また…めちゃくちゃお待たせさせてしまいましたね…
もうなんだろう…
これはもう2ヶ月更新がデフォみたいなものなのでは…?
こんな僕のことを皆さん見捨てないでくだせぇ〜…
さて、今回はやっと彼が復活&強化フォーム登場です!
ご期待ください!
[過去]
「え…?俺がウマ娘のトレーナーを…?」
それは俺がまだ、フェニックスの分隊長になる前のこと…
まだ俺が訓練生上がりの下っ端隊員だった頃に若林総司令にその辞令を持ちかけられたことから、俺の人生は色づきを見せた。
「ああ、聞けば五十嵐…お前はフェニックスの訓練校に入る前はトレーナーを目指して勉学に励んでいたそうだな…?」
一体何処から聞きつけてきたのかは分からないが、確かに俺はフェニックスに入隊を志す前はウマ娘のトレーナーを目指して独学で勉強をしていた。
幼い頃に父と一緒に観たレースが強く心に残ったのがそもそもの発端だった。
「デッドマンズを鎮圧し、平和になった世界で我々フェニックスができることとして、今や世界中が注目するレース事業に着手するというのが企画案として上がった。全く上層部も気が早いことだ…」
「そこで、ある程度知識のある俺を先駆けにしたい…ってことですか?」
「そういうことだ、既にURAにも話は通している、あとはお前の決断次第だ。」
正直に言えば、俺はその時点でそれがどんなに奇特な提案なのかを理解していた。だってそうだろう、どう考えても治安維持部隊の職務の傍らでトレーナーとしてウマ娘の育成を両立させるなんてことは現実的ではない。
頓挫する可能性が見えている、いや…どちらかといえば頓挫する確率の方が高いこんな事業に取り組むのは明らかなリスクだった。若林総司令もそれを重々承知しているのか、その相変わらずの鉄面皮な表情の裏には断るならさっさとしろという心中が垣間見えた。
少し前の俺なら考える余地などなく断っていたかもしれない。
しかし…
「…了解です。俺に…やらせてください!」
「!…そうか、ならどちらも疎かにすることのないよう努めるといい。」
俺はどうしても目の前の夢へのチャンスに飛び付きたい気持ちを抑えることができなかった。一度はフェニックスへの入隊のために諦めた夢だったが、それが他ならぬフェニックスの仕事として任せられたなら、その大義名分に縋らない手はない。
若林総司令は一瞬驚いたような表情を見せたがすぐにそれは鳴りを潜め、職務において厳格な彼らしい忠告をしてくれた。
そこから先は若林総司令が事前に話をある程度進めていてくれたおかげで、とんとん拍子でことは運んでいった。
協会への手続きと協力の申請…
トレーナー免許の特殊認可…
可能な限りの仕事の引き継ぎを終えた後に、トレセン学園の理事長への挨拶にも伺った。
「歓迎っ…!
君がフェニックスから派遣されたというトレーナーだな!
これからの活躍を期待させてもらうとしよう!
詳しい詳細はたづなに聞いてほしい!」
「これからよろしくお願いしますね、五十嵐トレーナー。」
「はい、よろしくお願いします!」
それから理事長秘書の駿川たづなさんに、学園をある程度案内してもらった後、赴任してきたばかりのトレーナーがまず最初にやるべきことのレクチャーを受けて、ようやく俺のトレーナーとしての生活が始まった。
「さて、まず最初に何をするか…」
たづなさんの話では赴任したてのトレーナーがとることができる選択肢は主に三つ、その一つにベテランのトレーナーに師事して、サブトレーナーとして実績の下積みを行なうというものがあるが、俺の場合に限りそれはあまり期待できないらしい。
俺は普通の新人とは違い、フェニックスから派遣された所謂イレギュラーだ。
時にはトレーナー業務より優先すべき任務に駆り出されることもある、そんな不確定要素だらけの人材を抱えるのは自身の実績に傷を付ける原因になりかねない。
大多数のトレーナーがそう考えているらしく、実際ダメ元で何人かの先輩に声を掛けてみたがどれも空振りだった。
教官として新入生に基本的な指導を行なう手もあるが、これは主に担当を受け持つ気のないトレーナーが取る行動だ。
俺はゆくゆくは自分の担当を持つつもりなので、これも除外する。
ならば必然、とれる選択肢は一つ…
