ツーサイなお兄様   作:仮面ライダー四季鬼

6 / 16


一度執筆中に削除してしまって萎えそうになるも頑張って修理しました。

狩ちゃん…?嘘だよな…?
アンタこの小説じゃどちゃくそ良い人で通ってんだぞ…!?


前回の感想でも言ったのですがライスに託される3つのバイスタンプにはちょっとした裏モチーフがあるのでこの話を読み終えるまでに予想してみてください!

答え合わせは後書きでするので合ってたよ〜!って方は感想で報告してくれると嬉しいです!




アンビバレンスな"私"

大二side

 

あいつは…泣き虫だからな…

誰かが…守ってやんなきゃな…

俺の分まで…あいつのこと守ってやれよ…

 

 

 

大二…あばよ…

 

 

「…ッ!…」

 

この白い翼のようなバイスタンプを注視するたびにアイツのことが頭に浮かぶ。

俺と戦い、敗北し…そしてその結果すべてを俺に託して消えていった…

もしかしたら相棒になれたかもしれない存在のことを。

 

思えばあいつは…カゲロウは最初からただ素直じゃなかっただけだった。

俺の身体を奪い、兄ちゃんを襲ったのも…元はと言えば俺の溜め込んだ気持ちを代弁するためだったし…デッドマンズのアジトの件も教えない、または嘘を付くことだってできたはずなのに交換条件とか言って正直に教えてくれた。まぁ…その条件が俺の苦手な辛口カレーだったのは誠に遺憾ではあったけど…

その後もそれを口実にさくらを助けてくれて…

 

そんな素直じゃなかったあいつが変に悪ぶって誤魔化しながらじゃなく…

自分の分まで守れと正直に口にしたのはそれがあいつの心の底からの気持ちだったからかもしれない。

それほどまでに…あいつだってライスのことを大切な存在だと思ってたんだろう。

 

俺は色んなものを背負っている。

ライスの夢やそれに対する想い…

カゲロウを消してしまった責任…

そしてカゲロウの分までライスを守る覚悟…

 

だから…だから…

 

ライスのことを傷つけたあいつらを絶対に許してはいけないんだ。

 

今までのような優しいだけの俺じゃ…

あいつのように…もっと非情にならないと…

きっとライスを守ることなんてできない…!

 

だから俺はあいつらに慈悲なんて与えない、それがあの子を守ることに繋がるはずなんだから…

 

そんなことを考えているうちに、どうやら目的地についたようだ。

俺はある人物に呼び出され、この場所…

春の天皇賞が行なわれる京都競バ場、正確には京都競バ場内に存在している大きな公園、緑の広場にやって来ていた。今日はレースが行なわれる日だというのにレースの開始時間を心待ちにしている筈の市民は見当たらず、がらんとしている。

どうやら閉鎖されているようだった。

だがそんな緑の広場の中でポツンと一人、遊具に腰掛けて絵本を読んでいる影があった。影は俺に気付くと読んでいた絵本を閉じ、改めて俺に向き合う。

その影の正体は…

 

「久しぶり…お兄様…」

 

ライスだった。

何を隠そう、俺をここに呼び出したのは他ならぬ俺の一番大切な存在であるライスシャワーなのだ。

連絡を貰った時はとても驚いたが、同時にその可能性が一番高いとも思っていた。

なんせ逃亡を始めたあの日からできる限りの連絡先を削除し、自分の周りの交友関係を断ち切っていた。

だがどうしても彼女の…ライスの連絡先だけは消すことができなかったのだから。

これを消してしまえば自分は大きな何かを失ってしまうような気がしたのだ。

あちら側もそれに気付いたのか、ライスを通してこちらにコンタクトを取ろうとしてきたが俺はそれを悉く無視してきた。おかげでライスとのトーク履歴はその痕跡でいっぱいになってしまっていた。

今回もその類かと思っていればそこに映っていたメッセージは…

 

『この時間にここにきて 待ってるから』

 

という短いもの…

そして日時と場所の情報が続けて掲載されているだけだったのだから。

今までと全く違ったアプローチに思わず面食らうもそんな思考は日時を確認した際に吹っ飛んでしまった…

そこに映されていたのは春の天皇賞の日…ライスがメディアに出走を表明したレースの一つであり、何もかもが変わってしまったあの日に行われたものと同じ名のレースだったのだから…

 

 

 

 

 

 

 

数日前…

 

 

 

狩崎side

 

「これを使って作って欲しいの…ライス専用のドライバーを………」

 

