「おやすみなさい!」
「「「おやすみ。」」」
「…おやすみ。」
大人四人は階段を駆け上がっていくはやてを見送る。すると慧は疲れた様子の閃をからかうように言う。
「モテモテじゃないの。」
「……勘弁してください。」
「ん?それはハヤテに不満があるということか?」
「いや!そういうことじゃなくて!なんていうかですね。……さすがに風呂に誘われると…。」
「断ってくれてよかったよ。けど、はやてが初対面の男に懐くなんて珍しいよね。」
「いや、ハヤテが初対面の男に会う機会なぞ精々タカマチ家の面々に会う時くらいだったろう。もともとそういう質なんだろう。」
「そういえばオレたちがあったときもそんな感じだったっけ?」
「珍しいと言えば旦那方が子育てなんてするとは思いもしませんでしたぜ?どういう風の吹き回しで?」
「ここに越してくるさい世話になった人の子供でな。それに、これまでも何度か子育ての経験はあるぞ?」
「まあ、長生きしてるとこんなこともあるよね。流石に女の子一人ってのは初めてだけど。」
「へー、そうなんですか?……長生き?」
「ん?細波さんから聞いてない?オレ達は君たちが言うところの、長寿な妖混じりさ。」
「…へ?」
「かれこれ600年弱は生きている。」
「オレは500年くらいかな。」
「旦那方は裏会設立より前から生きてんだ。」
「え…。」
「長生きしてるだけですよ。別に強いわけじゃないですし。」
「経験ってのはそれだけ強さになるでしょう?」
「なんでこうオレたちの周りにはオレたちを強くしたいのか…。」
「あれは追手が悪い、異能に頼り過ぎだ。」
「こりゃ耳が痛い。」
「それで?細波、要件はなんだ?楽しい歓談なぞを求めてきたわけではあるまい。」
「……旦那方との団欒が楽しいのはホントですぜ?」
「オレ達も細波さん達と話すのは好きですよ?長い間一緒だとこの強烈なキャラでも飽きちゃいますし。」
「…裏会でまたいざこざが起きそうなんですよ。」
「ちょっと!細波さん!?」
「閃も聞いとけ。この流れは十年前の神佑地狩りと一緒だ。なんで、一応警告に来た次第です。」
「ホウ?協力でも支援でもなく警告か?」
「俺ももう気軽に動ける立場じゃなくなりましたしね。下手に動けないんですよ。裏会が改革されたとはいえ実態は数百年ほどの歴史を持つ組織ですし。十数年の改革じゃあそう変わりません。」
「頭領が聞いたら頭抱えそうですね。」
「現に抱えてるよ。」
「それで?神佑地狩りと同じ流れなら何故俺達が気をつける必要がある?俺達はただの長生きなだけの異能者だぞ?寧ろ、気をつけるのは要職についているお前だろう。」
「だからこそですよ。」
「…なるほどな。」
「……………?」
「…細波さん。閃君には?」
「何にも言ってませんぜ。流石に俺も人の秘密をベラベラ喋りませんって。」
「流石にプロの諜報員が言うと違うな。」
「後が怖いですし。」
「別に喋ったところで何もしませんよ。ただオレ達が雲隠れするだけですよ。」
「ディオの旦那が怖いんですよ。」
「本人を目の前にして言うのか。」
「冗談ですって。」
「えっと…?」
「ああ、置いてけぼりにしてごめんね。…まあ、信用はできる。けれど今、伝える必要もないかな。もし閃君はにっちもさっちも行かなくなったら頼りに来て。細波さんの後継として伝えるべきことを伝えよう。」
「???」
「DIO、いいよね?」
「ああ。…お前は伝えると思ったが。」
「閃君は信用できる。細波さんの弟子だしね。今すぐじゃなくていいでしょ?今ははやての面倒も見てるしリスクは少ない方がいい。」
「どういうことです?」
「情報は水みたいに漏れて行くって話さ。…まあ、何かあったら頼ってね。オレもDIOもできることは手伝うよ。閃君も仕事でここに越すそうだしね。」
「あれ?言いましたっけ?」
