SHs大戦   作:トリケラプラス

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5-6 二人の関係

 アークがリクに敗れた日から二日。人々を小馬鹿にするようなカラスの鳴き声と橙の色が街を染め上げる時刻。公園近くの信号待ちで二人は出合った。

 

「お」

 

「のだ」

 

 二人、アークとメアはこの二日の間顔を合わせていなかった。出会ってからこのかた毎日遊んでいた二人としては異常とも言えるこの空白期間は、やはりメアがリクに仕置きと称してアークに行われたことを目にしたことは無関係ではないのだろう。久しぶりに会ったというのに二人の間にはどことなく距離が生まれ気まずい沈黙が支配する。

 信号が青に変わった時、沈黙に耐えかねた小学生が口を開く。

 

「アークは……」

 

「お、ん?」

 

「アークのケガはもういいのだ?」 

 

「あ……ああ、ホラ。んなもんその日のうちにパッと直しちまったよ。へーきへーき」

 

「そっか、よかったのだ。安心なのだ」

 

 安心。それは怪我のことなのかそれともこうして自然にまたアークと話せたからなのか。メアにもわかりはしない。横断歩道を渡り、二人の足は自然とその先の公園に向っていた。

 ぶらりぶらりと目的もなくただ時間を潰すように遊具に跨り、ブランコに揺られ過ごす。

 

「なあ」

 

「んー……どうしたのだ。おトイレなのだ?ひろったもの食べるからなのだ~」

 

「違うわ」 

 

 再びどことなく落ち着かない時間が過ぎるが、今度はアークがそれを打ち破った。

 

「アタシらの関係ってなんなんだろうな」

 

「関係……なんなのだ急に。本当に悪いものでも食べたのだ!?ぺってするのだ!」

 

「違うわ~。いいから、言ってみろよ」

 

「えー……と、も……ゲボクとボスなのだ」

 

「違うだろ。つーか誰が下僕だって~?」

 

「いだだだだだだだだ!?じゃあアークはなんだと思ってるのだ!」

 

 小さな頭を両の拳でぐりぐりと圧迫されて涙目になったメアはキッとアークを睨みつけ問う。しかしアークは誤魔化すような曖昧な笑みを浮かべた。

 

「いやあそれがよくわっかんねえから聞いてんだよ。ラムルディのやつからはトモダチかって言われたけどよぉ。どうもなんかしっくりこなくてよ」

 

「…………しっくりこない?」

 

 努めて平然とした声をあげるメアに僅かな違和感を感じつつもアークは自らの所感を述べる。

 

「アタシのトモダチ……と、お前の関係はなんか違うんだよな。なんか。あー……命を預けるぴりぴりした感じっつーの?恥ずかしいところも全部みたっつーか朝起こしたり起こされたり」

 

「それって前に言ってた。モウソーじゃなかったのだ!?」

 

「オメーはアタシのことなんだと思ってんだよ……兎に角。いたんだよ」

 

 呆然とするメアに半目の突っ込みを入れるアークだったがその言にメアは違和感を覚える。

 

「いた?アークの友達って、多分。カルヴァリーの……のだ?ケンカしたのだ?」

 

「けん、か……喧嘩かぁそうだったらよかった。よかったのになぁ……」

 

 そういうアークは突如として瞳に涙を溜め堪えられずに頬を濡らす。突然の反応にメアは大層慌て。

 

「どーしたのだアークぅ!?いいのだ、もう続き話さなくていいのだ!」

 

「いや、いい。みん……みんなとは何か上の奴らの都合でよ徐々に散り散りにされたんだよ。今どうしてんのか。生きてんのかどうかもわかんねえ」

 

「カルヴァリーを出てから探そうとは思わなかったのだ?」

 

「色々あってそれどころじゃ……いや、ちげーな二年だ。二年あったんだ、そんだけありゃ見つからねーにしても手掛かりは……手に入ったかもしんねぇそれをしなかったのは多分」

 

 アークは自らの所在なさげに開いた掌を眺め。

 

「確かめるのが怖かったんだ。怖かったんだよ……死んでたらどうしよう……忘れられてたらどうしよう。きっと、嫌われている」

 

「アーク……」

 

 言葉を絞り出すたびに体の震えを隠し切れなくなってきたアーク。メアはそんなアークの手を取り。

 

「大丈夫なのだ。メアはここにいるのだ。アークはとんでもないダメ人間だけどメアはそんなアークのこと全然キライじゃないのだ」 

 

「メアお前……」

 

 アークの震えは次第に収まり。アークはゆっくりと言葉を吐く。

 

「悪いもんでも食べたか?」

 

「んなわけね~のだ。ふざけんななのだ~!」

 

 切れたメア頭突きを見舞う。不意の一撃にアークは再び涙目になり鼻頭を押さえた。

 

「テンメ~優しくしたと思ったらすぐ暴力振るいやがって。DV彼氏ってやつかぁ!?」

 

「アークが変なこというからなのだ!落ち着いたのだ?」

 

「おかげさまでな!はあ、何かモヤモヤしてたのが馬鹿らしくなってきた。こんなことなら明日の算段立てとくんだったわ」

 

「リクの姉御に呼び出されてるのだ?」

 

 メアの問いにアークは心底参ったというように頭を掻きうなだれる。

 

「当日にもう一回チャンスやるからそれに勝てなきゃ一生地下労働だってよ。能力の攻略方法もまだ見つけれてねーし……どうすっかな」

 

「たたかう前からおよびごしなアークはらしくないのだ!ダメ人間はダメ人間らしくしゃん背筋を伸ばしていくのだ。リベンジ、してくるのだ。アークは……強いのだ」

 

「……そーな。そりゃそうだ。わかってんじゃねえかメア。っし明日はリクのチビの泣き顔たんと拝ませてやるよ。帰んぞメア。門限、だろ?おっかねーかーちゃんに怒られてアタシの雄姿を見れなかったなんてことになんなよ」

 

「メアはそんなヘマしないのだ~。メアはアークがちこくしないかの方が心配なのだ~」

 

「んだと~そんなことは……ある」

 

「なのだ~」

 

 数日振りの二人の帰り道は暗くなっても明るかった。

 

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