ツーサイなお兄様   作:仮面ライダー四季鬼

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ホワイトデー特別番外編 悩める男たち

3月14日、それはただの日付ではない。受け渡された淑女の愛に応え、紳士達がお返しの贈り物を渡す日、所謂ホワイトデーというものだ。

 

つい一月前には、今年はどれだけ沢山のチョコを貰えるだろうかとそわそわしていたうら若き男子達が、今度は一転して愛に報いるに値する品々を吟味し、自らの愛の大きさを証明しようと躍起になるのである。

その日はあるものにとってはただの日付になってしまうという清濁入り雑じった様相ではあるが、そんな悲劇とこそ無縁な男達がこのしあわせ湯には集っていた。

 

「ヒロミさん、ホワイトデーのお返しとかってどうしてましたか?」

 

一人はこのしあわせ湯を経営する五十嵐家の次男坊であり、今やブルーバードという新たな治安維持組織を背負って立つ男、五十嵐大二。

 

「…恥ずかしながら俺は今までがg…母からしか貰った経験がない。俺の意見はあまり参考にならないと思うぞ…

お前達こそ、誰かから貰ったりお返ししたりしなかったのか?」

 

一人はかつて命を削るドライバーを用いて迫り来る脅威と戦い続けた結果、その体に決して小さくない傷を負うも幾度として大二達を支え続けた大先輩、門田ヒロミ。

 

「いやぁ、昔はサッカー一辺倒だったからそういうのに縁がなくて…

フウには貰ってたけど姉妹の皆で食べられるようにお菓子の詰め合わせとかでした…」

 

一人は大二の兄であり、かつて仮面ライダーリバイとして家族との思い出が消えていく恐怖を抱えながら戦い続け、今はプロのサッカー選手を目指して努力している男、五十嵐一輝。

 

「じゃあ此処に集まってんのは、折角のホワイトデーだってのに気の利いたお返しの一つも思い浮かばねぇ甲斐性なしってことか?

そりゃ冗談キツいぜ…」

 

一人はスペシャルウィーク、サイレンススズカ、トウカイテイオー、メジロマックイーン、ダイワスカーレット、ウオッカ、ゴールドシップという錚々たるメンバーで構成されるチームスピカを纏めあげる万年金欠敏腕トレーナー、沖野。

 

「Mr.沖野…それ、自分で言ってて悲しくならない?

ま、そのとおりだがね。本来なら世の中のレディがこんなナイスガイを放っておくわけないが…

生憎そういうのは切り離してきたものでね…」

 

一人は現代に生きる天才科学者、一輝達の用いるライダーシステムの開発を一手に担いそして自らも悪魔に頼らない自慢のライダーシステムの完成形であるドライバーを使ってライダーに変身して戦う男、ジョージ·狩崎。

 

そう、この場に集まったメンバーの共通する悩み事とは一つ。

自分にチョコを渡してくれた大切な人にどんなものを贈れば良いのか分からないのである。

その状況をなんとか覆さんと同じ悩みを持つもの同士で集まり、知恵を絞っているが状況はあまり芳しくなかった。

 

「…なぁ、いっそのこと全員どんなチョコを誰に貰ったのか発表してみるのはどうだ?

そこが分かれば、どんな贈り物が合っているのか全員で意見が出せるかもしれない…」

 

「なら、言い出しっぺのヒロミから発表といこうじゃないか!

君は今年は誰に貰ったんだい?」

 

ヒロミから早速一つ提案がされ、そこから話題を大きく展開するために狩崎がバトンを渡す。

 

「今まで通り母からのおはぎだけ…いやそういえば、もう一つ貰っていたな?」

 

「Say,what's!?」

 

「お、てことはなにか?

門田さんは今年でやっと家族チョコオンリーから脱却したってことかい?」

 

これは予想外…一度戦線を離脱してから鳴りを潜めているとは言え、ヒロミはその頑固で不器用な性格故に女っ気が微塵も感じられない。

そのせいでチョコもどうせ他人からは貰っていないだろうという狩崎の予想が裏切られることとなった。

 

「あ、あぁ…制服からしてトレセン学園の生徒のようだった。

なんでも友達が迷惑をかけてしまったからそのお詫びも兼ねてとのことだったが、生憎覚えがなくてな…」

 

「……もしかしてその生徒、大きなリボンと穴を空けたヒトミミ用の帽子を被っている子じゃなかったかい?」

 

「確かそんな格好だった気がするが…なんだ狩崎、知り合いだったのか?」

 

ヒロミは自分にチョコを渡してくれたウマ娘の正体を狩崎が知っていたことに驚いたが、それについて聞いてきた狩崎の表情はなんだか苦虫を噛み潰したようななんとも言えないものだった。

 

「厳密に言えば知り合いの知り合いかな…

君に迷惑を掛けたご友人というのも想像はついているが、私から話すべきことではないからね…

まぁ、贈る相手は君で間違いないことは断言しておくよ。

ありがたく貰ってやってくれるかい?」

 

「そうか、そういうことなら…

と言うことで俺はその子からのチョコクッキーと母からのおはぎが全部だな。

沖野さんは、やはりチームの皆からですか?」

 

これ以上の追及は遠慮してほしいというような狩崎の無言の訴えに応えて、ヒロミはそれ以上はなにも言わず、そのまま沖野へと問いを投げた。

しかし、沖野は懐から数個のチロルチョコと一つだけ趣の異なる包装がされた箱を取り出しながら毒づいた。

 

「あいつらが俺にそんな可愛らしいこと、するわけないだろ?

