どこまでも続く青い空の下、二人は仲良く手を繋ぎいつもの場所でバス待つ。二人が通う私立聖祥大付属学校には生徒用の通学バスがあるのだ。
しばらくすると学校名の入った青いマイクロバスがやってきた。二人がバス乗ると、一番後ろの席に座っている二人組の女の子が手を振った。
「なのはちゃん。リュウくんおはよう」
「はぁ~相変わらず、仲いいわね、あんたたち」
紫色の髪をした少女・・・月村すずか と金髪の少女・・・アリサ・バニングス が座っていた。
「にゃははは。二人ともおはよう」
「すずか、アリサおはよう」
すずかは自分の鞄をどかし席を空けリュウを見つめた。リュウがすすがの隣に座ろうとすると、すかさずなのはがそこ座った。リュウは仕方なくなのはの隣に座る。
「む~~なのはちゃん」
「ん?なのかなすずかちゃん?」
すずかの声になのははジト目で返す。リュウは申し訳なさそうにすすがを見た。
「はぁ~あんた達はもう」
こんな感じだが、二人は一年生からの友達で、三年間ずっと一緒のクラスだ。
二人との出会いは一年生の頃に遡る。
入学当初リュウはクラスになじめず、なのはにいつもついて回っていた。奇抜な髪の性もあったが、なのががあまりにも過保護にしていることも原因の一つだった。
なのはは何処へ行くにもリュウについて回り、なのはにとってリュウが全てという状況だった。
クラスメイトはそんな姉弟の様子に距離を置き、二人にはクラスで友達がいなかった。
あるとき、珍しくリュウが一人で廊下を歩いていると廊下の奥、人目につかない場所で誰かの声が聞こえた。気になって物陰からそっと覗くと二人の女の子がいる。アリサとすすがだ。
どうやらアリサがすずかをいじめているようだ。しばらく観察しているとアリサがすずかの髪留めを奪ったことが原因で、奪われたすすがは目尻に涙を貯めながら必死に取り戻そうとしている。
ふと、アリサと目が合う。アリサは一瞬リュウを睨みつけ、すぐ視線をすずかに戻した。
「く、」
物陰から見ていたリュウはアリサの眼光に少したじろぐが拳を強く握ると、二人の間に割って入った。
「や、やめなよ!」
「ぐす……た…高町くん?」
「な、何よあんた!」
アリサはリュウが割って入ってきたことに驚いた。リュウのことは同じクラスなのでよく知っていた。姉の後を付いて回るしかない気弱な少年としか思っていなかった。
すずかもリュウのことをよく知っていたのでまさかリュウが助けてくれるとは心にもおもっていなかった。
「何?私に何か文句あるの?」
「う……そ、そういうことはいけないと思う……」
おどおどしながら言うリュウに、アリサは腕を組みながらリュウを睨みつける。リュウは勇気を出して出てきたものの、その後の事は何も考えてはいなかった。
「ふんっだ。何よ男のくせにおどおどして、文句があるならはっきり言いなさいよ!私はこの子そうだけど、あんたも前から気に食わなかったのよ。なによ、いつもいつもあの子のあとをついて回って、それに何その髪の色?もしかして染めてんの?」
「う、これは生まれつきで…「え、何!はっきり言いなさいよ!!」
アリサの怒号にリュウの声は次第に小さくなっていく。すずかもやっぱりという感じにリュウを見つめている。
「「あ!」」
その時、リュウとすすがは気づいた。いつの間にか見覚えのあるツインテールがアリサの後ろに居ることに。
「どうしたのよ?私の後ろ見て?」
少女はアリサの肩を軽くたたいた。
