍曹。やはりあれだけの軍勢、それも重装歩兵となると圧がすごいな。クワ・トイネの諸君が硬くなるのもわかる気がする。」

 

「そうですな中尉殿。とはいえ、焦ってはいけません。ここで、大戦果を収めておく必要があります。なるだけ引き込まないとですな。」

 

「ああ、連中には気の毒だかな。」

 

 防衛陣地中央は左右の部隊に第一大隊と第二大隊がそれぞれ配置されている。いずれの大隊も、クワ・トイネの兵士と共同して隘路にいる敵兵を攻撃するのが任務だ。といっても、クワ・トイネの兵士諸君は銃火器の使用に慣れてはいない。ゆえに、いろいろと編成に特異点が見られる。

 我が陸軍では、歩兵大隊は本部を除けば歩兵三個中隊と機関銃中隊から構成される。機関銃中隊は我が陸軍軍人のみで編成されているが、歩兵中隊は日鍬混成だ。とはいっても、中隊本部に一人クワ・トイネの騎士団の兵を入れただけで中隊の編成はさほどいじっていない。いじっているのはその下の小隊の編成だ。

 通常小隊は俺のような陸軍中小尉が小隊長を務め、小隊を分割して分隊を構成する。分隊はおおよそ8名程度で構成され、それが4個分隊ほどできる。つまり、小隊長の指揮兵力は30人から35人のあたりだが、今回はここにクワ・トイネの兵士を入れた。このため小隊の構成人数が倍以上に増えた。流石に指揮運用に難ありということで小隊本部の人数を増やして、管理をしやすくし、クワ・トイネ兵に輜重兵の役割を与えたりして人数を調節し、分隊の下に班を作って、更に人数を細分化した。こうして、3個の混成分隊を作成し、1個の日本軍人だけの分隊は維持した。

 日本兵を教導に回して、クワ・トイネ兵に小銃の扱い方を覚えさせ、ようやく隘路の制圧射撃を可能とするところまで持ってきた。こういう構成にしたのは、省部の指示だというが、上も無茶をさせるものだ。

 

 感慨にふけっていると、軍曹が現実に引き戻す。

 

「中尉殿。そろそろ、敵の重装歩兵隊が地雷原を抜けます。」

 

「よし、軍曹。各分隊に射撃用意を命じてくれ。もちろん、まだ発砲は厳禁だ。」

 

「了解しました。」

 

 軍曹が伝令役のクワ・トイネ兵に各分隊への命令を伝えさせる。攻城櫓というのだろうか。櫓がゆっくりとこちらに向かってきている。中隊本部からの無線が聞こえた。

 

「中隊長より各小隊長へ。司令部より攻城櫓への攻撃が開始される。攻城櫓の倒壊と同時に重装歩兵隊に対して射撃を開始せよ。」

 

「第一小隊了解。小隊各位に告ぐ。間もなく攻撃開始だ。引き金に指を掛けるように。」

 

 20秒ほどたったころ、敵の櫓が一瞬宙に舞い、大音響とともに吹き飛ばされた。攻撃開始の合図だ。

 

「各分隊一斉射撃はじめ。」

 

ッダァーーン。ッダァーーン。ッダァーーン。ッダァーーン。ッダァーーン。

 

 俺の命令とともに分隊の火器が、そして隣の小隊からも同じく一斉に射撃音が聞こえ始めた。弾薬節約のためフルオートではない。また今回機関銃中隊は弾薬の節約も兼ねて一斉射撃には加わらない。うち漏らした敵兵を倒すときにだけ、機関銃隊がフルオートで敵を倒していく。

 敵の重装歩兵は隘路の中ほどを超えており、後ろには味方の兵がいる。後ろに下がることも難しく、前の兵からどんどん倒されていく。意を決して、前方へ駆け出す重装歩兵が現れだしたが、我分隊が兵が対処していく。ようやく隘路を抜け出せたと思った兵には、機関銃の射撃を受けて、動きが沈黙する。

 

ッダァーーン。ッダァーーン。ッダァーーン。ッダァーーン。ッダァーーン。

ズドドドドッ・・・ズドドドッ・・・ズドドッ・・・・・・ズドドドッ。

 

「中尉殿。敵の重装歩兵、後ろの方が撤退を始めました。」

 

