SHs大戦   作:トリケラプラス

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8-2 旅立ち

アークたちが街を後にすると一面緑の大広原が広がっていた。陽の光りがさんさんと差すのどかな光景にSHたちが我を忘れているとメアは彼女らを放って先に進みだす。

 

「あ、ちょ、メア殿!?」

 

「何してるのだ~?ノロノロしてるとおいてっちゃうのだ!」

 

「相変わらず落ち着きがなく遠慮もない童よのぉ」

 

 

 そんな彼女を独りにさせないよう順にSHたちが小走りでおいかけていくなかでアークはぽつりという。

 

「なあ、この視界の端に浮かんでる鬱陶しいの何なんだろうな」

 

 鬱陶しいものとは、アーク無職LV1/HP24/MP18と表記されたアークの周囲に浮かぶ半透明の表示枠のことだ。それをみてラムルディはこともなげにいう。

 

「ステータス画面じゃろう。ゲームの世界ならばこんなものがあっても不可思議ではなかろう?とはいえ今のままでは邪魔なだけじゃな」

 

「む、やはりでござるな。皆の衆これを見て下され」

 

 自身のステータス画面に何かを行っていたランカが皆を呼ぶ。集まった皆の前でランカはステータス画面をみせると先ほど起きたことを実演してみせた。

 

「ステータス画面の端にあるこの設定マーク。これを押すとでござると……なんと更なる詳細画面が出て来るのでござるよ!」

 

 ランカの言葉通りにステータス画面を弄るとステータスなどの多数の項目が現れた。

 

 「おお~」という反応に気をよくしたランカは気をよくして話を続ける。

 

「ステータス、とは力や防御力などに関するものでござろう、スキル・魔法は使えるスキルと魔法、所持品はランカたちは地図と木の棒ぐらいしか持ってないようでござるな金も300G。おそらくしけているのでござろう。スキルPTは……確かこのゲーム事前情報ではスキルツリー割り振り性だったはずでござるからもう少し情報を待ってから割り振るのが安全でござろうな」

 

 その言葉を聞きながら皆はそれぞれの項目を確認する。結果ステータスの数値や魔法・スキルはみなそれぞれ異なっていることが確認できた。これは本来の身体能力だけではなく個々の職業が能力値に影響しているのだろうとランカはいった。

 

 そうして歩きながら話しつつ自分たちの戦力を確認するアークたちであったがやがて強烈な敵意を察知する。振り向けば液状の固形物体がアークたちの行く手に立ちふさがっていた。

 

「なんだこりゃ」

 

 相手のステータス画面に記された情報は 悪いスライムLV3。この世界でのアークたちにとって最初の戦闘が始まった。

 

 

 悪いスライムは身体を一度収縮させて溜めを作ると砲弾のように我が身を跳ね飛ばしメアに向って体当たりを敢行した。しかしそれは横から割り込んだランカによって防がれる。勢いを失った悪いスライムはアークの強烈な横蹴りを喰らい地面を転がる。そして同時に4という表記が現れる。一同はそれを見て一瞬で今の攻撃で与えたダメージ量であるということを直感する。

 

「大丈夫か?」

 

「問題ないでござる~とと、しかしあの程度の攻撃なら受けてもどうってことないはずでござるがやけに効いたような気がするでござるなあ。やはりこれも」

 

「ゲームの世界だからってわけか。ここで死んだらどうなるんだろうな」

 

 核心をつくアークの重たい疑問。しかしランカはおどけた調子で答えた。

 

「死ぬんでござらぬか~?まあいつもと変わらんでござるよ」

 

「だな」

 

 言っている間に彼女らの後ろから悪いスライムに火の玉が飛んだ。メアが放った呪文によって悪いスライムは継続的なダメージを受けもがいている。前衛二人も動いた。

 

「オラぁ!」

 

「でござるぅ!」

 

 二人からの連撃を受け悪いスライムはみるみるうちに気勢を削がれていく。このままとどめと思われた時、突然アークの手が止まった。

 

「アーク殿、どうしたでござるか……?」

 

「あ……いや……あ~、なんつーかな」

 

 苦虫を咬みつぶしたような表情で言い淀むアークだったが戦闘の場ではそれは命取りだ。この場を好機とみた悪いスライムは力を溜め、今まさに飛び掛からんとしている。

 

「ゲイン!」

 

 それは果たされなかった。天からあり得ない程に真っすぐ落ちた雷が悪いスライムを戒めるように撃ったからだ。悪いスライムは力尽きたと見えると体がホログラムのように移り変わりそして死体も残さず消え去った。後に残ったのはLVupを告げる軽快な効果音と薬草と表記された草の束だけだった。

 

 アークは悪いスライムが消える様を反芻するとほっと胸をなでおろし明るくいった。

 