まともにくれたのはスズカだけだよ…」

 

『!?』

 

その時、ヒロミ/狩崎/大二/一輝に電流走る。

沖野トレーナーのあまりの雑な扱われ方に戦慄を覚えたわけではない。

正直扱いに関しては彼はウマ娘にセクハラ紛いの行動を無意識に取ることが多いのでさほど不思議には思わない。

 

問題はあの"サイレンススズカ"がバレンタインにチョコを、しかも手作りを用意し手渡しているという事実だ。

彼女はその雰囲気から勘違いされがちだが、その本質は走るということに全力で傾倒している。

つまりは究極の世間知らずなのである。

 

噂によればサイレンススズカは、いつかのクリスマスに行なわれたプレゼント交換会にそこら辺のコンビニで買ってきたガムと充電器と塩コショウをプレゼントに出品したのだそうだ。

しかも、らしい包装をなにも行なわずコンビニ袋に入れたままでである。

どういうチョイスだよ…ガムと充電器はまぁ学生ならとなるが、塩コショウはマジでなんなんだ?ガチで謎である。

そんな彼女がちゃんとバレンタインというイベントを理解し、手作りの、包装がされたチョコを渡す。

それがどんな意味を持つか、想像に難くない。

要するに彼女は、ガチで獲りにきているということなのだ。

そのことに全く気づいている様子のないこの男に、正直に話すべきだろうか?

皆が取った選択肢は…

 

「それは災難でしたね、沖野さん…」

 

「そういうこともありますよ。なぁ、大二?」

 

「え、あ、あぁうん…」

 

「ま、日頃の行いというやつさ。これを機にセクハラ癖を治したまえよ?」

 

「おいおい、人聞きが悪いぜ…」

 

スルーすることだった。

今まで考えていたことは断言できる推測でしかない。もし伝えてそれが間違っていた場合の責任を取れるものは此処にはいないし、何より触らぬ神に祟りなしというやつだ。

 

「というより、むしろテイオーから貰ったのは君じゃないのか、一輝くん?」

 

「?…確かに貰いましたけど。」

 

沖野へと集められていた注目は、その発言によって一輝に集まり、急に話を振られた一輝は困惑気味に返答する。

 

「沢山作って余ったとかで…それもカウントするんですか?」

 

『…はぁ…』

 

朴念仁此処に極まれりとは正にこの男のことを指すのではないかとさえ感じてしまう。

沖野へと与えられたチョコがあれで、自分に贈られたチョコがそれであるという時点でそれがただの在庫処理で渡されたものではないことが容易に想像がつくと思うのだが…

もし彼の相棒がこの場にいたなら、盛大に突っ込みをいれているところだろう。

 

「フウにはバイトしてたカフェのイベントに誘ってもらって…

 

あと、たづなさんにも…」

 

「あぁ、トレセン所属のトレーナー皆に配ってたやつ、一輝くんも貰ってたのか?

ありゃなかなか良いとこのチョコらしくてな、勿体無くて少しずつ…」

 

「え…?貰ったのは手作りでしたけど?」

 

沖野に電流(ry以下略

まずい、これは非常にまずい。このままではもしかすれば一輝のような唐変木でも、たづなさんの気持ちを勘づかれることになるかもしれない。

そうなれば…

 

『フフフ…なに余計なことをしてくれてるんですか~?

お給料カットしますよ~?』

 

脳裏に浮かんでくるのはあの優しい理事長秘書ではなく、世にも恐ろしい緑の悪魔の姿だった。

別にアピールしてんだから良いじゃんとはならない、乙女の心は複雑怪奇なのだ。

 

「あ、あっと…えぇと、だな…その…」チラッ

 

(助けてくれ!五十嵐!狩崎さん!門田さん!)

 

「ち、ちょっと俺はトイレに…すぐに戻るので!」

 

(五十嵐!?)

 

「おっと、すまない…電話がかかってきたみたいだ。すぐ戻るよ。」

 

(狩崎さん!?着信音もバイブレーションもしてねぇじゃねぇか!)

 

「…………………すぐ戻る。」

 

(ぅおい!?せめてなんか理由作れよ!)

 

頼りない男どもである。それでも世界の命運をかけた戦いに身を投じて来た者達なのだろうか?

しかしそれも致し方ない。いかに仮面ライダーと言えど恋する乙女には手も足もでないものなのだから。

沖野は仕方ないので、取り敢えず後々に響かない程度に適当を言ってその場を切り抜ける決心をした。

 

「えぇと、あれじゃないか?