「選抜レースを見に行ってみるか…」
残された唯一の選択肢、それは自ら選抜レースなどに足を運び琴線に触れるウマ娘をスカウトするという最も古典的な手法だ。
うまくすれば自分と相性のいいウマ娘と出会うことができるかもしれない。
運良く今日は選抜レースが行なわれる日だ、俺は勇んで学園のレースコースへと足を運んだが…
「………高望み…しすぎなのか…?」
結論から言おう、その日の選抜レースにおいて担当をしたくなるほど惹かれるウマ娘は存在しなかった。
勿論出走ウマ娘が凡走をしていたわけではない、むしろ中には目を瞠るような才覚を示す者が何人もいたし、共に歩むことができるトレーナーは幸せ者だろうとも思った。
しかし、ただ"それだけ"だ…
そこに居るのは自分じゃなくてもいい、そんなふうにしか思えなかった。
これは持論だが隣に立つのは自分しかいない、自分でなければならないと感じる程、魂から惹かれ合う関係でなければトレーナーとウマ娘は大成しない、取り敢えずの契約はとても危険なものなのだ。
しかし正直に言えば、選り好みをしていて良い時間は俺にはあまりない。
フェニックスの派遣トレーナーである俺はいち早く実績を見せなければ上層部にこの事業に発展性なしと判断されてトレーナーを降ろされる可能性が高い。
それを回避するためにもまずはいち早い担当契約が急務なのである。
「うぅ〜ん…今日はたまたま波長の合う娘が見つからなかっただけかもしれません。
あまり焦り過ぎないよう、明日からも頑張って探してみましょう!
私も出来る限り協力致しますので!」
たづなさんはそう言ってくれたが、だからといって悠長にするわけにもいかない。
結局、その一日は何もできることはなくいつの間にか俺は自宅への帰路を歩いていた。
歩きながら考える…
一体どうすれば、担当したいと感じるそんなウマ娘に出会うことができるのだろうか…
最悪の場合、先程まで言っていた言葉を自分で違えることになるが、手当たり次第にスカウトをすることになるかもしれない。
しかしそうなった場合、万が一何かあった時に俺は胸を張って、担当に向き合うことができるのだろうか…
様々な思いが頭の中で行ったり来たりしてこんがらがっていると…
~♪ ~♪
懐から振動と音楽が鳴り響く。俺の携帯に着信が入っているようだ、取り出して画面を見てみると…
「兄ちゃん?…もしもし?」
どうやら電話を掛けているのは俺の兄、五十嵐一輝のようだ。
一体なんの用なのか分からなかったが、取り敢えず電話に出る。
『あ、もしもし大二…今帰りか?』
「え?…そうだけど…」
『そうか!丁度良かった!
今さくらが晩飯でカレー作ってるんだけどさ、なんか必要な…がらむまさら?ってやつが切れてたみたいなんだ。悪いけど買ってきて貰えるか…?』
どうやらおつかいの打診だったようだ。なかなか家のキッチンに立ち入る機会のない俺だがガラムマサラなんてものをいつの間にか切らしてしまうような食事をしていた様には思えないのだが…
断る理由もないし、頭の中を整理するのにも良いかもしれないと思ったのもあったので了承する。
「分かったよ、ところでどこの銘柄が良いとか言ってた?」
『いや、そういうのは…
まぁ適当に目についたので良いんじゃないか…っておい、さくら!?』
『適当で良い訳ないでしょ!
大ちゃん!後で買ってきて欲しいやつの画像送るからそれ、お願いね!』
一瞬兄の声が大きく響いたと思うと、声が少し遠くなり代わりに妹の五十嵐さくらの声が聴こえ始める。
どうやら会話を聞いていて、途中に兄から携帯を奪い取ったようだった。
『でも、どうせなに使っても同じだろ?』
『アタシのカレーはこだわってんの!
それに、一口にガラムマサラって言っても香りとか味とか色々違うから!
いい?大ちゃん…もし違うの買ってきたら、大ちゃんの分の甘口は用意しないからね!それじゃ!』
ガチャ…ツーツー…
「え、ちょ…切れた…」
相変わらずデリカシーのないことを言って妹の逆鱗に触れていたようである意味安心したが、今はそんなことよりも重要視しなければならないことがある。
今の通話の中にあった妹の聞き捨てならないあの言葉…
甘口は用意しない…
甘口は用意しない…だと!?
