ここは海鳴市のとある山。夏休みになると虫取りに来た子供達で賑わうが、夏休み前にここに来る人はそうそうない。今日はそこで昨日のことを話すことになっていた。
「僕はこことは違う世界から来ました。」
DIOは遅れてくるそうで、先に始めているように連絡を受けている。
ユーノ曰く世界は様々な形で存在しておりそのうちの幾つかは魔法と呼ばれる技術で発達しているらしい。昨日の黒いのから出てきた石はジュエルシードと呼ばれる危険なものたちで、ある遺跡からそれを発掘しその運搬中に事故によって海鳴市に落ちたらしい。
「ごめんなさい!僕のせいです。もっと運搬に気を使っていれば…。」
なのははそれに答えず話を変える。
「魔法ってなんなの?」
[魔法とは貴方のようにリンカーコアと呼ばれる器官を持つ人間が扱える技術の総称です。]
気を使われたことを察してかユーノもそれにのる。
「僕たちのいた世界では、多くの人が持っていて。魔法による技術が発達してるんです。」
「私にはそれがあるの?」
[はい。マスターにはAランク相当の魔力が確認されています。しかし、簡易式の検査であるためある程度の誤差はあるかと。]
「魔力のランクって言うのはその人の持つ魔力の量で決まるんだ。Aランクだとかなり多い方だね。」
「ふーん?」
いまいちよくわかっていない様子のなのは。まあわかんないことは後で聞こうと思い、続きを聞く。
「それであの光線とか服が変わったのとかは魔法なんだよね?」
[はい。光線は封印魔法で、服が変わったのはバリアジャケットを形成したからです。]
「バリアジャケット?」
「防護服のことだよ。魔力で鎧みたいに身を守ってるんだ。ただの服よりずっと頑丈なんだ。」
「それであの黒いのは何だったの?」
[あれはジュエルシードにより発生した魔力の塊です。]
「遺跡の調査でジュエルシードは願いを叶えられるものらしいことはわかってるんだ。ただ、大昔に作られて放置されていたものだから内部が壊れているだろうって結論が出てる。願いを叶えられても相当歪んだものになるはずなんだ。」
「歪んだ?」
「思った通りの結果にならないって言うのかな?例えば…僕が喉が渇いて水が飲みたいって願ったとするよ?」
「うん。」
「そうするとジュエルシードから水が出てくるんだ。僕が溺れちゃうくらいに。」
[願い方によっては、感覚の麻痺によって喉の渇き自体がなくなる可能性があります。]
「うへぇ。」
「多分昨日は誰かの攻撃的な願いがあんな形になったんだと思う。昨日はほんとうにありがとう。」
改めて頭を下げるユーノだがなのはにはその様子が頭に入って来なかった。気がついたからだ。
「ねえ。もしかしてまだいっぱいその…ジュエルシードが街の何処かに落ちてるの?」
昨日はジュエルシードを封印する際ににナンバーを聞いた覚えがある。ナンバーが付いていると言うことは、複数存在する可能性が高い。
[はい。ジュエルシードは全部で二十一個。No.ⅠからNo.XXⅠまで存在します。昨日封印したものはNo.Ⅳですので、あと二十個ある計算になります。」
「あと、十八個だよ。僕が集めたのも二つある。」
ユーノが出したのはNo.XとNo.XⅢどうやら彼は自分で封印できる術を持っているらしい。
「まだそんなに……。ユーノ君「ダメ。危険なんだ。昨日は助けてもらってありがたかったけどこれ以上はダメ。僕だって一人で封印できるしこれ以上は大丈夫。後は任せて。」
「フン、嘘を着くならもっとうまくつけ。」
「貴方は…。」
「ディオさん。」
「探したぞ。話すにしてもこんなところでなくてもよかろうに。はじめまして、DIOだ。」
「…ユーノです。……嘘じゃありませんよ。昨日は不覚をとりましたが、もう大丈夫です。」
「…じゃあなんで助けてって言ってたの?一人で出来るなら昨日あんなことにはならなかったでしょ?」
「昨日は…「一人なんでしょ?一人で頑張ってるんだ。昨日はどうにかなったけど…次はもうないかもしれないんだよ…?あの黒い口に!…飲み込まれちゃうかもしれない。…私ね、夢に見たの。必死に逃げて逃げて、けど逃げ切れなくて。最後は食べられちゃう。……私には力があるんでしょ!私はユーノ君を助けたい!」
