「じゃあ、アリシアちゃん病気やったん?」
「たぶん?」
「なんで疑問形なん。」
「ママ待ってたら、ピカーってなってね!目が覚めたら、ここにいたの。」
「ピカー?」
「ピカー!」
「「ピカー!!」」
戯れる少女たちを尻目に大人たちは話をしている。
「するとルルーシュの旦那は管理世界から?」
「だから旦那はいいと言っているだろう。ああ、魔法動力炉の実験区画に住んでいた。そこで事故に巻き込まれてな。この世界まで飛ばされたんだ。」
「なるほどそれで俺が呼ばれたわけですね。」
「いや、それは関係ないんだけどね。」
「え?」
「そもそも俺達は裏会と時空管理局がつながっているなど知らなかったのだ。」
「あれ?言ってませんでしたっけ?」
「細波、心にもないことを言うな。仕事関係のことで口を滑らせたこてとはなかろう。」
「オレたちが呼んだのは、来るであろう管理局員を‘読んで’欲しくてね。」
「…ほう?」
「話を聞く限り事故の原因は管理局側の職務怠慢だろう。不祥事を握りつぶすなどよくあることだ。次元震とやらで飛ばされた人間など容易く消せる。」
「オレ達の伝手はグレアムさんくらいだもんね。」
「とはいえ俺もよく知らないんすけどね。管理局って組織。」
「ざっくりいえば司法組織だ。それも、警察権と裁判権を併せ持ったな。」
「……高校を卒業できなかったオレに詳細を…。」
「お、本場の人の説明を聞くのは初めてなんですよ。」
そういう月音と慧に対しルルーシュは説明を始める。
「では、管理局の成り立ちから___
そもそも時空管理局ができたきっかけは次元間で発生した戦乱の終結の結果出来たもので、現代の地球で言う国際連合のような組織である。所在は第一管理世界ミッドチルダ。いくつかの世界を管理下に置きその統治を行なっている。
その機能は主に
・管理世界の治安維持。
・次元間の問題の調停。
・ロストロギアの封印。
である。
そして管理世界の住人の大半にはリンカーコアと呼ばれる器官を持ち、魔法を行使できる。その魔法がこの組織の運営、というか管理世界の存続の肝であり、次元間の戦乱後に凍結された質量兵器の代わりとなる抑止力であり、生活の基盤となるようなクリーンなエネルギーとなっている。
___といったところか。」
「気に入らんな。」
「ほー。…魔法ね。何ができるんで?」
「いろいろだ。一般的なものは肉体強化、飛行、質量体の形成…といったところか?稀に精神操作などもあるらしい。」
「なるほど…。ありがとうございます。」
「ロストロギアって何?」
「ああ、高度に発展した魔法文明の遺産だ。所謂オーバーテクノロジーか。」
「…それを管理局が管理しているのか?」
「そう聞いている。」
「ホウ…。」
「じゃあここも管理されてるんで?それなら裏会と管理局にパイプがあるのは理解できるんですが…。」
「いや、管理世界を全て覚えているわけではないが、地球という星はなかった。おそらくは過去にロストロギアによる事件がここであったんだろう。物によっては次元転移するものもあるからな。」
「はやての下半身付随もそれの影響らしいよ。こっちの伝手とはその縁で知り合ってね。」
「…なるほど、久しぶりに会ったら車椅子だったんで驚きましたよ。」
「一応こっちであたれるだけあたってはみたんだけどね。曰く、呪いみたいなもんらしい。」
「バランスを崩すほどの力が加わっているだったか。」
「あれ?力がもっていかれてるじゃなかったっけ?」
「プラスかマイナスにしろ力が加わっているのは変わらん。」
「じゃあこちらでも検査してみようか?器具はないから簡単なものになるが。」
「そうだね。お願いするよ。けど、ルルって魔法使えるの?」
「簡単なものならな。適正はCマイナーだ。」
「魔法まで貧弱なのか。」
「…既に人並みの体力はある。」
「この中では一番貧弱だろう?」
「肉体派の連中と比べ「ハヤテたちを入れてだ。」………。」
「娘と散歩に出て先にばてる父親とは…。情けない。」
項垂れるルルーシュは、しかしあることに気がつく。
「…待て。つまりこの近くにロストロギアがあるということか…?」
「……そうなるな。」
「ああ、そう言えば。」
「…勘弁してくださいよ旦那方。なんでこう長寿な連中は危機感が薄いのか。」
「吸血鬼共と一緒にするな。俺は違う。」
「ん?」
「あ、けど。グレアムさんの話によると、北海道旅行の時に影響を受けたらしいし近くにあるわけじゃないかも。」