「一応、理由を聞いてもいいかい…?」

 

恐らく理由は分かっている。彼女は自ら大二とぶつかることでなにかを伝えようとしているのだろう。だがしかし、それには懸念がある。仮面ライダーの力を得るということはこれから激化するであろうギフとの戦いに身を投じる可能性があるということ、そしてぶつかりあったところで本当に彼が戻ってくるという保証が存在しているのか。

この問はそれを問う意味でも投げかけたものでもあった。

 

「ライスとお兄様はね、一度も喧嘩なんてしたことないんだ…」

 

しかし彼女の返答はなんだか要領を得ないようなものだった。

一体何を言っているのだろうと思っているとどうやら言葉にはまだ続きがあるらしい。

 

「今まではお互いがお互いのことを分かり合ってるからだと思ってた…」

 

「でも違ったの…優しいお兄様にずっと我慢させてただけだった…」

 

「もうそんな関係じゃ嫌だから…ちゃんとお兄様と分かり合いたいから…」

 

「だから…お願いジョージおじさん、ライスにもう一度力をください…!」

 

どうやら決意は固まっているらしい。目を見ればわかる。この目は彼女が諦めない時の目だ、幾度と彼女とレースを行なってきた経験から知ったのだから。こうなった彼女は絶対に引きはしないだろう。なら私がする返答は必然的に一つとなってしまう。

 

「しばらくは徹夜作業になる、トレーニングの調整と同時並行で進めなければならないからね…」

 

「…!…ありがとう…!ジョージおじさん…!」

 

こうして私はドライバーの再設計とトレーニングの調整、そして使用するバイスタンプの調整を含めた三つの作業を同時に行なっていくことになってしまった。

恐らくこのときが一番、栄養ドリンクの消費が激しかったかな…?

 

そして運命の日、ぎりぎりでドライバーが完成した。

 

ライスシャワーside

 

「さぁ…これが君専用に再設計した、ツーサイドライバー改めアンビバレンスドライバーだ…確認してくれ…」

 

「うん…ありがとうジョージおじさん…」

 

そう言って彼はアタッシュケースに収納されたドライバーを開いて見せる。その出来栄えからは余りに多くの時間がこのベルトに注げられたことを容易に想像させる。

複数の作業を同時に行なっていたせいなのか彼はいつものような陽気さがなく、とても疲弊している様子だった。こんな姿を見せつけられては無理を言った身としては大きな罪悪感を感じざるを得ない。せめてものお礼として全てが終わったら全力で労わせていただくことにしよう。

 

「あぁ…そうだ、これも持っていってくれ。彼を待つ間に読むといい…」

 

そう言って彼が差し出したのはどうやら本のようだった。それを受け取り、よくよく注視してみると…

 

『青薔薇の宝石箱』

さく・え ジョージ・狩崎

 

「…え!?こ、これおじさんが描いたの!?」

 

「アンビバレンスドライバーの使用説明書を絵本風にしてまとめてみた…このほうが君は読みやすいと思ってね…」

 

どうやらそんな気遣いもしてくれていたらしい。最大限感謝しながら少し開いて内容を確認してみると、次の瞬間には笑いが込み上げてしまっていた。何故なら…

 

「ふふっ…難しい言葉や字ばっかり…これじゃちっちゃい子には分からないよ…?」

 

「慣れないことはするものじゃないね…」

 

そう、渡されたそれはとても絵本の体裁を保っているとは思えない仕上がりだった。作中に出てくるのは専門用語ばかりで、漢字にもルビが振られていないのでライスの言った通り、子供が読むことはできないだろう。しかもそれをチープな絵で描かれたキャラクターが説明しているものだから余計に可笑しく感じてしまう。ライスしか読むことを想定していないのでいいがこれではとても絵本とはいえない。

 

「いや、やっぱりちゃんとした説明書を渡しておこう…それは処分させてもらうよ。」

 

「あ、ううん…ライス、これがいい…だっておじさんがライスのために描いてくれた世界にたった一つの絵本だもん、大切にしたいな…」

 

「…………そうかい…」

 

返事するまでに少々時間がかかったのは疲れからくる眠気のせいだということにしておこう。

 

「それから…」

 

まだなにかあるのだろうか…?

