SHs大戦   作:トリケラプラス

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第15話
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<特に未来に希望も展望もなくズルズルと生きてそうな女性の声>

 ふう、今日はガタガタとうるさい引っ越しもなくて結構なことだ。こんなボロアパートにこの時期に引っ越してこようなんて。もの好きもいたもんだね。

 さて、今日のアークはどうしているかなっと……。

 メアと……ラムルディがこの時間帯にアークと一緒にいるのは珍しいな。店はいいのか?ずいぶん興奮しているようだけど。

「これをみよ。貴様ら!はようはよう!!」

「新聞なんてむずかしい漢字ばっかりで読む気しないのだ~」

「読んでやるからのう!」

「そこまでやるならアタシら見る必要ねーだろ……。で、どれどれ~」

 ふむ、カメラを回すか。ほうほう……なるほど。

「方舟市に吸血鬼ぃ?」

「そうじゃあ!すごかろう!わらわの知名度も随分上がってきたということじゃのう」

「おめぇのこと指して言ってんなら不審者のラムルディさんとか個人名がつくだろ。そこそこ覚えられてんだから」

「なにをう!?」

 ま~あそこは最近できたばっかりにしては連日人が賑わっているからねえ。そこの美人店主ともなれば噂にもなるだろう。吸血鬼としてはどうかしらないがね。

「ラムルディはおいといて、吸血鬼ってほんとなのだぁ?」

「置いとくでないわぁ!新聞屋さんの記事じゃぞ。ホントのことに決まっとるじゃろうが」「え、やだ……。アタシ。お前が詐欺に引っかからないか心配……」

「カモなのだ~」

 そこらへんは従業員のメンバーがよろしくやっているんだろうか。仲よさそうだったし。

「ま~話進まんからホントってことにしといてやるか。そんで?」

「うぬぬぬぬぬ。馬鹿にされておる気配を感じるぞ。それに、なんじゃあ貴様ら。つまりアレか?ここの記事に書いてある吸血鬼とはわらわのことではなくどこぞの誰とも知らんやつのことと言いたいのか?」

「なのだ~」

 ここにいるのは血も吸わないロールプレイ勢だからねえ。

「ぐ、ぐぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

「ラムルディがおこっているのだ!?」

「お、んじゃ~。その吸血鬼もどきに文句言いにいくか?わらわこそが真の吸血鬼である~!って」

「行くぞ!!」

「お」

 マジで行くんだ。

「吸血鬼に……会いに行くんじゃ~!」

「「は?」」

 アレ、嬉しそう?

「クレームつけにいくんじゃないのだ?バトりに行くんじゃないのだ?」

「?何故じゃ?本物の吸血鬼がこの街にいるんじゃぞ。めでたいことではないか」

 ごめんこうむりたいよ。一市民として。

「憧れの伝承とご対面、これほど胸躍ることもあるものか!見つけだしてわらわの思いのたけを目いっぱい聞いてもらうんじゃあ」

「あ~そう、がんばって~」

「アークはいかないのだ?メアは行くのだ!もしかしてアーク、ほんもの吸血鬼がこわいのだ~?」

「なわきゃねーだろ!」

「では決まりじゃな。吸血鬼を見つけ出す探索任務じゃ!この記事によると吸血鬼は深夜0時を越えてから目撃されることが多いらしい。装備を整えて夜、手掛かりを探すぞ」

 ん?なんだぁ。うるさいな……。

「深夜0時?」

「どうした。なんぞ問題でもあるのか?」

「門限」

「あ」

「む~~~~~~!!!!!」

 おお、メアが暴れ出した……。ともあれ、深夜は面白いものが見えそうだ。──っと。さっきからなんだいこのサイレンの音は、随分近い。警察の、この建物の前から?ノック音……ぼくの、部屋に?なんだ……いやな、いやな予感がするぞ。出てはいけない。気がするが……

 

 ────馬鹿な!?