涙目になりながらそう訴えるなのは。けれどユーノは頷けない。彼は責任感が強い。人並みの想像力もある。もし自分が頼ったせいで彼女が怪我をしたら。怪我をする程度ならまだいい。後遺症を負うことや最悪の場合は……。けれど、確かに自分一人ではむつかしい。ここで断って自分が失敗したら、なんの関係のない人たちが危害を被る。なのはの協力は当然回収の成功率を上げる。けれどそれでも絶対はない。
なのははユーノを助けたい。きっかけは同情でも、それは彼女の意思だ。
ユーノはなのはに助けを求めたい。けれどそれは彼の心に反する。
ユーノはなのはに助けを求められないし、それがわかってもなのははユーノを助けたい。そんな膠着状態に陥った二人に声を掛けたのはDIOだ。
「では、俺も手伝おう。それなら文句あるまい?」
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所変わって青野家。珍しいことに閃が来ている。月音とDIOは普段八神家で生活しているため青野家が使われることはそうない。そのため来客などめったにない。ここが使われるのは、月一回の掃除と
「わざわざ来てもらってごめんね。助かったよ、閃君。これお茶ね。」
「ありがとうございます。いえ、どうせ近所ですし。こう見えて体は丈夫なんで。それにしても力仕事ならディオさんが適役じゃないですか?」
「DIOはなんか用事あるとかでね。ルルも今ちょっと体調崩してるし。」
「旅行疲れですか?昨日までどっか行ってたんですよね?」
「いや、精神的なもんだと思うよ。古い知り合いに会いに行ってたんだ。ルル達を紹介がてらね。」
「へー。じゃあ、ルルーシュさんとアリシアちゃんはこっちに住むことになるんですか?」
「うん。あと、ルルの家族も連絡がつき次第こっちに呼ぶ予定だったんだけどね。ゴタゴタが発生しちゃって。昼ドラ並にドロドロしてるの。」
「…昼ドラ?」
「ま、とりあえず、今日は助かったよ。あと、依頼にいろいろ注文つけちゃってごめんね。個人的なことなのに。」
「もらうもんもらってるんでいいですよ。ま、子守は夜行で慣れてます。二ヶ月くらいなら問題ないです。丁度いいことに、上の方から当分仕事は無しって連絡来てますし。」
「そうらしいね。…裏会はなんて?」
「海鳴市への進入禁止。しかも今後三年間。」
「そんなに?」
「ええ。稀にあるみたいですね。ある地域のみ進入禁止になるの。居住を移せまでは言われませんでしたけどね。」
「ふーん。引っ越して来てどんなもんだっけ?」
「えーっと…まだはやてちゃんが幼稚園に通ってたから三年くらい前だと思いますよ。」
「あれ?まだそんなしか経ってない?」
「三年って割と長いと思いますけど…。」
「閃君も年を取ればわかるよ。」
そう言って笑う月音に、苦笑いで返す閃。
「…協力は惜しみませんよ。細波さんからも言われてますし。……電話越しの声が震えてたのが気になりますが。」
「あはは。あの時はルルがぷっつんしててね…。」
「へ?ルルーシュさんが?ディオさんに絞られたもんだと。」
「事情が事情だったしね。まあ取り敢えずこれからよろしく。報告はいいよ。四六時中張り付いてくれてれば、無茶なお願いだとは思うけど頼んだ。」
「さっきも言いましたけど、もらうもんもらってるんでいいですって。あと、月音さんたちに貸しつくっとけるのは大きいですし。」
「怖い怖い。無茶なことは言わないでよ。」
「出来ることしか言いませんよ。…そう言えば、ちびっこたちは?」
「二人とも図書館に行ってるよ。前に約束してたらしいよ。」
「はやてちゃんきちんとお姉ちゃんしてますね。……それにしても良く二人だけで行かせましたね。」
「そろそろ独り立ちしないと。」
「月音さんが?」
「そんな過保護に見える?」
「割と。」
「即答か…。」
「最近は親子関係の問題とかよく聞きますし、それよりはいいんじゃないです?」
「…問題がないのが問題ってね……。」
「…?哲学的ですね。」
「家庭を持てばわかるよ。閃君彼女とかいないの?そろそろ結婚とかありそうな年だけど。」
「仕事柄恋愛はむつかしくって。それにもし子供も妖混じりだったらって考えると悩みますしね。…まあ、いい人にあったら考えます。月音さんだってそういうひ「ツクネ、裏使うぞ。」
「お邪魔します。お久しぶりです!閃さん!」
「久しぶり。なのはちゃん。」