 

「向かう途中にサプライズを用意しておいたから楽しみにしてくれたまえ…Zzz」

 

さっきのでも充分サプライズではあったのだが…

それだけ言い残すと彼はすぐ近くの壁にもたれかかってあっと言う間に眠ってしまった。

すぐさまベンチに運んで彼のコートを毛布代わりに掛けてやる。ここまで頑張ってくれたのだ、必ずいい報告ができるよう全力を尽くそう。

 

「おやすみ、ジョージおじさん…」

 

さて、準備は整った。

あとは彼の言うサプライズを楽しみにしながら目的地に向かおうと思ったがその瞬間は意外と早く訪れた。

学園の校門近くまで行くとそこには2つの人影があった。トレセン学園の制服を着ているのを見るに生徒のようだが…

よく注視してみると、そこにいたのは…

 

「待っていましたよ、ライスさん。」

 

「想定より早かったですね…ライス。」

 

「マックイーンさん…それにブルボンさんも…!?」

 

「私たちだけではありませんわ…ほら。」

 

「ご、ごめんなさ〜い!遅れてしまいました…!」

 

「ロブロイさんまで…!?」

 

そこにいたのはメジロマックイーンとミホノブルボン、そしていま駆けつけたのはゼンノロブロイというライスと特に関わりが深いウマ娘たちだった。

なぜ3人がライスがこの時間に出るということを知っているのだろう?

 

「もしかして…ライスを止めに来たの…?」

 

3人が何故出立時間を知っていたのかは定かではないが、その情報を掴んでいるのなら恐らくはこれからやろうとしていることも知っている可能性が高い。それならこれから起こる危険を予見し止めに来たと考えればある程度説明はつく。

 

「貴女がここに来るまでにまた迷いを抱えているようなら…そうしようと思っていました。ですがその心配は杞憂だったようです…」

 

三人を代表してマックイーンさんがそう告げる。

 

「私たちは貴女を止めに来たのではありません…貴女に託しに来たのです。」

 

そう言って3人はおもむろに自らの懐を探り始める。

そしてほぼ同時に取り出して見せたのは意外なアイテムだった。

 

「バイスタンプ…?」

 

「貴女のトレーナー代理さんからのお届け物…というのは建前で、本当は決戦を前にしたライスさんと少し話す時間をくださったのです…」

 

なるほど、合点がいった。

狩崎の言っていたサプライズとは当にこのことだろう。

自分が使用するバイスタンプを3人に届けさせることで話す機会を作ったのだから、3人としっかり話せということなのだろう。

それほどまでになにか伝えなければならないことがあるのであろうことを感じ取り、気を引き締める。

 

「まず私から…ライス、私は貴女に謝罪しなければいけません…」

 

そう言ってまずブルボンが前に出る。

謝りたいこととは一体なんだろうか…何か悪いことをされた覚えはない。どちらかといえば恨み節を言われそうなのは自分の方ではないかとも思ったがブルボンはもう割り切ることができているからその線も薄いだろう。

 

「ライスは天皇賞の日の私が何をしたか、覚えていますか…?」

 

「うん…ライスを止めてくれたよね?」

 

よく覚えている。

あの時の自分は突然のことで気が動転し、我儘を言って周りの人間に迷惑をかけてしまっていた。その時、仲裁に入ってくれたのが待機していたミホノブルボンなのである。あのままであればもしかしたら自分が誰かを傷つけていたかもしれない状況を未然に回避してくれたのをとても感謝している。

 

「あの行動は今思えば、間違いだったのかもしれません。私が貴女を引き止めたせいで…五十嵐トレーナーと離ればなれになってしまったようなものなのですから…」

 

そう、あのときの行動をブルボンはずっと後悔していたのだ。ライス達がとても強い信頼関係で結ばれていることを知っているからこそ、自分の行動によってその二人が引き裂かれてしまったのではないかという不安を彼女はずっと抱えていた。 

 

「貴女や五十嵐トレーナーのことをちゃんと信じることができなかった…だから、ごめんなさい…」

 

「ブルボンさん…ううん、ブルボンさんは何も悪くないよ…?」

 

実際そのとおりだ。

先に言った通り、今はあの行動にどんな意味があったかなどとうに理解している。彼女はあの場で精一杯、ライスのために自分にできることをやってくれていたのだから…それを責める謂れはないだろう。

 

「そう言ってくれるだけで救われる思いです、やっぱり貴女は私のヒーローですね…」

 

「えへへ…ありがとう…!」

 

改めてそう言われるとやはり照れてしまう。

その言葉が自分が今まで欲しがっていたものであるから余計にだ。

 

「五十嵐トレーナーにも直接謝罪したいので…必ず彼を連れ戻してください…応援していますよ、ライス。」

 