「聞かなくてもわかるだろう。越してくるとは言っていたし、裏会のゴタゴタがどうとも言っていたしな。それに細波が連れてきたんだ。厄介ごとに決まっている。」
「はは。こりゃ、随分な評価で。」
「だいたい出会いからしてそうだろうが…。」
「あのときは面倒だったね…。」
「いや、あんときはほんとにありがとうございました。…そういや戸籍くらいこっちに言ってもらえればなんとかしましたのに。」
「お前に借りを作っておくのは面倒だ。」
「まあ、バレないように細工はしときましたがね。」
「……今度何かあれば手伝おう。閃も気をつけろよ?こいつは優秀なくせして怠けるから、大抵解決するのが面倒になる。」
「…あははは。」
それは弟子に振る話じゃないだろう。と苦笑いするしかない閃をほったらかしにして話は進む。
「さて、それで?ただ警告だけをしにきたわけではなかろう?」
「ええ。今回の件は前回の神佑地狩りとは違って、どうも個人でやってるらしいんですよ。それも力を奪うわけでもなく。ただ主を滅するだけ。あとどうも神佑地狩りというのも一部が先走った誤りで。神佑地が襲われたのはごく一部で主だった事件は異能者狩りだ。」
「なに?」
「しかも、その主犯は例外なく子供。ちょうどはやてちゃんと同じくらいですかね?誤差はあれど大抵四、五才の子供が神佑地狩りとは世も末ですな。」
「子供に共通点はないのか?」
「共通点ですか…例外なく精神年齢が高いことですかね。あとは‘転生者’って言葉。襲われた異能者の半分くらいは「お前も転生者か。」などと言われて襲われているようで。それで「その件ならこちらでもあったな。ちょうど一昨日の夜だ。ツクネが襲われた。」
「一瞬でミンチになっちゃってね。写真は?」
「ああ、とってくる。」
「それで大丈夫だったんで?」
「このとおりピンピンしてますよ。」
「そりゃよかった。…襲われたときの状況を聞いても?」
「ええ。警察にも伝えたんでもしよかったらそっちにも聞いてみてください。聞き込みとかしてるでしょうし。」
「……警察にも話したんで?」
「相手の目的がわかんなかったので。無差別に人を襲うような人だったら危険ですし。襲われたことだけ伝えて周知をしてもらおうと。ここの町内会でも見回りをしようかって話になりそうですし。」
「ああ、なるほど。」
「とはいえ、オレから言えることなんてそうないですよ。気がついたらミンチになって木陰に放り投げられましたし。気になる発言は、転生者となのはですね。」
「……なのは?」
「知り合いの娘さんなんです。ちょうどはやてと…件の転生者と同い年ですね。」
「ほう?」
「あ、そうだ。細波さんの方でなのはちゃん…高町家の皆さんの護衛をお願いして出来ませんか?」
「護衛ですか?」
「一応危険かもとは伝えたんですけど、思ったより大事でしたし。」
「高町…高町士朗のご家族ですか?」
「知ってるんですか?」
「ええ。異能を持たずに百鬼夜行を切り伏せたとかなんとか。」
「それはまた…。」
「どのみち話には行く予定でしたし構いませんよ。他ならぬ旦那の頼みですしね。」
「あ、オレ達のことは「伏せときますよ。」
「ありがとう。それで?さっきはDIOに遮られましたけど。」
「ああ、どうも転生者連中はおかしな異能をもつらしいんですよ。」
「おかしな?」
「ええ、既存の分類に当てはまらないというか、なんというか。あとは総じて精神異常が見られるというか。」
「精神異常?」
「全員かどうかはわかりませんが。俺が見た人間は全てでした。ですのでおそらく全員そうじゃないかと。」
「どんな異常だったのだ?」
「DIO。あったの?」
「ああ、これだ。それで?」
「へえ。この少年が…。…全員この世を物語の中だと考えていました。」
「は?」
「物語の中だから好き勝手していい。自分が主人公ならば自分に都合のいい世のはずだ。…とかなんとか。」
「…ああ。」