仕事仲間には市販品で、仲の良い友人には手作りを渡してるとか…」

 

「そんなもの、ですかね…?」

 

咄嗟に言った適当ではあったが、それは別にあり得ない話しでもない。バレンタインにおいて仕事関係の知り合いには箔のつくようなブランドの市販品、友人同士では手作りを渡し合うなんてことは良くある話しなのだから。

それを聞いた一輝は特に気にする風でもなく、話を蒸し返す様子もないようなので一先ず安心した。

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

(ん?あっ!なにしれっと戻ってきてんだあんたら!!)

 

「それで、狩崎さんは誰から貰ったんです?」

 

(話しを続けんな!)

 

なんとか場を切り抜けたことが判るや否や逃亡者達が雁首揃えて一斉に戻ってきた。まるで示し合わせていたかのように同時に席に着いたのでなんだかシュールな光景だった。

 

「私はロブロイくんとメジロのご令嬢に貰ったよ。

ロブロイくんとは話をするようになった友人だから判るが、マックイーンくんに至っては一体どういう風の吹き回しか…

なんだか気味が悪いねぇ…?」

 

「おい、どんな意図があるにせよ折角渡してくれたんだ。

そんな言い方するものじゃないぞ。」

 

「はいはい、分かったよヒロミマミー。」

 

「誰がマミーだ、誰が!」

 

まるでおかんのようなことを言うので、狩崎はおどけて見せた。

 

「でも、確かに不思議ですよね…狩崎さんとマックイーンってなんか接点ありましたっけ?」

 

「あれ、言ってなかったっけ。それはねぇ…」

 

狩崎はいかにして自分とマックイーンが関わるようになったか、その事情を事細かに説明した。

先の大二暴走事件の際に、ライスへの贈り物を届けて貰う依頼をしたこと。

それ以来なにかと話す機会が増えたこと。

 

「度々変なお願い事をしてくるものだから参ったよ。曰くスイーツを食べた腹持ちになれる薬とか、過剰に摂取したカロリーを分離する装置だとか…

そういったものは私の専門外だからね。」

 

「ハハッ、マックイーンらしいな!」

 

「ブクブク太んのがいやなら好きな食いもん位節制しろって話だよなぁ…?」

 

「おいおい…ん?カゲロウ?大二はどうした?」

 

「こいつがカゲロウか?

へぇ、ホントに五十嵐そっくりなんだな…」

 

「大二の野郎ぉ…黒歴史を思い出したせいか、急に俺に任せて引っ込みやがった。こういう時だけ駆り出しやがる…」

 

「こりゃ、帰ってくるまで大二の話しは聴けないなぁ…」

 

狩崎の話が終わった後、大二が先程まで座っていた場所には彼に宿る瓜二つの悪魔、カゲロウが座っておりいつの間にか会話に加わっていた。

どうやら自分の過去の失態を刺激されて落ち込んでしまったみたいだ。可哀相だがこちらとしても大変な出来事だっただけに肯定も否定も出来ず、苦笑いするしかない。

 

「というかよぉ、そろそろこんな話しは止めにしねぇかぁ?」

 

「?…どういうことだ?」

 

「お前らが集まった理由はなんだぁ?

貰った戦利品を自慢し合う為…ってわけじゃねぇだろ?

忘れてんじゃねぇよ。

ホワイトデーに凝った代物返して、箔着けてぇって話だろぉ?」

 

「箔がどうのはともかく…」

 

「なるべく良いものを渡して…」

 

「喜んで貰いたいってのは…」

 

「その通り、だね…」

 

「根本からズレてんだよ…

誰だぁ、貰ったもん発表し合おうなんて提案した頭でっかちはよぉ…」

 

「ぐっ…!」

 

精神的ダメージを受けているヒロミを余所に、カゲロウは立ち上がり大二の部屋へと入っていった。

と思ったらそんなに時間も経たない内に戻ってきた、その手にはなにやら冊子のようなものが握られており再び席に着くと、それを卓上に叩き付けるように置くと話し始める。

 

「こいつが何か分かるか、アホ共?」

 

「これは雑誌…だよな。これがなんなんだよ?」

 

「というか、カゲロウ…大二がこんなもの持ってるなんて知らなかったぞ。」

 

「………問題はそこじゃねぇ、中身を見てみろ。」

 

カゲロウの持ってきた雑誌、促されるままにそれを代表者の一輝が手に取り、ページを開く。

全員が寄り集まって開かれたページを覗いてみるとそこには正にお誂え向きな内容が記されていた。

 

「『気になる彼に貰ったら大チャンス!ホワイトデーの贈り物特集!』…?」

 

「決まってチョコ菓子を贈るバレンタインと違って、ホワイトデーは菓子の他にもアクセサリーや衣類なんかも候補に上がる…

そしてそれら一つ一つには、ちゃんとした意味があるんだよ。

そいつにはそれが詳しく載ってる…

まぁ要するに、自分の伝えたいことに似通った意味の贈り物を渡せば良いってこった…」

 

「詳しいな、カゲロウ…お蔭で助かった、礼を言わせてくれ。」

 

「悪魔って言うからどんなもんかと身構えちまったが、案外親切じゃねぇか!」

 

「…丸くなったもんだね、君も。」

 

男達はカゲロウの助言に感謝しつつ、ホワイトデーの贈り物を本格的に考える為に雑誌の内容に夢中になる。

カゲロウはその様子を何を思うでもなく、見つめていた。

一輝は他のメンバーが雑誌に夢中になっていることを確認するとそんなカゲロウに気になったことをそっと聞く。

 

「あの雑誌、大二のお金でお前が買ったんだろ?」

 

「…どうしてそう思う?」

 

「この集まりは元々、ホワイトデーに悩んでた大二が同じ悩みを持つ人を集めて開かれたからな…

あの雑誌があれば悩まなくて良いんだから、それは不自然だろ?」

 

「ハッ、だとしてもなんで態々俺がそんなもん…」

 

「ライスが大二に渡してるのに、お前に渡さない筈ないだろ?