「うん…!」

 

その言葉と同時にキツネバイスタンプを渡されたのを最後にブルボンは元の位置に下がる。

そして新たに前に出たのは、ライスと同室であり親友のゼンノロブロイだった。

しかし一向に言葉を発さないのでどうしたのかと思っていると…

 

「…………」ギュッ

 

「…ふぇ…?…ロブロイさん…?」

 

急に彼女はライスの身体を包むように抱きしめる…彼女はこのようなボディランゲージは恥ずかしがるタイプだと分かっていたのでその珍しさに少々驚きだった。

ロブロイはその体勢のまま、ポツリと言葉を紡ぎ始める。

 

「私、ライスさんのことが大好きです…」

 

「う、うん…///」

 

「それと同じくらい、大二さんのことも大好きで…っ…」

 

「…!…うん…」

 

「そんな大好きな二人が並んで幸せそうにしてるのを見ると…私も幸せな気持ちになるんです…!」

 

「二人が笑っててくれなきゃ…私は心の底から笑えないんです…!」

 

「ロブロイさん…」

 

抱き締めていた身体を少し離し、改めて正面に向き直るゼンノロブロイ。

涙を浮かべながらもその表情は慈愛に満ちた優しげな笑顔を浮かべており、その姿はまるで一枚の絵画のように儚げで美しいものだった。

 

「だから…!必ず二人で戻ってきてください…!ただ戻ってくるだけじゃなくて笑顔で…約束ですよ…?」

 

「うん、約束!絶対守るからね、ロブロイさん…!」

 

そう言って左手の小指を差し出す彼女にライスはなんの迷いもなくその小指に自身の小指を絡ませ、いわゆる指切りの状態となる。誰もが知っている誓いの証、それは見方によれば一種の契約ともとれる。それほどまでに大事な約束であると解釈すればするほどに…その繋がりは強固なものへと変わる。

今ここで交わされた誓いがどれほどのものかなど明白だった。

やがて指切りを外してそのままオオカミバイスタンプを渡し、彼女は最初の位置へと下がっていった。

 

「最後に私ですが、今更多くを語るつもりはありません…私から伝えるべきは一つだけですわ。」

 

そして最後、今まで傍観を貫いていたメジロマックイーンがその声を響かせる。彼女は前に出るとそのままエレファントバイスタンプをライスの手に握らせ、そのままの要領で両手を包み込む。

 

「私は信じています、貴女は必ず彼を連れ戻すことができると…だからライスさんも信じなさい、自分自身や貴女を信頼する者のことを…」

 

「えへへ…ライスにできるかな…?」

 

以前から姉のように慕い、頼ってきたウマ娘からの激励を嬉しく思い、思わず甘えたくなってそんな心にもない不安を口にする。自分を信じろと言われたそばからそんなことを言うのはどうかと思ったが、それを聞いてもなおマックイーンは笑顔を絶やさず言葉を続ける。

 

「…もしそれを成すということが奇跡と呼べるものだったとしても、不安に思う必要はありませんわ。だって私たちはもう、強く信じることで成された奇跡を知っているでしょう?」

 

「…!」

 

その言葉で思い出されるのは、彼女の親友であり…ライバルでもあるあのウマ娘。幾度の怪我と挫折にも諦めずに乗り越え、有馬記念にて奇跡の復活を見せてくれたあの存在を思い起こす。彼女が何を思い、その身体に鞭を打って走ったのかは想像に難くない。何より当事者として一緒に走っていたからこそ分かるものもあった。

 

「…うん、ありがとうマックイーンさん…」

 

あまりに多くの思いを背負っていることに気付かされた。しかしそれは重い足枷としてではなく、この志を護る鎧としてそこにある。

今この場での経験がなかったとすればもしかしたらこれからの結果は逆転していたのかもしれない。皆の期待を背負っているのならこれはもう自分だけの問題じゃない。

半ばで諦めることなど絶対にしないのだと誓いを立てる。

 

「時間を取らせすぎてしまいましたわね…さぁライスさん、お行きなさい。貴方が帰る場所はしっかりと守っておきますから…」

 

「うん…!みんなの思い、持っていくね!じゃあライス…いってきます!」

 

手を振り、その場を後にするライスシャワー。それに手を振り返し、送り出す三人。

その心中にはもう一抹の不安も一切残っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後…

 

三人に見送られ、やがてライスは約束の場所である京都競バ場付近の緑の広場に到着した。

比較的ゆっくりとこの場所に向かっていたがそれでも約束の時間が来るまではまだもう少しかかる。その間、狩崎から貰った絵本を読んでしっかりとドライバーの使い方を予習しておかなければ…