「くだらん。」
「しかもそれは精神操作されたとかでなく、本気でそう思ってるみたいなんですよ。」
「あの。すごい今さらなんですけど、細波さん俺ってそれ聞いていんですか?」
「すごい今さらだな。ついでだ。聞いときな。とはいえ、共通点はあっても経歴はほんとバラバラなんですよ。一様に強力な異能を誰かに与えられたらしい、けれど経歴に一切共通点はない。黒幕にたどり着くのは面倒だ。まあ、そんな精神異常者がここ数年著しく増えてるんで、気を付けてください。って感じですかね。」
「ああ。分かった。」
「わかりました。」
「高町家には明日行きますね。」
「頼みます。」
「しかし月音の旦那は珍しいですね。長寿異能者でここまで人を気にしてるのはそういないですよ?大抵が俗世間から離れて暮らしてる。」
「…約束なんですよ。」
「…約束?」
「細波、その写真の子供も調べてくれ。件の異能者だ。」
「わかりました。閃こいつ頼めるか?」
「え?…大丈夫ですけど。」
「じゃあ頼んだ。」
「頼んだぞ、閃。」
「わかりました。」
「じゃあめんどくさい話はこのくらいにして今日は飲み明かしましょうや。」
「細波さん愚痴とかたまってそうですしね。」
「あまりうるさくするなよ。ハヤテが起きる。閃コップをよこせ、注いでやろう。」
「ありがとうございます。」
夜が更けていく______
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翌朝はやてが起きて見た光景は想像を絶するものであった。前夜の洗い物はそのまま。机の上に散乱する酒瓶に缶類。昨日用意した布団でなく机につっ伏す客人二人。その前で寝ている自分の兄達。そういえば夜は大人の時間だってなのはちゃんが言っとたなとか、夜に男女でお楽しみがあるらしいとりっちゃんが言ってたりとかしたのを思い出し、自分は仲間はずれにされたのだと思うと思わず大声で大人四人組を起こしていた。
最初に起こされたのは月音。月音は最初はやてに起こされたのに気がつかなかったらしい。起こされてなおぼんやりしていた。ぼんやりしたままの月音をほっといてはやてはDIOを起こしにかかる。
DIOははやてに起こされたことに気がつくとしまったという表情をするととまだ惚けている月音の頭を小突いて起こしにかかる。
はやては残る二人を起こすと昨日の片付けをさせた。それが終わるとリビングに正座させて説教を始めた。
「もう!みんなで楽しむのはええけど。だらしないのはあかんよ!」
「「「「ごめんなさい」」」」
「月音にーさんやっていつもは止める側やろ。なんでお客さんがおるときに限ってはめはずすん!ディオにーさん笑っとるけどでぃおにーさんはいつも月音にーさんに止められとんやからこんな時くらいは止めんと。細波おじさんやってそうやで!この中で一番歳上なんやったらしっかりと年下のたづなはとらんと。閃ねーちゃん笑っとるけど一番年下やからって甘えればいいってもんやないで!閃ねーちゃんは年上の男の中に女の子一人なんやから気をつけんと……?なんでみんな笑っとるん?」
「ハヤテ、閃は男だ。」
「へ?」
「だから昨日あんなに閃に絡んでたのか。」
「……月音さん俺ってそんなに女顔ですかね?」
「大丈夫。言葉遣いは男っぽいよ。」
「……。」
「うそやん。こんなカワええのに。」
「……………。」
「ごめんなさい。」
「……いや、いいよ。」
「大人になったな。以前はなんであろうとひっかいてたのに。」
「細波おじさん!まだはなしは終わってへんで!」
「旦那方この子ほんとに五歳なんですか?」
「最近疑問に思ってるとこ。」
「自慢の娘だ。そこらの中学生よりしっかりしている。」
「もう!ヒソヒソ話なんてしとらんと話を聞いてな!」
「「「はいはい」」」
「もう!だいたい_________
少女のお話はまだまだ続く。____