大日本帝國召喚   作:もなもろ

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後には引けない戦いです。
内容的に残酷な描写のタグを追加しました。


クワ・トイネ公国西部都市ギム西方防衛陣地 中央暦1639年4月12日午後4時45分

 ――――――

ギム防衛陣地中央左翼

 ― ロウリア王国陸軍黒色槍魔法騎士団長 ヨーゼフ・マヒート・ライスシャワー

 

 ただひたすらに戦場を駆け抜けた。リントヴルムの死骸から発せられる魔素を体にまとい、最後は魔素のもやの中を突っ切って、敵の陣地正面にやってきた。狙い通りだ。偶然ではあるが、段々になっている地形が魔素のもやを谷間に留めるのに一役買ったようだ。おまけに、陣地の壁の一部を取っ払ったもんだから侵入路ができている。

 

「騎士団の諸君!俺に続け!敵の陣地に大穴を開けるぞ!」

 

 愛馬タカラヅーカの腹を蹴る。

 突如として、敵の攻撃魔法が火を噴く。むぐぅ。なんと強烈な魔法だ。魔素を体にまとっていなければ、一撃死は免れなかった。気合いだ。気合いを入れろ。この攻撃の前では止まっていては死あるのみだ。装甲が破砕される前に陣地に入り込むぞ。

 

 地竜が我等の行く手を阻むかのように前に立ちふさがろうとしているが、フフフ、その動きでは、同士討ちになるぞ。案の定だ。敵は同士討ちを避けて、攻撃がやんだ。敵と敵の間をすり抜ける。馬の動きでは造作もないことよ。む、この地竜の表面は鉄でできているのか。これは、生物ではないのか?だとすると兵器なのか。まあよい。あの超威力の攻撃は同士討ちの危険がある以上撃てぬわ。

 

 陣地斜面を駆け上がり、抜け出たところで、敵の重装歩兵が盾を構えて、絶対に通さぬとスクラムを組んでいた。面白い、力比べか。突っ込め愛馬よ!!

 

 

 ――――――

ギム防衛陣地中央左翼

 ― 近衛歩兵第二連隊第一大隊第二中隊第一小隊長 陸軍中尉 笹野小次郎

 

 なんでだ!なんで歩兵銃の弾が当たっているのに敵は死なんのだ!

 

「敵は生物兵器だけではなく、人間までも弾を跳ね返すのか?!」

 

「いや、効いています。装甲が少しづつではありますが、剥がれ落ちています。」

 

 クワ・トイネ人が解説をするが、装甲の効果が落ちきるよりも敵の方が早くないか。弾がいかんもう斜面を駆け上がり始めた。

 

「総員踏ん張れ!なんとしても敵を後ろに行かせるな。盾を構えて腰を落として踏ん張るんだ!!」

 

「うおおおおおお!!」

 

 敵の騎兵隊が突進を掛けてくる。

 

「どけえええええ!!」

 

 槍を構えて、いや突き刺してくる。

 

「槍の勢いに押されるな!!槍が当たってもその盾は壊れん!!なんとしてもふんば」

 

 重装歩兵が宙に舞った。槍の切っ先が盾にあたって、その勢いで重装歩兵が後ろに吹き飛ばされた。騎兵側も重装歩兵にぶつかったためか、速度を緩めた。

 

「ほう、俺の槍の突きを食らっても壊れぬ盾か。驚くべき強固な盾だ。しかし、身体は人の身だ。馬の突進力を阻むことはできん。諸君我に続け穴を広げるぞ。」

 

「っ!!総員盾を構えて押し返せ!!大隊本部!!敵騎兵の一人陣地に突入せり。他の騎兵も続々侵入しつつあり。至急増援を乞う!!支給増援を乞う!!」

 

 騎兵はそのあとも勢いをつけて駆け上がってくる。まずい。馬の突進力はこれほどまでなのか!幸いにして、死者はまだ出ていないが、飛ばされて、脳震盪を起こしたのか起き上がれない者もいる。

 

「フランツ!!貴様の分隊はこの地域を死守し、後に続く歩兵がなだれ込めるように戦線を広げよ。俺の分隊はこのまま進めっ!!進めっ!!我に続けっ!!」

 

「この地を通すな!!総員食い縛れ!!手の空いたものは銃剣着剣。盾と盾の間から攻撃せよ!!盾を持っているものは、食らいつけ!!」

 

 馬の突進力と人間の突進力では違いがありすぎる。盾を持って走って止めようとするものは、押し返されて、転ばされる。盾の持ち方が甘かったのか、槍の使い方がうまかったのか、うまくかわされて、刺突される味方も出始めた。数はまだこちらの方が多いが、小隊60名は徐々に数を減らす。

 

 隣の第二小隊と第一大隊第三小隊も応援に駆け付ける。混戦だ。敵味方が入り交じっての激戦だ。この混戦では発砲はできない。

 

 敵の総大将が頭を下げた。馬も同じく体を縮めた。そして爆発的な動きを見せる。物凄い突進力だ。背中をみせて激走する敵騎兵に発砲する。何発か打ち込むと。弾が貫通して、騎兵が馬から転げ落ちた。装甲が破砕された。やはり、攻撃を続けると効果が有る。

 

「諦めるな!!敵の防御魔法も不死身じゃない!!攻撃の手を緩めるな!!盾持ち、しぶとく押し返せ!!」

 

「俺に続け!!栄光の騎士団諸君。南方戦線での勇壮を再現せよ!!蹂躙せよ!!蹂躙せよ!!ロデニウス大陸に黒色槍魔法騎士団、ここにありと敵をして知らしめよ!!味方の屍を乗り越えろっ!!」

