大日本帝國召喚   作:もなもろ

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人が死ぬ描写などが増えてきましたので、R-15タグ入れておきます。
愈々宣戦布告文書の手交です。もう前線では戦闘が始まっていますが、アルタラスではまだそんな情報は届いておりません。


アルタラス王国王都ル・ブリアス 中央暦1639年4月12日午前11時

 前線で戦闘が開始されたころ、ようやくアルタラス王国外務局において日満公使とロウリア大使の会談がアルタラス王国外務卿の仲介の下始まった。日満公使はロウリア大使に開戦宣言書を手交するにあたって、アルタラス外務卿の同席を望んだ。戦争にあたっての中立について協議するためでもある。

 外務卿室の側に設置されている貴賓室にロウリア大使随行員とともに入ってくる。

 

「アルタラス国王陛下からの至急の召喚状とは穏やかではないな、外務卿。やはりわしを呼び出したのはそちらの二人だな。」

 

「ええ、大使閣下。閣下のお見込みの通りです。日満とロウリアいずれとも国交のある当国が仲介役を行うこととなりました。」

 

「貴国も難儀だな。このような茶番劇に付き合わされるとは。それで、お宅らの用件とは。最後通牒の返事の督促か。」

 

 座っていた日満公使両名が立ち上がり、体をロウリア大使のほうに向ける。

 

「いえ、我等は本国政府から貴国に対する開戦宣言書を手交するように訓令を受けましたので、こうして御足労願いました。全く同じ書類を二通用意いたしました。片方に署名をいただきまして受領の証拠として持ち帰らせていただきます。ご確認願います。その後は本国に緊急の魔信を飛ばしていただければと思います。」

 

 両者からの書類を受け取りながら、ロウリア大使は不思議な顔をする。

 

「最後通牒に我が国は返答を行わなかった。最後通牒の期限は4月10日正午となっていた。それを過ぎた以上、我々は既に戦争状態にあるとの認識にあるが。」

 

「ええ、最後通牒にそういう側面があることは否定しません。ですが、我々としては、国家の意思として貴国と戦争状態にあることを宣言する。それを他国にも通知する意図を以てこうして文書としております。」

 

「なるほど。」

 

 ロウリア大使は、渡された二組四通の文書を眺め見る。

 

大日本帝國政府ト朗利亜王国政府トノ間ニ戦争状態ガ存在スルコトノ宣言

 

神武天皇即位紀元二千六百七十五年即チ中央暦一千六百三十九年四月六日帝國政府ハ朗利亜王国政府ニ対シテ戦争回避ノタメノ最後ノ機会ヲ与ヘタルモ王国政府ハ帝國政府ノ勧告ヲ黙殺セリ事既ニ此ニ至リテハ帝国政府ハ一切ノ障礙ヲ破砕スルノ外ナキナリト認ム

 本書ノ通告アリタリシ時刻ヨリ大日本帝國政府ト朗利亜王国政府トノ間ニ正式ニ戦争状態ガ存在スルコトヲ帝國政府ハ王国政府ニ通告ス

 開戦宣言ハ帝國駐在ノ各国外交使節ニモ通知ス交戦国ニ非サル中立国ニハ厳正ナル中立ヲ維持スルヤウ通知スルモノナリ

 爾後帝國政府ニ交渉ヲ求ムルトキハ或垂巣王国若ハ塩須王国駐箚ノ帝國特命全権公使ヲ窓口トスルコトヲ併セテ通告ス

 

神武天皇即位紀元二千六百七十五年即チ中央暦一千六百三十九年四月十二日

 

 大日本帝国内閣総理大臣 山上 誠一

 

 満洲帝国側も同様の内容である。ロウリア大使は「ローデリヒ・ベルシュ」と署名を行い、それぞれの公使に渡す。

 

「これで、我が国と貴国等とは、正式に戦争状態にあるということですな。」

 

「左様です。」

 

「話はこれで終わりということですな。」

 

