――――――
大海令第一號
平成二十七年三月二十三日
奉勅 軍令部総長 柳沢隆俊
山崎聯合艦隊司令長官ニ命令
帝國海軍ハ自存自衛及大東洋ノ平和維持ノ為四月上旬朗国ニ対シ開戦ヲ予期シ諸般ノ作戦準備ヲ完整スルニ決ス
聯合艦隊司令長官ハ所要ノ作戦準備ヲ実施スべシ
細項ニ関シテハ軍令部総長ヲシテ之ヲ指示セシム
――――――
大海令第二號
平成二十七年三月二十三日
奉勅 軍令部総長 柳沢隆俊
安宅呉鎮守府司令長官
大竹佐世保鎮守府司令長官
石黒横須賀鎮守府司令長官
汪舞鶴鎮守府司令長官
関高雄鎮守府司令長官
志々目大泊鎮守府司令長官
佐山仁川鎮守府司令長官
李大湊警備府司令長官
比留間清津警備府司令長官
小林大阪警備府司令長官ニ命令
帝國海軍ハ自存自衛及大東洋ノ平和維持ノ為四月上旬朗国ニ対シ開戦ヲ予期シ諸般ノ作戦準備ヲ完整スルニ決ス
聯合艦隊ハ大海令第一號ニ基キ作戦準備ヲ実施ス
各鎮守府司令長官、各警備府司令長官ハ所要ノ作戦準備ヲ実施スべシ
細項ニ関シテハ軍令部総長ヲシテ之ヲ指示セシム
――――――
大海令第三號
平成二十七年四月十二日
奉勅 軍令部総長 柳沢隆俊
山崎聯合艦隊司令長官ニ命令
帝國ハ本十二日朗国ニ対シ開戦ヲ宣言セリ
聯合艦隊司令長官ハ作戦実施ニ必要ナル部隊ヲ適時作戦海面ニ向ケ進発セシムべシ
聯合艦隊司令長官ハ在大東洋敵艦隊及航空兵力ヲ撃滅スルト共ニ敵艦隊鍬途稲方面ニ来航セバ之ヲ邀撃撃滅スべシ
聯合艦隊司令長官ハ在鍬途稲ノ陸軍部隊ト協同シテ速ニ大東洋ニ於ケル朗国ノ主要根拠地ヲ攻撃シ朗国海軍要域ヲ占領確保スべシ
聯合艦隊司令長官ハ所要ニ応ジ満洲帝國海軍及鍬途稲公国海軍ノ作戦ニ協力スべシ
前諸項ニ依ル武力発動ノ時期ハ後令ス
細項ニ関シテハ軍令部総長ヲシテ之ヲ指示セシム
――――――
大海令第四號
平成二十七年四月十二日
奉勅 軍令部総長 柳沢隆俊
吉田魯弟臼方面艦隊司令長官ニ命令
帝國ハ本十二日朗国ニ対シ開戦ヲ宣言セリ
聯合艦隊ハ大海令第三號ニ基キ作戦ス
魯弟臼方面艦隊司令長官ハ在大東洋敵艦隊及航空兵力ヲ撃滅スルト共ニ敵艦隊鍬途稲方面ニ来航セバ之ヲ邀撃撃滅スべシ
魯弟臼方面艦隊司令長官ハ在鍬途稲ノ陸軍部隊ト協同シテ速ニ大東洋ニ於ケル朗国ノ主要根拠地ヲ攻撃シ朗国海軍要域ヲ占領確保スべシ
魯弟臼方面艦隊司令長官ハ所要ニ応ジ満洲帝國海軍及鍬途稲公国海軍ノ作戦ニ協力スべシ
前諸項ニ依ル武力発動ノ時期ハ後令ス
細項ニ関シテハ軍令部総長ヲシテ之ヲ指示セシム
――――――
大海令第五號
平成二十七年四月十二日
奉勅 軍令部総長 柳沢隆俊
安宅呉鎮守府司令長官
大竹佐世保鎮守府司令長官
石黒横須賀鎮守府司令長官
汪舞鶴鎮守府司令長官
関高雄鎮守府司令長官
志々目大泊鎮守府司令長官
佐山仁川鎮守府司令長官
李大湊警備府司令長官
比留間清津警備部府司令長官
小林大阪警備府司令長官ニ命令
帝國ハ本十二日朗国ニ対シ開戦ヲ宣言セリ
聯合艦隊ハ大海令第三號ニ依リ、又魯弟臼方面艦隊ハ大海令第四號ニ依リ作戦ス
各鎮守府司令長官及各警備府司令長官ハ担任区域内ノ防衛ヲ厳ニシ海上交通ヲ保護シ、又付近敵艦船ノ撃滅ニ任ズルト共ニ聯合艦隊ノ作戦ニ協力スべシ
前項ニ依ル武力発動ノ時期ハ後令ス
細項ニ関シテハ軍令部総長ヲシテ之ヲ指示セシム
――――――
大海令第六號
平成二十七年四月十二日
奉勅 軍令部総長 柳沢隆俊
山崎聯合艦隊司令長官
吉田魯弟臼方面艦隊司令長官
安宅呉鎮守府司令長官
大竹佐世保鎮守府司令長官
石黒横須賀鎮守府司令長官
汪舞鶴鎮守府司令長官
関高雄鎮守府司令長官
志々目大泊鎮守府司令長官
佐山仁川鎮守府司令長官
李大湊警備府司令長官
比留間清津警備府司令長官
小林大阪警備府司令長官ニ命令
聯合艦隊司令長官ハ四月十三日午前零時以後大海令第三號ニ依リ武力ヲ発動スべシ
魯弟臼方面艦隊司令長官ハ満洲帝國海軍ト共同シ、鍬途稲公国海軍トノ連絡ノ上大海令第四號ニ依リ武力ヲ発動スべシ
各鎮守府司令長官及各警備府司令長官ハ聯合艦隊ノ開戦第一撃ノ報ヲ得次第、大海令第五號ニ依リ武力ヲ発動スべシ
