魔法少女リリカルなのは〜竜の軌跡〜   作:komokuro

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第4話

天を貫いた桃色の光は、夜空を覆っていた雲をかき消した。

 

「う、まぶしい」

 

激しい光にリュウは目を覆う。

 

「なんて魔力だ」

 

リュウの腕に抱かれたフェレットは驚く。

 

「落ち着いてイメージして!君の魔法を制御する魔法の杖の姿を!そして、君の身を守る強い衣服の姿を!」

「急、急に言われても!」

 

フェレットの言葉に赤い宝石・レイジングハートを空に掲げたままなのはは戸惑った。こんな状況で急にそんな事言われても、瞬時には浮かんで来るわけがない。

ふと横を見ると、リュウが心配そうな顔つきでなのはを見つめていた。

 

(リュウ……そうだよ。そうだね。私はお姉ちゃんなんだからしっかりしないと)

 

なのはは目を瞑り静かに息を吐く。脳内がクリアになっていく。

杖は最近見た魔法少女もののアニメから、服はとりあえず自分の制服を

 

「とりあえずこれで、お願い!」

 

レイジングハートが輝くとなのはのイメージ呼応し姿を変える。杖の部品がなにもない空間に呼びだされ、合わさり杖へと姿を変える。

同時に衣服が消え、新たな衣服を身にまとう。

光が収まると、リュウの眼前には小学校の制服に似たデザインの白い防護服と大きな赤い宝石が埋め込まれた杖を持ったなのはが立っていた。

 

「成功だ!」

「え!え!なんなのこれぇ~」

 

なのははオドオドしつつ自分の姿を見回した。

言われた通りにしたものの、まさかこんな結果になるとは思いもしなかった。

だが、混乱している暇は与えてはもらえなかった。

 

「きます!」

「なのは姉来るよ!」

「え?」

 

フェレットとリュウの叫びになのはが反応た瞬間、毛玉の姿が消えていた。

 

「え!消えた?」

「なのは姉!上だ」

 

なのはが上を向くと、いつの間にか空高く飛び上がっていた毛玉がなのはに向かってものすごい速度で落ちてきた。

この程度、リュウならば簡単に避けれるのだが運動音痴のなのはでは無理だ。

 

「なのは姉危ない!」

「きゃあ!」

 

なのはは咄嗟に杖を襲い来る毛玉に向けた。

 

『Protection』

 

杖から電子音を感じさせる声が発せられ、桃色の光の壁がバリアーのように展開された。

毛玉はそれに衝突すると激しスパークが起きた。だが、毛玉の突進ではびくともせず、多数のボール台の黒い塊へバラバラにして周囲にはじき飛ばした。

散弾のように飛び散った毛玉のせいで周囲のブロック壁は戦場の銃痕のように穴がいくつも開き、電柱はぼっきりと折れてしまっている。

 

「あっ…あはは……」

「なのは姉こっち!」

 

この惨状に呆然としているなのはを手をリュウ引き、急いでその場を後にする。

リュウには飛び散った毛玉が微かに動いていることが見えた。

それよりも、今はなのはを冷静にさせる為にここを離れるべきだと考えた。

 

 

 

 

バラバラになった毛玉から遠ざかるように、二人と一匹は夜の住宅地を走る。

リュウはあれだけの騒動を起こしたのに住民が一人も出てこないことを不思議に思いつつ、腕に抱かれたフェレットの説明に耳を澄ませる。

 

「僕らの魔法は発動体に組み込んだプログラムと呼ばれる方式です。そしてその方式発動させる為に必要なのは術者の精神エネルギーです」

「「?」」

「あれは、忌まわしい力の元に生み出されてしまった思念体。あれを停止させるにはその杖で封印して元の姿に戻さなければいけないんです」

「えっと要するに?」

「その杖を使ってあれを倒せばいいってことであってる?」

 

あまりよくわかっていない様子のなのはにリュウが付け加える。リュウ自身もあまりよくわかってはいなが。

 

「そうです!」

 

腕の中のフェレットは肯定する。

リュウは走りながらジト目でなのは見ると、今度は空を仰ぎ見るそして

 

「うん、無理だね」

 

そう断言した。

 

「リュウ!今失礼な事考えたでしょう!」

 

なのははリュウの前に出て静止させると、リュウをジト目で見た。

 

「無理な物は無理!なのは姉!自分の体育の成績よく知ってるでしょ」

「う………」

 