「何よ」とアリサが後ろを振り向くと、満面の笑みのなのはが立っていた。顔は笑ってはいたが瞳だけは笑っていない。
その後の光景をリュウは一生忘れることはないだろうとリュウは語っている。
「リュウになにするのよ!」
そんな声と共になのは右ストレートがアリサの顔面をきれいに捕らえた。その時、リュウはアリサの口から白いものが飛んだように見たが、気のせいだ。そう、気のせいだ。
リュウはその光景を心の奥深くにしまう。
今の一撃で気を失っなったのかアリサはそのまま床に伏した。
「リュウ大丈夫だった」
「う…うん…」
リュウを優しく抱きしめるなのはを尻目に、倒れたアリサにリュウは黙祷を捧げた。すずかはどうやら状況について行けないのかただ呆然と立ち尽くしていた。
とまぁ、こんな事がありつつもこの後なし崩し的に和解し、その付き合いがきっかけで4人は友達になった。
昼の授業が終わり、昼食の時間になった。4人は昼食をとるために屋上へと向かう。最近だと子供達が遊んで落ちてしまうかもしれなからと閉鎖されている学校も多いが、この学校では転落防止のため3メートル近い策でしっかり対策されているため屋上が解放されている。
4人はベンチの一角でいつもの様に昼食を食べ始める。
「将来か・・・アリサちゃんとすすがちゃんはもう決まってるんだっけ」
なのははきれに盛り付けられた弁当のおかずつつきながら呟く。なのはの脳裏には先ほどの授業の内容が浮ぶ。
内容は将来の仕事についてだった。
「ウチはお父さんとお母さんが会社経営だから、ちゃんと勉強して後を継がなきゃ」
「私は機械系が好きだから。工学系で専門職がいいなぁと思ってるけど」
アリサの海外でかなり有名な財閥の令嬢だ。なぜ日本にいるかといえば、細かいことはいろいろあるらしいが大まかにいうと両親が日本好きだからだそうだ。すずかもこの町、鳴神市で有力な資産家の令嬢だ。もともとこの学校自体がそのような裕福な子供が集まる側面がある。入学するにも入学試験をパスする必要があるなど、レベルは高い。
「なのは翠屋の二代目じゃないの」
「ん~~それもあるんだけどねぇ」
「リュウくんは?」
「ん~~僕も特に何も考えてないかな。やりたいことといえば、世界中を見て回りたいってことかな。ほら、僕はどこで生まれたかもわからないし。世界中を見て僕がどこで生まれたのかを知りたいんだ」
すずかの問いに胸元のペンダントを取り出し言う。
リュウは孤児だった。4年ほど前に士郎達が修行という名の山ごもりをしていたとき森の中で倒れていたそうだ。一切の衣服や持ち物持たずに倒れていたため、最初は事件性を疑われたが、いくら身元を探してもわからず、しかも未知の言語話し言葉も通じない。このままだと施設に預けられるところを高町家で引き取ったのだ。
「じゃあ。私もそれについて行く」
「リュウくん!私も手伝うよ」
なのはとすずかはリュウの手を取り言う。なのはとすずかの目線が合いうと一瞬火花が散った。
(あ、まずい)
リュウはこの後どうなるか、身をもっていた。
「あれ、すずかちゃんはもう決めてるんじゃなかったけ?」
「ふふ、私はまだ決めたとはいてないよ。なのはちゃん」
((あ~~また、始まった))
リュウとアリサはため息を吐いた。
リュウはすずかが自分に好意を持っていることにうすうす気づいている。昔あったとある事件のことが原因だった。でも、リュウはまだそういうことはよくわからないし、今の友達関係が続けばいいと思っている。
(助けて、アリサ)
(あんたが悪い!あんたがなんとかしなさい!)
