SHs大戦   作:トリケラプラス

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4-20 聖剣返還

 ミュージカルを終え、アークたちファイナルステージ進出者たちは半壊したステージの上に立っていた。大勢の観客が見守る中、それは行われようとしていた。実況のヒカリの声が拡散する。

 

『それではこれよりネクストアーサー王だ~れだ大会、優勝者の発表を行いたいと思いますー!一体だれが次のアーサー王の栄誉と聖剣を賜るのでしょうか!?それではいってみましょう!』

 

 ヒカリの宣言と共に打楽器の連打する音が重なり響く。それは次第に感覚を短くし、やがて頂点に達した際に金属音が重なる。場は静寂に包まれ。声がそれを打ち破る。

 

「優勝はアルトリウス選手です!皆さま盛大な拍手をお願いしますー!!」

 

 割れんばかりの喝采の中、ステージ上に市長が上がってきた。その手には賞品とされていた聖剣が抱えられていた。

 

「ネクストアーサー王に輝いたアルトリウス選手には市長から聖剣が授与されます。どうぞ受け取ってください」 

 

「アーッ!」と頭を抱えるアークを他所にアルトリウスは一歩前に進み出て聖剣を鷹揚な所作で受け取ると掲げる。彼女はひとしきり歓声を浴びると剣を降ろし、そしてアークに向き直る。

 

「アーク、貴侯は余にアーサー王を辞め、新たな道を探れといったな。ならば頼みがある」

 

「あ?なんだよ」

 

 べそをかいたアークはむくれた様子で応じる。そんなアークにアルトリウスは聖剣を差し出す。

 

「これを湖に捨ててきてくれ。貴侯に頼む。余がアーサー王を終わらせるということはきっとこのようなことなのだろう」

 

「お前……」

 

<焦った女性の声>

 解説しよう。まだ出番があったとは正直驚きだよ。アーサー王の最期についてだね。実子モードレッドの手によって致命傷を負ったアーサー王は自分が死ぬ前に聖剣エクスカリバーを湖に返すように最後に残った臣下に聖剣を託すんだ。まあ、臣下は剣を手放すのが惜しくて返すのに手間取るんだけどね。

 臣下が剣を返すと王は湖の乙女たちに小舟に乗せられ運び去られていった。そしてそれっきり姿は見せなかった。アーサー王は死んだともアヴァロンで傷を癒しているともいわれている。何とも摩訶不思議な話だけどこれがアーサー王の最後についてだよ。ではこれにて。

 

 

『あーっとアーク選手、アルトリウス選手から聖剣を託されたかと思うとステージを降り駆けだしていったー!一体どこに向かうというのか~!?市長これは大丈夫なんでしょうか?』

 

『ん~既に剣は正当な所有者の元にいった。それが他人に託したんだ。ならどうなっても構わないでしょ。今は見守ろうじゃないか』 

 

 アークは駆ける駆ける。手に持つ剣の重みを感じながら、ただ駆けた。行き先は湖、聖剣が発見された場所だ。SHの脚なら直ぐに辿り着く。あ、という間もなく辿り着いた。

 彼女は剣を投げ入れんと高く掲げたところで動きを止めた。止めて、それからピクリとも動かない。ただ脂汗を全身に滴らせるだけだ。

 アークは葛藤していた。捨てずに売り払ってしまえば一発借金完済オールOKのこの剣をただ言われるがまま捨ててしまっていいのだろうかと。だがしかし、己が説得しわざわざ託されたものを売っぱらうことなどどうしてできようか。いやさしかしこれがあれば馬券も買い放題、遊び放題飲み放題、いやさいやさ。

 汗でぐっしゃりとなったアークはやがてゆっくりと剣を降ろすと後生大事に抱え。ステージに向って駆けていった。そしてステージ上に戻ってアルトリウスの前までやって来る。

 

「アーク。どうした……?」

 

「アルトリウス……これ、捨てなきゃダメか!?売っちゃ駄目か!?なぁ!?」

 

「捨ててくれ……」

 

「はい」

 

 数度言葉を交わすとアークは再びステージを降りまた先と同じ方角に走りだした。

 

『おっと、アーク選手、戻ってきましたが何があったのでしょうか?やはり高価なものですから行き違いがあったらいけないとの確認でしょうかね』

 

 実況の声が終わるころには再び湖の前に立ち、再び投げ入れる体勢になり。そしてやはり。

 

「くっ……」

 

 投げ込めない。

 頭と良識は投げ込まなければならないと思っている。人命がかかっているのだ。やらねばなるまい。だがしかし、もったいなくない!?という感情がアークの中で渦巻いている。そしてこれを捨てずに売った未来図が頭から離れない。お菓子、賭博、カラオケ、賭博、ゴルフ、キャバクラ、賭博、ゲーム、グッズ、賭博、賭博賭博etc。

アークは滝のような汗を流し、過呼吸気味に息を荒くし、膝をつく。しばしの間呼吸を整え。立ち上がる。

 目を閉じ、もう一度開くと。身を翻し。前傾姿勢で駆けだす涙を流しステージ上に舞い戻る。そして。

 

「ア”ル”ド”リ”ウ”ズ”ゴ”レ”……」

 

「DEX……」

 

「捨ててきまーす!!」

 

 アークはこれまで以上の速度で湖の前に辿り着くと剣を手放す拒否反応で震え。膝をつき、頭を抱えた。そして幾度か地面に頭を叩きつけた後地面を転がると立ち上がり、所在なさげにあちらこちらを歩き回り、途中で再び膝をつく。そういったことを幾度か繰り返した後、意を決したように剣を手にし。

 

「さようならアタシの輝かしい未来!!」

 

 聖剣を湖に投げ返した。すると湖が光に包まれたと思うと後方、ステージの側から驚嘆の声が上がる振り返ってみるとステージ上、アルトリウスから湖同様の光りが迸っていた。光りは直ぐに収まったが会場はどよめきに包まれる。

 

『こ、これは……一体何が起きたというのでしょう……アーク選手が湖に剣を放還すると湖とアルトリウス選手から眩い光が……市長、これも演出なんですか?ってあれ、なんだかめちゃくちゃ嬉しそうですね市長?』

 

『え?いやー……うん。これも演出のうちさ、所有者が剣を還した時用にあらかじめ仕込んでおいたものだから危険はないとも。聖剣の処置も決まったわけでこれにてネクストアーサー王だ~れだ大会、閉幕だとも!皆よく頑張ってくれた!!全参加者たちに惜しみない拍手をお願いするよ』

 

 会場中に拍手が響き。市長の手掛けた方舟市の一大イベントは幕を閉じた。

 

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