痛いところを突かれたなのは押し黙った。

なのはの体育の成績はお世辞にもいいとは言えない。クラスでも下の方だ。

なお、女子のトップはすずかで男子はリュウである。二人はクラストップであり、学年トップでもある。

反射神経と空間認識はいい線行っているのだが、それ以外の体力等がだめだめなのだ。

リュウの基礎鍛錬に何度か付き合ってみたが、両親たちからの評価は低い。

 

「大丈夫です。さっきみたいに攻撃や防御などの基本魔法は心に願うだけで発動します。より大きな力を必要とする魔法には呪文が必要ですが」

「願うよりも先に攻撃が来たら?」

「一定のサポートもあるので大丈夫です。今着ている服も魔力で出来た特殊な服でダメージをある程度軽減してくれます」

「でも、それを超えるっ痛!」

 

突然なのはがリュウのほほを抓った。

突然のことに涙目になりつつなのはの方を向いた。

 

「もう!リュウ大丈夫。私はリュウのお姉ちゃんなんだから。そんなに心配しなくても大丈夫!」

「でも……!」

 

いやな気配を感じリュウは後ろ振り向いた。

 

「リュウ?」

「来る!」

「え!」

「あいつがまた来る!」

「え~~」

 

確かにリュウの向いた先にから赤い二つの瞳が迫って来ているように見える。

 

「ど、どうしよぉ~」

「ねえ、どうすればいいの!」

 

リュウはフェレットに問いかける。

 

「先ほども言いましたが、あれを停止させるにはその杖で封印する必要があります。

そして、あれを停止させるには呪文が必要になります」

「呪文?」

「はい、心を澄ませて!心の中にあなたの呪文が浮かぶはずです」

「えと…」

 

そう言われてなのは目を瞑った。

心の中に呪文が浮かぶ。

 

「リリカル。マジカル」

 

なのは小さく呟く。

リュウは「え!呪文それ」と心の中で思ったがこれ以上なのはの気を逸らすわけにはいかないため押し黙った。

 

「封印すべきは忌まわしき器ジュエルシード」

 

フェレットは封印すべき対象の真名叫ぶ。

毛玉はあと100メートルほどの位置に迫っている。

 

「ジュエルシード封印」

 

はのはが叫ぶと杖から桃色の光のリボンが放たれ、襲い来る毛玉を拘束した。

毛玉は拘束を解こうともがくがその拘束からは逃れられない。

 

「リリカルマジカル。ジュエルシードシリアル21封印」

 

なのはの呪文とともに杖から毛玉に向かって、桃色の閃光が放たれる。

閃光に貫かれた毛玉は獣のような断末魔とともに光となって飛散した。

飛散と同時に何かがその場に落ちた音が聞こえた。毛玉のいた陥没したアスファルトには青いひし形の宝石が落ちていた。

 

「あれがジュエルシードです。レイジングハートで触れて」

 

なのはは言われた通り宝石に近づき杖を向ける。

すると、宝石が杖の赤い玉の部分に吸い込まれた。これで封印されたと言うことだろう。

封印が終わるとなのはの防護服も光り始め、光が消えると元の私服に戻った。

杖は最初のビー玉台のサイズに戻りなのはの手に収まっている。

 

「あ…戻った」

 

リュウはなのはの姿をまじまじと見つめている。

 

「終わったの?」

「はい。あなたのおかげです。ありがとう」

「ん?」

「どうしたのリュウ?」

 

リュウが向いた方向をなのはがいぶかしげに見ると、今まで気づかなかったが遠くからいくつものパトカーのサイレンが近づいている。

二人はお互いに顔を見合わせ周りを見わたす。あの思念体が大暴れしたおかげで周囲はめちゃくちゃだ。

民家を遮るブロック塀はところどころ砕け、道路には大穴が開き、倒れた電信柱から垂れ下がった送電線はスパークを起こしている。

冷静になって考えてみると、ホントこれだけのことが起こったのに誰一人家から出てこないとはどれだけここに住む住人は図太い神経をしているのだろうと考えてしまう。

 

「もうしかして、私たちここにいると」

「たぶん、大変な事になるね。これ、直したらいくらになるかな?」

 

二人は顔を見合わせ手を合わせると

 

「とりあえず、リュウ」

「うん」

 

「「ごめんなさぁ~~い」」

 

二人は悲痛な声をあげながら現場を後にするのだった。

あと処理は警察がなんとかしてくれると願って。

 

 

 

 

二人はしばらく走るとなのはが息切れを起こしたので、とりあえず夜の公園で一息つくことにした。

夜も更けかかっているためか、公園には人の姿はなかった。

二人がベンチに座るとリュウの腕に抱かれたフェレットが二人に話かけてた。

 

「すいません」

「ん、どうしたの?」

 

