SHs大戦   作:トリケラプラス

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4-6 セカンドステージ

 3部に分かれて実勢されたセカンドステージもパーシヴァルの部とボールスの部が終わり、残すはアークたちのガラハッドの部のみとなっていた。

 アークたち三人は他の参加者たち同様、荷車に乗り込み開始の時を待っていた。すると先ほどのイベントスタッフエレインが前に現れる。彼女はマイクを構え宣告する。

 

「みなさんお待たせしました。それではセカンドステージ聖杯探索アドベンチャーガラハッドの部!これより開始いたします!」

 

 宣言と同時に遠方からでも視認できるほど巨大な立体映像が映しだされていく。新緑の木々が立ち並ぶ光景は森。映像の動きに合わせて荷車が緩やかに揺れ動く。そうしたのどかな光景は長くは続かなかった。木々の間から突如として矢が放たれ縄を糸を用いたトラップが立ち上がるり森の奥からは文字列が飛来する。

 

【第一問 聖剣エクスカリバーをアーサー王に託したものは■の乙女である。■に当てはまるのは一体なにか?一文字で答えよ。】

 

 クイズの襲来だ。それに応じて荷車は激しく揺れる。

 

「わわっ……ゆれるのだ……!答えは」

 

「湖、でござる」

 

 ランカの答えを聞いたアークは荷車に浮き上がったバーチャル羊皮紙に答えを描きこむ。しばしの間揺れに耐えると罠と矢の嵐を抜け開けた場所に出るそこには湖が広がっておりその水面から女性とその背後にでかでかとした文字が日の出のように浮き上がってきた。その文字は湖。

 湖の乙女が騎士たちを出迎えた。騎士たちはつかの間の休息を得たように思えた。しかし、

 

「騎士よそなたが命を落とすのはこの金の聖剣による斬首がよいか、それともこの銀の聖槍による刺突がいいか。どちらか選ぶがよい。なに?どちらも嫌だ?そうかそうかおぬしは正直な騎士だ正直な騎士には……」

 

 剣と槍を手にもつ乙女はわなわなと震え顔を般若のごとくゆがめると。

 

「二撃を同時にくれてやらねばなあ!死ねぇい!!」

 

 湖の鬼女が襲い掛かってきた。彼女の攻撃を避けるため映像は一気に方向転換し駆けだす。すると前方からは再び文字列が現れる。

 

【第二問 アニメーション作品スペースアーサーから出題。各話冒頭で毎話語られるスペースアーサーはピ――のアーサーである。という言葉のピーにあたる言葉を答えよ。

 

 アークたちは迫りくる鬼女の迫力に若干引きながら荷車の上で相談する。

 

「ひょえええええ、怒ったマミーみたいな顔で追って来るのだ~!!」

 

「そんなアニメあったような……未履修だぜ」

 

「ここにいるのを誰と思っているでござる。宇宙。宇宙のアーサーでござるよ」

 

颯爽とランカが宇宙と書き込んでいく。すると徐々に鬼女との距離が開いていく。それは平面的な距離ではなく縦軸の動きを伴なっていた。つまり馬車は空へと向かった。

 夜天を駆け。雲を超え、星々に手を伸ばす。そして到達する。漆黒の空間。

 黒の空間から赤の大文字が流れて来た。

 

【宇宙】

 

 文字通りの空間に到達していた。音のないはずの闇の中でエンジン音とピシュンピシュンといった光学音が響き渡る。視点が背後に回るとそこには船のような形状の都市が宙を旋回していた。

 

「あ……あれは……」

 

「知っているのだやらんか!?」

 

「ウム……あれは今から四十年程前に放映された宇宙都市キャメロットに登場する主役都市キャメロットに相違ないでござるよ……まさかこんなところで見えるとは」

 

 キャメロットに着陸する映像が流れた後はしばしキャメロットに乗り宇宙を共に探索した。探索途中に問題の連続発生としてキャメロット内部のスペース悪漢や外宇宙からやってきたスペース蛮族の襲撃もあったがなんとか切り抜けようやく寄港地ウィンチェスターに到着する。そこで第五の問題が出題される。

 今、参加者たちの前には手足を生やし自立した巨大円卓が行く手を阻んでいる。彼は早押しの文字を右腕で古い左手に盾を構えていた。盾には徐々に問題文が浮かび上がってくる。

 

【ウィンチェスターに飾られている円卓。アーサー王を一番目として数え右手から12番目に位置するのは誰?】

 

 参加者たちの間で一気に緊張が走る。

 

「お、おいランカ……お前これわか……る」

 