「いえ、これからアルタラスの外務卿も交えまして、中立法規の打ち合わせをさせていただきたい。」

 

「中立法規だと。」

 

「ええ、アルタラス王国はこの戦争で中立を貫くことを事前に伺っております。ならば、その中立の規定がどうなっているのか、我々としては確認する必要があります。戦時国際法について、この世界の状況を我々はよく知りません。なので、確認の意味も兼ねてこの場で中立法規を決定してしまいたいと思います。その前にロウリアの大使閣下。宣戦布告の受領について本国に連絡をするよう随行員に命じてください。」

 

「わかった。書記官、この文書を魔信で本国に報告してくれ。君は至急大使館に戻り給え。それで、ユグモンテ卿。我が国としては、貴国が中立となるとすれば今まで通りの関係を維持するということでよいと思っているのだが、どう思いますかね。」

 

「ええ、それでよいと思いますが、日満側は何か別案がございますか?」

 

 日満両公使はお互いに顔を見合わせて、頷くと話を切り出した。

 

「そうですね。アルタラス王国が中立国となるとすれば、交戦国のどちらの側にも肩入れするべきではないと考えます。特に戦争状態となりますと、我々としては民生品についてはともかく、軍事転用可能なものについては、アルタラス王国はロウリアにも我々にも輸出しないように強く求めるところです。」

 

 ロウリア大使とアルタラス外務卿が顔を見合わせて、アルタラス外務卿が日満側に質問する。

 

「軍事転用可能なものと言っても範囲が大きすぎるのだが。我が国の主要貿易品と言えば、魔石だがまさか魔石を輸出するなと。」

 

 日満側の意見に訝しみながら、アルタラス王国外務卿シモン・ド・ユグモンテは、日満側に回答を促した。

 

「ええ、その通りです。魔石は攻撃兵器にも防御兵器にも利用されます。アルタラスが中立国という事であれば、魔石を我々交戦国に輸出することは軍需物資を輸出することと同義でしょう。それは、中立とは言えないと我々は考えています。」

 

 話を聞くや否や、ユグモンテ卿は立ち上がり、大声をあげた。

 

「バカな!!我が国の主要貿易品である魔石が輸出できないとなれば、我が国の経済に悪影響を与えるだけではないか。貴国等は一体何を考えておられるのですか。」

 

「別に輸出ができないとは言っておりません。シオス王国やマオ王国など輸出先はいくらでもあるでしょう。」

 

「ロウリア王国は我が国の主要貿易国です。我が国の魔石は高額取引の品です。ロウリアから多くの魔石を買ってもらい、その金で我が国の経済は潤っているのです。それに、シオス王国と取引はあっても、マオ王国とはほとんど取引はない。代替に等なりはしない。主要貿易国と貿易を禁止されては我等は中立などできませんぞ。」

 

「それでは、アルタラスは我が国に宣戦布告をなさると?」

 

「そうは言っていない。そうは言っていないがだ。そんな中立規定など飲めないと言っているんだ。我が国の国民を飢えさせるわけにはいかない。貴国等の戦争に我々は関与しないと言っている。直接兵を送って如何こうしようなどとは言っていない。」

 

「アルタラスが我が国の側に立って参戦されるのであれば、わしは一向にかまわんぞ。ロデニウス大陸の利権は認めんがな。」

 

「ベルシュ大使。そうではありません。我々はロウリア側にも日満側にもどちらも与しないと言っているのです。我が国は諸外国との戦争を望んではおりません。」

 

「だ、そうだぞ。大垣大使。よかったな敵が増えなくて。」

 

「皆様、先ほどから議論が脱線していませんかしら?」

 

 マニャール公使が飲みかけのカップを置きながら柔らかくいなす。

 

「要はアルタラスが中立によって不利益を被らなければよいだけでしょう。ならば、月当たりの取引上限額を設定し、両陣営に同数の魔石を売る。つまり、双方の陣営に売るようにすれば、一方の陣営にだけ肩入れするということは無い。そうすれば、中立の体裁は整えられる。それでよろしいではないですか、大垣公使。」