 

「ふふっ…あはは…」

 

だがやっぱりその内容は意図せずとも笑いを誘ってしまうもので、慣れて笑わずに拝読が出来るようになるまで暫く時間が必要だった。

そして内容をようやく理解し始め、読み進めながら使用するイメージを掴んでいる最中、ふと足音が聞こえた気がした。

持ってきていたスマホの画面を見るとどうやら約束の時間が訪れたらしい。

正直に言えばこのまま走り出し、やってきた彼の者を思いっきり抱き締めたい衝動に駆られている。

このまま今までのように普通に語りかけるにはあまりに会えない時間が多すぎたのだから当然と言えば当然だろう。

だが、それをするにはまだ早い…それはすべてが終わった後だ。

今はやるべきことに集中する。そして努めて冷静さを保ちながら目の前に現れた存在に語りかける。

 

「久しぶり…お兄様…」

 

「…久しぶり、ライス…」

 

五十嵐大二、久しぶりに顔を合わした自分のトレーナー。最後に見たフェニックス隊員の白い制装から黒いコートが特徴的な私服然とした服装に変わっていること以外は何も変わりのない姿がそこにはあった。

早速本題に入ろうとした瞬間彼から疑問の声が上がる。

 

「なんで…よりによってこの日だったんだ…?」

 

どうやら何故春の天皇賞の日に会おうと持ち掛けたのかという疑問だった。

春の天皇賞…それすなわち二人の運命が狂ってしまった呪われた日であり、二人にとって忌避してもおかしくない日だ。そうでなくとも現在ライスは今日行なわれるそれに出走を表明している。

その疑問を抱くのは至極当然と言えるだろう。

 

「お兄様にどうしても見せたいものがあったの…それに…」

 

「………」

 

彼は先を急かすでもなく黙って話を聞く。

いつもそうだった…気弱なライスは自分の意見を話すときにやがて声が尻すぼみになったり、自信がなくなり言葉に詰まったりすることが多かった。そのたびに彼はなにか声をかける訳ではなくライスが話せるようになるまでじっと待ち続けてくれるのだ。

 

「この日がライスの運命の日になるって…なぜかそう感じたの…不思議だね?」

 

「…運命…運命か…は、ははは…確かにそうかもしれない…」

 

その答えを聞くと彼は先程までの困惑した表情から一転、まるで全てに合点がいったかのように笑い始める。だがそこに明るいものは感じられずむしろどこかしら狂気のようなものを纏っている気さえした。あまり答えになっていないような自覚があったのでなおさら不思議だった。

 

「ライス、去年の日経賞は惜しかったな…それに有馬記念も…君が勝つ可能性は充分あったよ…」

 

「見ててくれたの?嬉しいな…」

 

やがてその口から出たのはかつてライスが走ったレースの感想だった。口振りからして何らかの方法でライスのレース自体はずっと確認していたらしい。離れてしまっても自分の担当に対して気にかけるその姿勢は果たして彼の生真面目さ故なのだろうか。

 

「…でも君のレースを直接見てて、改めて思い知ったよ…やっぱりあいつらは君の勝利を祝福する気なんてないってことを…」

 

「…………」

 

…彼はライスのレースを競バ場にきて直接観察していた、そしてその理由は時間をかけて自身の大切な存在を傷付けた者たちを改めて裁定するためだった。その言動を見るにどうやら彼はもう諦めてしまったのを感じ、ライスの心は悲嘆に暮れる。

 

「いくら待ったってあいつらは何も変わらない…罪深い罪人のままなんだよ、そんな奴らを野放しにしたら優しい君はもっと傷ついてしまう…そんなの…俺は許せない…だから…!」

 

『ホーリーウイング!!』『Confirmed!』

 

「変身…!」

 

『ホーリーアップ!』

『ホーリーライブ!!』

 

彼の背から純白の翼が広がり、そのまま包み込むことで彼を聖なる戦士に変化させる。それは見方によればその様相はまるで天使のようであったが、実際はそんなに生易しいものではなく、真なるその本質はどこまでも高潔で無慈悲な断罪者である。

 

「今ならあそこに集まる罪人共を一網打尽にできる…きっと君はそれを感じて俺をここに呼んでくれたんだろう…?やっぱり…君と俺の望みは「お兄様…!」……?」

 

「……一度、思いっきり喧嘩してみよっか…」

 

