ツーリング・キャンプ仲間のおじさんがピンク髪の美少女になってた件   作:キサラギ職員

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夏に焚火はせんやろって? す る ん だ よ !


《ふもと》2

 

 キャンツーをするにはいくつか条件がある。最低でもテント、寝袋、マットの三点セット。そして調理するならバーナーやコッヘルが必要だし、水を運搬するなら容器が、キンキンに冷えてやがるビールが飲みたいならクーラーボックス。座って寛ぎたいなら座椅子がいる。

 それらの道具類を、安全に積まなければならないのだ。スポーティーなタイプのバイクだと積載量が限られることも多いが(外見を度外視すれば別)、アドベンチャータイプのバイクはその心配がない。正規品でボックスがついてきたりするくらいである。

 二人の乗っているバイクもそうしたバイクなので、道具類には余力がある。なのでキンキンに冷えたビールを用意することもできるのであった。

 とはいっても開幕から飲み始めると行動に支障が出るので、我慢である。

 

「やはりタープはこの時期必須だなぁ」

「せやな」

 

 つれない返事をする瀬戸は、生き生きと設営している多治見を見ていた。

 かわいいのだ。おっさん時代も違う意味でかわいい生き物だったが、こっちのかわいさは別格である。アニメの世界から飛び出してきたような瑞々しい生き物を見て触手が感応されないほど鈍い男ではなかった。

 見た目は若い癖に手つきは熟練のキャンパーのそれで淀みなくハンマーでペグを打ち、テントの骨組みを通して立てて、タープのロープワークもお手の物である。

 ガスバーナーでコーヒーを淹れ飲むのも乙だが、クソ暑い中で口にするのも躊躇され、買ってきた冷えたアイスコーヒーをちびちびとやりつつ富士山を眺める。

 

「瀬戸君体調でも悪いの?」

「へ? いやぁ体調が悪いのは多治見さんじゃないですかね。休職中なんでしょ」

 

 薄手のシャツにジーパンを着込んだ多治見がチェアに腰かける。組み立て式で、瀬戸が使っているものよりグレードが高いのはそれだけ稼いでいる証拠である。

 多治見は華奢な人差し指を立てて揺らした。

 

「そう。このTS症候群ってなんか一応は病気らしくって特例的に休んでもいいって言われてるんだよなぁ。傷病も出るしいいんだけどさ。ちなみに体調はすこぶる健康です」

「うらやま……しくはないなぁ」

 

 この一か月が激動の日々だったことが想像され、己の身に降りかかることを想像するだけで数キロ瘦せてしまいそうだった。

 

「でも別嬪でしょ? うらやましくない?」

 

 多治見がにこにこと白い歯を見せて笑う。人のよさそうな笑顔は外見が大きく変わっても共通している。

 

「いやぁ自分がなるのはちょっとご遠慮願いたいというか……というか家族への説明どうしたんすか」

「病気でこうなっちゃいましたって言ったら喜ばれたんだよなぁ。傷つきますよー」

 

 持病持ちのおっさんと、持病無し若々しい女の姿ならば後者の方がウケがいいだろう。身内だけあって情け容赦ない感想を言われたのだろうなと同情する。

 などと喋りながらコーヒーを飲みかわす贅沢な時間を過ごす。

 何もしないをしているのだ。バカンスというには日数が少なすぎるが、休日の使い方としては贅沢の極みであろう。

 

「多治見さん焚火つけましょっか」

「お、いいねぇ。蚊も寄ってきたしねぇ」

 

 夏に焚火。暑いことなど承知している。火を付ければ蚊が寄ってこなくなるというのは建前に過ぎない。火が見たいだけなのだ、キャンパーは。

 直火をすると芝が焦げて植生が死んでしまうので、焚火台を使用する。組み立て式のそれは、調理もできて値段もお手頃価格の優れものだ。

 

「ここは任してくれたまえ~」

 

 のんびりした口調で手つきは熟練というギャップ。

 多治見は綿を焚火台に敷いて、あらかじめ買ってきていた薪を小さく小割にすると、ナイフで手早くフェザースティックを作りファイアスターターで着火した。初めは小さい枝や葉っぱを投入し、続いて枝、徐々に大きくしながら薪に点火していく。

 ほどなくして安定化した火に薪をどかんとくべて、またチェアに腰を下ろしてウーンと伸びをする。胸元が強調され、すらりとした足がきゅっと窄まった。

 

