「___みなさんはこれから沢山のことに出会うでしょう。きっとその出会いは多くのことを教えてくれるはずです。みなさんのこれからに幸多からんことを。」
「妙に芝居がかっているな。最近の教師はああいうのなのか?」
「うーん。オレも学生時代は変な先生多かったからな。ああいうもんなんじゃないの?話が短いだけまだましだろうし。」
そんなことをこそこそ話していると隣の女性に睨まれる。月音は苦笑いしながら頭を下げるが、DIOは無視して前に並ぶ子供たちを見る。入学式に出席しているのは新入生かその保護者がほとんどで在校生は精々二十人程。DIOは、おそらくは生徒会や委員会のメンバーだろうと考えながら、見知った子を見つける。生真面目にも校長の話をしっかり聞いている様子のはやてを見ながら苦笑する。もう一人の知り合いを探すも、はやての周りに居ないことからなのはのクラスは別になったようだと結論づける。気になるのははやてと同じクラスであろう紫の髪の子供だ。あの髪の色から察するにおそらくは月村家の子供だろう。はやてからこちらのことがバレることはないだろうがもし家に遊びにでも来たらどうするか。などと考えているとはやてと目があった。話を真面目に聞いているはやてと目が合うはずが…などと考えるが、どうやら入学式が終わりそれぞれのクラスに移動するようだ。移動するはやてをみて月音が一言。
「写真とってる?」
「完璧だ。」
カメラを構えすらしないDIOがいう。だが月音はその手に持つデジタルカメラのディスプレイを見ると満足したように言った。
「これならグレアムさんに送れるね。」
「…連絡すらよこさなくなった奴に送る必要はあるまい。」
「けど、はやてはきっと送りたいって言うと思うよ?義理も果たしてるし。」
「…フン。」
DIOは不機嫌そうに言うが、ちょうどそのときはやてが退場していく。こちらをちらちらみるはやてに向けてカメラを構えるとDIOはシャッターをきった。
「普通にとってもうまいね。」
「スタンドだけが能ではない。そもそもただ念写してもベストショットにならん。大事なのは光だ。基本ができずに応用は出来まい?」
「それもそうか。」
月音はDIOに相槌を打とうとすると新入生側から見えないように体を隠した。
「ん?…ああ、なるほどな。」
近くを通り過ぎるなのは、月音たちに気がついたようでこちらに手を振っている。その様子もカメラで撮ると
「行ったぞ。」
「気づいた様子は?」
「ない。はやてとはクラスも違うようだし下校だけ気をつければいいだろう。」
「…けど、なのはちゃんとは同じクラスみたいだね。」
「ああ。名簿によると宮城定行らしいな。…気に食わん名だ。」
「??…ああ気にしすぎじゃない?この名前みてジョジョなんて言わないでしょ。どっちかと言えばジョウジョウ。」
「……こちらの過去が筒抜けなのはもっと気に食わん。」
「はは。オレの過去だって話したじゃん。…さあ行こう、保護者の移動も始まったよ。」
そう言って歩き出す月音の背にDIOは言う。
「…追体験とは筒抜けの次元が違うだろう。」
はやてのクラスは四組。月音と別れたDIOは四組につくと隅に立ちはやてをさがす。はやては前の方の席に座って隣の女生徒達と話していた。話を聞く限りたまに話に出てくるりっちゃんのようだ。もう一人は、月村家の子供。厄介なことになったなどと考えながら観察を続ける。机の上に本が乗っていて、いろいろな知識はそこから得たのだろうと推測する。
「フム、河合律と月村すずかか。」
しかし、今どきの小学生はブラム・ストーカーやヴィクトル・ユーゴーを読むのかなどと驚いていると、保護者が揃ったようで担任の自己紹介が始まった。
「みんなには一度自己紹介したけど改めて。四組の担任になった雪村時音といいます。はじめての担任となるのでみんなにも保護者の方にも迷惑をかけることがあるかもしれませんが、よろしくお願いします。みんなこれから一年よろしくね。」
自己紹介が終わると生徒の一人をきっかけに拍手が起きる。その拍手に紛れるように
「雪村先生でよかったわ。兄が雪村先生担当の授業を受けたことがあったんだけどそのときすごくお世話になって。」
「あら、そうなの?担任初経験って言ってたから心配してたんだけど、大丈夫みたいね。」
などと話している声が聞こえてきた。
けれど、DIOは当たり前だろう。と考える。年齢は二十代前半。しかし経験はそれ以上のであることをDIOは見抜く。どこか懐かしく感じる雰囲気を持つその姿にかつての敵の姿を幻視する。
あれはこちらを観察しているな。しかもそれを気取られていない。細波レベルでないと気づかんだろうな。…しかも俺に気がついたのか?細波の言う妖気は完全に抑えていたと思ったが。…このあと挨拶にでも行くか。ん?…ああ、なるほど。このクラスの担任になるわけだ。護衛も兼ねているということか。