 

「うおおおおおおおおおおおおお!!」

「いかせるかああ!!」

「そこどけえええ!!」

 

 敵の騎兵の突破力は、騎兵に戦死者が出たと知るや強くなる。死に物狂いの猛攻を見せつけ、槍を振りまわし、槍を突き刺し、全員が一筋の濁流の如くがむしゃらに前進を続ける。槍に刺される者、馬に踏みつぶされる者、銃弾に撃ち抜かれる敵、足をつかまれ馬から引き釣り降ろされる敵。壮烈な死闘の末に敵の一部は我等三個小隊の包囲を突破した。

 

「そ、総司令部に伝達っ!!敵騎兵の一部に、前線を突破されました!!行き先不明!!さらに騎兵が陣地の侵入中!!歩兵も向かってきています!!大至急予備隊の救援を求む!!」

 

 戦死が概算で8人ほどか。戦傷が同じく15人。前線に空いた穴は徐々に広がりつつある。生物兵器の魔素のもやが薄れつつある。雲霞の如く押し寄せる敵歩兵や騎兵が見える。あれだけいれば、こちらに到達する者もいるだろう。うちはもう手いっぱいだ。他の陣地の部隊に敵を減らしてもらわないと、この前線は完全に崩壊する・・・。

 

 

 ――――――

ギム防御陣地本陣・総司令部

― 西部方面騎士団団長副官クレマン・ジラール

 

「そ、総司令部に伝達っ!!敵騎兵の一部に、前線を突破されました!!行き先不明!!さらに騎兵が陣地の侵入中!!歩兵も向かってきています!!大至急予備隊の救援を求む!!」

 

 参謀長が拳を机にふり下ろす。机が大きな音を立てて震える。

 

「ぐう。槍装備から銃装備に更新したのがまさかこういうことになるとは。」

 

「穴をふさがねば、撤退もできません。参謀長。とりあえず、戦術予備の出動を命じましょう。近衛歩兵第二連隊第三大隊を急行させましょう。途中で突破した騎士とも交戦となりますが、装甲の能力は落ちているということです。歩兵銃のフルオートで十分に撃破可能です。」

 

 李師団長が参謀長に意見具申する。実際そうだろうと思う。混戦の銃撃で騎兵を倒したという話がある。度重なる攻撃で装甲がはげ落ちたのだろう。ならば、向かってくる騎士も倒せるはずだ。

 

「加えて、戦車中隊を全て出動させて、歩兵に攻撃を開始させましょう。」

 

 滝沢師団長が更なる意見具申を行う。廣澤師団長が訝しむ。

 

「戦車砲を歩兵に向けるというのですか?近距離では榴弾の効果も広がりにくい。効率が悪いのでは?」

 

「もはややらないよりましです。加えて、戦車で敵兵を轢き殺す。これも行うべきです。」

 

「そんな!!さすがに敵兵を轢き殺すなど我が戦車部隊員の心理的外傷が」

 

「進路封鎖で騎兵を止めようとして間をすり抜けられました。もう甘いことを言っている時期ではありません。それに捕虜は取れれば儲けものと考えるべきです。もう本国政府の命令の通りに行うことは不可能です。」

 

 廣澤師団長が俯いている。無理もない。人間を轢き殺すというのは気分の良いものではないし、あの戦車に轢き殺されればミンチになる。

 

「もはや一刻の猶予もありません。敵の進撃の太鼓がどんどん近づいています。参謀長御覚悟を。」

 

「・・・。わしも覚悟が足りなかったな。総司令官閣下。滝沢参謀の意見を取り入れるべきかと思います。戦車2個中隊に命令を出しますが、よろしいですな。」

 

「廣澤閣下。誠にすみません。参謀長の進言を了とします。速やかに命令を発行してください。」

 

「了解しました。師団長より各連隊長へ命令。遅滞なく各隷下の中隊に伝達せよ。本件に関する異議・意見具申は一切認めない。命令事項、中隊全車両は速やかに戦場に急行せよ。敵兵を戦車砲榴弾で吹き飛ばせ。加えて、接近してくる敵兵は戦車車両で轢き殺せ。以上だ。」

 

 戦車に轢き殺されるロウリア兵を想像した。いかん、胸が気持ち悪くなってくる。

 

「これが、戦争なんですか・・・。」

 

 司令部の皆が一斉に私を見た。途端にわたしも顔をそむけた。いかん。我々は満日に援軍に来てもらったのだぞ。私が嫌悪感を出してどうする。突如として、無線が入った。

 

「ぜ、前線急行中の第三大隊より総司令部へ。前線を突破したとみられる敵騎兵9騎と遭遇。直ちに機銃掃射したものの、2騎に突破されました。彼らは総司令部に向かっております。至急避難をっ!!」

 

 司令部の空気が凍りつく中でモイジ総司令官がニヤリと笑った。

 

「よほどの敵のようですね。私が相手をせざるを得ないでしょう。」

 

「危険です。今すぐ総司令部から退避を。」

 

 参謀長が意見具申をするが、モイジ総司令官は首を振る。

 

「お忘れかもしれませんが、私は獣人ですよ。敵は人間2人です。腕力だけなら、負けません。」

 

 モイジ総司令官が不敵な笑みを浮かべて立ち上がる。

 

「一度、総司令官の権限をホルスト・ベルゲングリューン上将に移譲します。どうも騎士団長同士の戦いになりそうですからね。」

 

「・・・了解しました。心置きなく戦われてください。」

 

 モイジ総司令官、いやモイジ騎士団長が総司令部の天幕から外に出ていく。彼の愛蔵する長剣とともに。

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