SHs大戦   作:トリケラプラス

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9-10 遅れてきた探偵

 あ、怪しい……というのがメアの感想だ。初見の者は恐らく皆そんな感想だと信じたい。ミニアークに至っては横で。

 

「メッチャ怪シイナ」

 

 と、口にだしてしまっている。だが、見慣れた者はそうでないようだ。

 

「やあ、直接会うのはいつぶりかな?」

 

「お久しぶりです先生!先生にお会いできる日をこのイッコウ。一日千秋の思いで待ちわびていました」

 

「もう、先生に会いたかったのはワタシたちもなんだから。今のワタシたちがあるのは先生のおかげです。ありがとうございます」

 

「せんせー久しぶり~。今日は目一杯歓迎する……予定だったんだけどさ。ちょっと色々あってもしかしたら帰ってもらったほうがいいかも……」

 

『この館に盗みでも入ったかの?しかしそれはできぬ相談じゃな。我が子同然の教え子たちの身に事件が起こっておるというのにおめおめと帰ってはワシの魂が腐ってしまうわ』

 

「「先生……!」」

 

 一部のメンバーが突然現れた不審者と旧交を温めている最中に館をレヴンに預け外に出ていたイヌカイが戻って来て口を挟んだ。

 

「ご歓談のなか失礼します。どうも乗ってこられた船が見当たらないのですが。この島にはどのように来られましたか?」

 

『私有の潜水艇じゃの。ワシは普段は蛙斗市に住んでおるからな。友人たちと水入らずの予定じゃったから運転手はもう帰した。夜まで迎えはこんよ』

 

「蛙斗市といえば海底山岳都市、有名な上流階級の住処じゃないか。……肩をおもみしましょうか?」

 

『いらんよ。ところで警察さんや。この館で何が起こったんじゃ?』

 

 天狗の問いにイヌカイは頭を押さえつつも答えた。

 

「この場にしばらく滞在せざる得ないというなら仕方ありません。通報の内容ではこの館の使用人の方が惨殺され、その遺体を我々が到着するまで見張っていたアマミさんが何者かに襲撃され昏倒。死体が跡形もなく消え去っているという状態です。緊急事態ですので我々の指示に従ってもらえると──」

 

『なんと!アマミは無事なのかい!?』

 

「無事も何もせんせーの目の前にいるでしょ。ちょっと眠らされただけだって」

 

 言葉を遮られたイヌカイが舌打ちするのも気にせず加工した声を張り上げる。

 

「こうしてはおられん!一刻も早く犯人を捕まえねば。ほれ警察の方々。何をやっておられるか。早速捜査といきますぞ」

 

「あんたのせいで止まってたんですけどね」と、そう言いたげな視線をイヌカイは天狗に向けるが天狗は気にせずホールの奥へと歩みを進めた。なし崩し的に不審者を加えて捜査を再開するかとそういう機運になっていたところで再び止まった。

 

 二度目は衝撃だった。

 

 エントランスの前方。島に何かが猛烈な勢いで着弾したのだ。

 

「なんなのだ!?」

 

 着弾点からは土煙が立ち昇りその周囲を覆い隠す。その中からとても状況に似つかわしくない高く可愛らしい声が聞こえて来る。

 

「いったたたた~……。も~!何てことするの!?ついてないな~!!」

 

 着弾点で倒れ込んでいたと思われるその声の主の影は両手を上げ何かに抗議するとよろめきながら立ち上がり自らに着いた土埃などを払いながらこちらへと向かって来る。

 土煙が晴れ。露わになった姿にその正体を問う声が飛ぶ。

 

「止まりたまえ!僕らは警察だ。君は一体何者だい?名乗りたまえよ」

 

「え~?自己紹介が必要?この格好を見て一目で分かってくれたりしないかなぁ?」

 

「さっさとやりたまえ」

 

「ハーイ」

 