担任の挨拶が終わったところで今日は終わりらしい。子供たちは新しく出来た友達と話したり保護者のもとに駆け寄ったりしている。はやてがDIOに走り寄り今日のことを報告する。入学式のこととか四組の場所が玄関から遠いのが残念だとか。そしてりっちゃんと同じクラスでよかったという話になったときに声をかけられた。
「こんにちは、青野さん。」
「ああ、雪村先生。こんにちは。」
「ゆきむらせんせー!こんにちは!」
「こんにちは、はやてさん。」
「周りの話を聞く限りしっかりした方のようで。ハヤテも安心して任せられます。」
「そう言ってもらえると助かります。若いけど大丈夫なの?なんて言われたりしますし。」
「先生なら大丈夫でしょう。先程の堂々とした自己紹介はよかった。子供たちにはどっしり構えている方が受けがいい。」
「ええ、今年一年頑張らせていただきます。…青野さんも学校に関してなにか相談があればいつでもどうぞ。」
DIOと時音が挨拶をしていると他の先生が時音を呼んだ。どうもほかのクラスで喧嘩があったらしい。
「すいません、失礼します。」
「ゆきむらせんせーまたなー。」
「またね。はやてさん。青野さんも。」
「ああ。」
そう言って小走りでかけていく時音を見ながらはやては言う。
「優しそうなせんせいやったね!」
「そうだな。…しっかりしている。」
「ん?優しそうに見えんの?」
「優しくはあるだろうな。」
「???」
不思議そうに首をかしげるはやての頭を撫でているとはやてはあることに気がついた。
「そういえば月音にーさんは?」
「あいつならトイレに行っている。間に合わなそうだから校門で待ち合わせることになっている。」
「そうなんや。新しい友達しょうかいしたかったんやけど…。」
「ホウ?」
「まあええわ。まずはディオにーさんにしょうかいするな!こっちきて!」
そういってはやてに引っ張られると月音が現れなかった原因のもとに連れてこられた。
「えっとな、わたしはよーわからんけどりっちゃんと本のことでもりあがって友達になったすずかちゃん!いろんな話してくれるにーちゃんたちがおるって言ったらいろいろ聞かれたんよ。」
「……。」
沈黙するDIOを見て少し腰の引けているすずか。確かに二メートル近くしかも目力が強い男が黙ってこちらを見ているのは怖かろう。それでもなんとか自己紹介しようとするのは受けた教育が良かったからだろう。
「えっとはじめまして。月村すずかです…。」
語尾が消えてしまうのも無理はない。DIOはしゃがんですずかと目線を合わせると自己紹介をする。
「はじめまして。DIOという。ハヤテの兄のようなものだ。ハヤテと仲良くしてくれると嬉しい。それでそちらが噂のりっちゃんかな?はなしは聞いているよ。よろしく。」
「…はじめまして。河合律です…。」
「もう!ディオにーさん怖がらせんといてーや!こんなんなら月音にーさんの方がよかったわ。」
そう言われて凹むDIOだったが、それを表に出さず少女たちに話しかける。
「ブラム・ストーカーの吸血鬼にヴィクトル・ユーゴーのレ・ミゼラブルか。私も本が好きでね。よかったら話さないかい?」
「ディオにーさんいろんなはなし知っとるんよ!わたしもいろいろ聞かせてもらってん!」
それを聞いてDIOに聞きたげな視線を送る。それに応えてDIOはいろいろなことを話した。
「それじゃあ小説の分類について話そう。本を楽しむ上でなんの必要もない知識だが、知っておいて損はなかろう。いろいろ分け方はあるらしいが、ある作家に言わせれば小説にはそもそも分類はひとつしかないらしい。それはな___。」
話の区切りが付いたのはすずかの迎えのメイドが来たことだ。人生で始めて見るメイドに興奮するはやて、驚いてすずかとメイドを見比べる律、メイドを見て思案するDIO、周りの様子に首をかしげるすずか。そんななか挨拶を交わすメイドとDIO。今度遊ぶ約束をするはやてと律だが、その様子を見ながらすずかは悲しそうな顔をしているのには気がつかなかった。
律とすずかと別れたあと月音と合流して翠屋に向かうはやてたち。はやては今日あったことを月音に話すがその顔は不満そう。
「なんでトイレなんかに行くん?りっちゃんとすずかちゃんしょうかいしたかったのに。」
「ごめんね。今度うちに遊びに来るんでしょ?その時に紹介してよ。」
「わかった!ちゃんとおってよ!」
「わかってるよ。」
その隣でDIOはカメラの確認をしている。はやてのついでにとったなのはの写真などをより分けている。
そうこうしているうちに翠屋についた。なかでは軽いパーティーをしようという話になっている。
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娘たちが小学生になったことを祝っての乾杯が済むと三々五々に集まって話し始める。