「ぬ、ぬう……いや……確かコレでござる!」

 

 ランカは他の参加者たちに先んじて回答権を得るための聖杯ボタンを押すだがそれよりも早く。別の場所から電子音が響く。先を越された。  

 

「ラモラット」

 

 その一言で円卓は砕け散り道は開かれた。そして答えた女性のチームに大量のアーサーポイントが授与される。一躍注目の的となった女性だったがそれは問題を解いたからだけではなかった。まず彼女の風体が異様だった。マントに王冠、鎧に身を包む姿はまるで王。その王冠の付近には熊の耳のようなものがついていてモコモコしている。更に言えば彼女が座っている場所は荷車の中ではなかった。それよりも更に揺れが激しい鉄馬の上に座り続けている。

 先を越されたことにランカは歯噛みし。

 

「ぐぬぬぬぬ、つ、次はこうはいかんでござる……オタクとして!!」

 

「うむ、任せたのだやらんか」

 

「オメーも頑張るんだよ」

 

 気合を入れ直すアークたち。その後も彼女らは通常の問題を的確に解いていく。しかし、

 

【早押し 問い ベイリン卿がロンギヌスの槍を……】

 

「嘆きの一撃」

 

「ぐっ」

 

【早押し 問い アーサーの翼においてユリエンスとロットとブランデゴリスの必殺の合体シュート……】

 

「アブソリュートデナイト」

 

「あら!?」

 

 回答権を告げる電子音が響く。

 

「メレアガンス三十三世」

 

「ぬぉ~~~!!?」

 

 通常の問題は全て押さえているものの得点の高い問題は全て先ほどの女性に奪われてしまう。そうこうしている内に最後の問題が終了し立体映像は宇宙から地球のキャメロットへと降り立ち閉幕となった。

 実況席から鼓膜を震わせる驚愕の声が飛ぶ。

 

「なんということでしょうか!超難関の早押し問題を……アルトリウス選手が一人で全て解いてしまった~!セカンドステージ唯一のパーフェクト達成です。凄い、もはや異常といっていいほどの知識量。ファーストステージもトップの成績を収めている注目の彼女は一体全体何者なんだ~!?ご本人に聞いてみましょう!」

 

 アルトリウスと呼ばれた鎧姿の女性は腕時計のマイク機能が解放されたことを確認すると優雅な所作で語り始める。

 

「なぜ余がアーサー王に関する事柄について通暁しているのか……それは勝気で見目麗しいご婦人を目にしたら声をかけるほど自明の理である。なぜならば余はこれらの事柄について全てその身で体験してきたからだ。我が事なのだから仔細に覚えていてしかるべきだろう?そう……余こそが伝説に謳われる英雄にしてブリテンを統べる王 アーサー王その人である!!」

 

 アルトリウスの宣言に会場の参加者たちはおろか、草木すらも静まり返ったような錯覚が当たりを支配する。その静寂を実況席からの声が打ち破る。

 

「な、な、なんとぉ~!アルトリウス選手は本物のアーサー王だった~!?文字通りの意味なのかそれとも生まれ変わりという意味か。どちらにせよ本当であればとんでもない展開だ! 優勝賞品は正当なる所有者の元に収まるのか。それとも新たな使い手が現れるのか。これは最後まで目が離せません!!」

 

 実況が盛り上がると同時に会場内の野次を伴った歓声飛び交う。その空気を他所にアークたちは顔をしかめた。

 

「アーサー王なのだ!サイン貰ってくるのだ。学校のみんなにジマンしたのち高値で出品なのだ~!」

 

「止めとけ。なんか……とんでもねえ奴が出てきたな」

 

「くっ、クイズで負け。キャラの濃さでも負けたでござる……やらんか悔しい!きーっ!!」

 

 鋭い歯でハンカチを嚙みちぎるランカを放置してメアはアークに疑問を投げかける。

 

「あのアーサー王はもしかしてSHだったりするのだ?」

 

「ファーストステージでアタシより点とってる当たり十中八九そうだろうな。そこは次のステージで化けの皮を剥いでやろうぜ。つーかなんだよ女のアーサー王って。流行ってるけどよ」

 

「偉人の女体化は一大ジャンルでござるからな……これも時代かもしれぬでござる。しかし、随分とリードされてしまったでござるな。面目ないでござる。かくなる上はやらんか腹を切ってお詫びいたすでござる」

 

「よい。やらんかはがんばったのだ。点差は次のステージで取り返せばいいのだ。そうなのだなアーク!」

 

「おおよ。まだまだこれからだ!気張っていこうぜ!」 

 

「「おー!」」

 


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