ツーリング・キャンプ仲間のおじさんがピンク髪の美少女になってた件 作:キサラギ職員
多分次回きゅうしゅうはおしまいだと思います(素振り)
ところ変わって、九州の南部。
「これが桜島かぁ。煙吹いてるかと思ったら吹いてないな」
「そうねぇ、そんなこともあるさね。自然だもの」
二人はキャンプ場を早朝に出発し、九州縦貫自動車道経由で霧島市を通過して、さらに南に位置する桜島へとたどり着いていた。煙を常に吹いているというイメージのあった彩人ではあるが、実際に見てみると吹いてはおらず、海上に突き出た山と言った風体であった。
「逆に吹いてなくてよかったんじゃないかな。吹くとそれはそれは火山灰がものすごいことになるからねぇ………バイクのお掃除が大変よ」
「なるほど」
二人は道の駅でその立派な遠景を見つめていた。彩人は柵に凭れ掛かり、逆に飛鳥は柵に背中側から凭れている。
「桜島行ってみるのもいいんだけどぉ、実際に行くと山が見えなくなっちゃうんだよねぇ。ホラなんとかタワーとおんなじでさ」
「それも確かに。昨日はがっつり走ったし、今日はのんびり南下して、キャンプ場で泊まるってことでいいんじゃないすか」
移動日移動日移動日と移動しっぱなし動きっぱなしなので、ここらでのんびりする日を入れてはどうかと提案すると、うんうんと飛鳥が頷いた。
「いいねぇ。まったりえっちでもしますか」
「元気過ぎない?」
「体が若返ったからねぇ。でもしたくない?」
「したいです……」
ということで、土産(自分達用)を購入して出発。桜島を掠める形でさらに一般道で南下していき、日本本土最南端の土地を目指す。そう、佐多岬である。
道中で川辺にある温泉施設に立ち寄る。
「美人に磨きかけてくるからよろしこー」
「はいはい。一時間後くらいね」
男女別れて風呂に入る。
「最近やっと間違えなくなって一安心だなぁ」
当初は温泉で男女を間違えたり、トイレで男の方に入ろうとしたり、それはそれは不安だったものであるが、最近は間違えずに女の方に入っていく。それでも手に育毛トニックを持ってるのが釈然としないが。習慣って怖い。
「待った?」
「んにゃ、待ってない」
「髪、梳かしてくれる? 自分でやるのめんどっちいからさあ」
「はいはい。櫛貸してくれ」
一時間後、風呂上がりでほかほかの二人は、なんやかんや言いつつ傍から見ているとバカップルの挙動でしかない彼氏が彼女の髪の毛を梳くという行為をやってのけるのであった。カップルカップルでも結婚しているので夫婦ではあるが。
一時間後。まったりと時間を過ごした二人は、一路、佐多岬を目指す。
「コンビニがある……」
「日本全土どこに行ってもあるからねぇ。便利と言えば便利よ。ちなみに北海道に行くとセイコーマートの支配下だからねぇ。やつらからは逃げられない」
どこに行ってもコンビニがあるもので、最南端が近づいているにも拘らず数件見られた。だがさらに進んでいくと、コンビニはもちろん飲食店もどんどんと無くなっていく。
道中のスーパー、おそらく日本本土最南端のスーパーで買い物を済ませると、さらに突き進む。
人家の数がほとんどなくなり、まるで木々の中に道があると言ったような道路になってきた。
「そこ右折ね」
左折してどんどんと南へと入って行けば、ついに佐多岬に到達した。
バイクが数台停まっており、車はほとんど満車であった。誘導員の男性が一人いる。奥には三角屋根の土産屋あるいは観光案内所らしい建物があり、さらに奥にトンネルらしきものがある。敷地中央にはなにやら巨大な木がぽつんと生えていた。
二人はバイク専用の駐車場に停めると、ヘルメットを脱いで散策してみることにした。
「飛鳥、がじゅまる? の木だって」
「変わった構造の木だねぇ。きっと、樹齢何百年もあって、この岬が整備されるずっと前からここにあるんじゃないかな。ロマンを感じちゃうね」
二人はさっそく気になっていた、その木に近づいてみた。ガジュマルの木。まるで、複数の木が寄り集まったかのような構造をした木で、根っこらしきものがぶら下がっている、幽霊のようにも見える不気味さと神聖さを兼ね備えた木である。観光名所なのか、観光客が思い思いに写真を撮っているので、二人もそれを撮影しておいた。
それから、当然、最南端と表記のあるプレートの前でも記念撮影をする。
「持ってきていてよかった三脚」
「本当に準備いいよなぁ飛鳥って」
三脚でスマホを立たせて、二人は寄り添って記念撮影をした。
ついでにということで土産ものにも寄って、最南端の到達証明書も貰っておく。
「この証明書、他の到達証明書と合わせられるみたいだねぇ」
証明書の書面を見ていた飛鳥がそう指摘した。
彩人も見てみたが、なるほどほかの証明書と合わせることで大きな一枚になるようだった。つまり……。
「え、他の端っこの場所にも同じ証明書があって、それを集めろってことか……なかなか気が遠くなるなぁ」
「マ、気が乗ったらやるくらいでいいんじゃないの」
「そうすねぇ」
ちなみに、岬には本当の先があり、徒歩で三十分以上かけていくことができるのであるが。
「……行っちゃう?」
「いやぁ」
「そっかぁ、まぁ証明書は貰ったことだし行っても灯台くらいしかなさそうだしなぁ」
ということで行くのはキャンセルされたとかなんとか。
それから二人はバイクに跨り、道を戻って行った。少し戻った人家がある近くに、最近できたと思われる野営場があるのだ。しかも無料で泊まることができ、トイレ水場が完備されている。売店などはないので、あらかじめ購入しておいた食材が役に立つ。
野営場にバイクを停めると、さっそく設営に入った。もう何度も何度もやっているので、三十分あれば完成するようになっている。
テントを立てるのも朝飯前、タープはするすると数分で完成、一番時間がかかるのが荷ほどきと荷物を適所に配置する方が時間がかかるのだった。もう一つ時間がかかるものもあると言えばある。火熾しである。
あらかじめ途中で買ってきた木をナイフで削りつつ、飛鳥がぽつんと言う。
「たっきびたっきび………言うて焚火ってさあ、氷点下超えてくるとさあ、このサイズの焚火だとさぁ……」
「わかる。あったかくねぇんだよなぁ……」
焚火の熱量は、燃えているものの質量に比例すると言ってもいい。焚火台で発生させられる熱量では、氷点下だと寒いのも道理なのだ。現在の気温は氷点下どころか二ケタ台なので、十分暖まるが。
そして二人は、夕食を摂ることにしたのだった。お湯を沸かして注いで三分待つだけ。
「ずずず」
「ずずず」
「またカップ麺かぁ」
「料理なぁ、食材買ってきてもいいんだけどぉ、すぐめんどくさくなるというかぁ」
「わかる。よくてステーキとかバーベキューくらいじゃないかな、毎度作れるのって」
「僕ってば料理できないっしょ。君が毎日作ってくれる料理おいしく頂いてるよん」
「ありがとう。なんか照れくさいな」
と普通に会話しているように見えて完全にのろけている二人だった。
そして夜、寒いこともあってテントの中で自然と体と体が重なり合う。恋人もとい夫婦の時間が訪れる。二人とも走ってきたので疲労感はあったものの、そこは若さがある。体温を確かめ合って、それからいつものように寝袋に包まって、眠りについた。
次の舞台は?
-
北海道
-
九州
-
東北
-
四国
-
おうち
-
なんでもいいからいちゃつかせるんだよ!