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大海指第一號
平成二十七年四月十二日
軍令部総長 柳沢隆俊
山崎聯合艦隊司令長官ニ指示
魯弟臼方面艦隊ノ戦闘序列別表ノ如ク発令ス
(別表)
魯弟臼方面艦隊旗艦 戦艦常陸
艦隊司令長官 海軍大将 吉田文吾
第五戦隊(高雄・第五艦隊所属)
戦艦 常陸
第五十一駆逐隊 駆逐艦 白雪
駆逐艦 初雪
第十三戦隊(高雄・第五艦隊所属)
一等巡洋艦 新高
一等巡洋艦 品田
第一水雷戦隊(横須賀・第一艦隊所属)
二等巡洋艦 那珂
第六駆逐隊 駆逐艦 暁
駆逐艦 雷
駆逐艦 電
駆逐艦 響
魯弟臼方面艦隊付属部隊
工作艦 明石(呉・聯合艦隊司令長官直率)
補給艦 間宮(呉・聯合艦隊司令長官直率)
揚陸艦 牡鹿(佐世保鎮守府所属)
揚陸艦 三浦(仁川鎮守府所属)
揚陸艦 根室(呉鎮守府所属)
揚陸艦 大隅(高雄鎮守府所属)
魯弟臼方面艦隊付属部隊護衛部隊(仁川鎮守府所属)
第七十一駆逐隊 駆逐艦 睦月
駆逐艦 如月
駆逐艦 弥生
駆逐艦 望月
以上
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中央暦1639年4月20日 南大東洋海海上 戦艦常陸艦橋
― ロデニウス方面艦隊参謀長 海軍少将 篠崎義之
「長官。満洲海軍と第五十一駆逐隊より連絡です。予定通り、4時間後に合流予定とのことです。」
「うむ。合流後は予定通り、本艦の後方に誘導してくれ。」
戦艦常陸の艦長梅野大佐が吉田司令長官に報告した内容は、本作戦の前提となる日満合同艦隊の成立を意味するものだ。
満洲海軍の母港である旅順から航空母艦一隻が派遣された。航空母艦「黒竜江」。満洲海軍の航空母艦は国内を流れる河川の名前を艦名としている。我が海軍の艦政本部と満洲海軍の海軍本部艦船設計局が共同開発した原子力航空母艦であり、80機ほどの航空機搭載量を有する。
これを満洲海軍が導入するにあたっては、満洲の国会が相当な難色を示したらしい。我が国が島国であるのに対して満洲国は大陸国家だ。必然的に陸上戦力に目が行く。また満洲国の仮想敵国は中華民国であった。万里の長城を国境とし、彼らは長年にらみ合ってきた。「長城線の守護」を合言葉に機甲戦力やミサイル戦力の拡充に躍起になっていた陸軍が、海軍の金食い虫を嫌う理由は分かる。そのため、我が国が同型艦として採用した航空母艦「飛龍」型を8隻保有するに対して満洲国は1隻保有するにとどまっている。その虎の子の空母を派遣してきた。
これには、我が海軍の上層部の思惑も混じっている。満洲海軍に少しでも戦果を稼がせるために満洲海軍の空母を派遣して、満洲国内のガス抜きを図ろうとするものであるというのが軍令部中央の考えであるらしい。このため、満洲海軍の外征に関しては、我が軍が最大限のサポートを行う。第五十一駆逐隊の駆逐艦「吹雪」と「深雪」を「黒竜江」の護衛として派遣し、指揮下に置かせる。二隻は作戦開始前に旅順に向かい、旅順港を出港する黒竜江の護衛につき、南下しする。目的は、満洲海軍の外征費用を節約することで、満洲国会の航空母艦に対する厳しい目を少しでも和らげることだ。
そんなことを先日の作戦会議で司令長官は説明された。政治が絡んだこの戦い、古来からそういう横やりが入れば、戦争に負けるものと言われてきたが、この戦いにおいてそれはあり得ない。少なくとも陸軍ではそれを証明した。
戦闘詳報では、準備不足が大きな痛手となり、想定外の被害を受けたとの戦訓がつづられていた。確かにやむを得ない部分があった。陸軍は開戦前に内陸の街ギムに移動し、道路の整備状態も悪い場所に野戦陣地を築いて防戦を行った。開戦前であったため、補給も迅速にとはいかなかった。その点我が海軍は開戦前に母港で補給を万全にして、開戦通告と同日に出航した。何も問題はないのである。
「参謀長。報道記者の件について報告を頼む。」