「そもそも俺達が危険に気がつかないわけなかろう。こう見えてツクネ探査範囲は広い。」
「ロストロギアっていうのに反応するかはわかんないけどね。」
「つまり危機感が薄いのではなく、危機感を持つ必要がないのだ。」
「不意打ちでミンチになったのに?」
「それはツクネが無用心なんだろう。このDIOであればそんな不意打ちもらうはずがない。」
「仮定の話ならなんでも言えるよね。」
「実際にミンチになったやつよりは信憑性はあろう?」
そう言ってにらみ合う二人だったが、慧が二人を止める。
「話はわかりました。で、管理局員てのはいつ来るんです?」
「わからん。」
「は?」
「こっちの伝手と連絡がつかんのだ。」
「返信が無くてね。そもそも最近グレアムさん連絡よこさないし。」
「頼まれた報告はきちんと送っているにもかかわらずな。」
「報告?」
「お前は知っているだろうルルーシュ。」
「ん?ん…ああ、そうか。どうもぶっ続けで映画を見た感覚でな。まだ全てを把握できんのだ。」
「なんの話で?」
「いや、こちらの話だ。それで話の続きだが、はやてがロストロギアの影響を受けているのは既に分かっていたのでな、経過を一ヶ月ごとに纏めて向こうに送ることになっていたのだ。」
「なるほど。それが伝手だと。」
「だが連絡がつかん。」
「向こうに届いているとは思うんだけどね。」
「今は、返信待ちになっている。」
「俺、仕事あるんすけど。」
「正直、タイミングが悪かった。今日中に返信がなかったら要件まとめて連絡するつもりだったんだ。」
「なるほど、俺が急きすぎたと。」
そういう慧だが、実は休暇をとってこちらに来ている。副長に友人に会いに行ってくると言えば、友達がいたんですねと驚かれたのはいい思い出だ。
「ま、今回は休暇とってるんで一週間はこっちにいられますよ。それ以上は無理ですけど。」
「細波おじさん長居できるん!」
「ながいー!」
「うわ!」
突然現れたのはちびっこ二人。会って間もないが、もう打ち解けたようだ。その様子を見て保護者たちは微笑んでいる。
「一週間くらいな。」
「「わーい!」」
「細波おじさんの話面白いんよ!」
「そうなの?」
「手に汗握るハードボイルドや!」
「はーどぼいるど?」
「秘密の組織に侵入するイケメン捜査官!その捜査や如何に!」
「いかにー!」
そんなことを言いながら二人はまたはやての部屋へ駆けていく。
「車椅子で突っ込んでくるとは…。相変わらず元気なようで。」
「仲良くなったようでよかった。」
「だから言ったでしょ?いい関係になるって。」
「とは言えそろそろ寝る時間だ。」
「ん?もうそんな時間?」
「ああ、早くハヤテたちを寝かせねば酒盛りもできん。」
「今日もするつもりですかい?」
「客人が来ているのだ。もてなさぬのは失礼だろう?」
「自分がしたいだけだろうに。」
そう言われ笑いながら歩き去るDIOを見ながら慧はルルーシュに聞く。
「ルルーシュの旦那、困ったことがあればいつでもどうぞ。あなたが死ぬまでは付き合えませんが、俺が生きてる限りはなんとかしましょう。」
「…ありがとう。」
「とりあえずは、戸籍の準備をしときますよ。」
「助かる。」
「…だが、」
とルルーシュは続ける。
こんなことを続けるのであれば信頼関係などありえない、と。
それに対し慧は軽く答える。
「…こりゃあ、お見逸れしました。」
やっぱ旦那方のご家族は人外ぞろいだ。と笑いながら。
「そんな荒っぽくやったらわかるでしょうに。細波さんは人がいい。」
「月音の旦那。いい人は人を試すなんてことしませんよ。それに普通は、荒っぽかろうが‘読まれている’のを気が付きませんよ。」
普通はね。と続ける慧にルルーシュは言う。
「敵対するつもりはない。そもそもそっちの二人ほど規格外でないしな。ただ、家族と静かに暮らしたいだけだ。」
そういうルルーシュに慧は言う。
「旦那方の家族なんだ。信じますよ。」
だったら初めから試すなよ。と言うルルーシュに、そうもいかねぇ立場なんですよと笑う慧。二人の様子を見ながら子供たちを気にしている月音はあることに気がついた。
「そう言えばアリシアちゃんってお風呂一人では入れるの?」
「いや、まだ家族で入っているが。」
「じゃあ、ルルは久々にゆっくり入れるね。」
「??」
「多分いまDIOがはやてとアリシアちゃん纏めて風呂に入れてると思うよ?」