リュウは申し訳なさそうに話しかけてくるフェレットを膝の上に置く。

 

「すいません。あなた達を巻き込んでしまいました」

「あ、うん。そうだけど……」

 

申し訳なさそうに頭を垂れるフェレットにどう反応してよいやらと、リュウは言いよどむ。

その雰囲気を察してなのはが話題を変えようと話しかける。

 

「そうそう、自己紹介しないとね」

 

なのはの声にリュウとフェレットはなのはの方を向いた。

 

「私は高町なのは。小学校3年生家族とか仲良しの友達はなのはって呼ぶよ」

「えっと、僕は高町リュウ。なのは姉と同じ3年生、みんなリュウってそのまま呼ぶかな」

「僕はユーノ・スクライヤ。スクライヤは部族名だからユーノが名前です」

「ユーノくんかかわいい名前だね」

「すいません。お二人を巻き込んで」」

「なのはだよ」

 

再び頭を垂れるて申し訳なさそうに言うユーノになのはが言った。

 

「なのはさんとリュウさんを巻き込んでしまいました」

「そんなに気を落とさないでよ。確かに最初はビックリしたけど」

「うんうん。まあ、僕はこういうことは前にいろいろあって慣れてるし」

「ですが……え!」

 

リュウの膝の上に居るユーノをなのはなのはが抱き上げた。

 

「ユーノくん。そんなん顔しないでよ。私たちは大丈夫だから。それよりもこれからのことを考えようよ」

「これからですか?」

 

ユーノは首をかしげた。

 

「そ、これから」

 

 

 

 

立派な武家屋敷の高町家付いた二人は門の前で立ち尽くしている。

出るときは付いていた玄関の明かりがついていない。

 

「さてと、帰ってきたのはいいけれど」

「普通に入るのはやっぱりまずいよね。リュウ」

「とりあえず、僕がまた裏からなのは姉を抱えて塀を登ろうか?」

「それしか、ないかな?」

「それにしても、ここ明かりがついてなかったけ?」

「う~ん。ここの明かりはいつもは消さないんだけどね」

 

「二人で、なにひそひそしてるんだ?」

 

二人の後ろから唐突に聞き慣れた声が聞こえる。

二人一瞬ビクッとしつつ、古いブリキ人形の様に後ろを向くと眉辺りをぴくぴくさせ明らかに不機嫌そうな恭也が立っていた。

 

「にゃはは……お兄ちゃん……」

「あ、はは。恭也にぃ」

「おかえり。こんな時間に二人そろって何処へお出かけだ?」

 

二人の目線にかがみ目を合わせる。

 

「あの…その…え~と」

「夕食の時話したフェレットのところに行ってたんだ」

 

言いよどむなのはにリュウは抱えていたユーノを恭也の眼前に差し出した。

 

「あら~かわいい」

「うん?」

 

門が突然開かれると美由希が現れた。

 

「なるほど、二人はこの子が心配でこっそり抜け出したわけだ」

「「うん!」」

「それにしてもかわいいわね」

 

ユーノをリュウから抱き上げながら、まじまじと見つけている。

 

「気持ちはわからんでもないが。内緒でというのがいただけない」

「まあまあ、いいじゃないこうして無事に戻ってきてるんだし。それにリュウがいれば大抵の事は大丈夫でしょ。それより二人とも言う事あるでしょ」

 

ユーノを片手で抱きながら、二人に美由希は指を指す。

 

「内緒で出かけて心配かけてごめんなさい」

「ごめんなさい」

 

二人は素直に謝った。

 

「はいこれで解決~~」

「おまえな~」

「さっもう遅いんだから家に入る入る。さて、この子お母さん達にも見せてあげないとね」

「おい。美由希」

 

恭也は呆れつつ美由希の後を追った。

抱かれたユーノが驚きつつ連行されるのを見てリュウは頑張ってと手を振る。

 

「ふぅ~~なんとかなったね」

「うん。よかった」

 

この後、二人は両親にも多少怒られはしたが、ユーノの可愛さに虜になった桃子のおかげで何とかなったのであった。

 

 

 

 

「ここが私たちの部屋だよ。ユーノくん」

「二人一緒なんですね」

「うん。まぁね」

「今日はまだケージとか買ってないから、このクッションで寝てもらうことになるけど。大丈夫?」

 

なのは部屋に置いてあった赤色のビーズクッションを机の上に置きユーノを乗せた。

ユーノはクッションを確かめるように、何回かそれで飛び跳ね頷く。

 

「はい。大丈夫です」

「ふわ~~とりあえず今日はいろいろあったから早く寝よっかな。なのは姉」

 

