SHs大戦   作:トリケラプラス

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8-19 二周目

         ♦

 ゲーム開始地点となっている最初の街。その酒場にて元世界を救った勇者パーティは席につき沈んでいた。

 

「最悪じゃ~!まさか帰れるどころか始めからやり直しとはなんたる仕打ちじゃ……」

 

 飲み物を煽り机に突っ伏すラムルディの愚痴に他の面々も続いていく。

 

「完全にゲームクリアで帰還できると楽観視しておったでござるからなあ。というよりエンドロール後のメッセージもその気だったと思うのでござるが」

 

「二周目に移る直前の文字の切り替え。あれだけいつものメッセージウィンドウと挙動が違ったんだよな。多分本来の仕様なら戻れたはずなんだがピンポイントでバグが発生したかそれとも……」

 

 シロの言葉をアークが引き継ぎいった。

 

「本来の目的と反して仕様を書き換えた奴がいる……か」

 

 もたらされた仮設に一同は気を重くし口数が絶えるがいつまでも黙っているわけにもいかない。リンが口火を切る。

 

「ではこれからどうする?幸いレベルや装備といった要素は引き継いでいるようだがこのまま魔王を倒しにいったとしても同じことの繰り返しになるように思える」

 

「とにかく周回の原因を探んなきゃなんね。ひとまず一周目で行ってねえ場所を中心に探索していくっきゃねえよな。後は称号系のコンプリートとかレベルのカンストとかも考えていかねえと。出るまでにどんだけかかるのやらだ」

 

 提示された気の長い方針にラムルディは青い顔で頭を抱え込んだ。

 

「不味い……不味いぞ。暗黒騎士吸血鬼ロールに酔っておってあまり考えんようにしておったがもう一月近く店を空けっぱなしじゃあ……在庫の期限切れ、給料不払い、客離れ……あ~考えとうない考えとうない!」

 

「ふ……ふふふふ、これでまた当分リクちゃん様をこの目に入れるのが遠ざかってござる……ジェネリックリクちゃん様ではもう限界でござるよぉ~!!」

 

 おーいおいおいと嘆き始めた二人を他所にメアはすくりと立ち上がり席から出ていった。

 

「ちょっとおトイレいってくるのだ」

 

「そうか気を付けていくといい」

 

 去っていくメアを見送るとアークは口元に手を置き考え込むようになる。

 

「どうしたサメ野郎?なんか思いついたか?」

 

「いや別に……あ~、アタシもちょっとお手洗いいってくるわ」

 

 そういうとアークもメアに続いていそいそと席を立って行った。自棄になりつつある二人を眺めてシロは深いため息をついた。

              ♦

 人のまばらな通りをメアは大層つまらなそうにポテポテと歩いていた。その背を聞き馴染のある声が呼び止めた。

 

「手洗いにもいかずにこんなとこほっつき歩いてどうしたんだよメア?」

 

「アーク……別に。みんなの話が詰まんないから出て来ただけなのだ」

 

 声をかけたのはアークだった。彼女もまたお手洗いと称して会議を抜け出してメアの跡を追ったのだ。

 

「ま、めんどくせーわなオメエにとっちゃああいう話は。みんなももうちっと気楽に構えときゃいーのによ」

 

「そうなのだ!みんな折角ゲームの世界にいるんだからもっと楽しめばいいのだ」

 

 元気よくいったメアと共にあてどなく街を歩いていくアークは確かめるように言った。

 

「この世界に来てから色々あったけどよぉ」

 

「んむ?」

 

 人波が消えたタイミングで立ち止まりメアの顔を見て訊いた。

 

 

「メア。アタシらは……”仲間”だよな?」

 

 寸暇もまたずに答えは返ってくる。それが当たり前だというように。 

 

「うむ、メアたちは”仲間”なのだ!世界のあちこちを旅してきた最強のパーティなのだ!」

 

「だよなあ…………ああ、アタシらはそれでいい。そういうこった」

 

「アークぅ。一体どうしたのだ?」

 

 噛みしめるようにぐしゃぐしゃと頭を掻くアークにメアは不審がって尋ねる。

 

「メア」

 

「のだ」

 

 互いに終わりの予感を感じながらも見つめ合い答えを待つ。

 

 「アタシらをこの世界からださねーようにしてるの。オマエだな?」

 先程までのNPCたちによる賑わいが存在していなかったような二人だけの静寂の中でメアが口を開いた。

 

「……どうしてそう思うのだ?」

 

「消去法っつーか勘。もしプログラムを書き換えたりしてる奴がいるとして。それが手出しのできねー現実じゃなく都合よくこの世界にいると仮定するなら。そりゃまだ見た事ねー人間か……意志のあるNPCだと思うんだよな。この世界に来てから魔王みてーなネームド含みでエネミーにゃ意志を感じるような奴はいなかったし街のNPCもそうだ。

たった一人を除いてな。メアお前だ」

 

「何をいってるのだ?メアはメアなのだ」

 

「ああそうだ。お前はメアだ。だけどな現実の……アタシの”悪友”のメアじゃねえ。そうだろ?」

 

「…………」

 

 その言葉にメアは表情を消し押し黙った。そして僅かな間目を伏せると答えを返すがそれは今までの彼女とは異なっていた。

 

【いつ気付いたのだ?】

 

 メアの台詞にはNPCやエネミー同様、表示枠が付随していた。同時にそれは彼女の正体を表していたがアークに動揺を見られない。

 

「こっちに来て3日目もありゃ。ああ、多分ちげーなぐらいは思うさ。聞き分け良すぎるんだよお前。射撃の時とかアイツがアタシに先にやらせるとかありえねーって」

 

【なるほどなのだー】

 

 納得の台詞と共にメアの周辺からテクスチャが剥がれるように風景が失われていく。その現象は加速度的に広がり建物も人々も消え去り街に残ったのは黒の広原とSHたちだけだった。

 

 

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