お前もライスに贈るお返しを考えていたからあの雑誌を持ってた…違うか?」

 

「………………………チッ!」

 

図星を突かれたカゲロウは大きく舌打ちをしたのを最後に、一瞬の瞬きの後にそこに立っていたのは大二の方であった。

大二も今までの会話を全て聴いていたのかその表情には呆れのようなものを浮かべていた。

 

「カゲロウ、相変わらず素直じゃないな…」

 

「それでもお返しはちゃんとしようとしてたんだから、やっぱりお前の悪魔だよな…大二。」

 

「全く…困った相棒だよ、ホントに…

さぁ兄ちゃん、俺達も早く贈り物を選ばないと!」

 

「あぁ!湧いてきたぜ!」

 

これにて迷える男達はカゲロウという悪魔の助言によって、自らの気持ちを最大限表現する贈り物を選び出すことができたのだった。

これで後は当日、それぞれの御相手に無事に渡せる事を祈るばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沖野トレーナーの場合

 

「それじゃトレーナーさん、走り込みに行ってきますね?」

 

「お、スズカ…ちょっと待ってくれ。お前に渡しておくものがある。」

 

「?…私に、ですか?」

 

沖野はそう言うと、懐から掌ほどの小さな小箱を取り出し、そのままスズカへと差し出す。

スズカを困惑しながらそれを受け取り、注視するとそれはなんの変哲もない綺麗なラッピングがされたものだった。

 

「今日はホワイトデーだろ?先月のお返しってやつさ。食いもんだから悪くなる前に食ってくれよ?」

 

「…ありがとうございます。開けても、良いですか?」

 

「え?あ、あぁ!」

 

許可を取り、ラッピングを丁寧に剥がして、小箱の蓋を外してみると…

 

「これは、キャラメル…ですね。甘い良い香りがします。」

 

「だろ?外を適当にぶらついてる時に美味そうなのを見つけたんだ…

お返しに丁度良いと思ってな!」

 

「ふふっ…ありがとうございます。大事に食べますね?」

 

(この様子じゃキャラメルの意味には気づいてないな?

これなら凝った贈り物なんてせずに、無難にチョコとかでも良かったかもな。)

 

ガチャッ

 

「オッス~…ってああ!?

スズカがなんか貰ってんぞぉ!!」

 

「なになに…?もしかしてホワイトデーのお返し!?」

 

「うぇぇ!?俺達の分もあるよな!?」

 

「食べ物ですか!?美味しいものなら大歓迎です!」

 

次の瞬間、次々とスピカのメンバーであるゴルシ、スカーレット、ウオッカ、スペの4人が転がり込んできた。

テイオーとマックイーンがその場には居なかったが、その理由を問うのは野暮というものだろう。

 

「あぁ~!うるせぇお前ら!ちゃんと用意してるよほら!」

 

「おっサンキュー!…っておい!

なんでスズカのは御高そうなキャラメルで、あたしらは5円チョコなんだよ!

 

格差社会か!?人種差別か!?

ウィンストン・チャーチルの再来かオメェは!」

 

「当たり前だろ!あんなちゃっちいバレンタインチョコで貰えるだけ有り難く思え!」

 

「「「え~~~!?」」」

 

「フフフッ…」

 

スズカはそんなチームの掛け合いを微笑ましそうに見ていたが、ふと自分に贈られたキャラメルを見ながら想いを馳せる。

その心の祈りがいつかは誰かさんに通じるのを願いながら…

 

(一緒にいると安心できる…今はそれで良い。でも、いつかはもっと先へ…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

門田ヒロミの場合

 

「…そうか、喜んで貰えて良かった。

あぁ、一緒に入れたチョコも是非食べてみてくれ。きっと気に入るよ、ありがとう…

それじゃ、がが…お元気で。」

 

ヒロミはそう言って、通話を切る。電話の相手はがが、つまりはヒロミのお母様であった。

ヒロミは結局、あの雑誌に掲載された贈り物の中から選ぶことはなかった。

込めたい想いに似通った意味の贈り物を見つけることができなかったからだ。

なので彼は花を贈ることにした、贈った花はマーガレット。その花言葉は信頼。咲き始めの時期でそこまで数がなかったので花束ではなく一輪になってしまったが、沢山の花を世話するのは逆に負担になってしまうだろうからそれで良かったと思うことにする。

流石にそれだけでは味気ないのでチョコレートを入れさせてもらったが。

 

これで一つ、やるべき事は片付いた。後はもう一人にお返しを渡すだけだ。

そう考えを巡らせていると、タッタッタッ…っとこちらに向かって走ってくる音が響く。

その音の方に目を向けると一人の少女が此処に近付いているのが見えた。

 

「ひ、ひえぇえぇ~~!?待たせちゃってごめんなさい~!