「どうやらこりゃマジでゲームの中みてえだな。死体も残んねーなんてよ」

 

「コラアーク!何ぼーっとしてたのだ!メアが助けなきゃ危なかったのだ!」

 

 後ろからぷんぷんと怒気を露わにしているメアと肩身が狭そうなラムルディが合流してくる。その様子にランカはズレた眼鏡を上げ。

 

「おや、先ほどのはメア殿でござったか。といことはラムルディ殿は先ほどの戦いの最中何を……」

 

「う、うるさい……!魔法の使い方がようわからんかったのじゃ!童よ、後で教えてもらうぞ……」

 

「仕方ないのだ~」

 

 こうして最初の戦いを超えてこの世界の勝手を少しだけ理解したアークたちは、道中で立ちはだかる敵エネミーたちを倒しレベルを上げつつ、地図を頼りに次の拠点となる村を探した。

 

 最初の街と村とはそれほど距離が離れているわけではなかったが、エネミーを倒すと貨幣であるGがドロップすることに味をしめたアークが片っ端からエネミーに喧嘩を売ったことで到着は夕方になってしまった。

 村に入っても不思議がられることはなく。アークたちは村の武器屋で剣や槍、ブーメランなど最低限の武器を購入したり果物屋で果物を購入すると一日の疲れを癒すため宿場へと向かう。

 村の中央近くに存在している宿屋は古さを感じさせない木造建築の二階建てだった。受付で手続きを済ませたアークたちは大部屋のベッドで横になったりこの世界の書物を読んだりして時間を潰す。そんな中ランカが口を開く。

 

「それなりに稼いだつもりでござったが武器の購入と四人分の宿代でGがすっからかんでござるなあ」

 

「四人分の宿ってのが思ったよりたけぇ。ゲームならもうちょい配慮しろよな……」

 

「のだ~」

 

「果物が現実とそう変わらんのは助かったが……何か一気に稼げるイベントでも起きればよいのだがのう」

 

 そこまでラムルディが言ったところで部屋の扉が叩かれる。夕飯の準備ができたのだと判断したアークたちは入室を促すと宿屋の女主人が姿を現す。そしてアークたちに向って頭を垂れると言葉を紡ぐ。

 

【お食事の準備が整いました……ですが旅人さま方に一つお願いを……いえ、ご依頼したいことがございます】

 

 その言葉にゲーマー組もといSHたちが身を乗り出す。

 

「おい、これってもしかして」

 

「イベントフラグでござろう……条件はこの宿に泊まることでござろうな」

 

「これは金の工面がなんとかなるのではないか?」

 

 その反応を続けろというように受け取ったのか宿の女主人は言葉を続ける。

 

【実は最近この近くの洞窟にメカゴブリンたちが工場を作ったようなのです。直接的な人的被害はまだ目立ったものはでていませんが、バイオ燃料の素材に農作物を頻繁に盗み来られて困り果てているのです。この村にはメカゴブリンの工場を討滅できるような屈強なものはおりませんし王都からの騎士はなかなか派遣されません。このままでは農作物

を奪い取られ続け冬には村の住人たちがみな飢え死んでしまうかもしれません。旅人様の実力は村の見張りのものたちが広原で確認しております】

 

 そこまで言うと主人は後ろに隠してあった布袋の中身をアークたちに見えるように広げてやる。そこには大量のGや高価そうな宝物がぎっしりaと詰まっていた。

 

 「お礼はこの程、どうか旅人さまたちの力でメカゴブリンの工場を破壊してきてくれませんでしょうか?」

 

「やるー!!!」

 

 サメ、即答である。だがそれを止めるものはいない。みんな金欠だからである。

 

【ありがとうございます!それでは下でお食事を用意しておりますので準備ができましたら降りて来てください!】

 

 予想以上の快諾に主人は顔を朗らかにして礼を言うと部屋から去っていった。後に残されたもの達は我慢していた興奮を解き放った。ある者はベッドで飛び跳ね、ある者たちは抱き合い、ある者はシャドーボクシングに勤しむ。

 

「イベントじゃあ~ゲームの中じゃあ~!」

 

「なのだ~」

 

「金金金金~!!」

 

「アーク殿ぉ?ゲームの中の世界の金は多分持って帰れないしもって帰っても使えないでござるよぉ?」

 

 彼女らが騒ぐのも無理はない。突発的かつ偶発的とはいえゲームの中の世界に入るという事象はゲームが好きなら誰しもが一度は行ったことがある妄想だろう。それが現実のものとして強く実感ができるイベントが現れたのだ。騒がない方が無粋というものだ。

 ひとしきり騒ぎ落ち着いた彼女らは部屋を後にし食事をしながら今後の展望を考えることにした。

              

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