それは緊急事態だ、そんなことをすれば俺は晩飯に辛口のカレーを食べることになる。
認めたくはないが、俺は辛いものや苦いものが大の苦手な所謂子供舌というやつなのだから。
すぐに妹からLANEで送られてきた画像を確認する。
そこに写っていたのは確かにガラムマサラだったが確か店主の意向で一般に出ね回らず、主に専門店でしか扱われないとされている品だった。
これまた面倒なものを…とつい毒づきたくなるがそれをグッと我慢する。
ここで面倒くさがって辛口のカレーを食べるのと、多少手間はかかっても美味しく甘口のカレーを食べるのとでは後者の方が遥かに望ましいのだから。
「ここから一番近い専門店は…駅前か!」
急いで俺は少し離れた駅前の専門店に向かう。ここから駅まではそこまで遠い距離ではないのだが、それでも専門店では間違えないようによ~く送られてきた画像を吟味しながら選んだので少し時間がかかり、店を出る頃には夕方になっていた。
こりゃ家に着く頃にはすっかり暗くなっているだろうと思い、急ごうと家に帰ろうとしたその時…
一人のウマ娘を見掛けた。
「ふぅ…うん、休憩おしまい!」
片眼を覆ってしまうほど長く美しい、まるで夜空をそのまま写し取ったかのような黒鹿毛…
ずっと見つめていると吸い込まれてしまうのではないかと思えてしまうほど綺麗なアメジストの瞳…
聞く人全てに安らぎを与えてくれるのではと思うほど可愛らしい、まるで鈴のようなその声…
大きなウマミミとそれに反比例したとても小さな体をトレセン学園の運動ジャージで包んでいることを見るに、恐らく野外トレーニングを行なっていた生徒なのであろうその少女から、俺は目を離せなくなってしまった。
俺は丁度赤信号に捕まって立ち止まっている彼女に声をかけるために歩を進める。
買い物の帰りであること、そもそも声をかけたところでなにを話すことがあるのかなんてことも頭から完全に抜け落ちていた。
しかしそれを遮るように目の前をひとつの影が横切った。
いや、正確には足下を…だが。
ニャ~…
「…黒猫?」
目の前を横切った黒猫に小さく驚いて、俺は思わず足を止める。
黒猫は一瞬、俺を一瞥するとすぐに興味が失せたのかそのまま去っていってしまった。
黒猫が目の前を横切るのは不吉、よく囁かれるそんな迷信を信じているわけではないが、なんだか嫌な予感を感じてならない。
そうこうしている内に、信号は青に変わってしまったようで彼女はもう先に進んでいた。
完全に話しかけるタイミングを逃してしまったがしかし、それで良かったのかもしれない。
急に知らない男に話しかけられるのは怖いだろうし、そもそも声をかけてもなにを話すのかも頭になかったのだから余計に困らせてしまうだろう。
「…帰るか、兄ちゃん達が待ってる…」
自分が買い物帰りであったことをそこでようやく思い出し、俺は帰路につく。
彼女はトレセンの生徒だったようだし、もしかすればこれから先話す機会も訪れるかもしれない。今はそう思うことにしよう。
ん…?まてよ。
青になった信号に真っ直ぐ向き合っていた俺を横切ったなら、あの黒猫が向かった方向は…まさか!?
「危ない!」
俺の嫌な予感はまさにこの時のことを指し示していたのかもしれない。
誰かの大きな声が響いた先に急いで眼を向けてみればやはりと言うべきか先程の黒猫が赤信号の道路の渦中に居座っており、猛スピードで車が近づいているのにも関わらず呑気に毛繕いをしている。
「まずいっ…!」
俺は猫を救出するために駆け出す。だが如何せんそれなりに遠くの道路なので猫が轢かれる前に助け出すことができるかは五分五分と言ったところ…
なんとか猫を押し退けて、その後は自分で何とかするしかない。
そう思っていると、とんでもないスピードで俺のすぐ横を駆け抜けていく影が一つ…
先程のウマ娘の少女であった。
その表情には鬼気迫るものを感じ、ただ目の前の小さな命を助けることのみを考えて行動していると容易に判るものだった。
人間では急いでも五分五分というところだろう場面でも、ウマ娘ならば急げば多少の余裕をもって到着できる。
少女は猫のもとに辿り着くと、すぐに胸に抱き抱えてそのままスピードを落とさずに向かいの歩道に避難することで事なきを得る。
こちらに向かっていた車は、止まってなにを言うでもなくそのまま走り去っていった。
大方、脇見運転でもしていたのだろう。あの様子では目の前の人騒ぎにも気付いていないだろうがそんなことはもうどうでも良い。
「ハァッ…ハァッ…ハァッ…」ドサッ…
ニャ~…