途中で道に迷っちゃって~!」

 

「いや、そんなに待ってないから、大丈夫だ。

此方こそ急に呼び出してしまってすまないな…」

 

「いえいえ!どんな時でもお電話一本で即参上!仕事屋マチちゃんとは私のことですとも!むふ~!」

 

「そ、そうか…」

 

正確には狩崎経由で連絡を取って約束を取り付けたので電話一本どころではないし、遅れてきた時点で即参上でもないのだが細かい事を言うのは辞めておこう。

 

「今回、君を呼び出したのは他でもない。この前のお返しをさせて貰いたいと思ってな…マチカネタンホイザ。」

 

「え?……うぇぇ!?」

 

「これを受け取って貰えるか?」

 

そう、バレンタインの日にヒロミにチョコを渡したもう一人の人物、謎のウマ娘の正体は自称普通のウマ娘、マチカネタンホイザだったのだ。

ヒロミはそう言って懐から、母に贈った物と同じブランドのチョコレートを渡す。

 

「そそそ、そんな!?

気にしなくても良いですよ~!元々お詫びのつもりで渡したんですから~!」

 

「そう、その事についても是非詳しい話を伺いたいと思ってな…

失礼だが、俺には君に詫びられる覚えがない。一体どういうことなんだ?」

 

今回直接会う事にした理由はその辺りを詳しく聞いておきたいというのが大部分だった。自分はそれなりに苦労してきた覚えはあるが、その大半は自分の至らなさが原因であると感じているヒロミは誰かに詫びられる程迷惑を被られた覚えなど全くといって良い程ないのだ。

それを聞いたマチカネタンホイザは、今までの朗らかな表情を潜めて少し憂いを帯びたものになる。

 

「………………狩崎さんから、何か聞いたりとかはしました…?」

 

「いや、何も聞いていない。

狩崎は直接本人から聞く方が良いと…

すまない、自分から聞いておいて何だが言いたくないのなら…」

 

「…ごめんなさい…

ちゃんとお話ししないとって分かってるんですけど…

どうしても勇気が出なくて…

いつか絶対全部話します。だから…」

 

「分かった、無理を言ってすまなかったな…」

 

「いえいえ…!こちらこそごめんなさ…

 

ぷっ…アハハハハハッ!

なんだか私たち、お互いに謝ってばっかりですね!」

 

確かに言われてみればそうだったと思い至る。これまでヒロミとマチカネタンホイザは会話を重ねるなかで二人とも話の流れで何度も謝罪を繰り返していた。

それほど特筆するようなことでもないのだが、気付いてしまうとなんだか可笑しく感じてしまう。

 

「フッ…ハハッ…確かにな。

俺達は案外、似た者同士なのかもしれないな。」

 

「はい!

えへへ…私達、ごめんなさい友達ですね!」

 

「それはよく分からないが…」

 

「ガーン!」( ̄□ ̄;)!!

 

些細な気付きから、マチカネタンホイザのその表情にまた笑顔が戻ってきた。

ヒロミは楽しそうに笑う彼女の笑顔を見ていると、柄にもなく彼女に一番似合う表情こそがそれなのだろうなと思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五十嵐一輝の場合

 

トウカイテイオーは無敵のウマ娘、それは彼女を知る者にとっての共通項であろう。

戦績や名声の事を言うのではない。

彼女の走りはこの世界のあらゆる人々に夢を、希望を、そして奇跡を見せる…

 

故に無敵、ウマ娘として考え得る高見の最高峰に座する者であると言える。

だが、そんな無敵のウマ娘にも弱点がある。

 

(一輝に…呼び出された。

これってもしかしなくても"そういうこと"なのかな…!?)

 

如何に無敵のウマ娘と言えど病には勝てない…そう、恋の病には。

その病はとても厄介で罹患した者には様々な症状が見られるようになる、例えば盲目とかであろうか。

普段の"あの男"がどんな性格なのかも、頭から綺麗さっぱりすっぽ抜けてそんな考えが巡ってしまうのも盲目故であろう。

 

だから普段はしないような気合いの入ったお洒落やメイクをして、待ち合わせ場所に来てしまっているのも、ある意味自明の理だ。

 

「………へ、変な跳ね方してないよね?」

 

持ってきたバッグから、手鏡を取り出し出掛ける前に洗面台の鏡で何度も行なった確認を再度繰り返す。

手鏡に映るのはいつもの元気な天真爛漫な彼女ではなく、100人見れば全員が振り返ってしまうだろうと言える程の美少女だ。不安に思う必要など本来ならばない筈だが彼女を呼び出した男はそういう奴なのだから用心するに越したことはないのだろう。

 

「お~い、テイオー!」

 

(き、来た~~~~!)

 

「悪い悪い、待たせちゃったか?」

 

「え、えと…

も、も~う!ホントだよ!

