大日本帝國召喚   作:もなもろ

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アデム株、急騰から大暴落?


クワ・トイネ公国西部都市ギム西方防衛陣地 中央暦1639年4月12日午後2時

ニージェイ山山頂 諸侯軍本営

 

 ― 東部諸侯軍司令官 アルフレッド・フォン・ジューンフィルア

 

「諸君。遅くなったが、大体の事情は確認してきた。」

 

 アデム氏が緊張した顔をしながら本営に入ってきた。パンドール将軍に魔信で報告を行い、いろいろな情報を仕入れてきたようだ。

 

 

 事の起こりは、一時間前、魔獣を使用した敵陣地への攻略案を練っていた時だ。突然本営へ敵陣地を観測していた兵から、敵陣地に新しい旗が立ったとの報告があった。

 我等は作戦会議を一時中断し、本営の天幕を出て、眼下の敵陣地を眺め見た。

 

「あれは・・・。見たことのない軍旗だな。どこの領主の旗だったか?」

 

 周りの諸侯に聞いてみたが、彼らも知らなかった。一つは、白地に中央に赤い丸が描かれ放射状に赤い線が引かれている。もう一つは、上半分が赤青白黒の線が入り、下半分に黄色の模様一色が描かれている旗だ。

 

「アデム殿、貴殿は何かご存じないか。」

 

「いや、私もわからない。援軍が到着したという事であろうか?だとすると、敵の陣地の攻撃力や防御力が上がったということになる。」

 

「アデム殿。やはり、敵陣の偵察なしには、有効な手立てが打てないと思われます。本日夕刻の攻撃は厳しいのでは?」

 

「・・・いや、まずは情報収集だ。私はパンドール将軍にお伺いをたててみる。魔獣にかけている、魔法は強力なものであり、魔導士の魔力を枯渇寸前に追い込んでいる。魔導士の大半が役にたたなくなるほどの準備がすべて無駄になっては今後の作戦に影響が出てしまうといった程度のことでは済まない。諸君らにはすまないが、少し時間を頂きたい。」

 

 そういって、アデム氏は席を外した。それから小一時間かけて、アデム氏は情報を収集してきた。今回その結果が説明される。

 

 

「まず、現時点では推測を多分に含むところがある。それは了承していただきたい。

 実は、諸君らには説明していない事項がある。先月の18日のことだが、20日の出陣式を前にして再度の御前会議が開催されている。それには、出撃の準備を行っていたパンドール将軍もご参加されているのだが、この御前会議の召集を行ったのが、マオス宰相なのだ。宰相は、当日の午前にシオス王国とアルタラス王国の駐箚大使の下に大日本帝国と満洲帝国を名乗る国の駐箚大使が訪ねてきたとの報告を行った。」

 

「大日本帝国と満洲帝国ですか?聞かない名ですな?」

 

 ナンベルハイト男爵が、周りを見ながら話しかける。私も知らないが、だれか?おや、マインゲン市軍の軍隊長のガリムが手を挙げたが?

 

「アデム殿。その二国の名前ですが、マインゲン市に大日本帝国を名乗る外交官が訪ねてきたことがあると小耳にはさんだことがあります。その国のことで間違いないと思われますがいかがでしょうか?」

 

「そのとおりだ。ガリム隊長の発言にあった大日本帝国というのが眼前の敵に相違ないと私とパンドール将軍は考えている。というのも、シオス王国とアルタラス王国にある大日本帝国と満洲帝国の大使館には、あの軍旗に非常に酷似した旗が翻っているのを両国の大使が確認している。日本のそれは、白地の中央に赤い丸が描かれ、放射状の赤い線は引かれていない。満洲のそれは、赤青白黒の上半分の線が左端から中央までひかれており、上半分の右半分は下半分とどうように黄色の模様一色が描かれている旗だ。いずれも、特に満洲の旗は色の組み合わせと言い、非常に酷似したデザインだ。まず間違いなく、眼前の敵は日本と満洲ということになるだろう。」

 

「何者ですか、その二か国は?」

 

「わからぬ。パンドール将軍も御前会議の場で初めてその名前を聞いたとのことだ。それよりも、この二か国の大使がシオスとアルタラスの我が国の大使に接触してきた経緯なのだが、我が国に東方への征旅を止めるようにと勧告してきたとのことだ。」

 

 何と!ざわざわと本営の作戦会議の場が騒ぎ出す。

 

「して、その日本国と満洲国には、なんと返答したのですか?」

 

「何も返答はしていないそうだ。」

 

 ざわざわとまた皆が話し出す。

 

「ほ、本国は仮にも外交官から発せられた勧告を放置したとおっしゃられるのか?」

 

「ああ、あの当時は開戦に向けて準備が急ピッチで進んでいた。それも国王陛下の肝いりの東方遠征、ロデニウス大陸統一のための大戦争だ。名前を良く知らないような国が戦争を止めろと言ってきたからと言って躊躇するような情勢ではなかった。それは諸君らにもわかる話だと思う。」

 

 むう・・・。それは確かにそうだが・・・。

 