「よし、分隊各位に命令。隘路から完全に出た時点で射撃中止。概算でいい、倒した敵兵の数を小隊本部の泉谷兵長に報告してくれ。小隊本部田中軍曹に命令。使用した弾薬量を計算して、中隊本部に報告してくれ。大島軍曹、敵兵救助準備だ。あの状況では難しいかもしれんが、捕虜を取るぞ。中隊本部に連絡して衛生隊第三中隊から1、2班回してくれるように頼んでくれ。第四分隊出撃準備。大島軍曹の指示にしたがい、敵兵救助を行ってくれ。」

 

 矢継ぎ早に命令を出したあと、床几に座る。さて、これからどうなるか。

 

 

――――――

ニージェイ山山頂 諸侯軍本営

 ― 東部諸侯軍司令官 アルフレッド・フォン・ジューンフィルア

 

 敵の隘路に重装歩兵隊が侵入した。ここまで敵は何の攻撃も加えてこなかった。おかしい。先ほどあれほどまでの攻撃を行った敵が何もしてこない。

 

「ほら御覧なさい。なんというか戦意を消失してはいないようですが、敵陣に動きはありません。あれだけの数を相手にして亜人共はもう打つ手がないのです。やるせなさに身を震わせているというところでしょうか。何とか一矢報いたいと一気に襲い掛かるかもしれませんね。ウッフッフ。」

 

 アデムが勝ち誇った顔で笑いだす。私はどういう顔をしているのだろうか。予測が外れ、多少の被害は発生したもののギムを攻略できるという安堵か。それともこの男の予測が当たったことを訝しむ顔なのか。頭の中では警鐘が鳴り響いている。しかし、現実に被害は出ていない。もう重装歩兵は陣地の壁から150メートルを切っている。なぜなにも攻撃しないのだ。

 そう思っていた最中、隘路の手前が突然爆発した。なんという規模の爆裂魔法だ。15台の王国軍の攻城櫓が一斉になぎ倒された。いかん、また兵たちの頭上に櫓が落ちた。

 

 すさまじい砂埃が沸き上がる中、隘路の方から「ッダァーーン。ッダァーーン。」という音が聞こえ始めた。

 

「なんだあれは。」

 

 砂埃が収まった先、重装歩兵隊が数々と倒されていく姿があった。すぐさま単眼鏡を構えた。音とともに重装歩兵隊が血しぶきをあげて倒されていく。勇敢にも敵陣前方に駆け出した者もいるが、彼らも倒されていく。隘路を抜けたと思われる兵は、これまたすさまじい血しぶきを上げて倒れこんだ。

 

「なぜだ。なぜ重装歩兵隊が次々とやられているのだ。防御力を重視した甲冑を装着しているのだぞ。」

 

 アデムが叫んでいる。重装歩兵隊1000名が次々と打ち取られている。後方の歩兵隊にもあの爆裂魔法の被害が生じているようだ。

 

「あっ!!なぜ逃げている。王国重装歩兵隊が敵を背に逃げるなど恥を知れ。よりにもよって亜人共を背に尻尾を蒔くとは指揮官は何を考えている!!」

 

「アデム殿、一度引きましょう。」

 

「何をふざけたことを言っている!!亜人共相手に退却するなど恥を知りなさい!!恥を!!ロウリア貴族の誇りはどうした!!」

 

「いいかげんに現実を見たまえ!!今兵を引かねば、損害はもっと大きくなる。あの陣地を攻略するためには違う手立てが必要だ。そのためにも今兵を無駄に死なせるわけにはいかん!!」

 

「ぐぅ~~!!!!亜人相手に兵を退くなど、国王陛下に弓引くものと同じだぞジューンフィルア。撤退を言い出すなどと、貴様もただでは済ませんぞ!!」

 

 言いたい放題言ってアデムは席を外した。

 

「撤退の太鼓を鳴らせ!!大至急大音量でだ。」

 

 ドンドンドンドンドンドンドンドンドン・・・

 

 ロウリア東方征伐軍第一次攻撃は多くの犠牲を出して失敗に終わった。

 

 

――――――

 

暴風に吹き飛ばされたガルーデの運命や如何に?

  • 戦死
  • 負傷の為後送
  • 気絶後原隊復帰
  • 気絶後捕虜
  • その他
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