「…!?」

 

「今まで、ちゃんとしたことなんてなかったよね…」

 

「な、なんで…どうしてそんなこと…」

 

ライスの言葉を聞き、大二は再びその声色を疑問に染める。変身していることでその表情を窺い知ることはできないが、恐らくは驚愕の表情を浮かべているであろうことがありありと分かる。

 

「お兄様、さっき言ったよね…人は変われないって…でもライスはそうは思わないよ。」

 

「え…?」

 

近くにあったアタッシュケースを探りながら言葉を投げ掛けるライスシャワー。そして改めて正面に向き直り、まっすぐと大二を見据える。その双眸の力強さはまるで、デビュー戦勝利の祝勝会の折に自らを一番大切な光だと称してくれた時のような…いやそれ以上であると大二は感じていた。

 

「人は変われるし、変えられる…それを望んで行動する人が居る限り…絶対に…!」

 

「…な、なにを…」

 

「でも、今のお兄様には口で言っても分かってもらえないと思う。だから…」

 

『アンビバレンスドライバー!』

 

「ライスが今から、それを証明してみせるから…!」

 

「ドライバー…!?」

 

この小さなやり取りの間に幾度と驚愕を見せてきた中でも一際大きな驚きを露わにする。彼女の腰に装着された自分のドライバーと似たそれを凝視し、それが見せかけではないことを理解する。

何故誰よりも優しい彼女が戦うための力を手にしているのか?

それを考えると同時に彼女に其の力を渡したのが誰なのか容易に想像がついた。

 

「狩崎さん…あんたはどこまで…!」

 

大二がこの場にいない一人の男に怒りを向けているのをよそにライスはその身を戦士に変える覚悟を決める。

 

「ライスだって…ううん…

 

"私"だって…咲いてみせる!」

 

 

『ブルーローズ!』

 

ライスは左手に持ったブルーローズバイスタンプを起動しアンビバレンスドライバーのオーインジェクターに押印、するとライスを中心に足元から青薔薇の花畑が形成される…

そしてライスはそのままバイスタンプを持った左手を右肩辺り、そして右手を腰の左側辺りに沿わせることで腕が斜め平行になるようなポーズをとる。

 

『Connection!』

 

そして大きく腕を回し、先程までのポーズと鏡合わせになるようなポーズをとる、そして自らを戦士に変える呪文を叫ぶ。

 

「変身…!」

 

アンビバレンスドライバーにブルーローズバイスタンプをセット!

 

『regain hope…! regain hope…!』

 

瞬間、どこか儚げでしかしそれでいて悲壮感を感じさせないメロディが流れ始める。

そしてそのままゲノムトランシーバーからアンビバレンスウェポンを引き抜き、ヒールブレードを展開!

 

『レイスアップ!!』

 

トリガーを引けば足元の青薔薇の花弁が散り始め、やがてライスを包み込む大型のスタンプを形成しそれを内側から破壊することでその身を青薔薇の追跡者へと化す!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『bering… blessing… blooming…!』

 

『仮面ライダーローゼス!』

 

 

今ここに新たな戦士が誕生した。

その名も仮面ライダーローゼス、大切なものを取り戻すために誰よりも優しい少女が新たに手にした究極の抑止力と成り得る姿だ。その様相はどこかライスの勝負服を思わせるとても雅なものであり、見る人が見ればそれは戦装束というよりもむしろ舞踏会のドレスのような印象を受けるだろう。だが、これから起こるのは踊りではない…称するのならばそう、これから始まるのは地上最大の…痴話喧嘩なのだから。

 

 

 

『この力で…必ずお兄様を取り戻す!』

 

 

 

 

 

 

つづく…。




ライスの変身ポーズはアギレラと同時変身した光くんオーバーデモンズの変身ポーズをイメージしてくれると分かりやすいと思います!

なんとか描写したくて頑張りましたが解りにくかったらすみません…(汗)





因みに裏モチーフの正解は…
童話の中で登場した動物をモチーフにしています!

例えば、

オオカミバイスタンプ→赤ずきんのオオカミ

キツネバイスタンプ→ごんぎつねのごん

エレファントバイスタンプ→かわいそうなぞうの象


分かった方はどれくらいいるのでしょうか…!
私、気になります!(分かりにくいネタ)

では次回もお楽しみに!

執筆して欲しい方はどっち?(詳しくは活動報告へ)

  • リバイスとテイオー主体の物語
  • ライスシャワーが主人公の物語
  • その他
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。