 ぼ、ぼくが殺人犯だって?大体ぼくは殆ど家の外に出ていな……話を、話を聞いてくれ!弁護士!弁護士~!!

「ちょおっと待った~!」

 弁護士来てくれた!?い、いや……お前は。

 ────いつぞやのきゃぴきゃぴ探偵!?

 零時の方舟市。深夜徘徊する獣たちがそこそこいるため他の街より安全だったり安全じゃなかったりするこの夜の街を二匹の獣が歩む。

 サメ(アーク)コウモリ(ラムルディ)だ。彼女らは動物たちを適当にあしらいつつ獲物を探す。

 獲物とはもちろん。

「吸血鬼」

 アークが今さらのようにいう。

「──ってどう探せばいいんだ。そもそも」

「中世の趣ある古城──」

「おめーの家だよ。それは。また上がりこむぞ」

「やめよ!そうじゃのう。そもそも一番吸血鬼がおりそうなスポットとしてあの場所を買ったからのう。古城以外じゃと。墓場から霧になって出てくるというのもメジャーじゃが」

 アークは雑多なイメージで方舟市の概略図を思い浮かべるそこには。

「あったっけ?墓場」

「街の外れに動物用のも含めてあるぞ。昼日中からぶらぶら街をぶらついている割にしらんのか?」

「あー……ん~」

 アークはあまり街の隅々まで足を運ぶタイプではない。とはいえ意図的に足を運ばないということもあるわけだが。

「て、こたぁ墓場に行くわけ?この真夜中に。大運動会やってるかもしれねーぞ?」

「盛んなことで結構ではないか。なんじゃ、怖いのかおぬし?」

「あーほか」

 短く答えるその語気に通常程の覇気はない。ラムルディもそれ以上の追及はせず。

「ま、着くよりも先に遭遇するということもあるかもしれんぞ。夜道を歩くうら若き乙女が血を吸われるという話も……」

 アークを見ながら話を途中で止めたラムルディに怪訝な表情でアークは返した。

「どした?」

「うら若き……乙女?」

「え?喧嘩売ってる?」

「よく考えよ。そのような痴女染みた恰好の凶暴なツラの乙女がおるか?」

「乙女にあるまじき失禁晒した尿近女が言いやがったな!血の代わりに尿を吸ってもらえ!」

「そういう品の欠片もない発言するところじゃろうがぁ!!」

Round1 Fight!!

 明日の仕事に備えて睡眠をとろうとしているサラリーマンたち近隣住民の迷惑も考えずぎゃいぎゃいと醜い暴言と共に取っ組み合いが始まる。

 誰も近寄りたくないその現場(バトルフィールド)に声がかかる

「────」

「「は?」」

 二匹の脳足りんは聞き取れなかったようだ。声の主は意を決してもう一度同じ内容を口にする。

「余白埋めんとワカメ纏いしシマウマの如し」

「「…………………………………………は?」」

 今度は聞こえた。だが、だからといって。聞こえたからといって。この語列に何を返せばいいのだろうか。二人は顔を見合わせた後、声の主の姿を確認した。

 その者は夜のように昏い黒のローブをまとっていた。完全に夜の暗さに溶けて目立たないかというとそうではなく。上から羽織り前で留めた鮮血のような色のマントが存在を主張している。その二つの隙間から覗く衣装を見る限り。ローブの下は身体に密着した衣類を身に着けていることが伺える。不健康そうながらもどこかこの世の物とは思えない俗世場慣れした顔立ち少し癖の混じった片目を覆い隠す黒髪を持った。見ようによっては男にも見えかねない。少女だ。

