旧版 ・ 魔法少女とバンパイア   作:さっさかっぱー

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十一話 - 吸血鬼と嵐の前の静けさ -

「それで?原因は相変わらず分からんのだろう。何度も呼ばれることはないと思うが。」

 

はやてたちが聖祥に入学して二年が経った。原因不明の下半身麻痺によって車椅子になった今でもはやては学校に通っている。月音もDIOも基本は家にいるから送り迎えなどは容易くできる。そして何より、二人とも年の離れた妹に非常に甘い。厳しく叱ることはあるが、叱った後はたいていはやての好物が食卓に並ぶ。

 

はやてが車椅子になっても周りの反応はあまり変わらなかった。強いて言えば、なのはに絡む男の子がはやてにもちょっかいをかけるようになったというくらいか。ちょっかいをかける男共を苛烈な金髪女子が追い払う光景は聖祥の恒例行事になりつつあるとDIOと月音は以前はやてに聞いたことがある。

 

「何度もお呼び立てするのは申し訳ない。ですが、原因不明だからこそ医者と患者のコミュニケーションが大事になるんです。不測の事態にも対応しなければなりませんから。」

「…すまない。どうも気が立っていたようだ。」

「いえ、子供とはいえはやてちゃんのお世話も大変でしょう。」

「いや、ハヤテの世話は苦に感じたことはないが…。昨日少しあってな。すまない。なんの話だったか。」

「週一の問診は、はやてちゃん自身に何かおかしなことは起きてないかを簡単に検査するためのものなんです。そして今回の検査入院はもう一度精密検査をして他の部位が健全であるかどうかを確認するためのものです。」

「ああ、そう聞いている。」

「はやてちゃんの下半身が始まったのはだいたい二年前、その時はまだ右足の膝から下のみの麻痺でした。ですが…。」

「それ以降麻痺の範囲が広がっているのは知っている。改めて聞くまでもない。」

「…足の麻痺で止まればまだいい。下半身付随になろうとも治療できる可能性は残る。ですがこのまま麻痺範囲が広がっていくと…、命の危険があります。」

 

そう言われ沈黙するDIOの表情をこの医師はどう見たのか。

医師は続ける。

 

「今、石田先生がはやてちゃんの検査入院後の問診を行なっています。石田先生によると下半身麻痺以降、麻痺部分の拡大は起きていない。今回の検査でも麻痺の拡大は起きていないとのことですが。…憶測で語るのは医者の仕事ではないが、それでも最悪の覚悟はしておいてください。」

 

「ああ。」

 

一拍おいて答えるDIO。医師はその後も検査入院のことや、違う医院の紹介についても話す。

 

「今日はありがとうございました、間先生。またよろしくお願いします。」

「ええ、原因究明に力を尽くします。」

 

そう言って退出したDIOははやてと合流する。

 

「ディオにーさん!迎えに来るん待っとたで!月音にーさんは?

「今は来ていない。昼食の準備をしている。」

「そうなん?にーさんたちの料理食べるの久しぶりやから楽しみや!」

「ツクネも腕によりをかけると言っていたからな。楽しみにするといい。お世話になりました、石田先生。」

「いえ、私もはやてさんとおしゃべりするの楽しかったですから。それではお大事に。またねはやてちゃん。」

「またなー。」

 

そう言って歩き去る石田医師を見送るはやてが言う。

 

「働くお姉さんってかっこええな!」

「そうだな。」

「お色気ムンムンや!」

「……。」

「あたっ!」

 

取り敢えずDIOははやてにデコピンをする。

 

 

雨上がりの道を車椅子を押して帰る途中で、DIOはふと思い出したようにはやてに言う。

 

「そうだ。一昨日から俺の親戚が来ている。」

「え!ディオにーさんて親戚おったん?」

「何を言う。俺も人の子だ母も入れば……父もいる。それで当分はこっちにいるそうだ。だから最初に青野家の方に行くぞ。」

「えー。ディオにーさんの親戚の人も一緒に住まんの?」

「ハヤテに確認も取らず家に入れるわけないだろう。俺たちが住んでいるのはハヤテの家なんだから。」

「じゃあ一緒に住もうや!わたしがそう言えばええやろ?まだ部屋に空きがあるんやし。」

「…本人が了承すればな。」

「じゃあ聞いてみる!また家族が増えるな!」

「…増えればいいというものでもないだろうに。それにずっといるわけではないぞ?」

「どんな人なん?」

「俺の従兄弟だ。娘をひとり連れてきている。為人は…。まあ会って見るといい。…善人であることは保証する。」

「へーそうなんや。楽しみにしとくな!」

 