猫を救出して緊張の糸が切れたのか、その場にペタンと座り込んでしまうウマ娘の少女。
未だその胸の中で抱かれている黒猫はまるでどうしたのかと言っているかのように鳴き声を上げる。
その声ではっと我に返った少女は、猫が無事であることを確認し、笑顔を浮かべるもすぐにその表情を曇らせた。
「ごめんね、ライスが近くにいたせいで…
猫さんを危ない目に合わせちゃった…
ごめんね、ごめんね…」
まるで自分のせいで猫が轢かれそうになったとでも言わんばかりのその言動が少し気になったが、そのときの俺はそんなこともすぐに忘れてしまう程に彼女の走りに魅入られていた。
猫を助けるため、必死になったことで彼女の持つ可能性の一端をはからずも垣間見ることができたのだろう。
「そこの君…」
「?…お兄さん、誰?」
「俺は五十嵐大二…今日トレセンに赴任したばかりの新米トレーナーだよ。」
彼女の至極当然な疑問を投げ掛けられるが、俺は必要最低限の答えを返すだけで
言葉を切る。
そして、座り込む彼女の目線に少しでも近付けるために膝をつくが、それでも目線は少し見下げる位置になる。
俺は呆然とする彼女の手を取る、いきなりのことで少し驚いた様子の少女だったが何故か振り払うようなことはしなかった。会ったばかりの俺を信頼してくれているのか、はたまた無警戒すぎるのか…
俺は先程の走りを思い返す。
その走りはまるで夜の闇の中を駆ける一筋の光、その輝きは誰もが手にしたいと願いながら、それでもついぞ手に入れることのできなかった至宝にも等しいと言えるだろう。
そして俺はその輝きを絶対に自分の物にしたい、誰にも渡すことなど看過できないと心の底から感じた…
そうだ、運命というものがあるのなら…
きっと彼女こそが…
「君に運命を感じた…
是非俺と契約してくれないか…?」
「ふえ?………えええぇぇぇええ!?///」
これが俺と少女の、未来の担当ウマ娘であるライスシャワーとのファーストコンタクト…
思い返せば、なかなかに奇天烈な出会いではあったがそれでも俺にとって世界で最も大切な宝物に出会ったその日を、俺は生涯忘れることはない…
それだけは、確信をもって言えるのだ…
[現在]
大二side
人の心が最も揺れ動き、崩れやすくなる瞬間とは一体どんな時なのか…
曰くそれは眼の前に絶望が広がることではなく、何より大切な希望が眼の前で砕かれてしまうことだという。
大二にとっては今この瞬間が、それに該当するのだろう。
そう、"怪物のような姿"に変貌した赤石によって自分の命よりも大切な担当ウマ娘を蹂躙されているこの瞬間のことを…
「疾きこと風の如く…」
「うっ…!ぐっ!…うぅ…」
ヘルギフテリアン以上の、ライスですら反応できないほどのスピードで一方的に攻撃し続け…
「うぅ…そこっ!…な、なんで…」
「侵略すること火の如く…」
「あ、熱い…!アア…アァァァ…!」
苦し紛れの反撃にも苦もない様子で刃を掴み、防御。そのまま紫炎を引火させクレッセントヴォルフを破壊し、ライスにも延焼させ…
「知り難きこと影の如く…」
「ど…どこ…に…ガハッ…!」
その場から一瞬にして消失し、相手を見失って戸惑うライスの背後に現れて不意打ちの攻撃を加え…
「動くこと雷霆の如し…!」
「あ、ああ……キャァァァァァ…!」
最後には既に這いつくばり、満身創痍のライスにとどめの豪雷を浴びせる。装甲が崩れるようにしてライスの変身が解除される、大二はそれを呆然と見つめることしかできなかったが、ふと我に返りすぐにライスのもとへと駆け寄る。途中でバイスタンプとツーサイウェポンを取り落としてしまったがそんなことを気にする余裕もなかった。
「そんな…ライス…ライス…!」
「おに…い…さま………」
倒れるライスを抱き起こし頼む、生きていてくれと思いながら声を掛ける。あんな攻撃をモロに受けていたにも関わらず、ライスは薄っすらとではあるが意識を保っていた。それどころかその手には未だにアンビバレンスウェポンを握り締めたままであり、戦闘の意志が消えていないことが分かってしまう。
「もういい…もういいんだ、ライス!
これ以上戦ったら君は…!」
「でも…ここで…ライスが頑張ら…ないと…くぅっ…!」
しかしそのダメージではこれ以上の戦闘は命取りだ。絶対にもうあの怪物と相対させる訳にはいかない。
「どうだい、大二君…素晴らしい力だろう…
これこそがギフデモス…ギフ様に真の忠誠を誓った者のみが至ることのできる境地だよ…」
「人であることも捨てたのか…!」
「ふははっ…何を今更!