 少々以上に犬歯の鋭い少女は戸惑い、無益な争いを止めた二人を見ると満足げにうなずき。こう続けた。

「巾着荘に住まう民の世俗風景」

「なんの何が何???」

「おいアーク。……あやつ」

「何?なんかわかるのか!?あの変なやつが言ってること!」

「ああ、アレはまさしく……」

「まさしく」

 アークはごくり。と固唾を飲んでこの正体不明の闖入者に対する情報を待った。明るく告げられる。

「吸血鬼じゃ~!!」

「はぁ~???」

 謎の闖入者に対する不明の感情から勝手知ったる相手への呆れに感情を変化させ、アークは指を立て文句を発する。

「あのなあ、お前、アイツのさっきの発言のどこが吸血鬼だってんだよ。性質の悪いポエマーがいいところだろが!?」

「お主こそどこを見て言うとるんじゃあ。あの格好を見よ。髪の先から足の先まで吸血鬼そのものじゃろうが。かっこええのう。それに言っとることも意味深長で教養を感じさせるのう」

「正気か……?てめえ……」

 憧れとは恋よりも人を盲目にするのだろうか。使い物にならなくなったラムルディを信じられないものを見るような目で見つつアークは吸血鬼?に問う。

「やい、てめえは一体ナニモンだ?吸血鬼かただの不審者かそれとも……」

「そこでテメエに夢中になってるやつと同じ出身か」とまでは踏み込まなかった。回答者は手で口元を抑えしばしの間をもって答えた。

「やつがれは……」

「やつ!?がれは……?」

 再びの沈黙のあと答えが来る。

「手渡されていく硬貨」

「…………そういうありえん。組織か!」

 ありえん。?は無言で首を横に振った。どうやら違うようだ。

「動作の一つ一つがアンニュイじゃのう」

「オメーは黙ってろ!なんだ、コイツ。日本語を喋っているようで通じてねぇのか?ち、こうなったら」

「お、おい」

 アークは一歩前に出ると慣れない言語を使い始めた。

「マイネームイズ、アーク。ワッツユーアーネーム?」

 英語である。日本語が分からないのであれば公用語。果たして相手の反応は。

「あ、アイキャントスピークイングリッシュ」

「なーまえ答えろっつってんだよ~!!!つかそれ喋れたらアタシの言ったこと理解できてるだろ!なあ!!」

「止めよアーク!吸血鬼殿が困っておろうが。きっと本邦出身なのじゃ」

「さっきまでお里(ジャパニーズ)の言葉が通じてなかったが!?」

 ラムルディに羽交い絞めにされて落ち着かされるアーク。一方英語が喋れなかった吸血鬼は得心がいったように顎に手をあて。

「やつがれの名は……」

「「やつがれの名は……?」」

 二人は食らいつくようにやつがれを見る。短い沈黙が空間を支配する。そしてようやくその名が判明する。

「ミラド」

 二人は顔を見合わせようやく目の前の対話不可能と思われた生物との意思疎通の成功に喜ぶ。

「ええ名前じゃ~。気品があってかっこええのう」

「オメーは多分どんな名前でもそういってたと思うが。ま、いいや。一歩前進だ」

 アークは気を良くして次なる質問をする。

「じゃ、今度こそオメーの正体を話してもらうぞ。ミラド。どこの所属でどういうやつなのか」

「手渡──」

「手渡される硬貨はなしな」

「────!?」

 先回りして先ほどの回答を禁止されたミラドは少々戸惑ったように眉を顰める。そこに待ったをかけるのは当然ラムルディだ。

「こりゃアーク!もっとミラド様に優しくせんかぁ。すまんの~ミラド様。このサメはバカで礼儀知らずですかんぴんじゃから勘弁してやってくれ」

 バカで礼儀知らずですかんぴんのサメは浮かれたアホのコウモリの頭部に拳骨一発落として鎮める。

「で、どうなんだ?」

「やつがれは……」

「「やつがれは……?」」

 今度こそ核心に迫るという予感は。なかった。答えは言葉として紡がれず。代わりに。 ぐぅぅぅぅぅぅぅ。

 ミラドの腹から響いた腹からの空腹音であり。

「むぅ…………」

 直後、ミラドは力を失ったように前のめりに地面へと倒れた。

 残された二人は顔を見合わせ叫んだ。

「「やつがれはぁ!?」」

 

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