 とはいえ彼女の言うとおり。己が何者であるか。彼女は自ら明かす必要はないように思えた。人生経験の少ないメアでさえも、初めて直接その目に見るこの存在が何であるのかが直感でわかったのだから。

 ケープのある純白のインバネスコートを着込み、赤と黒のハッチング帽を被った無垢な白髪の少女。その瞳は全てを見通すかのように透き通った冷たい蒼の色をたたえており、その手には木製のパイプのようなものが握られていた。

 彼女はパイプのようなものの吸い口に口を付けると深い息で吸うではなく空気を吐いた。するとパイプのようなもの雁首からはタンポポの綿毛が飛び立つようにシャボン玉が湧き出てきた。

 シャボン玉をたっぷり三十秒ほど生み出し続けたのち、彼女は吸い口から口を離すとようやく名乗った。

 

「立てば芍薬、座れば牡丹。歩く姿は鰻薔薇!花の十六歳を謳歌するポーちゃんだよ!!職業わ~……」

 

 あまりにも鬱陶しいきゃぴきゃぴした名乗りの後に彼女は決まりきったことを言った。

 

「探偵だよ」

 

【挿絵表示】

 

 突如として島に降りたった探偵に含めて誰もが目を離せなくなっていた時。レヴンが動いた。

 

「探偵だって!?君がか~い?こんな水平線の向こうから飛んで来るような怪しい奴を探偵だなんて認めてくれる奴がいると思っているのかな。百万歩譲って君が本当に探偵だとして捜査を認めるつもりは…………なぁ~い。探偵などは一般人の分際で捜査にしゃしゃり出てきて現場を荒らすゴキブリのような存在だからねえ。おまけに事件を解決したら我々以上に感謝をされ大変腹立たしい……許し難い連中だ。当事者が依頼したのならばともかくそんなものを僕らの抱える案件に関わらせるつもりはない!」

 

「私怨バリバリ入ってんな」

 

 手柄を取られたくなさそうな警察官の思惑はどうあれ彼女の言動は多少なりとも効果があり館の主たちは探偵?に対して警戒の目を向けている。そんな気まずい空気の中でアトイが少々申し訳なさそうな表情で手を上げた。 

 

「実は彼女は私が呼んでおいたんだ。どうもこの事件は複雑怪奇な難事件のようだからね。警察諸君の力を甘く見るわけじゃあないが、名探偵の一人も必要だろうと思ってさ」

 

「いつの間に……」

 

 アトイの告白に関係が明かされた名探偵はその小さな顎に手を当て上半身を側屈させるとにやけた表情で警察たちに問うた。

 

「あれあれ~?当事者からの依頼があったわけだけど。その場合どうするのかなー?ここでポーちゃんを関わらせないのは依頼者であるアトイ市長の顔に泥を塗っちゃうんじゃないかな~」 

 

「グ、グルルルルルルル!!」

 

「口で負けたからって吠えるな馬鹿。……アトイ市長も認めていることだし捜査への参加を認める。えーっと……」

 

「ポーちゃん、だよ!!」

 

ポーちゃんはその場でくるりと一回転したあと魔法少女のようなポーズをとって名乗り直した。それを聞きイヌカイは深いため息をつく。

 

「ではポーさん。くれぐれも現場を荒らさないようにお願いします。横で唸ってるコレはともかく私の言うことには従ってもらいますそれができないのであれば追い出しますので」

 

「ハーイ」

 

 生返事で館に入ってきた探偵にアークは小声で気になってることを聞いた。

 

「市長から依頼があったって本当か?」

 

 すると彼女は首を横に振った。

 

「んー、実は嘘。あの人はポーちゃんが事件に関わりやすいように言ってくれただけだと思うよ。あ、これないしょでお願いね~」

 

「わかってるって」

 

こうして天狗と探偵を加えた未だかつてない捜査班たちは再び捜査に挑む。この事件の裏側にどのような思惑が潜んでいるのか知りもせずに。

 

 ただ一人を除いて。

 

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