「シャワー浴びてきますわ。しゃしゃっとね!」

「あーはいはいギャグは結構ですんでぇ」

 

 日が暮れてきた。今日はシャワーが開放されている日であった。

 洗面セット、着替え、タオルを首に引っ掛けて多治見が歩いていく。

 その小ぶりなお尻が揺れながら去っていくのをそれとなく観察しつつ、ぼそっと呟く。

 

「クソかわいいんだが」

 

「戻ったよーん」

「うす」

 

 戻ってきた多治見はシャワーで体を上気させていた。白い頬は真っ赤に染まっていて、髪の毛は濡れて垂れさがっている。

 

「そういやシャンプーとかって女物なんすかね」

「姉に相談したら使えってうるさくてね。でもスースーする成分入ってなくて物足りない……物足りなくない?」

「わかりますけどぉ、今の多治見さん女なんで仕方なくない?」

「それな。すーすーする女物探してるんだけどなかなかなくてなー」

 

 などと言いつつおもむろにトニックを使い始めるのではぁとため息をついてしまう。

 『育毛トニック』。それを使って意味があるのだろうかとボリュームたっぷりのピンク髪を見つめて習慣っていうのは怖いなと考える瀬戸であった。

 

 夜。

 キャンプにテントを一つしか持ってきていなかったことを若干後悔した。

 良いにおいがするのだ。ただし男物のトニックのにおいと女性的な香りのまじったなんとも不思議な匂いが。あとは二人で乾杯したので酒の匂いも漂ってくる。

 薄手の寝袋に包まって寝ていて気が付いたことがある。いびきがないのだ。いつもはとんでもない大きさのいびきが聞こえてくるものだが、今回はすうすうと健康そうな呼吸音だけしか聞こえてこない。

 自分だけがドキドキしているがばかみたいではないかと瀬戸は目を開けてみると、なんとも気持ちよさそうに眠りこけている多治見の顔がドアップで視界に広がってきた。

 化粧一つしていないのに、つやつやとしていて造形の良い顔立ちを見ていると心の中でかすかに情欲の火が灯りそうになる。

 

(眠れるんだろうか)

 

 翌日。

 あまりよく眠れなかったが、コーヒーを淹れて飲んでいると目が覚めてきた。撤収までに時間があるのでのんびりと富士山を見て時間を過ごす。

 

「いい朝だったねぇ! おはよう瀬戸君」

「あ、あはようさんっす。コーヒー淹れたんで飲みます?」

「いただくよ~」

 

 二人で並んで朝のコーヒーをいただく。

 

「ふもとまできたら朝はこれだよねぇ、買ってきたんだけど」

「カップ麺すか。例の漫画ですかね」

 

 例の漫画。キャンプをテーマにしたそれは瀬戸がキャンプを始めた理由の一つである。ミーハーと言うなかれ。

 多治見が取り出したカレー麺のお湯を準備すること数分。お湯を注いで三分。二人でずるずると朝食を頂くと、そそくさと撤収準備を始める。

 タープを外し、テントを畳んで道具類を纏め、バイクに積み込んで。

 

「行きますか。次もさそってちょうだいね。待ってるからねおじさん暇だから」

「はいはいわかりましたよっと!」

 

 荷物満載のバイクに注意しながらまたがるとスタンドを外し、エンジンをかける。

 キュキュキュ! ボーン! ドドドドド。

 

「行きますかぁ」

「そうすね。忘れ物はなしと」

 

 ギアを一速に入れると慎重に加速を開始する。

 入口に向かうと、票を箱に返却して、受付のお姉さんに手を振りつつ外へ出ていく。砂利道に若干の恐怖を覚えつつも、愛車のトラクションコントロールに頼ってなるものかと、速度と角度を一定に保って道路に出た。

 

「北行って河口湖、大月から高速で帰りますわ」

「おじさんもそっちルートかなァ。途中まで一緒やね。ついていくから好きに飛ばしてみ」

「はいよ」

 

 路肩に止めてハンドルに固定したスマホを操作。順路を設定すると、右斜め後ろ方向を確認して発進。一気に加速しつつ一般道に戻る。

 そうして途中まで走って行って、途中で別れて帰った。

 帰宅して気が付いたが、これは――――。

 

「これデートじゃん……」

どんな展開がいいのだよ?

  • ツーリングしまくれ
  • キャンプしろ
  • いちゃいちゃさせろ
  • R18版まーだ時間かかりそうですかね?
  • とにかく書け
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