そう聞くやいなや飛び出すルルーシュ、それを見て笑う慧と月音。
夜はまだ長い。大人たちの夜は更けていく。
○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○
翌朝、慧は布団で目を覚ます。寝る前のはやてとアリシアの一言もあって以前のような醜態を晒すこともなく就寝することができた。
そもそも、旦那方が蟒蛇なんだ。諜報員を酒で潰すってどんだけだ。などと考えながら洗面所に向かうとはやてと会った。
「おはようございます。細波おじさん。」
「ああ、おはようはやてちゃん。洗面所を使わせてもらうわ。」
「いま誰もおらんかったし大丈夫やと思うよ。ディオにーさんは毎朝の庭仕事しとるし、月音にーさんは朝食作っとるから。」
「いつもどおりか。ルルーシュの旦那は?」
「ルルにーさん?んー、多分まだ寝とるんちゃうん?アリシアちゃんもまだ見とらんし。」
「そっか、ありがと。……学校は?」
「まだ、春休みやで!来週から三年生や。」
「……そっか。じゃあ、洗面所を使いに行くよ。」
「朝ごはんになったら呼ぶねー。」
「…はいよ。」
おそらく月音の手伝いに行くはやてを見ながら慧は一言。
「…旦那方まだ話してないのか。」
慧が洗面所に行くとルルーシュがアリシアの顔をタオルで拭いていた。
「あら。タイミングが悪かったな。おはよう、ルルーシュの旦那。」
「ああ細波か。おはよう。すぐ済むから少し待っていてくれ。」
「んんー!」
「アリシアちゃんもおはようさん。」
タオルで顔が隠れて入るがアリシアも元気なようだ。パタパタと手を振り慧に挨拶をしている。
「元気なようで何より。」
「昨夜は楽しんだようだな。」
「まあ、ぼちぼちっすかね。はやてちゃんに釘も刺されたし。」
「そうなのか?」
「あ、そっか。アリシアちゃんと早々に退散してたもんな。はやてちゃんを怒らせるなよ?怖いから。」
「?覚えとくよ。」
そう話していると顔を拭き終えたアリシアも話に加わる。
「はやておねえちゃん優しいよ?」
「優しいな。けど怖いのさ。」
「??」
「そういうもんさ。」
「ほら、これで完了だアリシア。」
「ありがとうパパ。」
「どういたしまして。」
「ほう、こりゃしっかりしてますな。」
「自慢の娘だ。」
そう言ってアリシアの頭を撫でるとアリシアははにかんだ。
「そりゃあ、いい。」
そう言って笑う慧。
「さ、アリシア手伝いに行くぞ。」
「うん!はやておねーちゃんに会いに行きたい!」
「キッチンにいたよ。月音の旦那を手伝ってる。」
「ありがとう細波おじさん!あと先に使わせてもらってありがとう!」
「きちんとしてるねぇ。さ、いっといで。」
「すまないな。」
「構わんよ。ちびっこの相手は慣れてる。」
「…そうか。」
「そう見えないって?」
「いや、素が出てきたなと思ってな。」
「…ま、同じ釜の飯を食った仲だしな。」
「いかないの?」
「今いくよ。」
「そんじゃ朝食楽しみにしてるよ。」
慧はアリシアがはやての名前を呼びながらかけていくのを見送り顔を洗う。洗顔の途中ではやてに呼ばれたが果たしてアリシアは間に合ったのだろうか。
「おはようございます旦那方。」
「おはよう細波さん。」
「おはよう。」
「おじさんこれ私がつくったんよ!」
「コップは私が出したの!」
「そうかい。そりゃあいい。そんじゃお待たせしました。」
「じゃあ食べようか。ルルも新聞しまって。」
「ああ。」
「「「「「「いただきます。」」」」」」
○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○
朝食後、午前十時。
いつもであれば、
月音は自室にこもって妖術の研究を、
DIOは庭に出て家庭菜園の手入れを、
している時間。
けれど今日、はやての部屋に話をしに出向いた。
細波は二度寝、ルルーシュはアリシアに本を読んでやっている。
けれど三人ともはやての怒声で作業を中断せざるを得なかった。
細波は飛び起きたし、アリシアは泣き出した。
「出てって!」
そう言ってはやては月音とDIOを部屋から追い出した。
「…やっぱり、学校に行けないのはショックだよね。」
「とは言え仕方あるまい。先延ばしにしてもいいことはなかろう。…どのみちそうせざるを得ないんだ。」
リビングで話していると、不機嫌そうにルルーシュが入ってきた。