人類の愚かしさはそれ程までに根深い、人の身であることに拘っていては何もできんところまで来ているんだよ…!」
ライスを抱き抱えながら、大二は吠える。それにはどこまでもギフという人類の敵に敬服し、やがて最低限の人としての尊厳すらも売り渡してしまった男に対する侮蔑が込められていた。しかしそれを受けても赤石は一切悪びれることなくこれも大儀であると言うように吐き捨てる。
「さぁ、大二君。君はもう力の差…いや、ギフ様が与えてくれる恩恵を重々理解したはずだ。その上でもう一度聞かせてくれ…私とともにくるか、それとも…」
「…分かった。あんたと一緒に行く…
だから…ライスのことは見逃してくれ…!」
赤石が大二に対して問を投げる。このタイミングでそれを聞くということはそういうことなのだろう。ヘルギフテリアンにすら押し負けたホーリーライブではもう太刀打ちは無意味だ。大二はもう既に万策尽きたこの状況を少しでも好転させるために自分の身を捧げることに躊躇などなかった。
「素晴らしい、まさに英断だよ…大二君…」
「そんな…!ダメ!ダメだよ…!
やっと…取り戻せたと思ったのに…!」
「ごめん…
でももうこうするしかないんだ…!」
「いや…いや!行かないで…行かないでよ…!
お兄様…!お兄様ぁぁぁぁ!」
悲痛の声を上げて、こちらに手を伸ばすライスシャワー。その声を無視して大二は赤石のもとへと歩を進める。
ごめん、ライス。でも大丈夫…
兄ちゃんやさくら、フェニックスやウィークエンドの皆が君の味方だ。きっといつかは赤石もギフも…そして、怪物になってしまった自分のことも倒して平和な世界を作ることができるだろう。だから、何も気に病む必要なんかないんだ。
その心を胸に秘め、大二は外道に向けて足を動かした。
「さぁ、さっさと連れていけ…」
「………大二君、私はこれまで数多の試練を君に与えてきた…全ては君がギフ様の契約者として相応しい存在になることを願ってのことだ…」
「…いきなり何の話だ…?」
「それを踏まえて言わせてもらおう…今の君ではまだ!
ギフ様の契約者としては些か画竜点睛を欠く…!」
「何故だ、君を未だ踏みとどまらせるものは一体なんなのか…!
それの正体が今分かったよ…!」
そこまで言うと赤石は突如目の前から姿を消した。どこに行ったのかと思っているとすぐ後からの声が聞こえる、すぐに振り返ってみるとそこには驚きの光景が広がっていたのだった。
「ぐぅっ…うぅ…はっ……」
「このウマ娘の存在が、君の支えのようだ…!」
人間に戻った赤石がライスの首を絞めながら持ち上げている光景がそこには広がっていたのだった。
ライスを守るために自分はその身を捧げることを決めたのにこれでは話が違う、大二はライスを取り戻すため…そして約束を違えた赤石を問い詰めるために近づき掴みかかるが、簡単に払い除けられる。
「やめろ…!赤石…ぐはっ…!」
「君は一度絶望の意味を知る必要がある…喜びたまえ、ライスシャワー君!
君の尊い犠牲によって…君の想い人は人類の先導者として漸く完成する!