 

「マニャール公使。中立国と交戦国が軍事物資を取引をするということ自体が問題なのだ。それは、中立ではない。」

 

「それは私たちの戦時国際法の既定の話であって、こちらではそうとは言えないのかもしれないでしょう。」

 

「そうではない。論理的な帰結として、」

 

「何よりアルタラスの経済的な利益が絡んだ話ですわ。ユグモンテ卿が過敏に反応するのも無理はございませんこと。銭金の話は論理を優越する。」

 

「それはっ!!・・・それを安易に認めては、文明国の外交官として・・・」

 

「それに・・・」

 

 マニャール公使は大垣公使に寄りかかり、大垣公使の耳のあたりに唇を近づけ、手をあてて、小声でフランス語を話し始める。

 

「アルタラスと揉めるのは得策ではないわ。ロウリア王国の敗戦後、この周辺地域で力を持つことになるのはアルタラスよ。そして、アルタラスはムー国と国交を樹立し、ムー国の飛行場が国内にある。今後ムー国と国交を樹立するにあたって、中継地点のアルタラスは必要よ。そんな国と良好な関係を築けないのはまずいわ。ここは私たちが折れるのよ。」

 

「・・・了解した。」

 

 マニャール公使が大垣公使から離れて居住まいを正す。ベルシュ大使が軽口を叩く。

 

「見せつけてくれるじゃねえかお嬢さん。豊満な胸が押し付けられてつぶれちまってまあなかなかそそる姿じゃねえか。」

 

「あら、こちらでも巨乳は喜ばれるのかしら。」

 

「そうだな。豊かな胸はそれだけ豊かな食生活を送ってきたということで実家が裕福である証拠だ。貧相な食生活ではそうはならない。デカいってことは、富と権力の象徴ってとこがあるわけだな。つまりはお嬢さん。其方のような女は実家が富豪であることの証拠ということだ。わしとしては地方の蛮族とはいえ、結びつきを強めたいと思うのは間違いのないことだとわかるだろう。」

 

「なるほどね。こちらの世界の貴重な話だわ。」

 

「そういうことだ。どうだ今晩わしの情けを受けに来んか?」

 

「遠慮しておくわ。貴方じゃ私を満足させられそうにないもの。」

 

「けっ、勝気な女だ。だが、悪くねえ。お前のような女が泣いて許しを請う姿ってのもそそるわい。それで、そっちの話はどうなった。」

 

 ベルシュ大使が顔色を変えて、再び外交官の顔を見せる。

 

「そうね。ユグモンテ卿。満日は、先ほどの中立要請を修正しますわ。アルタラスがロウリアを始め、クワ・トイネやクイラも含めて交戦国に対して魔石を売買することは中立規定に違反するものとして国際社会に訴えないこと、訴えをする権利を保有しないこと。この場で文書にしたためます。」

 

「おお、よかったよかった。助かります。」

 

「ふん。クワ・トイネとクイラにもだと。おいお嬢さん。我々がそれを見過ごすとでも思っているのか。」

 

「ええ、ベルシュ大使のおっしゃる通りですわ。本来、論理的には、大垣公使がおっしゃったように中立国は直接、間接を問わず交戦当事国に援助を行わない義務を負うものと我々は考えます。中立国が交戦国と軍需物資をやり取りするのは中立違反と我々は考えております。それは間違いではありません。しかし、それではアルタラス王国の経済が打撃を受けるとのこと。それを容認しがたいとしたユグモンテ卿の主張もわかります。ですから、我等の海軍がロウリアに向かうアルタラスの船を臨検して、軍需物資の没収を行うことは、我々交戦国の持つ権利と考えます。それに異を唱えられても困りますがいかがでしょうか。」

 

「そ、それは・」

 