話しながら二人は仲良く帰っていく。

 

 

○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○

 

DIOがはやてを連れて帰るころ。青野家では掃除が行われていた。

月音を手伝っているのは黒髪の青年だ。

 

「ツクネ、皿はこっちでいいか?」

「ああ、そっちでいいよ。ついでにコップもお願いできる?」

「分かった。しかし、意外に量が少ないな。」

「DIOはともかくオレは食器にこだわりはないからね。必要最低限あればいいさ。」

「そうか。それにしてもすまないな。俺と娘の分まで用意してもらって。」

「その話はもう終わったでしょう?君の言葉を借りれば共犯者なんだから遠慮は無用ってね。」

「そうだな。…これからいろいろと頼む。」

「対価はもうもらったんだ。願いは叶えるさ。オレもDIOもね。」

「対価か…。ツクネも店主と面識が?」

「うん。……いろいろお世話になったよ。」

「……そう言えば、子供を一人世話しているんだったな。結局、名前も聞けずじまいだった。教えてもらえるか?」

「んー。もうそろそろ着くだろうし。会ってからのお楽しみで。いい子には違いないし。きっと娘さんとも仲良くできるよ。」

「そうか。仲良くなってくれることを願うよ。娘はあまり友達付き合いとは縁がなくてね。」

「大丈夫。きっといい関係になるよ。少なくとも、ここでは家族になるんだから。」

「…姉ができるのか。娘もきっと喜ぶ。」

「そう言えば今なにを?」

「まだ寝ている。昨日は遅くまで起きていたし。まだ目覚めてから二日だしな。当分はゆっくりさせるよ。」

「そっか。…多分住んでる部屋は変わると思うけど取り敢えず必要なものがあったら言ってね。いろいろ揃えなきゃいけないし。」

「ああ、世話になる。しかしツクネは頼りになりそうだ。何分はじめての育児でな。一昨日は死にものぐるいだったが、落ち着いて考えると条件を一つ付け加える必要があったな。まあ、杞憂だったが。」

「大丈夫。これでも育児経験は豊富だしね。頼りになる知り合いもいるしなんとかなるさ。とりあえずは帰る算段をつけないと。まあ、知り合いの返信待ちではあるけど。」

「何から何まですまんな。」

「向こうで合流したらまた帰ってくるんだから一緒でしょ。…これから長い付き合いになるんだから。月並みだけど、そういう時はありがとうさ。」

「そうだな。」

「皇帝殿は下々の会話が苦手と見えますね。」

「ハーレム主と比べられても困る。」

「うっ。…君も似たようなもんでしょ。」

 

そう言って笑い合う二人だが、チャイムがなったことで二人の会話は止まった。

 

「出てくるよ。洗い物が終わったらゆっくりしてて。」

「分かった。」

 

月音がドアを開けるとそこに立っていたのは外に立っていたのは慧だった。

 

「あら、細波さん。いらっしゃい。ずいぶん早かったですね、早くても明日か明後日くらいだと思ってましたよ。」

「いやー、旦那方の一大事でしょう?居ても立ってもいられずに飛んできた次第ですよ。」

「話は後で、取り敢えず入ってください。話は後でまた呑みながら話しましょう。」

「…呑みながら話せる話ならいいんですがね。」

「少なくともテンションは上がりますよ。保証します。DIOのテンションも可笑しなことになってましたし。」

「……それを可笑しなことで済ませられるのは月音の旦那くらいのもんですよ。こっちはただの人間なんですから。」

「はは。春とはいえまだ寒いですし。どうぞ。」

「じゃあ、失礼しますね。」

 

 

「ん?ツクネ彼は?」

「ああ、彼は細波慧さん。仕事仲間みたいなものかな。昨日話した人。」

「ああ、なるほど。」

「えっと?」

「あ。すいません、細波さんこちらDIOの従兄弟です。」

「はぁ!?」

 

○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○

 

所変わって高町家。そこでは作戦会議が開かれていた。

 

