SHs大戦   作:トリケラプラス

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4-11 暁の古城出張店

立ち並ぶ屋台の中でも一際人が集まっている場所があった。アークとメアが列に並んでいる場所がそうだ。行列の屋台からはフルーツの甘い香りが漂い彼女らの後ろにも次々と人が並んでいく。列は長蛇といっていいほど長いものの屋台側の手際がいいのか列は非常にスムーズに進み、あっという間にアークたちの順番が回って来た。

 

「いっぱいあるのだ。どれにしようなのだ~」

 

「んー、無難にバナナと苺のミックスでいんじゃね?」

 

「大変お待たせいたしましたなのじゃ。暁の古城特別にようこそ。当店はどの組み合わせでも絶品を保証しますのじゃ。ではご注文をー」

 

 アークたちを出迎えた店員は真紅のドレスの上から非常に可愛らしいフルーツ柄のあしらわれたエプロンを身に着けた黒の長髪が麗しいまるで吸血鬼のような長身女性だった。

 女性はアークたちの姿を確認すると途端に柔和な営業スマイルを崩し汚い声を上げた。

 

「ゲェ!?お主らは……」

 

「お前は……暁の販売者!なんでこんなとこいんだよ?」

 

 つまり、女性はラムルディだった。

 

「簒奪者じゃ……!間違ってはおらんがな!よい稼ぎと宣伝になると思い出店してみればこんなところでこやつらと出合うとは……なんということじゃ」

 

「あ~?テメー客に対してなんて言い草だ。それでも客商売か~?」

 

「ヘイヘイ!ねーちゃんだれにことわってここで商売してるのだ~?」

 

 程度の低いチンピラのような言動のアークと何処からともなくサングラスを取り出し装着したメアに、ラムルディは頭を痛めように抱えて言葉を吐き出す。

 

「市の役所じゃ……!言うておる間に列がまた伸びてきおった!?お主ら、はよう注文せよ。それで商品を持って帰ってさっさと帰るがいいわ」

 

「ちっ、しゃーねーな」

 

「ハーイなのだー」

 

 他の客という存在を指摘され二人はしぶしぶそれぞれ違う味のミックスジュースを4つ注文し、少し待った後で受け取った。ラムルディは口ぶりこそ悪かったがアークたち相手でも品物を扱う手つきや金銭の受け渡しはとても丁寧なものだった。

 金銭の取引を終えたラムルディは血行の悪い人の血を吸った吸血鬼のような表情で頭を下げる。

 

「ありがとうございましたなのじゃー。またのご利用をお待ちしているのじゃ~」

 

 社交辞令を背に受け、アークたちはトウコの待つ場所に向かう。二人の手にもつ容器からは芳醇な果物の甘い糖と、まろやかなミルクの香りが放たれ、それがまたラムルディの経営する暁の古城の利用者を増やすのであった。

 

 

「御馳走さまでござるー!まっことにおいしゅうござった」

 

「ごちそうさまだったのだー」

 

「ごっそさーん」

 

 「あらあらみんないい食べっぷりね~。あんなにあったお弁当がカラになちゃったわぁ。こんなことならこの倍ぐらい作ってきたほうがよかったかしらねえ」

 

 途中ではぐれたランカと再合流したアークたちは、メアの母親トウコが持参した重箱を頬張り、あっという間に平らげた。作ってからここに持って来るまでそれなりに時間が経っているはずだが、中身は出来立てのような温度を保っており、子供が好みそうな濃いめの甘い味付けでありながらくどくない後味は舌を愉しませた。

 アークは絨毯のような柔らかい感触を返すブルーシートの上で寝ころび腹を掻く。するとその耳にややノイズの混じった声が届く。

 

『これより十五分後にネクストアーサー王だ~れだ大会、再会いたします。フォースステージまで勝ち進まれた参加者の皆様は所定の位置まで移動をお願い致します』

 

「おっと、もうそんな時間でござるか。では、トウコ殿やらんか達はこの辺りで」

 

「行って来るのだママ―!」

 

「はーい。怪我はしないようにするのよ~」

 

 所定の位置に向かうメアたちに手を振るトウコを横に、アークもまた身を起こしそれに続こうとする。そんな彼女にトウコは声をかけた。

 

「アークさんちょっと待ってくださる?」

 

「いっ!?アタシは……メアに悪い遊びとか、教えて、ナイデス。アーク、ケッパク」

 

「そうじゃなくてねぇ」

 

 アークのしどろもどろな様が面白かったのかトウコは思わず笑みを零し。

 

「メアちゃんのことよぉ。あの娘、偉ぶってるけどお家ではいつも私にアークさんとのことを話すのよ、本当に楽しそうにね。新しい引っ越し先で馴染めるか心配だったけど杞憂だったわ。ねえアークさん。メアちゃんとこれからも仲良くしてくださるかしら?」

 

「なんだ、んなことかよ。びびって損したぜ。いや、びびってねーけど」

 

 お叱りでなかったことにほっと一息をつき、頬を緩ませる。

「どうせ逃げようが追っ払っおうが、のだのだっつって寄って来るだろアイツ。もう諦めた。しかたねーからいつでも相手してやるよ」

 

「ふふっ。そう、よろしくね」

 

「アークぅー。何やってるのだー?ちんたらしてると置いてくのだー?」

 遠くから投げかけられた声に反応し、振りかえる。

 

「おー、今行くー。じゃな。飯美味かったぜ」

 

「はーい。またご馳走させてねぇ」

 その言葉を残しアークはメアたちの元へ駆ける。フォースステージはすぐそこまで迫っている。

 


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