「ディオ君、これがはやてちゃんの写真だ。我ながらよく撮れたと思うよ。」
「おお、シロウありがとう。さすがハヤテだ。なかなか写真写りがいい。」
「撮った人もいい腕だったんだと思うよ?」
「ハハハ、違いない。これが頼まれていたものだ。」
「おお!ありがとう。おお、良く撮れている。センスもいい。…これはどうやってとったんだい?どう考えても高さが…。」
そう言って出されるのはかなり上から取られたであろう写真。けれどDIOは笑いながら言う。
「企業秘密だ。」
一方では
「月音君クラスの方に顔出せなかったらしいじゃない。ダメよ?顔合わせは大事なんだから。」
「大丈夫ですよ。顔合わせならDIOの方が適任です。ガタイが良くて顔も濃いし一度会ったら忘れませんよ。」
「それはそうだけど。ディオ君もいつもいるわけじゃないでしょ?月音君影が薄いんだからそういった場でちゃんと挨拶しないと。それに事情が事情だし。」
「それもそうですね。今度挨拶にでも行きますよ。…それにしても影が薄いって。」
「いい子なのは知ってるのよ?それでもやっぱりディオ君と並ぶと霞むというか…ね?」
「ね?って…いや、わかりますけど。」
苦笑しながら桃子と話す月音。この辺では、月音とDIOは割りと有名だ。かたや二メートルほどの大きな外人、そして近所の子供たちと戯れる好青年。…そして仕事をしていなさそうな生活リズム。親しくなった人には、自営業的な派遣会社をしている。とは言うものの、確かに外から見れば無職に見えるだろう。まあ本当に無職なのだが。
桃子はふと思い出したように言う。
「喧嘩があったって聞かなかった?」
「ああ、あったらしいですね。はやての担任の雪村先生がそう言ったのをDIOから聞きました。」
「その喧嘩の原因がね。なのはなのよ。」
「え?喧嘩をするような子じゃないでしょう。」
「ああ、なのはが手をだしたんじゃんくてね。なのはに声をかけた子が他の子と喧嘩を始めちゃって。」
「…女の子が?」
「男の子よ。それで大騒ぎになっちゃって。その子の親が言っても、担任の先生が言っても止まらないし。親の方いい人そうなんだけどね。そういえば喧嘩した片方の子は前に話した不幸な子、覚えてる?」
「水道管の破損に巻き込まれた子ですか?」
「ええ。その子だったのよ。名前も覚えちゃった。霧山健人君って言うんだって。あったことあるんじゃない?よく子供と遊んでるんでしょう?」
「確かに遊ぶことはよくありますけど名前はよく知りませんよ。自己紹介し合ってるわけじゃないですし。」
「そうなの。よければいろいろ聞きたかったんだけど。…娘がモテるのも困りものね。」
「なのはちゃん可愛いですしね。」
「月音君ならもらってもいいのよ?」
「…冗談でも勘弁してください。後ろの士郎さんが怖い。」
その頃、子供組はというと。
「大丈夫やって!なのはちゃんのせいやないよ。その子達がなのはちゃんのイロカニマドッタだけやって。」
「けど、わたしのせいでけんかが始まったの…。」
落ち込んだなのはをはやてが元気づけていた。
なのははどちらかと言えば人見知りする方だ。はやてと違うクラスになって落ち込みはしたし、今後の学校生活をかなり不安に思っていた。けれど、この機会に頑張って新しい友だちを見つけようと一念発起していた。そこにあの喧嘩である。なのはに責任はないとはいえ、騒動の中心にいる子に声をかけようとする子供はおらず、なのはに新しい友達ができることはなかった。
それに、最初のはやての発言も悪かった
「新しい友達ができたんよ!」
この発言を聞いて更にテンションが落ちたなのはを攻めるものはいまい。
今はとにかくはやてがなのはを元気づけようと奮闘するだけだ。
_ちなみに、男の子に絡まれたなのはの様子を父親がすごくいい笑顔で見ていたことを追記しておく。
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この翌日、はやてに励まされたなのはには新しい友達ができる。
少年たちに再び絡まれたところを金髪の少女に助けられる。
その名はアリサ・バニングス。
はやてが宿す呪いは日に日にその身を蝕んでいる。
その呪いが現れているのは、はやてが兄と慕う者と暮らし始めてから666日目のことであったのは偶然かそれとも誰かの意思なのか。
ただ明らかなのは、入学してから一週間と経たぬうちにはやての下半身に麻痺が起きたことだ。
けれど、少女たちはまだ知らない。
未来に待つ運命を。
ただ今は、まだ見ぬ未来に期待を膨らまし胸を躍らせている。
既に既存のレールからは外れている。
先を知る術はない。
さて、それでは語ろうか。
偶然の潜む必然の物語を。