「もう少し考えてくれ。アリシアが泣いたぞ。」
「ごめんね。まさか、あそこまで振り切れるとは思ってなくて。」
「…退院後すぐだからな。不安もあったんだろう。」
「しかし、はやてが怒鳴るとは思わなかったな。聞き分けのいい子なんだろう?」
「…聞き分けのいい子ね。」
「どうした?」
「なんでもない。それより泣いたというアリシアをほったらかしにしていいのか?」
「落ち着いたら、はやてのところに飛んでいったよ。……。」
「娘を取られて落ち込まないの。いつか旅立つんだから。」
「いつか嫁に出ることに……。だめだ!娘はやらんぞ。少なくとも俺…いやDIOより強い男でないと安心して嫁にだせん!」
「俺を引き合いに出すな。」
昼食の時間になるとはやてはリビングに出てきた。怒鳴ったことを謝罪するといつも通りに振る舞い始めるが、どこか無理をしていることは明らかだった。もっともそれを指摘する者はここにはいなかったが。
○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○
はやては次週からの新学期に顔を出すことはなく、クラスメイトには病気の療養のために休学することになったことが伝わった。あらかじめ伝えていた友人が驚くことはなかったがやはりどこか寂しそうである。
そして新学期が始まってから一週間ほど。
細波は一度報告のために夜行に戻った。
ルルーシュとアリシアは海鳴での暮らしになれたようだ。
とは言えほとんどは顔合わせで海鳴にはいなかったが。
月音に連れられ様々なところに行ったようだ。
はやては毎日とはいかないまでも病院通いがあるために友達と遊べず不満げ。その分新しく出来た妹とよく遊んでいる。友人たちには新しく出来た妹のことをよく自慢している。
休学とは言え義務教育ではあるので毎日のように課題がでる。はやて一人のために課題を作っている時音には月音もDIOも頭が上がらない。
「毎日ありがとうございます。」
「いえ、これも仕事ですし。それに学校から家に帰る中継地点なんですよ。だからあまり苦にはなりません。」
「それでもはやてのためにここまでしていただいて。」
「病気では仕方ありませんし、これも縁です。出来ることはしますよ。」
「ありがとうございます。」
「それにしても細波さんと知り合いでしたんですね。ここで鉢合わせしたときは驚きました。」
「オレも驚きましたよ。世間って狭いんですね。」
「お仕事で知り合ったんですか?」
「いえ、オレとDIOってよく旅行に出たりするんですけど、その旅先で。先生はなんの縁で?」
「実家が家業をしてるんですけどその縁で。」
「なんの「ツクネー!」おっと。」
そう言ってアリシアが月音の腰に抱きついてきた。
どうも夕飯の準備が出来たらしい。
「あら。その子が噂の妹さんですか。よろしくね。」
「っ…はじめまして?」
月音の影に隠れて挨拶をするアリシアを見て頬を緩める時音。
「では、もう遅いですし失礼しますね。はやてさんによろしくお伝えください。」
「はい。ほんとにありがとうございます。」
「いえいえ。じゃあねアリシアちゃん。」
手を振る時音に恥ずかしながらも手を振り返すアリシア。見ながら去っていく時音を見送ると月音はアリシアに引っ張られながら家に入る。既に配膳まで終えているようだ。
「待たせてごめんね。」
「来たか。久々に揃うんだ皆で食べようではないか。…それでは食べ始めるか。」
「それにしてもDIOの調理風景は違和感がすごかったな。」
「ディオにーさんのご飯美味しいんよ!」
「たのしみー!」
「「「「「いただきます。」」」」」
「このシチュー美味しいな!」
「…!ママの料理より美味しい!」
「…!ほらあいつは研究一筋だから……。」
「それほど意外か?」
「おいしー!」
「その厳つさでこれは詐欺だろう。」
「DIOはオレより断然上手いから。」
「な!言ったやろ!ディオにーさんのご飯は美味しいんや。わたしも上手くなるかな…?」
「断然上手くなったぞ。そろそろ昼食を任せてもいいかもしれん。」
「ホンマに!」
「ああ。太鼓判だ。」
そう言ってハヤテの頭を撫でるDIO。嬉しそうに撫でられていたはやては思い出したように言う。
「そや!変な夢見たんよ。確か一昨日やったかな?アリシア達が帰ってきたら話そうと思ってたん。面白いんよ!海鳴公園でネズミがおはぎに追いかけられる夢!」