「心配せんでもいいユグモンテ卿。アルタラスのクワ・トイネやクイラとの取引額は我が国のそれと比べれば微々たるものだろうが。」

 

「結構なことと存じます。ユグモンテ卿、御心配なさらずとも戦争終結後没収した魔石はお返しします。我々の目的は魔石をロウリアに渡さないことであって、魔石を強盗することではございません。」

 

「ふん。戦ってもいないうちから、戦争終結後の話をするとはな。それに我が海軍の攻撃を排除して、臨検が成功する話をするとは、ちいと調子に乗りすぎておるな。」

 

「あら、そうかもしれないわね。でも、ユグモンテ卿に安心していただくためには、それぐらいしないといけないわ。本国には、懐に入れないようきっちり報告しておくから気にしないで頂戴。」

 

「ふん。それじゃ、大枠は決まったということでよろしいな。」

 

「そうね。交戦国全てはアルタラスを始めとした中立国と貿易を維持し続ける。交戦国全ては中立国の中立義務違反を理由とした制裁は一切権利を持たない。但し、中立義務そのものは残るため実力で排除する権利は留保される。これが基本方針ね。」

 

「よかろう。」

 

「では、我々はこれで失礼します。ユグモンテ卿、ベルシュ大使、本日はお時間を頂きありがとうございました。」

 

 日満の公使達は、アルタラス外務局から退出する。ベルシュ大使は、ユグモンテ卿に語り掛ける。

 

「東方の蛮族がロウリアに逆らうとはな。ユグモンテ卿、あの連中どういうつもりなのだろうな。」

 

「さて、私には何とも。虚勢を張っているだけかと思えば、本気でこうして貴国に宣戦布告をするという、どうも好戦的な連中です。」

 

「ふん。それは我が国に対する当てこすりのようにも聞こえるが。」

 

「いえ、そういうわけでは。」

 

「まあいい。どうせ、戦争はすぐに終わるのだ。クワ・トイネとクイラを併呑したら、あの連中も戦う目的が無くなる。あの連中がどの辺に国を持っているのかがわからんので、こちらから攻め込むこともできんので、講和ということになるだろう。中立の話もすぐに終わる。卿が心配されずとも、貿易体制はこれまでの通りだろうよ。」

 

「なるほど。左様ですな。」

 

「うむ。講和の条件にはあの女を奴隷として差し出すことを加えねばな。」

 

「それは、直接あの女に伝えるということですか。」

 

「当然であろう。交渉の窓口はほれここにアルタラスかシオスの駐満公使を通じてとある。シオス側で講和会議が行われても、シオスの大使にはこの条件を加えるよう伝えればよい。その時はあの女の恐怖にひきつる顔を見られんので残念だがな。」

 

「それはまた。大使もお人が悪い。」

 

「ふん。よく言うわ。卿もだいたい同じことを考えていたであろうに。」

 

「私はまあ、その、まあ食べてみたいとは思う体つきはしているなあと思っている程度ですよ。」

 

「ふん。わしとそう変わらんではないか。わしが食べ飽きたら、貸してやってもよいぞ。」

 

「おや、譲っていただけるのではなくて。」

 

「当然であろう。あれだけの臈長けた女はなかなか見つからん。もったいなくてやれんわ。」

 

「ハハ、大使閣下に目を付けられるとは、あの女もかわいそうなことですな。」

 

「ふん。よくいうわ。では、わしも大使館に戻ります。本日は、ご苦労様でした。」

 

「ええ、大使もお気をつけてお帰り下さい。」

 

 ユグモンテ外務卿は、日満への、特に日本への警戒心を一段階引き上げた。アルタラス王国の経済を後退させるかもしれないことを平然と要求してきた。もちろん、外務卿として考えれば、日満の主張である中立国の義務というのは分からなくもない。だがそれで国が傾くというのであれば別だ。国王陛下への上奏の際には、ロウリアが戦争を優位に進めていると確実視したときは、日満への参戦も含めて検討されたいと報告しなければならないと考えた。

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