SHs大戦   作:トリケラプラス

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3-3 ミニアーク

 白い天蓋、中央に配置された巨大なため池、整備されたタイリング、そして支柱のような根を持つ熱帯植物が林立する熱帯雨林のような風情を持つ室内プール施設。そこにリクたちはいた。時間は約束の午後七時際。だがそこにアークの姿はなかった。

 

「こないじゃないですかー!」

 

 憤慨するリクに対して。見るからに高級そうなビーチチェアに横になりながらフルーツジュースを飲み、ランカに大きな葉を団扇のようにして仰がれているサングラスをかけたセパレート水着を着たメアが答えてやる。

 

「アークが約束の時間に来た試しなどないのだ。五分十分は当たり前。三十分でも一時間でもへっちゃら遅刻魔なのだ。気長に待つのだリクの姉御」

 

「よ、余裕ですね……」  

 

 感心するリクの元に一つの通信が入る。部下からのものだ。即座に出る。

 

「リクちゃん様。アーク様がお越しになられました。今からそちらにお連れいたします」

 

「ほう……。ええ、わかりました。粗相のないようにお願いしますね」

 

 通信を切る。凶暴な牙を剥く。闘い時は近い。

 サングラスに角刈りの黒服の男たちに連れられてアークは熱帯の室内プールへと足を踏み入れる。

 

「リクちゃん様、アーク様をお連れしました」

 

「ご苦労。下がって貰って結構ですよ」 

 

 その言葉に男達は部屋から次々と退出していき、後に残されたアークは大股の動きでタイルを踏む音を響かせながらリクたちの元へと歩みを進める。

 

「ようこそお越しくださいましたアークさん。大事なメアさんはあちらですよ」

 

 アークはリクの視線に従って視線を動かすとそこにはグラスを塔のようにして建て並べ、頂点から飲み物を注ぐシャンパンタワーならぬフルーツジュースタワーを行うランカと手を叩いてご満悦のメアがいた。

 

「……経費はそっち持ちだよな」

 

「ええ。これらはただのサービス。素寒貧のあなたからこれ以上何かを奪うつもりはありませんよ。命以外は……ね」

 

「ハッ!とれるもんなら……取ってみやがれってんだ!なあ?」

 

 消耗があったとはいえ一度は敗れた相手。だがアーク威勢は少しも陰ることなく吠える。勝算を呼び起こす。

 

「ミニアーク!」 

 

「ボッコボコニシテヤルゼ!」

 

 片言のアークに似た機械声と共にアークの右肩に、悪戯好きな小悪魔のようにサイケデリックな配色でデフォルメ化されたアークが現れていた。

 

 それを見たリクは組んでいた腕をほどき拳を構える。そしてタイルを蹴る。

「そんな小さなモノで私に勝てるようになるとでも?」

 

「ナンダトコノドチビ!」

 

「だからここにいんだろぉ!」

 

 アークもまた駆ける。リクとの激突点目掛けて両腕を前に振るう。そして先行する右腕で位相空間からチェーンソードを引き抜き、勢いのまま振るう。

 それに対しリクは一瞬にして小さい身体をより小さく、低く屈むことで対処した。剣鋸が空を……

 空を切る前にこの場から消失した。

 

「────!?」

 

 リクは危険を感じた。その予感の通りにたった今消失したはずの剣鋸がリクの右手側から現れた。

 

「!?」

 

 瞬間的に右腕を楯にして受けとめる。前進する足を止める。そこに振り戻ったアークの右腕が叩き込まれる。リクの右腕を圧す感覚が消失する。屈む。頭髪の先端部分が幾房断たれる。

 

「まさか」

 

 後ろに飛びずさる。左の逆手に持った剣鋸が振るわれパーカーが薄く裂かれ皮膚の下に浅く赤の線が引かれた。剣鋸が消える。アークが旋回する。回り放たれた蹴りの先端部分には剣鋸が現れており勢いよく射出される。

 投げやりのように飛んできた剣鋸を空中で体の前にクロスさせた腕で受けとめつつリクは叫ぶ。

 

「位相空間と武器の自在展開の補助。小人が武装のスイッチを戦術レベルまで押し上げているのですか!」

 

「セーカイ」

 

 リクが顔を上げると凶悪な面構えの鮫が上から飛び掛かっていた。

 リクの顔面を拳が捉え。そのままタイルに叩きつける。破片と牙が宙に舞いあがる。

 

 ♦

 

「ふわーぁあ。サーン準備終わったー?」

 

「ウオ!?危ネーナ!チャント足元見ヤガレ!!」

 

 眠り眼で疲労回復カプセルから出て来たアークの足元から機械声のアークによく似た声が聞こえて来る。視線を落とすとそこにはサイケデリックな配色のデフォルメされた自分に似た存在がいた。

 

「オメーガアークカ、ダラシネエ面シテルガ助ケテヤルヨ。コレカラヨロシクナ」

 

「……何コレ?」

 

 困惑するアークの元に少し離れた位置で何かしらの作業を行っているサンがこともなさげに答えてやった。

 

「ああ。それはお前の人格・行動データを元に作成した武装補助電子生命体ミニアークだ。武装の展開・解除を高速で行い。パラメーター管理や戦闘データの記録までも行う優れものだ」

 

「コレがー?」

 

「コレガトハナンダクソマスター!!」 

 

 コレ呼ばわりと共に指でつままれいぶかし気な視線をぶつけられたミニアークは抗議に足をバタつかせるが全く顔に届かない。その内アークは視界をミニアークからサンへと移し怪訝な顔を製作者に向ける。

 

「つかアタシの人格・行動データってどういうことだよ……」

 

「それらを利用したほうが作るのに色々手間がかからないんだ。なのでお前の寝ている時に時々な……方法は伏せておく。今夜も健やかに眠りたいだろう?なに。お前に似て器用な奴だ役に立つ。お前の影響を受けて成長していくから仲良くな」

 

「えー……」

 

 よそ見をしている隙をついて実体のあるAI、ミニアークは主の指に噛みついた。サメの叫びが響く。

 

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