二人に手を握られたままのリュウはアリサに目線で助けを求めるもそっぽ向かれてしまう。そして、一人黙々と弁当を食べ始める。
「えっと、なのはねぇ…すずか…」
「ほら、すずかちゃん。リュウが困ってるから手を離したらどうかな?」
「なのはちゃんが離したら私も離すよ」
結局二人のいがみ合いは、昼休みが終わるまで続いたのだった。
「はぁ~ごはん食べれない……」
学校が終わり、4人は塾に向かう道を歩いている。日は傾き空は茜色に染まっていた。
余談だが、成績順にアリサ、すずか、高町兄弟はどっこいという感じである。
「こっちこっち、ここを通ると塾の近道なんだ」
アリサが林の小道を指さした。地面がむき出しで多少歩きにくそうだ。
「そうなの」
「ちょっと道悪いけどね」
リュウは疑問に思いつつも、アリサはずかずかと進んで行く。
夕暮れの木漏れ日がさす小道は幻想的で、道の悪さはあまり気にならなかった。
しばらく歩いていると、
(助けて……)
突然、リュウの脳裏に声が響く。リュウは驚き立ち止まる。
「声が、声が聞こえる…」
「どうしたのよリュウ?」
リュウの呟きにアリサが振り向いた。
「アリサちゃんは聞こえなかったの?」
どうやらなのはも聞こえたようだ。
「な…なのはもなにいっているのよ。何も聞こえなかったわよ」
「アリサちゃん。私も……私も聞こえたよ。助けて」
「はは、すずかまで……」
(助けて……誰か……)
「また聞こえた」
「うん、助けてって」
「うん」
三人は口々に言う。
「あ~~もう!三人とも何言ってるのよ。まだ、夜にもなってないのよ。冗談もほどほどにしてよね!」
アリサは声を荒げて三人を見る。しかし、三人の表情から言っていることが本気なのをアリサは感じた。
(誰か……)
「あ」
「リュウ!」
リュウは道を外れ林の中に走り出した。なのはの声が聞こえたがそれよりも、悲痛な声を聞きいてもたってもいられなくなった。
草木をかき分けリュウは走る。この先に何があるのかわからない。でも、早く、早く向かわなければならないと思った。
しばらく走ると、小さく開けた場所に出た。
「ふう。この……辺かな」
草木をかき分けながら走ったため、制服は汚れ、切り傷ができていた。
リュウは息を整えあたりを見回すと、木の下に何がいる。
「イタチ?」
傷ついたイタチのような生き物が倒れていた。山吹色毛並にはいたるところに切り傷がありとても痛々しい。
首には首輪の代わりなのか、赤いビー玉のようなものがついたネックレスをつけていた。
「リュウくん早いよ~」
「はぁ、はぁ……相変わらず、足だけは早いんだから。あら、フェレットじゃない。それにしてもひどい怪我ね」
アリサとすずかが追いついてきた。なのはは運動音痴のためもう少しかかるようだ。
「フェレット?」
「そ、まあイタチみたいのものよ。最近じゃペットとして結構人気よ。でも、こんな毛並みのフェレットなんていたかしら?」
リュウに追いついたアリサが自慢げに答える。
「みんな早いよ~~もうリュウ!お姉ちゃんを置いていかないの!」
「ごめん、なのは姉」
「ほら、制服汚れてる」
「ありがとう。なのはねぇ」
なのはハンカチを取り出しリュウの顔を拭う。
「それにしても、この子どうにかしないとね」
アリサの声に三人はフェレット見た。
「誰もいないし、リュウお願い」
「そうだよ、リュウくんお願い」
辺りを見回し人の気配がしないことを確かめると、なのはとすずかはリュウの方に振り向いた。
「うん、そうだね」
リュウは周りに人がいないことを確認すると、何か呪文のような言葉を呟く。
その言葉は、聞いたこともない言語だった。リュウ自身、今発しているこの言葉が何を意味するのかはわからない。ただ、なんとなく脳裏に浮かぶ言葉を唱えればいいのだと感じていた。
リュウの声に呼応して次第に手の平にに光が集まっていく。
「リリフ」
最後言葉をトリガーに集まった光が消え、傷ついたフェレットに降り注ぐ。すると、フェレット傷が次第に消えていく。
最終的には目に見える傷すべてがなくなっていた。
「僕の力は目に見える傷しか治せないから、一応病院に連れて行った方がいいと思う」
「相変わらず。あんたの力はすごいわね。まるで魔法みたいね」
リュウには不思議な力があった。それは、まるでおとぎ話の魔法のような力だ。できることは主に傷を治すこと。このことが分かったのは、リュウが高町家にやってきて間もなくのことだった。ある時、父親の士郎何かの事故で大けがしてしまった。下手をすると、もう目覚めないかもしれないほどの重傷だった。
それを治したのがリュウ力だった。
「そんなことないよ。あまり人前で使っちゃいけないって言われてるし。」
リュウは顔を赤らめながら言う。
「じゃあ、とりあえず動物病院にいきましょう。早くしないと、塾遅れちゃうし」
「そうだね」
アリサの声にリュウはうなずく、四人はフェレットを抱え病院をめざすために来た道を戻る。
「ん…?」
なのははふと後ろを見た。その先にはなのはの背丈ほどの草木が生い茂っている。
「何か居た気がしてけど、気のせいかな?」
「なのはちゃん置いていかれるよ」
「あ…まって、待ってよ~~」
すずかの声を聞いてなのはは急いで後を追う。
四人が去った後、なのはが見つめた草むらの先で怪しい眼光が光った。