「…ねえ。これ今からする必要ある?」

「りっちゃん、これは大事なことなの。」

「それにアンタ夏に引っ越しちゃうんでしょ?だったらいい機会じゃない。」

「そうだよ!最後の機会なんだから今から準備しないと。」

「…けど、六月四日でしょ?流石に…。」

「甘い!甘いわよ!ねぇ、律。アンタプレゼント何にするかすぐ決められるの?」

「……本。」

 

少し悩んで出した答えがこれだ。これにはなのはたちも苦笑い。

 

「えっと。私はうれしい…かな?」

「りっちゃんたちが読む本はむつかしいの。」

 

仲良さげに話す律とすずかを見て興味をもったなのははその時話題に上った本を貸してもらったことがある。その時借りたのはエミリー・ブロンデ作「嵐が丘」。なのはは国語を諦めた。因みにアリサは読みきった。これが小学二年生の夏である。小学二年生の読書感想文でエミリー・ブロンデが登場すると予想した先生がいただろうか。

 

「だから今のうちに考えるのよ!プレゼントがかぶってもやだしね。」

「ディオさんと月音さんは何を贈るのか予想がつかないの…。」

「はやてちゃんのお兄さんたち?結局月音さんとはあったこと無いな。」

「私はあったことあるわよ!ディオさんと違っていかにもな日本人だったわ。」

「…優しそうな人だった。」

「頼りになるの!」

「私だけ仲間はずれ…。」

「けど、大抵家にいるらしいのにおかしいわよね。すずかが来た時に限って用事が入るなんて。環境調査のお仕事だっけ?」

「はやてちゃんが言うにはセイタイケイの調査なんだって。たまに出張が入るみたい。」

「…不定期なの?」

「そうらしいの。」

「…嫌われてるとかないよね?」

「バカね。あったことない人をどうやって嫌うのよ。」

「月音さん、公園でよく子供たちと遊んでるしそれはないと思う。」

「りっちゃん公園行くの?」

「…ずっと家で本読んでると思ってた。」

「アリサ、そんなに引きこもりに見える?」

「「「…ごめん。」」」

「みんなしてなんで謝るの。」

「…きっと不幸なすれ違いよ!今度遊びに行くときは会えるわ。」

「なんで目を反らすの?」

「そうなの。月音さんがつくるお菓子は美味しいから今度みんなで作ってもらおう?」

「ねぇ。」

「…うん、そうだよね!今度こそ会えるよね。」

 

その後少女たちは落ち込んで部屋の角で本を読み始めた律を慰めることに時間を費やした。因みにその時読んでいた本は中島敦作「山月記」。なのはがその本から視線を外したのは悪いことではなかろう。

 

○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○

 

「くそ!なんでうまくいかねぇんだよ!」

 

そう言って公園のベンチを蹴飛ばしているのは宮城定行。

 

「バタフライエフェクトだ。俺たちの存在が原作との歪みを生んだんだ。」

 

木にもたれかかってそう言うのは、霧山健人。

 

「歪みとか原作との差とかはどうでもいいんだよ!なんで俺のなのはたちはこっちにこねぇんだ。計画ではとっくに友達になってるはずなのに…。」

「最初の印象が最悪だったな。」

「お前のせいだろうが!俺のなのはに先に声かけやがって。」

「それでいきなり攻撃してきたのはお前だろうに。ハーレム目指すなら懐を広く持てよ。」

「お前に言われる筋合いはない。このまま原作に突入したら危険だから一時的に手を組んでるだけだ。おそらく二週間以内に始まるしな。」

「だからこそ原作との差が大事になるんだろうが。この時点ではやてとなのはが面識を持ってる時点で少なくともA'sは原作知識が役に立たない。それにおそらく転生者は他にもいる。」

「ああ、こっちでも確認してる。まあそいつは潰したが。」

「どんなやつだった?」

「大学生くらいの男だ。暗かったし興味もなかったから顔は覚えていない。」

「バレてないだろうな。」

「その頃通り魔騒ぎがあったからそいつになすりつけた。」

「…そうか。」

「それで?お前が知ってるのはどんなやつなんだ?貰った能力の元ネタに近い外見になるんだろう、キリト君?」

「ああ、おそらくな、ジョジョ。翠屋で見かけたそいつは青野月音を少し成長させた感じだった。右手に≪魔封じの鍵≫もあったし間違いないだろう。…見慣れん十字架もあったが。」