ボクはものすっごく忙しいんだから!

そこら辺気を付けてよね!」

 

「ホントごめんな!このと~り!」

 

手を合わせながら頭を下げる様にして謝る一輝だったが、その体勢を直し改めて向き直してようやくテイオーの姿を直視した際に少しの間呆然とする。

 

「?…どうしたの一輝?」

 

「…ん?あぁ、いや…テイオー、今日はなんかいつもと違うんだな。

 

何て言うか、うん…綺麗だな!」

 

「…………ふえ……?///」

 

いつもの調子で突然褒められたことでテイオーは顔から火が出そうになる。正直に言えば一輝なら此方がどんなにお洒落していても気付かないと思っていたのだ、いつもそうだった。

若しくは茶化されて終わる位は覚悟していたので面食らう。

 

テイオーはこの一時の出来事で確信した。一輝は確実に"そういう"気で自分を呼び出したのだと。

今までぬか喜びさせられることなんて何度もあった、その度に期待を裏切られて挫けそうになってきたが、遂に今日この日に報われる時が来たのだ。

 

「う、うん…///

今日は凄く気合いを入れて来たんだ…

えっと…君にもっと好きになっ…」

 

「そんなお洒落して、どっか遊びに行くのか?」

 

「…………………………………………は?」

 

空気が凍る。

氷の力を扱うバリッドレックスの氷結能力でもこれ程までに冷たい空間を作る事は至難の技であろう。

テイオーが何故そんな空間を生み出したのか、それは一輝の言動に違和感を感じたから。

そう、まるで…お洒落をしている理由に見当がついていないみたいな。

 

もしかしたらこれは…

そんな悪い予感を信じたくなくて、テイオーは問いを投げる。

 

「な、何言ってんのさ、一輝…

ボクと君はこれからデート…………」

 

「おっ、来た来た!お~い、こっちで~す!」

 

そのか細い声で紡がれたその問いは一輝の耳には届かず、一輝は遠くの方に大きく声をあげながら手を振っている。

テイオーは先程から感じる悪い予感が更に大きくなってくるのを感じながら一輝が声をかけている方向に目を向けてみる。

そこから人が一人。

その人影は一輝を見つけると同時に嬉しそうな笑顔を浮かべながら近付いてくるが傍らのテイオーを見つけた瞬間に怪訝な表情に変わり、こちらがいるところに辿り着く頃には現在のテイオーと同じ表情、完全な"無"となっていた。

 

「………」

 

「………」

 

そこに立っていたのはテイオーと同じく、気合いの入ったお洒落やメイクをしたトレセン学園理事長秘書、駿川たづなその人であった。

そう難しい話ではない、テイオーもたづなも同じ穴の狢だったと言うだけの話である。

因みにさっきの一輝の思わせ振りな言動の種明かしも実に単純。

女の子の変わったところに気付くことが出来たら取り敢えず褒めておけばなんとかなるというさくらのアドバイスを鵜呑みにした結果である。

つまりそこには"気付いたから褒めた"程度の意識しか存在していなかったのだ。

 

「先月はバレンタインチョコありがとう!

これはホワイトデーのお返しだ!

帰ってからゆっくり食べてくれ!

二人とも、予定あるのに付き合って貰って悪いな!

俺もう行くから楽しんできてくれよ!

 

じゃあな~!」

 

一輝はそう言って懐から取り出した二つの箱をそれぞれに渡した後、近くに停めてあった自転車に乗り込み颯爽と去っていった。

彼の自慢の脚力で漕がれた自転車のスピードは果てしなく、あっという間に見えなくなってしまった。

その場に残された可憐な乙女二人はただただ呆然とするしかなかった。

 

「………そんなことだろうとは…」

 

「………思っていましたけれど…」

 

あんなことになって浮かれてしまう寸前までは頭の中にあった構想ではあったがいざ的中してしまうとなかなか心に来るものがある。

その傷心を癒すべく、テイオーはたづなに対してある一つの提案をするに至った。

 

「…たづなさん、これからカラオケ行かない?

この鬱憤は歌って発散するのが一番だよ!」

 

「ふふっ…そうですね。誰かさんのおかげで今日一日暇ですから。

なんでもお付き合いしますよ、テイオーさん。」

 

こうして二人は一輝からのお返しのことなどすっかり忘れて、カラオケやショッピングなど想定外のお出かけを最大限楽しむこととなった。

 

しかし、帰宅後にふとお返しのことを思い出した二人が箱を開けて中身のマカロンを見た瞬間、今日得た教訓のことを忘れて狂喜乱舞したことを此処に記しておこうと思う。

 

 

 

「一輝兄、因みになんでマカロンあげたの?」

 

「マカロンあげるのは『特別な人』って意味なんだろ?

