ツーリング・キャンプ仲間のおじさんがピンク髪の美少女になってた件 作:キサラギ職員
朝である。
福岡市のキャンプ場で朝食を摂り、撤収。荷物を纏めて下山していき、高速道路に乗る。オール下道でもいいのだが、それはそれで辛いので時折高速道路を挟むことにしたのだった。無論オール高速もそれはそれで辛いし退屈なので、適度に混ぜるのだ。
福岡市を南下していけば、
鳥栖市から西に向かっていけば佐賀県が見える。某バイク漫画でなにもないとディスられたところであり、二人も例の如く佐賀市からさらに西を目指す。
一般道と高速道路、マップで経路を検索しても大して時間に差がないということがあるが、結局のところ高速道路の方が早く到達する。一般道路は速度が限られる上に信号機というライダーを殺すための機械かよが設置されている。一方で高速道路にそれはなく、止まらずに進める。この差は大きい。
休憩込みでも四時間程もあれば日本本土最西端の地に到着する。
風景が突然変わるわけでもなく、人家がどんどんと減っていく印象の街並みである。
「意外と殺風景だなぁ」
「マ、観光地ではあるけど大人気な場所かって言うと謎だもんねぇ。そこ左折ね」
二台は最西端の土地に近づいていた。左折して、岬への道へと入っていく。
「これより1.8kmだってさ」
「もうちょっとだねぇ、頑張ろうね」
アドベンチャーがどやどやと岬へ近づいていくと、ネイキッドの集団とすれ違う。
二人が手を振ると、相手方も振り返してきた。いわゆるヤエーである。昨今復活しつつあるバイクとて、その数は少ない。バイク乗りはバイク乗りに対し一種の連帯感のようなものを持っていて、それがこの『挨拶』に現れるのだ…………と彩人は思っている。
しばらく進んでいくと、辺鄙な住宅地に出る。港町だ。漁船が並んでおり、網やブイなどが野外に保管されている。
「狭くて車来たらヤバそうだなぁ」
「そうねぇ、アドベンチャーって横にもでかいから軽自動車みたいなもんだしねぇ」
さらに進めば、ようやく日本本土最西端の
「バイク停めていこっか」
「そうすね」
トイレの横合いにバイクを停めると、さっそく本土最西端のランドマークへと足を運ぶ。坂を登って、階段を下りれば、岬のようになっているところに球体を掲げた二本腕(?)のような謎のオブジェと、『日本本土最西端の土地』という表記が見えてきた。
「やーっと到着かぁ……長かったなぁ!」
「出発して数日だけどねぇ」
二人は柵に寄り掛かると、海を一望した。
「なにかこう凄い景色が見えるかと思ったら意外と普通だ。海は綺麗だけどさ」
「んーそんなもんよぉ観光地って言うのは特に。綺麗なものは結構その辺に転がってるんだけど、みんな気が付かないものなのさ。ぽろろん」
「似てるようで似てない捏造台詞をやめろ」
「なでしこちゃんのはうまいんだけどなァ。ミカは無理だね、あれ、声帯の作りが違うんよきっと」
等と雑談をしてまったりと時間を過ごす。
「せっかくだから写真撮っておこうよ。スマホ用のスタンド持ってきたんだぁ僕」
「偉い。よく持ってきたなって」
二人は並ぶと、スマホカメラに向かってポーズを取った。と言っても直立する彩人の隣に、彩人の腕に腕を絡めた飛鳥が立つという姿勢であるが。
「点滅よーくみててね。光るから」
「あいよ」
点滅の間隔が狭まっていったかと思えば、急に飛鳥が彩人の頬に口づけをした。
カシャッ!
「でへへ」
「………こっち向いてみ」
「んー?」
彩人は、飛鳥の顎に指をやると、照れくさそうに笑うその唇を奪ったのだった。
最西端の土地から南下すると、今度は佐世保に出る。
横須賀や呉と同じく古くから海軍の港として知られ、今は自衛隊の港湾施設が立ち並ぶ街である。自衛艦が停泊しており、海軍もとい海自と思われる白い制服を着た一団が歩いている場面に出くわすこともあった。
「イケルところまで行っちゃう?」
「うーん、どうしようか。というかお昼を……」
「忘れてた。バイク乗るとお腹あんまり空かないんだよねぇ」
ということで、佐世保で一時停止。
二人が入ったのは、真っ黒いイカスミカレーを出すお店であった。コインパーキングにバイクを停めて、カレーを頂く。もちろん二人とも大盛である。ただし辛さは普通のものを頼んだ。二人とも辛い物はだめだったようである。
出てきた真っ黒いまるで炭の塊のようなカレーを見て、さっそく手を合わせて頂いてみる。
「黒いけど………イカスミの生臭さは感じない。まろやかでおいしいねぇ」
「確かに」
あっという間に食べ終わってしまった。
二人が次に向かったのは温泉である。
と、こうしてどんどんと時間が消費されていくものなのだ。休まず、観光せず、ご飯も食べずに走り続けられるなら理論上三日間かそこらへんで九州を一周できるのだろうが、あっちこっち観光すれば当然こうして、一日があっという間に終わってしまう。ツーリングは誘惑との戦いであるとも言える。気になるところ全てを回ることはできず、取捨選択が必要なのである。
風呂上がりの二人はほくほく顔で温泉の外に出た。時刻は既に昼過ぎである。夜は走らないということになると、そろそろ泊まるところを決めるべきだ。
「ふわーいいお湯だったねぇ」
「そうすね」
「今日は泊まっていかない?」
「うーん急いでる訳じゃないし、いいか」
ということでビジネスホテルを当日で予約。こういう時、ビジネスホテルというものは助かるものだ。当日中でも空きがあれば予約可能にしておいてくれるホテルが多く、インターネットカフェの次に急に泊まれる可能性が高いと言える。
もちろん部屋は一部屋を予約。
室内入って早々彩人が感想を漏らす。
「せっま」
「ビジネスホテルだしねェ………ダブルベッドなにそれおいしいのってなるのは仕方がないね」
ビジネスホテルの欠点はここだろうか。恋人ともとい新婚夫婦で泊まるには窮屈すぎることだ。
狭い部屋に入った二人は、とりあえず荷物を適当に下ろすとジャケットを脱いで薄着になった。
しばし歓談していると、おもむろに飛鳥が何かを取り出して己の顔のそばにやって、見せてくる。
「じゃあ今日はこれを見て一緒にすごそうね♡」
「エロビデオのカード買って来ちゃったのかよ……」
泊まった男なら誰しも一度は確認する大人なビデオが見られるカードをあろうことか買ってきたらしく、ほれほれと見せびらかしてくる。
「そんなん見て面白いんすかね」
「むらむらするよ?」
「そっかぁ……」
ハハハと笑いつつ、二人で視聴開始。
「くはーこれこれ」
「酒はうまいけど見てる映像が最低なんですが……」
銀色のやつ500mlと弁当をむしゃむしゃと食べつつ見ている映像はエロビデオである。絵が最低の一言である。
食べ終わると、飲酒しつつ二人でビデオ鑑賞というこれまた最悪の絵となる。
「うっわぁすげぇ入ってるよ」
「ま、まぁプロだからね」
「あ、僕は後ろの穴はダメだよ。また痔になるのイヤだもん」
「また……? その情報はいらねぇんだよ!」
「………」
「………」
「気持ちよさそう」
「そうだね」
「しよっか」
「はい」
こうして一日が更けていく。
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