大日本帝國召喚   作:もなもろ

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ここでまた異世界転移前の情報追加です。


帝都新聞朝刊 2675(平成27・2015)年4月17日

将軍宣下しめやかに挙行さる

 大正十五年の西太平洋戦争以来89年ぶり

(写真:中御門侍従次長を先頭に徳川邸正門に歩いていく勅使一行)

 

 古式懐しき衣冠束帯をまとった中御門経綱侍従次長は、中院通高侍従、飛鳥井雅春他事務官数名を引き連れて、東京千駄ヶ谷にある徳川公爵邸に下向された。大正15年10月25日、日英同盟に基づいて我が国がアメリカ合衆国に対して宣戦布告を行った西太平洋戦争以来実に89年ぶりとなる征夷大将軍宣下の勅使下向の様子を一目見ようと徳川公爵邸の周囲には群衆が詰めかけ、一時警視庁による交通整理が実施されたほどであった。

 4月16日午前11時宮城を出発した勅使一行は、午前11時30分徳川公爵邸正門に到着した。御料車から下車した勅使一行は、同じく衣冠束帯姿に扮した徳川公爵家の家令井伊直基伯爵を先頭に大広間に入室し、恭しく下座に坐する徳川慶幸公爵に対峙して上座に着座した。宮内記者会や鹿鳴会のカメラのフラッシュが焚かれる中中御門侍従次長は、朗々とした声量で、当代の江戸大公、徳川公爵を征夷大将軍に任ずる勅語を奉読した。

 

 征夷大将軍は、古代の蝦夷征討の臨時軍司令官たる令外官がそもそもの設置の起源であり、鎌倉に幕府を開いた源頼朝をその先例として武家の棟梁たるの性格を保有し、最終的には朝廷に代わって日本国の大政を預けられる存在となった。慶応3年、時の征夷大将軍の地位にあった初代徳川公爵慶喜公は、大政奉還の奏上を行い、これを以て我が国の武家政権の歴史は幕を閉じる。その後皇政復古の大号令が発布されると、一時の騒乱が生じた。鳥羽伏見の戦乱は当初旧幕府側が不利であったものの、数に勝る旧幕府軍は鳥羽伏見以外の街道から入京し、御所の守護を薩摩長州の倒幕勢力と交代した。

 太政大臣となった徳川慶喜公は、諸事神武創業の精神に立ち返り、諸制度を変革し、内閣制度の創設後は帝國議会貴族院の前身であった元老院議長に就任した。その後、帝國憲法は天皇大権を規定するとともに、国務大臣単独輔弼制を採用した。これにより、天皇陛下を頂点とする分権体制が発足したが、立法司法以外の行政権力は纏め役を欠く形とならざるを得なくなった。皇政復古の大号令にて幕府が廃止され、それが国家体制の根幹にかかわるものである以上、幕府に代わるものを設置することはできなかった。

 国務と軍務が分権して統括する職制が無いという状況は平時であれば、それは許容された。明治大正の御代には元勲重臣と呼ばれる面々が、天皇の補佐を政軍両面で補佐し、調整を行っていた。しかし、戦時の際には、強力な統制者が不在であることが不便であることが指摘されていた。このため、日清戦争、日露戦争、欧州大戦そして西太平洋戦争と我が国が宣戦布告を伴う戦争を行う際には、古式にのっとり征夷大将軍宣下が行われた。

 征夷大将軍の任務は、国務と軍務の統合調整である。日清日露の両戦役に際しては徳川慶喜公が、欧州大戦時と西太平洋戦争時は、第二代の徳川公爵である徳川慶厚公がそれぞれ征夷大将軍に任命された。両者ともによく政軍関係を調整し、戦争勝利に向かっての指導力をいかんなく発揮した。

 

 大名華族はそれぞれの領国に爵位を足した形の称号を名乗る。現外務大臣である徳川義輝氏は、尾張徳川家の血筋であり、侯爵位を有する。このため、尾張候、尾州候という称号を有する。旧徳川将軍家は全国各地に講学上「天領」、「幕府領」といった所領を有しており、国持大名と言われるような令制国を一塊として統治しておらず、将軍のお膝元としてしられた江戸を冠し、公爵位の中でも別格の地位であることを示す大公の称号を有している。

 当代の江戸大公徳川慶幸公爵は、征夷大将軍の就任後、宮内省に対して宮城東御苑旧本丸跡地に幕府を設置を願い出た。同時に、帝國議会、内閣、大本営を統御し、強力な戦争指導を図るべく、山上内閣総理大臣を大老職に選任し、戦争指導の実権を掌握させた。対ロウリア戦争の準備はここに完遂した。

 

 徳川大公は就任後の記者会見にて、「非常に重い責任を担うこととなったが、関係各位の協力を得て、戦争完遂に邁進していきたい。」と述べられた。大公は、今後戦争の終結までの間、東御苑旧本丸内に設置される仮設宿舎にて寝食をされる予定となっている。

 

 

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黒潮会、軍令部と報道協定を締結

 

 軍令部の記者クラブである黒潮会は、昨16日、山田文親軍令部総務部長(海軍少将)との間に今次戦役に関する報道協定を締結した。当該報道協定は、黒潮会所属の報道機関の記者の身体安全保護を海軍が受け持つ代わりに、報道ヘリなどの動きを海軍側が統制することを意図したものである。国内報道においては、鎮守府及び警備府を設置する軍港関連地域における報道には、軍令部又は兵部省の報道許可を得る必要があり、戦闘海域に指定された海域では、艦隊司令長官の指揮に従う義務を有する。なお、黒潮会所属の報道機関以外の取材行動などは、当面の間禁止されることとなった。

 満洲国海軍本部の記者クラブである海軍記者会も同日、海軍本部に於て同様の報道協定を締結しており、近く、日満の海軍参謀部、記者クラブ及び国際記者クラブの六機関合同の報道協定が締結される見込みとなっている。

 

 

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国債の第二次募集につき検討会開催

 

 大蔵省は、4月13日に起債して、即日完売した国債の第二次募集について、有識者を招いての検討会を16日開催した。法律によって認められた国際発行総額は500万円であり、そのうちの200万円はすでに使用している。検討対象となっているのは、起債時期と年利であり、起債額は前回同様の200万円が募集対象となっている。

 第一次募集から1週間も経過していないのにもかかわらず、再度の起債を図る必要性について、大蔵省は燃料費の高騰を挙げている。既に満洲国内の油田には、増産体制が敷かれているが、クイラ王国内の油田施設は未だ建設途上であり、供給不足に起因する日本国内向けの石油卸売価格は値上がりが続いている。新世界転移前の昨年の平均価格が、1L1円20銭から23銭で推移していたが、転移直後の今年2月の価格は1円28銭、3月が1円31銭と値上がりを続けている。燃料調達のための海軍予備費の支出は既に本年度予算から始められており、現状の値上がり幅が続くのであれば、派遣艦隊の燃料支出だけでも膨大な支出となりかねない。

 また、大塩平吉大蔵次官は、近く国債の募集総額を定めた法律の改正法も帝國議会に提出する用意があると匂わす発言をしており、国債の総発行額は現状よりも大きな額となる可能性がある。

 

 

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