二人とも俺の特別な友達だからな!」

 

「………そう来たか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五十嵐大二の場合

 

五十嵐大二は疲れていた。

ブルーバードの活動が大きく軌道に乗り始めたことで業務が非常に多忙になったこともそうだが、何よりその多忙な業務の合間を縫って自分の納得がいく贈り物を方々で探し回っていたので心身共に休まる暇が一切なかったのだ。

しかしその努力も相まって、とても素敵な贈り物を見つけることができたのでそれは僥倖だった。

 

ガチャッ

 

「ライス、ただいま。」

 

「あっ、お帰りなさいお兄様!」

 

部屋の奥の方からライスが現れ、エプロンで手を拭きながらトコトコと近付いてくる。その様子を見るに、もう既に殆どの家事を終わらせて夕食も用意してくれているようだ。

ここまで尽くしてくれる彼女には日頃から感謝の念が絶えない。

 

「今日は何か変わったことあった?」

 

「今日はね、ブルボンさんが様子を見に来てくれたよ!

元気そうで安心したって!」

 

「そうか、じゃ今度一緒にお礼しに行こうな?」

 

「うん!」

 

ライスは今、学園を無期限で休学している。その理由は宝塚記念中に起こった事故で負った怪我によるものだ。

全力疾走中の足の骨折、それは字面にすればそこまで恐ろしいようには見えないかもしれないが、実際はその限りではなく、その証拠にライスは生死の境を彷徨い、奇跡的に一命を取り留めたものの再びレースの世界に返れる確率は非常に低いものとなってしまった。

そして現在は、ブルーバードの寮の一室で療養しながら大二と二人暮らしをしているのである。

 

「お兄様、今日は少しだけ遅かったけどもしかして何かあった?」

 

「あっ、そうだった。少し待っててくれるか?」

 

ライスが用意してくれた美味しい食事に舌鼓を打った後に少し身体を休めていると、今日は帰りが少しだけ遅かったことを思い出したライスが疑問を投げ掛ける。

ライスは療養中である為に、ドライバーを一時的に預かっているのでライダーとして戦うこともできない。

誰かが危険に晒されていても、なにもすることができない現状を歯痒く思うが故の疑問であることは理解しているが、今回はそう言った理由で遅れた訳ではないので安心して貰いたい。

 

「これを探してたら、少し時間をかけすぎちゃってな…」

 

「これ、バームクーヘン…?」

 

「あぁ、今日はホワイトデーだろ?

先月のバレンタインはとても素敵なチョコを貰ったからお返し。」

 

「わぁ…すっごく嬉しいな!

今切り分けるから、お兄様も一緒に食べよう!」

 

ライスはそう言うとバームクーヘンを持って台所の方へと駆けていく。その様子からはとても怪我をしているようには思えない。

彼女が順調に快復に向かっていることを改めて認識し、大二に心には安心感が募っていった。

ライスはバームクーヘンを丁寧に切り分けながらその贈り物に込められた意味を感じて胸の中にほんわかと熱を感じる。

 

(『永遠の幸せをあなたに…』かぁ…

えへへ、お兄様と一緒にいれるだけでライスはすごく幸せだよ…)

 

 

 

「あ~むっ…うぅ~ん!

甘くて、ほっぺが落ちちゃいそう~…」

 

「ハハッ、ホントに落ちちゃったら大変だな…」

 

丁寧に切り分けられたバームクーヘンを小皿に移して、フォークで上品に食べるライスとそれを見守る大二。

とても絵になる素敵な光景だった。

 

「さて、……ん?あれ?」

 

「?…どうしたのお兄様?」

 

「どうせ渡すものがあるだろうからカゲロウに替わろうと思ったんだけど…

出てこないみたいだ…」

 

「カゲロウくん?…あぁそれなら、もう貰ったよ?

朝に枕元に置いてあったから。ほらこれ!」

 

そう言ってテーブルの上に置いてあった袋を手元に引き寄せながら、大二に見せるように持つ。

その手の中のあったのは、駄菓子屋などで探せば簡単に見つかるような菓子の類いだった。

 

「チョコマシュマロって…カゲロウ、お前って奴は…」

 

「あはは…」

 

ホワイトデーにマシュマロを贈るといいうのにはどういう意味があるかというと、『あなたのことが嫌い』という意味があるのである。

なんでも、口に含んだ際にスッと溶けてなくなってしまうことから貴方との関係を消し去ってしまいたいというような解釈がされていることかららしい。

 

「カゲロウくんのことだから本気じゃないよ、だから気にしないであげて?

 

それにね、ホワイトデーのマシュマロにそんな意味ができたのはすごく最近の話で、本当はもっと嬉しい意味なんだよ?」

 

「え、そうなのか?」

 

博学なライスはホワイトデーのマシュマロの本来の意味について、詳しく教えてくれた。

そもそも、ホワイトデーの起源はバレンタインのお返しにマシュマロを贈っていたことが由来とされており、

 

『貴方からの愛に感謝し、私からの愛を優しさで包んで返します。』

 

という意味が本来は込められていたのだと言う。

それが時を経るにつれて現在のような由来、意味となっていったのだ。

 

「へぇ、そうだったのか。全然知らなかったよ、ライスは物知りだな。」

 

「うん!…だからね、カゲロウくんはきっとそういう意味で贈ってくれたのかもしれないから…あんまり怒らないであげてほしいな…?」

 

「…そうだな。カゲロウのことだから、素直になれなかっただけかもしれないけど。」

 

「それでも、ライスはそう思うことにします!