フハハハハハ…!」
「あっ…カハッ…あ……あ………」
「やめろ…やめてくれぇぇぇえぇっ!」
あぁ、いつもこうだ…
いつも俺はこうやって無様に這いつくばって泣くだけで…
兄ちゃんの背中に隠れていた子供の頃から何も変わっちゃいない…
また俺はライスを守れない…
カゲロウから託された筈なのに…
あいつから認めてもらえた筈なのに…
やっぱり俺一人じゃ、何もできやしないよ…
やっぱりお前が居なきゃ俺は…
お前が居ない俺に、価値なんかない。
価値がない俺なんかにはきっと…
ライスを助けることなんて、できやしないんだ…
もう…何も考えたくない…
もう…何もしたくない…
もう…
もう、生きていたくなんかない………
前を見ろよ 大二…
「!……誰だ?」
絶望の渦の中に迷い込みそうになったとき、ふと誰かの声が頭の中に響く。その声の正体が一体何なのかは分からないがなんだか安心できる声だった。
まるで、生まれたときからずっと一緒にいる存在に語り掛けられたかのような…
その謎の声に従い、顔を上げて前を見つめてみる。
だがそこには何も変わらない、ただライスが苦しめられているだけの惨状が広がっているだけだ。
こんなものをもう一度見せ付けるなんて、あの声の持ち主はきっととてつもなく捻くれた精神構造をしているだろうと考えてしまう。
だがそんな絶望の暗闇の中に大二は一筋の光を見つける。
瞳だ。
未だ光を失わず、諦めず、輝き続けているその瞳を大二は見つけた。
それの持ち主は誰であろう…
こんな絶望の暗闇の中で藻掻き続け、希望を見出し続けているのは誰であろう…
自分はその瞳の持ち主を知っている…
どんな苦境に立たされようと立ち上がり、走り続けることをやめなかった小さな一人の戦士のことを自分は誰よりも知っている。
その戦士の名こそ、ライスシャワー…
自分の担当ウマ娘であり、この世界で最も大事な人の名だ。
彼女は未だその手に剣を握り、目の前の悪鬼に立ち向かわんと闘志を燃やしている。
絶体絶命の窮地に立たされているそんな状況の中でだ。
「あ……きら…め……ない……皆、待ってるから…っ…!」
そうだ、思い出せ!
彼女とともに駆け抜けたあの日々を!
いつもそうだった…
いつも誰かの不幸を自分のせいだと責めて…
何度も何度も敗北を重ねて…
ブルボンの三冠を阻んだことによってバッシングを受けて…
嘆きにも、怒りにも…
何度震えたのかもわからない!
だがそれでも彼女は…!
最後には自分から立ち上がってきた!
それなのに自分はどうだ…
いつも誰かを羨んでばかりで…
少し躓いたからって諦めて…
そんな体たらくで彼女のパートナーを名乗れる筈がないじゃないか!
「う…っ…ぉお…おおぉおお…!」
立て…! 立て…! 立て…!
早く立ち上がって戦え…!
自分が弱いからなんだ!
自分が至らないからなんだ!
そんなの、ここで戦わない理由になんかならないだろ…!
自分の限界を、今ここで…越えるんだ!
その瞬間俺の身体から仄かな、だが確かに眩い光が溢れ出す。そして同時に身体の中から漲る力の奔流…
なにが起こったのだろう、俺の心に呼応することでこの身に宿るギフの遺伝子が活性化したのだろうか…
気にはなるが、それは後回しだ。
今ここで重要なのはただ一つ、あの悪鬼に一矢報いることができるということだ!
「赤石ィイィィイ!」
「な、なに…!?その力は…ぐぅ!」
立ち上がり、駆け出し、拳を突き出す。本来なら変身もしていない俺の拳など、赤石にとって取るに足らないものでしかないだろう。
しかし、謎の力に包まれた俺の拳が胴に直撃すると完全に意表を突かれたのもあるだろうが、予想外の威力によって赤石は吹っ飛ばされ、ライスを掴んでいた手を思わず離してしまう。
「待たせてごめん、ライス。大丈夫か?」
「ぉ…にぃ…さま…ううん、来てくれるって…信じてた…から…」
ライスを助け出すことができ、安堵する。先程までの戦闘のダメージに加え、今まで拘束され続けたことで大きく疲弊を見せてはいるが、命に別状はないだろう。
しかし、安心するのも束の間…赤石は大したダメージもなかったのかすぐ立ち上がり激昂を顕にする。
「何故…!何故また立ち上がる…!?
私は完璧に君の心を折った筈だ…!
立ち上がれる筈がない!
それなのに何故…!!
矮小な人の身に拘っていながら!」
何故だと?
それならもう判りきっている…もう既に答えは得た。
「お前の言う通り、人類は…
愚かで弱い生き物なのかもしれない…
カゲロウを失った今の俺なんかは尤もだろう…」
「………お兄様……」
「…ならば何故抗う!判っているだろう!そんなことをしても無駄だと!」
「………守りたい、大切なものがあるからだ!」
「なにぃ…?」
「人はどんなに弱くて、どんなに愚かでも…自分の大切なものを守るためなら幾らだって強くなれる!
俺に、そう教えてくれた人がいる…」
振り返り、俺はその人を見つめる。
真っ暗な闇の中で迷い続けていた俺を最後まで見捨てず、遂には光の中に連れ戻してくれた世界で最も大切な宝物のことを…
「だから俺はもう逃げない…!
自分がどんなに弱くて、不完全でも…!
何度だって立ち上がって見せる…!
