SHs大戦   作:トリケラプラス

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第三話「恐怖!死のディーラーリク」
3-1 初戦


<大仰に驚く女性の声>

 嵯峨(さが)の街を占拠した十字軍とSHピラニアを撃退したアークたち。そしたら一緒に行動してたリクが実はワニのSHで!?

 これから一体どうなっちゃうんだい~~!?

 

「私はSHワニのリク。では第二ラウンドです。さあ、アークさん。私と闘いましょうか」

 

 自らの正体を明かし。アークを更なる闘争へと誘うリク。そんな彼女にアークは警戒を込めて吠えた。

 

「テメーSHだったのかよ。やらんかのせいでマークから外しちまったのはまずかったか。アタシに助けられるまで十字軍に追いかけられて泣いてた癖によ」

 

「あ、あれは演技ですよ!!あなたの力を見極めるため、一緒に行動するためにはアレしかなかったんです!ホントですよ!?」

 

 心外な指摘をされたリクは顔を真っ赤にし、身を乗り出して反論するがアークはどこ吹く風というように片足で脚を掻いている。リクは「全く」と腕を組みなおす。

 

「つまらない人にわざわざ私の力を振るいたくはないですからね。そのための手段です。まあ、その色々と行き違いはありましたが……」

 

 そう言って彼女は敗残兵を見下ろすような眼で地面に転がるSHピラニアを一瞥する。推しの冷淡な視線を受けて敗残兵はピクピクと小刻みに震えていた。そしてそのまま背後をそろりそろりとサイドステップで移動している。メアに視線を移す。

 

「り、リクの姉御SHだったのだ!?」

 

「ええ……それでどうします?アークさん。断れば当然メアさんの無事は保障できませんが」

 

 ぷるぷると震えているメアに見つめられアークは目を伏せ頭を掻く。

 

「別にいーけどよ」

 

「はい」

 

「ここでやんの?」

 

 この場所はつい先ほどまで十字軍にされていた人間たちが占拠していた。つまり。

 

「え、と。どこかしらここ。確かわたし嵯峨に買い物に来ていて……それよりも何?この内から湧き上がる衝動は?」

 

「俺、なんだか短い間だったけど憧れのヒーローたちみたいなことをしてたような気がする……よし、帰ったら特訓だ!」

 

「つまりあのシーンの解釈はですなー。何?小生如きが解釈を語るなと?おっし表出ろや」「おお!あそこにコスプレ美少女が!精巧な作りだな。特殊メイクの類か?」

 

「いや片方あれじゃね?嵯峨のアイドルリクちゃんじゃね?」

 

 影響が抜けたとはいえ未だ多くの一般人が多くたむろしており。十字軍化の影響か様々な作品について語り合う姿やリクに気付くものもいる。

 そんな周囲にリクはアー……と天を仰ぎ。

 

「場所変えていいですか?」

 

「いいけど……」

 

【挿絵表示】

 

♦橋上を走る車の排気音。底を見渡せぬ川の流れ、ところどころに生え茂るサボテン。

 換歴ならどこにでもあるようなありふれた河川敷に四つの人影があった。

 地面に横たわる黒焦げのオタク、その上に座る小学生。そして対峙する二匹だ。

 向き合う一匹リクは軽くステップを踏み。

 

「さあ始めましょうか」

 

 その言葉と同時にリクともう一匹。アークが駆けだし中央で激突した。アークはチェーンソードによる横薙ぎの一撃を放ったが。

 

「甘いですよ」

 

「かてぇなオイ。ラムルディの装甲みてぇだ」

 

 チェーンソードは胴体との間で壁にした上腕によって防がれている。エンジンをかけた起動状態。本来であれば鉄塊ですらバターのように容易く切り落とす切れ味である。しかし、リクの異形化した上腕。ゴツゴツとした緑の腕甲はその必殺の刃を押しとどめている。

 

【挿絵表示】

 

「まがい物と一緒にしないでくださいよ」

 

「そーかいそりゃ悪かった……なッ!」

 

 刃を止められた硬直状態から転じて拳での打撃に切り替えるアーク。だが、それは軽いサイドへのステップで躱され。アークは側面を無防備に晒す。

 

「しッ!」

 

「グッ!?オッ……!?」

 

【挿絵表示】

 

 空いた脇腹に打ち込まれる数発のブロー。痛みに呻きながらもチェーンソードや長い手足、尻尾を動員して追い払おうとするもリクは軽いステップによる三次元の動きで軽々と潜り抜けていく。