吉田長官からは、報道ヘリの統制について対処を依頼されていた。軍令部とも協議を行ったが、軍令部側が妙に受け入れに積極的で軍令部側の案を聞いた時には驚いたものだ。
「はい。黒潮会と軍令部側から報道ヘリの受け入れについていろいろと調整しました結果、戦闘序列に入っていない軍艦を報道ヘリの駐機場として投入することが決しました。」
「ええ~。そこまでやるのかね。」
「はい。軍令部としては、今回の戦闘を情報公開の場として活用したいと考えているようで、作戦海域の前面、つまり、艦隊前方に出ない限りは、カメラを回しても構わないとのことでした。」
「思い切ったことをするものだね。しかし、どこからそれを持ってくるというのだね?ヘリが泊まれるような艦といえば、うちの水雷戦隊旗艦の軽巡由良くらいしか近くには残ってないよ。あれとて、1機しか搭載できない。露天でいいなら2機収容はできるだろうが、あとは高雄鎮守府所属の海防艦だがあれは速力が遅い。それに海防艦はあくまで海上警察が主任務だ。戦場に連れて行くのはあまり好ましいことではないと思うがね。いや、揚陸艦という手があるか。それなら、いやそれでも速力が足りんな・・・」
眉を寄せて訝し気な顔をする長官が、いろいろと予想を言うがどれも違う。
「長官。今回報道ヘリが駐機場として使用する艦ですが、第五艦隊所属の空母翔鶴が担当します。」
「は?」
朝刊の指に挟んでいたたばこの灰が灰皿にポトリと落ちた。
「なぜ?翔鶴は本土防衛に残すから、高雄居残りという事だったはずだが。」
「制空権の維持と防衛ならば、空軍の航空師団で十分と判断されたと伺っています。また軍令部から作戦本部に連絡はすんでいるようです。」
「それならなぜ五艦隊の司令長官のわしに話がないのだ?」
「長官は現在、ロデニウス方面艦隊の司令長官として指揮をとられております。第五艦隊の留守任務として高雄鎮守府司令長官である関雲秀大将が臨時指揮を代行されています。軍令部からの直接の指示ですので、長官に相談して決定するものではなかったために、関提督からの連絡はなかったものかと。」
「ふーむ。まあいいが、驚いたな。空母を駐機場として使うとはな。」
「はい、しかし、軍令部の意図は我が艦隊が国民に圧倒的な戦果を示すことを示しております。その点についてはいかがでしょうか。」
二本目のたばこに火をつけた長官は少し憂うような顔を浮かべて話し出す。
「正直愉快なことではないな。彼我の戦力を見れば、なるほど敵は大艦隊だよ。しかし、その中身は帆船だ。10分も戦闘をすれば、大半が沈むか炎上するかだ。大量の戦死者が出るだろう。あまり愉快な話ではない。」
「おっしゃる通りです。降伏勧告は入念に行いたいと思いますが、いかがでしょうか。」
「それしかないよな。ただ、相手が受け入れるとは思えん。」
「はい。我々の自己満足にしか過ぎないでしょう。ですが、大元帥陛下からも彼我の戦力差を鑑みれば虐殺に如かざるため降伏勧告は入念に行うようにとの大御心がありました。艦隊司令部からの降伏勧告を入念に行い戦闘終了後の敵兵の救助は迅速に行うように戦闘開始前には艦隊各艦に今一度の指令を発すべきかと思いますが。」
「うむ。参謀長のいうとおりだとわしも思う。それで、本題に戻るが、報道ヘリの統制についてはどうだ?」
「はい。報道ヘリは全部で6機投入される予定です。日本側が2機、満洲側が2機、そして旧世界の新聞社が1機、クワ・トイネとクイラの新聞社で1機となっています。いずれのヘリパイロットにも艦隊司令部の指示に従うようにと通知しておりますし、運輸省とも連絡して違反が有れば、ヘリ運転資格剥奪と海軍刑法・軍機保護法違反で摘発することも併せて通知しています。報道ヘリへの連絡は、本艦の艦橋もしくは戦闘指揮所から行う予定となっております。長官の指示により川嶋通信参謀が退避指示などを直接ヘリのパイロットに行う形となります。」
「わかった。そのあたりで進めてくれ。」
艦隊は原速にて南下中である。