リュウは大きなあくびをしつつ、目を擦る。

 

「うん。そうだね。私もいろいろあって疲れちゃった。また、明日詳しい説明してもらっていいかなユーノくん」

「はい」

「とりあえずお風呂入んないとね。さ、いくよリュウ!」

「は~い」

「二人は一緒に入浴してるんですか?」

「う、うん」

 

ユーノの疑問にリュウは少し気まずそうに答えた。

 

「当たり前だよ。私たち姉弟なんだから!あっ、ユーノくんも一緒に入る?」

「い、いえ、僕はまだ怪我が治り立てなので遠慮しておきます」

 

ユーノはなのはの問いに驚き、やんわりと断った。

リュウが何かを訴えるような瞳でこちらを見ていたがすっと視線をそらした。

すると、ドアのノックが聞こえる。

 

「あ、は~い」

「あら?二人だけ?おかしいな~~何かもう一人誰かの声が聞こえたような?」

「き、気のせいだよ。美由希姉」

「そう?なんか男の子の声が…」

「そ、それより。お、お姉ちゃん何かよう?」

 

なのはとリュウは必死に話題を変えようと奮闘する。美由希は細めで二人を疑い深く見つめる。

ユーノと言うとはすでにクッションの上でたぬき寝入りを決め込んでいた。まあ、このタイミングで出来ることはないのでしょうがないが。

 

「二人ともまだお風呂まだでしょ。早くお風呂入りなさいって母さんが言ってたよ」

「今から入ろうってなのは姉と話してたところだよ」

「うん。うん」

「そっか。ん!」

 

美由希は人差し指でほほをつきながらリュウに目線を向ける。

リュウは即座にいやな予感がした。

 

「じゃあ、久しぶりに三人で入ろっか」

「え!」

「あれ、お姉ちゃん。もう入ったんじゃないの?」

「ま~気にしない。気にしな~い」

 

美由希はにんまりしつつリュウの頭をなでる。

 

「ま、ま~いいか」

「え!」

 

(リュウ今は我慢して!)

(そんな~~)

 

なのははリュウに視線を送る。リュウは渋々納得するしかなかった。

別にリュウは美由希と入浴することが嫌いな訳ではない。確かに最近異性の違いについて思うところもある。

だが、美由希と入ると何かとリュウにちょっかいを出してくることが嫌なのだ。

そしてそれを明らかに楽しんでやってくる。

 

「じゃあ行こう~~」

「行こう~~」

「う~~」

 

美由希に首元を捕まれたリュウは、悲痛な声を出しながら連行されて行く。

 

「ふ~~なんとかなった。なんか、すごい家族だね」

 

ドアが閉まり、足音が聞こえなくなっ事を確認するとユーノは片目を開けた。

 

(とりあえず僕は休んで魔力の回復にあてないと)

 

この家の人達はあまり男女差を気にしないのだなぁと考えつつも、ユーノは目を瞑り今度は本当に眠りに入る。

しかし、リュウは大事なことを忘れていた。ユーノの横。リュウのベッドに投げ出された携帯に着信を知らせる緑のランプが点滅しいたことを、ある人から一定時間ごとに着信が入っていたことを。

 

 

 

 

「ん~~?」

 

シャンプーのいい香りの立ち込める浴槽につかりながらリュウはふと何かを思い出した。

体を洗っていた泡だらけのなのは手を止めてリュウへと振り向いた。

 

「リュウどうしたの?」

「なんか大事なことを忘れてるような~~!美由希姉あ、あたってるから」

「も~~リュウは恥ずかしがりやね~~ほら、ちゃんと肩まで浸からないと」

「う~~」

 

湯船から離れようとするリュウを美由希は無理矢理引きよせる。

ウチの姉達はこういうときだけ何でこんなに力が強いのかと考えつつ、抵抗することをあきらめた。

美由希に抱かれ顔を真っ赤にしつつ湯船に浸かるリュウはとりあえず思い出す事を止めたのだった。

 

 

 

 

ところ変わって、月村家。

 

「う~~リュウくんから連絡がこないよ~~」

 

携帯を見つめつつ、すずかは連絡が来るのをずっと待っていた。

律儀に30分ごとにメールを送りながら。

 

「すずかお嬢様もうお休みにならないと、明日の学校に寝坊してしまいますよ!」

 

月村家のメイドのノエルが扉を開けて入って来た。

自問しているすずかの声は扉の外まで聞こえていたらしい。

 

「う~~リュウくん明日絶対何があったか教えてもらうんだからね!」

 

すずかの悲しい叫び声とともに夜は更けていくのだった。

 

 

 

 

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