それが俺の、覚悟だ!」
これは謂わば宣誓…自らの弱さを受け止め、それでもなお諦めずに立ち向かい続けるという誓いの証明だった。
「……ゥゥゥゥゥァ"ア"ア"ッ…!
ざぁんねんだよ大二君っ…!
君がこれほどまでに無知で蒙昧だったとはね…!
君にはもう、ギフ様の寵愛を受ける権利はない…
せめて私が…引導を渡してあげよう…!」
赤石は苛立ちを隠すこともせず露わにし、頭を掻き乱す。そして大きな失望を孕んだ言葉を吐きながら右手を上げて火球を発生させる。
大きさはそれほど大きくない、バレーボール位のサイズだがギフデモスの力は先程の攻防でよく理解している。ただの人間とウマ娘の二人組など、簡単に消し飛ばすことが可能だろう。
「さよならだ…大二君ッ…!」
赤石が手を振り、生みだされていた火球を投擲する。火球は真っ直ぐこちらに向かって来ており、逸れる気配もない。
このままでは直撃は免れないだろう。
回避する余裕もない、先程のような力の奔流も感じられない。
ならばせめてライスの安全は確保しなければと俺はライスの前に盾になるように立つ。
「ウオオォォオオーーッ…!」
「お兄様…!」
心配しないでくれ、ライス…死ぬつもりなど毛頭ない。
この一撃がどれほど強大なものであろうと、どんなにこの身体が焼け爛れようと必ず生き延びてみせる。
そして必ずあの男を、赤石を打倒するのだから…!
ドガーン!!
火球が着弾し、爆ぜる音が広がる。
爆発の規模からして辺り一帯は焦土と化している。
これでは生存など望むべくもない筈だった…
しかし…
「ば……馬鹿な…!」
「…なにが、起こったんだ…?」
そこに広がっていたのは驚きの光景だった。
其処には無惨に焼け爛れ、命の灯火が消えた姿ではなく、謎の光にその身を護られ五体満足でその場に立ち尽くす大二の姿だった。
大二はその特殊な状況に面食らうも、自分を守ってくれた謎の光に目を向ける…
「……ウイング…バイスタンプ?」
大二を救った光の中心には先程取り落としてしまった筈のホーリーウイングバイスタンプが同じく取り落としてしまったライブガンを伴って存在していた。
ホーリーウイングバイスタンプはゆっくりと大二に近付いていき、その手元に納まる。
大二の手が触れた瞬間、バイスタンプのその淡いターコイズブルーの配色と純白の翼の色が変化する。
その様相は、変化する前のクロウバイスタンプとよく似ていた。
謎のバイスタンプから光の波紋が広がり続け、"漆黒"の羽根が舞い始める。羽根は少しの間、宙を舞い続けていたがやがて一塊に集まり始め、人型を形成する。
羽根でできた人型は血の通った肉体へと変わり、そして黒衣の青年に姿を変える。
そこに立っていたのは、見間違える筈もない。共に生まれ育ち、そして最後に想いを託して消えていった為に二度と会えないと思っていた筈の存在、もう一人の自分。
「「…カゲロウ(くん)…!?」」
「よぉ、お前らァ…久し振りだなぁ…
クックックッ、相変わらずの間抜け面だなァ…
思わず笑えてきちまうぜぇ…」
五十嵐大二の悪魔、"カゲロウ"の姿だった。
カゲロウは独特の指を弾く癖をしながらこちらへ振り向くと、ニヤッと笑いながら嫌味を言う。
「本当に…お前なのか?…カゲロウ…」
眼の前の光景が信じられず、思わず聞いてしまった大二。カゲロウは変化したバイスタンプを奪い取りながら、そんな大二の言葉を聞いてまるで悪戯が成功した悪童のように、得意気に喋り始める。
「ハッ…お前が漸く俺のありがたみってやつを自覚したみてぇだからな…地獄から舞い戻ってきてやったんだ、精々感謝し…ぅおっと…」
「うん…っ…うん…!