「青野月音?」

「元ネタはロザリオとバンパイアっていう漫画。アニメ化もしたぞ。」

「知らねーな。」

「その主人公だ。能力は原作のどのタイミングかによるが、基本は吸血鬼だ。だがジョジョの奇妙な冒険と違って太陽は問題にならない。もし最終巻の段階であれば弱点は水。けれど、その不死性は非常に高い…くらいか。基本肉弾戦主体。もし水を食らって問題なければ不死性はそれほどでもない。といったところか。」

「ふーん。ま、俺の敵じゃねえな。要は死ぬまで殴ればいいんだろ?」

「まあそういうことになるな。もう一人はディオ・ブランドー。」

「まじで?」

「ああ、運動会とかで学校に来ているのを見た。」

「じゃあスタンドバトルが出来るのか…。やったぜ!しかもディオが相手だろ?」

「スタンドを持ってるとはかぎらんけどな。」

「まあいいや。まさかジョジョの原作再現ができるとは…胸が熱くなるな。」

「年齢はおそらく社会人ほど。ガタイもいいからもしバトるんなら気をつけろよ?」

「所詮ラスボスなんてやられやくだしなんともねーよ。」

「…そうかい。あと最後の一人は今の担任の、雪村先生だ。」

「マジで!?」

「ああ。原作は結界師。空間支配系の能力でテクニックタイプ。攻略は攻撃までにタイムラグがあること…くらいかな。実際に相対しないとわからんが下手すると相手の攻撃が見えない可能性がある。スタンドのラッシュが一切通じない可能性も一応伝えておく。」

「ああ?スタンドが?」

「ああ。空身っていってな。自身に対する呪術を一切無効化する。スタンドが何に分類されるかはわからんが可能性は考慮しとけ。」

「まあ、もし相手するならそっちに投げる。…ただディオには手を出すなよ。」

「はいはい。」

「俺の邪魔をすれば同盟だろうがなんだろうがお前から潰すからな。」

「はいはい。さいきょーさんには従っときますよ。」

 

この二人の間に信用も信頼もない。いずれ敵対することは分かっているし、そもそもこの同盟関係は保険でしかない。

 

霧山健人にしてみれば、宮城定行は隠れ蓑だし、

宮城定行にしてみれば、情報屋程度でしかない。

 

それでも原作に介入する気のある二人は保険としてお互いに不可侵であるように同盟を結んだ。他の転生者が存在することはお互いの前提知識である。だからこそこれ以上邪魔されないように同盟を結んだのだ。

 

お互いにいつ裏切るかはもう決めてある。

問題はそれまでに如何にフラグを立てるかだ。

 

○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○

 

「はじめまして、八神はやてって言います。ディオにーさんの従兄弟やんな。よろしゅうな!」

「よろしく。DIOから話を聞いたよ。はやてちゃんって呼んでもいいかな?」

「はやてでええよ!ディオにーさんの従兄弟なんやったら私のにーさんでもあるんやしね!」

 

黒髪の男と親しげに話すはやて。

そのはやてに近寄る金髪の少女。

そしてはやてを見つめて一言。

 

「…お姉ちゃん?」

 

そのときはやてに電撃が走る!

 

「…っ!この子お持ち帰りしてええ!?」

「これからは一緒に住むんだ。お持ち帰りも何もあるまい。」

「家族が増えるたぁ、めでたいめでたい。」

「細波おじさん!来とったんや!」

「久しぶり。はやてちゃん。」

 「賑やかでいいな。」

 「でしょ?まあここならのんびり暮らせるよ。グレアムさんと連絡がつくまですることもなさそうだし、その間は父娘でふれあいなよ。」

「お父さん、何話してるの?」

「仲良く出来そうだなって話してたんだ。」

「うん!お姉ちゃんができて嬉しい!」

「よかったな。ア「あ!まだにーさんたちの名前聞いとらん!」はは。そうだったか。」

「そうやで!わたしだけ自己紹介なんてふこーへーや!」

「ごめんごめん。じゃあ改めまして。ほら。」

「…アリシア・テスタロッサです。…よろしくお姉ちゃん。」

「ルルーシュ・テスタロッサです。アリシア共々これからよろしく、はやて。」




始まる前に崩れ落ちる原作。

どうもルルーシュの喋りが安定しない…。

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