「いらっしゃいなのはちゃん。その子が昨日追っかけてたフェレットなんだ。夜外出るときは気を付けなよ?おかえりDIO。時間は気にしててね。そろそろみんな帰ってくるから。」
「ああ。まあ長くても二時間ほどだ。」
「じゃあそのくらいに夕飯作るよ。なのはちゃんは食べていく?食べてくなら桃子さんに電話するけど。」
「えっと…。昨日遅くに出たから今日は早く帰らないと。」
「あー、そうだね。閃君は食べていってね。」
「ありがとうございます。」
「ハヤテも喜ぶ。会いたがっていたぞ?」
「そうはいっても月に一回は会ってるじゃないですか。」
「なかなか外に出る機会がないからな。悪いがよろしく頼む。では、ナノハこっちだ。靴は持ってこい。」
「はい!」
DIOの後ろをついて行くなのはを見送ると月音は閃に言う。
「じゃあ夕飯作るの手伝ってくれる?」
「はい。出来ることならやりますよ。」
「ご飯はあっちで食べるから移動しようか。」
「こっち冷蔵庫空でしたもんね。」
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なのはがDIOに連れられ青野家に来た頃、はやてとアリシアは図書館から帰宅途中だった。
「連れてきてくれて、ありがとう!」
「約束しとったからな!アリシアもう字読めるんやね。驚いたわ。ルルにーさん日本来たことあったんかな?」
「けど、ねーさんに読んでもらえて嬉しかった!また読んでね。」
「家に帰ったら読んだるで。本も割と借りれたし。車椅子は悔しいけど便利やわー。」
「本いっぱいでおもたそうだけど大丈夫?」
「電動やし大丈夫。アリシアは?もうちょっと歩くけど。」
「大丈夫!竜ねーさんにも元気がいいねって褒められたもん!」
「疲れたら膝の上に来てもえーからね。…竜ねーさんどんなやった?」
「んー、最初は怖そうな人だなって思ったんだけどね、すごい元気だった!」
「確かに怖そうなかんじはするわ。それに、あの人が元気なさそうにしとるの想像できへん。どんなとこ住んどったん?山の奥の方言うとったけど。」
「えっとね。周りが木ばっかりでね。パパにおんぶしてもらったの!…けど、パパが途中でばてちゃって。にーさんがおんぶしてた!」
「ルルにーさん…。やっぱひ弱なんね。っていうか月音にーさんルルにーさん背負って山登ったん!?」
「うん!楽しそうだから私も乗っけてもらったの!」
「なん…やて…。割と重い荷物持ってたと思うんやけど?」
「ん?にーさんが持ってたと思うよ?」
「月音にーさんすげぇ。」
「それでね!おっきな門があってね、その向こうにお姉ちゃんがいたの!」
「へー。竜ねーさん結構ええとこすんどったんやね。」
「あのね。そのへんの山全部がお姉ちゃんの家なんだって!」
「えっ。」
「それでね、おっきな湖もあってね、そこの中に別荘もあるんだって!」
「湖の中に?」
「うん!今度連れてってもらう約束したんだ!」
「……それはええね。」
その時のはやての表情は幼子を見守る母親のようだったという。けれど、楽しげに話していたアリシアの表情は一変した。
「んー。けどね?途中でパパたちとなんかむつかしい話してた。」
「竜ねーさんとルルにーさんが?」
「にーさんも。」
「月音にーさんも?」
「うん。それで話してたら、バタバタし始めてね。すぐ竜ねーさんところ出たの。」
「え?早めに出たん?」
「うん。それでえっとヤギュウ?って所行ってね、そこでいろんな子と遊んだの!」
「やぎゅう?……もしかして夜行ちゃう?」
「あ!それそれ!そこでいっぱい遊んだの!えっとね__
そう話すアリシアの表情は既に笑顔に戻っていた。はやては聞きたいこともあったが、楽しげに話すアリシアの邪魔をしたくないと楽しげに話すアリシアの話を聞いていた。
「「ただいまー!」」
「おかえり。図書館楽しかった?」
「うん!おねえちゃんがね。本読んでくれたの!」
「よかったね。アリシアちゃん。」
「おかえり二人とも。アリシア。手を洗ってきなさい。はやてタイヤを拭こうちょっと待ってくれ。」
「パパもう風邪はいいの?」
「…ああ。……覚悟は決めた。さあ、行ってきなさい。」
「ルルは一緒に行ってあげたら?タイヤはオレがやるよ。」
「そうか。じゃあこれ。」
「はいはい。」
ルルーシュは雑巾を月音に渡すとアリシアを連れて洗面所に向かった。それを見送り月音はタイヤを拭き始める。
「今日は楽しかった?」
