SHs大戦   作:トリケラプラス

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2-3 サンの講義

 

「街が……一面オタクになってる……」

 

 端的に街の惨状を言い表すアークとその手を引くメア。

 

「アーク……これやっぱりSHの……カルヴァリーのせいなのだ?」

 

「以外ねーだろ……。クソ、めちゃくちゃやりやがるぜ」

 

 そうして彼女たちは数日前の出来事を思い返す。

 

 

一軒家の居間でホワイトボードを背にサンがメアとアークを座らせ、講義を行っていた。

 

「つまりSHという存在は特殊な改造手術を受けた元人間だ。そしてそれを行っているのが、欠けた円環の継手という組織。この技術は欠けた円環の継手が独占しており全てのSHはこの組織の所属下にあるわけだ」

 

 サンはアークに視線を移すと。

 

「唯一、そこのアークを除いてな」

 

 呼ばれた椅子の上で胡坐をかくアークはニシシと笑い頭を掻く。メアはそれを感心したように眺め。

 

「なるほどなー。アークはほんとにボッチだったのだな。ひどいことを聴いてしまったのだ……ごめんなのだ」

 

「真面目に謝られると返しに困るからホントやめろ?あと前もいったけどい……た……からな?なあ?眼を逸らすな」

 

 戯れが落ち着いたころを見計らってサンは咳払いをし、話を聞く態勢に戻させる。

 

「メア。真実を知れば君がSH手術を希望しカルヴァリーの元にいくことを危惧してのことだったが、真実を求めていた君に虚偽を話したことは謝罪しよう。すまなかった」

 

 成人済みの女性に深々と頭を下げられた小学五年生は流石に慌て。

 

「こちらこそお気づかいいただきカンシャなのですだ~。これからも色々教えて欲しいのだ」

 

こちらも深々と頭を下げる。相互に謝罪する形になった二人の頭に、手持無沙汰になったアークがチョップをかますと、メアのストレートパンチが腹に。サンの拳骨が脳天に叩きこまれ。問題児は床に寝そべることとなる。

 

「ところで馬鹿はなんでカルヴァリーを裏切ったのだ?というかカルヴァリーってそもそも何する組織なのだ?ありえん。なのだ?」

 

 頭をさすりながら疑問をあげるメアに馬鹿が床から返事をする。

 

「どーもこーもねーよ。愛想つかしただけだ。あいつら碌でもねーからよ」

 

「カルヴァリーは世界最大のありえん。いや、最早ありえん。の枠すら超えた最強の反社会組織だ。日本を拠点にはしているが世界各国に支部を世界を塗り替えんとしている。その目的はー」

 

「全人類を新たな段階へと進ませること。よーは全人類SH化だ。頼んでもねーのにお節介なことだよ。上から目線で気に喰わね~。しかもそれだと男は取り残されるしな」

 

 言葉を盗られたサンが何か言いたげだったがアークは続け。

 

「そもそもSH手術なんざアタシが受けたころには失敗死亡例も山ほどの激ヤバもんだ。そんなもんを強制するとか頭おかしいんじゃね~の」

 

 メアは面白くなさそうに吐き捨てるアークの顔を覗き込んで疑問を重ねる。

 

「つまりアークはカルヴァリーの野望をそしせんとする反逆のヒーローなのだ?うぇえええ。こんなヒーローいやなのだ……」

 

 無礼に対してアークは飛び起きる。そして自分の吐いた言葉で見る見る蒼い顔になっていくメアの頬を両手でつかんで引っ張りあげ反論を口にする。

 

「てめえ自分で言っといてなに気持ち悪くなってんだ!つかそんなもんこっちから願い下げだよ。誰が好き好んであのイカれた連中の相手するかってんだ」

 

「ふぁあアーキュのもくちぇきっへなんなのら!(じゃあアークの目的ってなんなのだ)」

 

 言葉にならずともその意味をくみ取ったアークは、頬をつまんだまま上の方に視線を動かし。再び引き延ばされているメアの顔に視線を移して、笑う。

 

「そんなもん決まってんだろ。アタシはアタシの人生を目一杯最大限に楽しんで笑って泣いて怒って生きてくんだよ。それをアイツらが邪魔するってんならそんときゃ面倒だけどぶったおしてやるってだけだ」

 

 アークの高らかな宣言にサンは深くため息を付き。

 

「こういった消極的なスタンスのせいで一向にSHのデータが集まらん。私としては毎日とは言わずともせめて週に一度は戦闘して欲しいところなのだがな」

 

「なんだよその馬鹿みたいなスケジュール。疲れるし。やんねーよ」

 

やれやれといったポーズで拒否するアークに対し甘言が小声で囁かれる

 

「データを寄こしたら相応の小遣いはやるぞ」

 

「よっしゃかかってこいやSH-!」

 

 解放されたメアはかつてないやる気を見せるアークに対し交換をサボった三角コーナーを見るような視線を送る。そしてずっと気になっていたことを口にする。

 

「せんせーはどうしてSHについて色々詳しいのだ?カルヴァリーの人なのか?」

 

「おいやめとけ」

 

「私は……」

 

 問いにユックリとサンは口を開く。

 

「ただの研究者だ。SHを主に研究しているがカルヴァリーとは関係ない。やつらは私から全てを奪ったからな」

 

「ほらな。コイツどんだけ聞いてもこんだけしか答えねーんだよ。訊いても無駄無駄。ま、武器は作ってくれるし部屋は貸してくれるしメシは作ってくれるからそれでいんじゃねーの?」

 

「せんせー。この穀潰しこのままでいいのだ?ハロワに突き出したほうがいいんじゃないのだ?」

 

「たまに稼いでくることはあるんだ。負債の方が大きいがな」

 

 極潰しから目を背けながら話を進める二人は溜息をつく。

 

「SHは普段は人間に”擬態”している。街中であった人間が実はSHだったということもあるわけだ。不意をつかれぬよう気をつけてくれ。特にメア。君は抵抗する力もないし少し狙われやすいようだしな」

 


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