「そのような時勢で粉を掛けてきた日本国と満洲国に対して陛下はただ捨て置けとおっしゃったそうだ。名前を聞かぬような国家に興味はないとのことだったらしい。陛下の興味は東方遠征に向いていた。外務局もあまり接触はしていなかったと聞いた。接触はその一度きりだそうだが、パンドール将軍も御前会議の二日後の出陣式の後マインゲンに向けて進軍を開始された。その後の日本と満洲の情報などお持ちではなかった。私が軍旗の情報を伝えたのちに、将軍自ら王都に連絡を取られて、いろいろと情報を収集されているが、大した情報は入っていない。到着した眼前の敵は、おそらく日本国と満洲国に間違いないが、どういう敵なのかわからぬ。亜人如きと侮っていたクワ・トイネがあれだけの魔法攻撃を見せたのだ。今まで常識であった事実が覆された。それだけでも、我々は物事を判断する根拠を失っている。あの日本と満洲の情報について何でもよいので情報が欲しい。判断材料がないということはどうしようもない。だが、どうしようもなくとも動かねばならぬ。作戦開始までわずかな時間しかないが、諸君らには、情報収集にあたっていただきたい。」

 

 情報収集といっても何をすればいいのだ・・・。皆不安顔で周囲を見ている。アデム氏も苦しそうな表情を隠していない。我々は袋小路に追い詰められつつある・・・。む、ガリム隊長が手を挙げた。

 

「参考となるかどうかはわかりませんが、マインゲン市役所かどこかから2,3度ギムの街に向けて馬車が往復したと聞いたことがあります。誰が乗っていたかは分かりませんが、馭者ならば何か知っているのでは?」

 

 なるほど、確かにこの道を通って馬車が行き来したというのであれば、あの要塞のような陣地についての情報が得られるはず。だが、どうやってその馭者を突き止めるのだろうか?

 

「待て!!待て待て!!その馭者は、あの眼前の陣地について何も言っていなかったのか?マインゲンではあの陣地について一切噂になっていなかったのか!?いくらなんでもおかしいだろう!!」

 

「え?あ?いや、私はそのそういう馬車があったと噂話を聞いただけで・・・。誰が言ったのだとか、誰を運んだのだとかは・・・」

 

「イヤ、イヤ、イヤっ!!おかしいだろう、あれだけの大規模な陣地が築かれていて、それについての話を馭者がしないだなんてっ!!其方、馬車が行き来したという話を聞いて、あの陣地を見たときに、何も思わなかったのかっ!!!」

 

「え?あ!」

 

「ええい、この無能め!貴様は何を考えて生きているのだっ!!このボンクラめが!!」

 

「あ、も、申し訳・・・」

 

「それよりっ!!その馭者を探し出せっ!!なんとしても探し出して捕らえよ!!そいつはクワ・トイネのスパイだっ!!あれだけの陣地の情報を隠匿した。明白な反逆行為だっ!!」

 

「馬車に乗っていた人物、」

 

「当たり前だっ!!!馬車に乗っている人間がこの様子に気付かないわけがないっ!!!絶対に探し出せっ!!スパイは縛り首だ。ええい、縛り首だけでは俺の気が済まん。なぶるだけなぶって魔獣に生きたまま食わせてやるっ!!早く行けえ!!!」

 

 アデム氏が机を拳でドンッと叩く。ガリム隊長はすぐさま本陣を出ていき、本陣は静まり返る。アデム氏は肩で息をして目が血走っている。いかんな・・・またこいつ興奮してきていらんことを口走りそうだ。

 

「さ、作戦会議中恐れ入ります。敵陣より魔信が入っております。」

 

「今度はなんだっ!!!」

 

「は、勇敢に戦った貴軍兵士の弔いの為にも戦死者の遺体をそちらに引き渡したい。ついては、12時間の停戦を協議したいとのことであります。」

 

「糞がア!何を勝ち誇った気でいるのだ。亜人の分際で!」

 

 いかんな。こいつまた興奮して・・・。通信の魔導士が委縮しておるわ。

 

「その件については、こちらで協議するので、返信は待たせておけ。」

 

「待てっ!!よい、ちょうどよい。これは好機というものだ。」

 

 む?アデムの顔が上気している。いったい何を考え付いたというのだ。

 

「魔導士。その件了解したと伝えるのだ。ただし、準備があるためこちらの準備が整い次第、こちらから魔信を送るので、お互いに使者を派遣する。中央地点で停戦合意の誓書を取る。これで行こう。」

 

「アデム殿。どういうことですか?我々にはまだ戦死者の弔いなどする余裕は精神的にも時間的にもないですぞ。」

 

「ふふふ。我らが停戦に合意したと知れば、敵は油断するであろう。そこを一気に突く。魔獣を突進させ、陣地を突破し、速やかに歩兵や騎馬隊が陣地になだれ込んで、敵を駆逐する。その後は余勢をかってギムの街に侵攻する。少し、本来の予定には遅れたが、今日中にはギムの街の略奪を開始できる。すべてを一度に解決できる。」

 

「バカなっ!!停戦の約束を破るというのですかっ!!それは、武人としてやってはならぬことです。流石にわしは同意しかねますぞ。」

 

「武人の矜持で飯が食えるかっ!!ジューンフィルア伯爵、よく考えてみよ。ここで、彼らを駆逐すれば、そもそもの計画に多少の遅れが出ただけで済むのだ。兵たちも飢えずに済む。貴様は先だって領民を第一に考えていたであろうが。ならば、我の言うとおりにすれば、領民が飢えずに済むのだ。それでよいだろうが。」

 

「うぐっ!」

 

 しかしそれは・・・。今日は何という日だ・・・。

 

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