「うん。楽しかったで!アリシアちゃんもう日本語読めるんやね。ルルにーさんも日本語堪能やし教えてもろたんかな?」
「…アリシアちゃんもう読めるのか。ルルは前に日本で暮らしていたことがあったらしいよ。学生時代にね。」
「やっぱそう?日本語うまいもんなー。今度英語教えてもらおうかな。」
「あー、言葉は早いうちからやるといいらしいしいいかもね。」
そこで会話が途切れた。タイヤはそろそろ拭き終わる。はやてはタイヤを拭く月音を見ながら、自分が友達に言った言葉を思い出した。
「女は度胸やで!なのはちゃん!」
何の気なしに言った言葉、と言うわけではない。頭の隅にある、無責任で説得力のない薄っぺらい言葉。けれど一歩進めるように祈りを込めて友人に送った言葉。
いつもどこか頭の片隅にある。兄と慕う人たちへの恩義と遠慮。
はやては、それはどこか友人の親に対する感情と鏡合わせで同じに見えて正反対なものだと考えている。彼女のは、誰かの役に立ちたい、と言う前向きなもの。周りが忙しく慌ただしくしていた時に感じた無力感。それが根幹にあるんだろう。
だけど、自分は…………。
言わずに一人になるのと言って一人になるのはなにが違うんだろう。ただ、状況を受け入れても捨てられる。わがままを言っても捨てられる。結局捨てられるのなら、どっちを選べばいいんだろうか。
とりあえず今は……
「竜ねーさんとこどうやった?」
薄っぺらくても、発言の責任は自分で背負おう。
「ん?久しぶりにあってよかったよ。まあ変わりないようだたけど。」
「竜ねーさんが元気でないんは想像できんわ。それで、えっとな、…今度は私も行きたい。」
「うん。今回はちょっと急な用事だったけど、落ち着いたらみんなで行こうね。」
「……お仕事で何かあったん?」
「…。あとで話すつもりだったんだけど、今言うね。ちょっと仕事先でゴタゴタがあってしばらく家を空けることが多くなると思うし、下手すると誰もかえってこともあると思うんだ。それでこっから一ヶ月くらい貞一君と大助君を呼ぶことにしてね。」
「ダイスケ?貞一さんは前に夕子さんと来た人やんね?」
「丹羽大助君。ほら、去年のクリスマスにマジックしに来てくれた「ああ!あの気の弱そうな人や!」…うん。けどそれ本人に言わないようにしてね。気にしてるから。貞一君は明後日ぐらいに着く予定。大助君は明々後日以降になるらしい。事後承諾でごめんね。急に仕事が入っちゃって。」
「…わかった。アリシアちゃんと一緒に夕子さんと遊んどく。……帰ってくるよね?」
「約束したでしょ?≪オレとDIOははやてに黙って居なくなったりしない≫って。きちんと帰ってくるよ。お土産期待してて。」
「…うん。破ったら針何本も飲んでくれるんやんな。」
「……よく覚えてたね。破らないから大丈夫。急な仕事の代わりって言ったらなんだけど、一区切り付いたら旅行にでも行こうか。」
「雪見たい!」
「そうだね。時期にもよるけど雪見に行こうか。……雪か。綺麗だよね。」
「なのはちゃんたちも誘ってええ?」
「勿論。こう見えて稼いでるからね。」
「そう見えて力持ちやしね。」
「アリシアちゃんから聞いたの?」
「うん。ルルにーさんとアリシアと荷物背負って山登ったんやろ?話聞いてびっくりしたで!」
「はは。鍛えてるからね。」
「毎朝庭でやっとるんは伊達やないね。」
「にーさん!ねえさん!ディオおじさんが呼んでるよ!ご飯だって!」
「今いくでー!月音にーさんタイヤ拭けた?」
「うんもう大丈夫。まずは洗面所だね。」
「えー早う食べたい!」
「風邪ひいてからじゃ遅いんだよ?今日は閃君も来てるからきれいにしとかないと。」
「閃さん来とるん!早う洗面所連れってってな!」
「はいはい。押しますよお嬢様。」
「全速前進ー!」
○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○◉○
ここは次元のどこかにある屋敷。いつの時期も人で賑わうことは決してないし、来客が来たことも一度もない。今日はそこで珍しいことが起きていた。
「貴方はいつもとは違う世界に言ってもらうわ。」
普段は顔も合わせないが、用がある時は呼びつける。それでも呼ばれた彼女は嬉しいそうな表情で頷く。
「はい!」
母と会話できた。それだけで今日はいい日だ。
少女はただそう思う。