 距離が離れない。ここはまだワニの間合いだ。

 

「この!ちょこまかしやがって!」

 

 痺れを切らせた大振りの拳。それに対してリクは正確に拳を合わせた。

 拳と拳が中央で激突する。衝突の結果は直ぐに現れる。

 

「ぅあ……」

 

 アークの腕は震え、拳からは血が滲み力なく落ちていく。

 

「拳は私のほうが上みたいですねぇ。アークさん?」

 

「んにゃろ……ふざけんな!」

 

 アークはチェーンソードを振るうがこれもステップで潜り。刃の内側へ。踏み込んだストレートが腹筋を抉る。

 

「ぇ……!?あぁ……?」

 

 衝撃が内臓まで届く。一撃を喰らったアークはたまらず口を開き。口内からは粘ついた唾液が溢出する。身はわなわなと震え。それでも反射的に掴みにいくく。

 掴んだのは緑の腕。撃ち抜いた姿勢から腕を引き抜く直前を狙いリクを捕らえる。体を引き寄せ。頭部を勢いよく振り下ろし。

 

「お返しだ」

 

「くぅ!?」

 

 ヘッドバッド。ハンマーヘッドが顔面を打撃する。 

 衝撃でふらつくリクをヤクザキックで蹴り飛ばし無理矢理距離をとるアーク。蹴とばされたリクはふらつきが収まらぬ様子だがユラリと顔を挙げ。その小さな鼻翼から溢れる流血を腕で拭い。早口に語った。

 

「素晴らしい反応。見込んだ通りですよアークさん。もっともっと私を楽しませてくださいね」

 

「ちびの癖に生意気なんだよ。潰してもっと縮めてやるよリクぅ!」

 

 応じにリクは口端を歪め。身体の前で両腕を交差する。

 

「デスロール」

 

【挿絵表示】

 

 宣言と同時にリクの瞳に閃光が走る。次の瞬間。リクの開いた掌にはには黒白一対の掌大のサイコロが左右それぞれに握りしめられていた。

 腕の交差を解放し、その勢いで死の賽を降る。

 放り投げられたソレは警戒し足を止めたアークの数歩手前に転がり、止まり。その目を指し示す。

 その目は二と三。地面に投げ出されたサイコロから煙が浮かびあがるかのように粒子状のナニかが現出する。

 エネルギー体として文字通りサイコロから浮かびあがった人の身程もある二個の鰐の頭部。宙に静止した後、唐突な動きで合一を果たしより巨大な形となって獲物の元へと直進する。

 

「チッ……」

 

 舌打ちを掻き消すように爆音が響き。湿った土砂が巻き上がり視界を閉ざす帳となる。

 土の帳の中、デスロールの直撃を避けたアークは無闇に動くのは避け。全方位に対応できるよう構えていた。

 数瞬の後、アークの左手方向から緑の弾丸が帳を突き破る。

 アークは即座にチェーンソードを振るうが飛来したリクは跳び躱し。その勢いのままアークの顔面を拳で殴り抜ける。アークの瞳に閃光が走る。

 

「ギ……」

 

「ガっ……!」

 

 打撃直後迸った電流によりリクの身体は硬直。アークは飛ばされながらも固まったリクの矮躯を掴みその肩口に喰らい付く。

 

「…………!!」

 

「らぁぁあああああああああ!!」

 

 リクは抱え込まれ喰われつつも傷が抉れるのも構わず両の拳をアークの腹部へと乱打する。アークの身体が震え。口元から溢れる血液はリクのモノだけではなくなっていった。しかし剥がれない。

 このままでは埒が開かないと判断したリクは瞳を迸らせ両の掌を開き、双の賽を現出を奥へと放る。

 湧き出る出目は四・三。

 咬撃に必死のアークは迫る死賽に気付かない。直撃する。

 アーク、それに捕まっていたリク共に激震を得る。しかし予めくると覚悟を決めていた、直接受けたわけではないリクは余裕があり。吹き飛ばさる中で先んじて構え直し。

 着地した瞬間。猛撃をアークに叩きこむ。

 

「ぶっ!?ぐっ、あぁあ!うぇあ……!」

 

 滅多打ちにされ膝から落ちゆくアークにリクは振りかぶり。

 

「これで終わりです」

 

 打撃する。

 サンドバックにされたアークはあっけなく弾き飛び。そのまま力なく川へと着水した。

 

「アークー!!」

 

 メアの絶叫が河川敷に響き渡った。

 


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