いっぱい…いっぱい感謝するよ…っ…
おかえり…カゲロウくん…!」
しかしそんなカゲロウのおしゃべりも突然訪れた小さな衝撃によって中断させられる。ふと視線を下げればライスがカゲロウの胸で啜り泣いていた。
どうやらライスが胸に飛び込んできたときの衝撃だったらしい。
二度と会えないと思っていた友達との再会を喜び、抱擁を交わすライス。
「…その調子じゃライダーになっても泣き虫は変わらねぇみてぇだな、ライス…
それにしても…
甘ちゃんのお前があそこまでの根性を見せるとは思わなかったぜ、大二…?」
胸にライスを抱きながら此方へと向き直って声を掛けてくるカゲロウに対し、大二は答える。涙を堪えながら、どこまでも毅然に。
「当たり前だろ…っ…お前にもライスにも、噓をつくような真似はしたくなかったからな…」
「…お前のことだ…
気付けば上出来位に思っていたが、期待以上だった…
癪だが、認めてやるよ…お前の覚悟って奴をな…」
そんなことを言い放つカゲロウの表情は言葉とは裏腹に、とても晴れやかなものでありまるで今まで面倒を見ていた雛が長い時を経て、巣立ちを迎えたところを見届けたかのような面持ちだった。
「カゲロウ…これからは、一緒に戦ってくれるか…?」
大二はカゲロウに対して問を投げる。態々そんなことを聞かずとも先程までの言動と赤石の攻撃から守ってくれた行動からカゲロウもそのつもりなのは薄々分かっているのだ。
これは一種の確認だ、言葉にしてもらうことで改めて心を交わしてこれから共に戦うために。
「ふっ…お前がまた腑抜ける様なことがあったら、いつでも乗っ取るからな…?」
帰ってきた返答はどこまでも彼らしい皮肉の様なものではあったが、それは翻訳すれば彼なりに了承の意を示すものであり、その証拠にもう片方の手に持っていたライブガンを大二に手渡す。
大二はそれを受け取り、手首をスナップしてモードを切り替えてドライバーにマウントする。
さあ、撃鉄を起こす準備は整った…
此処から先は祝福を得て、彼らがかの名を取り戻す時…!
「………」カチャッ
『パーフェクトウイング!』
『Confirmed!』
カゲロウがバイスタンプを操作して起動し、大二の腰に装着されたツーサイドライバーのオーインジェクターに押印。
そのまま返す手でバイスタンプスロットに装填…!
『Wings for the Future…! Wings for the Future…!』
どこか静謐でありながら、しかし希望を感じさせる待機音を背後に二人は自分の変身ポーズをとる。
途中までは同じポーズ、手を横から顔の前までクロスさせるように持っていく。
そして大二はクロスした手を左側に回すようにして、十字を描く。
そして二人で一緒に自らを戦士に変える呪文を唱える…
『変身…!』
ツーサイドライバーのツーサイウェポンをライブガン状態にして引き抜き、親指で撃鉄を押して翼を展開。
そして最後にトリガーを引き、すべての行程を修了させる…!
『Fly High…!』
『パーフェクトアップ!』
大二の背からは白い片翼が拡げられ、カゲロウは仮面ライダーエビルに変身後その身を黒い片翼に変化させ大二の背に移動する。
これで大二の背には白と黒…一対の翼が揃い、未来ヘと羽撃くための両翼が完成する。
白と黒の翼が大二を覆い、スーツとアーマーを形成することで完全に変身が完了する…!
『HAHAHAHAHA…!』
『仮面ライダー…エビリティ…ライブ!』
『アイムパーフェクト…!』
その出で立ちは通常のライブのアンダースーツに黒いラインが施されたホーリーライブのアーマーといった様相だが、特に眼を引くのはその背にはためく純白のマント。
その場に立っていたのは、人を甘言で騙し弄ぶ悪魔でも、自分の正義に酔い痴れて身勝手な断罪を繰り返す裁定者でもない。
人々の未来と大切なものを守るために翼を拡げる戦士…「仮面ライダー」だった…!
仮面ライダーは赤石へと向き直り、対峙する。
その眼差しにはもう、一切の迷いもなかった。
「ギフの傀儡、赤石英雄…
お前に慈悲は…いや、
続く…
ギーツもここまで勢いを落とすことなく、面白い展開が続いておりますし、景和は相変わらず主人公ですね!
ジーンが持っていた銃型のアイテムは一体何なのでしょう…?
ギーツたちプレイヤーの新アイテム…?
それとも仮面ライダージーンの変身アイテムだったりして…考察がはかどります!
教えて〜エロい人〜!
皆さん…
ウマ娘の福袋ガチャはどの娘が当たりましたか?
僕はドーベルと応援ヘイローでした!
二人共持っていないウマ娘&別衣装だったので大収穫といったところですね!
まぁダイタクヘリオス欲しさに113連して、懐は空っぽなんですが…(白目)
執筆して欲しい方はどっち?(詳しくは活動報告へ)
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リバイスとテイオー主体の物語
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ライスシャワーが主人公の物語
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その他