その方が嬉しいもん!」

 

「おっ、我が儘言うようになったなぁ…」

 

「ふふふっ…

もっと我が儘になって良いんでしょ?

お兄様が言ったんだよ?」

 

「確かに…ハハハハッ!」

 

これは一本とられたなと思い、大二が笑うとそれに釣られるようにライスも口許を抑えるようにして微笑を浮かべる。

こんなやり取りができるようになったのもライスが自分のことを好きになることができたからだと思うと大二の胸には込み上げるものがあった。

打ち明けるなら、きっと今だろう…その心のままに大二は改めてライスの目の前に移動し、片膝をつく。

 

「お兄様?」

 

「ライス、あんな知識があるなら…バームクーヘンにはどんな意味があるかも知ってるよな?」

 

「うん、『永遠の幸せをあなたに』だよね?」

 

「あぁ…それってきっと、贈った相手の幸せな運命を願うって意味だと思うんだけど、俺の場合は少し違うんだ…」

 

「え…?」

 

「俺にとってこのバームクーヘンは君を幸せにする、君の幸せを永遠に守り続ける男になるっていう意思表明なんだよ。」

 

「……!」

 

「君から走る幸せを奪っておいて、説得力ないかもしれないけど…

それでも、君の隣に立って歩く権利は誰にも渡したくないから…」

 

大二は懐から何かを取り出す。

それは小箱、何かをいれるにしてはとても小さすぎる程のサイズしかなく、必然的にその用途は限られる。

ホワイトデーのもう一つの贈り物であり、そして彼の確固たる覚悟を表す代物であった。

大二は中身が見えやすいように開き口の方をライスの方に向けながらその箱を開く。

その中に納められていたのは、控えめな装飾が施されたシルバーリング。

これが意味するところは明白だといって良いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ライス、俺の家族になってほしい。」

 

「…っ…はい…!

ライスを、貴方のお嫁さんにしてくださいっ…!」

 

涙をポロポロと溢しながら、差し出された小箱に手を添えるライス。

しかし、その顔に浮かべられた表情は悲しみではなく煌めくような笑顔であり、そこには確かに幸せがあったのだ。

これからの彼らの道行きには、それこそ多くの困難と衝突があるだろう。しかしそれでも、この二人なら必ず乗り越えられることだろう。

そう、信じられるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジョージ・狩崎の場合

 

ここは、ブルーバード本拠地に存在する開発ラボ兼ジョージ・狩崎の私室である。

何に使うか分からない部品が転がった、いかにも怪しげな部屋にメジロマックイーンは訪れていた。

というのもここの家主であるジョージ・狩崎に直接呼び出されたからである。

 

「ヘ~イ!マックイーンくん!

わざわざご足労掛けてソーリー!

先月のバレンタインのお返しを持って来たよ!

ロブロイくんも遅れてくる筈だから二人で分けてくれたまえ!」

 

「…驚きましたわ、貴方にはそんな律儀なことできないと思っていましたから…」

 

結構失礼なことを言うメジロマックイーン。

だが、そんな態度も狩崎にある程度気を許しているからこそだ。

普段であれば目上の大人に対してそのような礼を欠いた行いは絶対にしないが、狩崎は知らない仲ではなく尚且つ多少雑に扱ってもさほど問題ないのでそのような態度になるのである。

 

「きっと気に入ると思うよ…

甘くて、美味しくて、おまけに洒落が利いているからね…!」

 

「甘くて、美味しい…?

もしかしてスイーツですの…!?」

 

「あぁ、篤とご賞味あれ。

これが私からのホワイトデーのお返しさ!」

 

そう言って彼がラボに設置されている冷蔵庫から取り出したのは、大きめの白い箱。

その蓋をとって現れたのは…

 

 

 

 

 

 

ホールサイズの"アップルパイ"だった。

 

「今日は3月14日、つまり3.14…πの日!

そんな日にはパイを食べようじゃないか!

どうだい、なかなか面白い洒落だろ?」

 

「……………」

 

「?…マックイーンくん?もしかしてスベったかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ムッキィィィィィィイ~~~~!!!!!!!!」

 

「!?」

 

「なんなんですの!?なんなんですの!?

パイ、言うに事欠いてパイですって!?

 

それはペチャパイである私に対する当て付けですの!?

当て付けですのね!!!

その喧嘩は買いましてよ!!!!」

 

「いや、そんなつもりは…お、落ち着きたまえよ、マックイーンくん…」

 

「特別に教えて差し上げますわ…

 

アップルパイにはアップルが入っているからアップルパイ…

 

 

 

 

 

ペチャパイには何も入ってないから!

ペチャパイなんですのよ~!!!

 

 

キエエエエエエエエエエエ!!!!」

 

 

 

「ひっ…!だ、誰か助け…

 

オ、

 

オ、

 

オーマイゴォォォォッド!!!!」

 

 

 

 

 

「…なんですか、このオチ……?」←遅れてきたロブロイ

 

 

続く…?















執筆して欲しい方はどっち?(詳しくは活動報告へ)

  • リバイスとテイオー主体の物語
  • ライスシャワーが主人公の物語
  • その他
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