ツーリング・キャンプ仲間のおじさんがピンク髪の美少女になってた件   作:キサラギ職員

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《えのしま》3

 

 

「どーん! わはははは! あぁ゛~食った食った!」

「コラ! ××歳児お行儀が悪いぞ」

「くつろぐためにあるんだよベッドは!」

 

 ホテルのレストランで食事を取り部屋に戻ってくるなりベッドに直行してダイビングをかますお前何歳なんだよという女姿のおじさんあるいはおっさんを窘める。

 そこそこのグレードの宿だけあって、食事は満足のいくものであった。海鮮は江の島名物しらすが乗っていたあたりもわかっている。

 宿に問題があるのではないと自分に言い聞かせる。そう問題なのは部屋だ。一部屋を二人で使う。しかも、

 

「なんでダブルベッドなんですか……」

「いっやぁ~予約したら他に開いてる部屋もなくてさぁ~なんか安く取れたから」

「ダブルベッドを予約する組は決まってるからなんじゃ……」

「まァ別によくない? おじさんの魅力にメロメロになってしまえよ!」

「いちいちセンスが古い! 過ぎ去った昭和を感じる!」

「昭和の頃生まれてすらないくせにぃ。それともアレ? 令和生まれじゃないと○たない?」

「令和生まれは今ペドの年齢だろだよ! 変態にしないでもらいますかねぇ」

 

 そう、ダブルベッドなのだ。家族向け、あるいはカップル向けに使われる部屋で、ビジネスホテルにはまずない部屋である。予約をいつもの通りに任せた結果こうなった、確認しなかったのが悪かった、落ち度は色々あるだけに文句も言い続けるのも悪いかと肩を落とすに留まる。

 飛鳥がベッドに横たわり、きりっと表情を凛々しくして手を差し伸べてきた。

 

「先にシャワー浴びて来いよ」

「いややんねぇよ!? ていうか風呂は入りますけどねぇ!?」

「せやね。じゃおじさんも行こうっと」

 

 てきぱきと洗面具セットと着替えの入ったバッグを準備し始めるので気が抜けてしまう。

 瀬戸も必要なものを用意すると、温泉へと向かうのであった。

 

「男湯、男湯っと~♪」

 

 ふらふらと男湯の暖簾を潜りそうになる飛鳥の肩を掴んで止める。女湯を指さしてやった。

 

「違うでしょあんたはあっちあっち」

「おっといかんいかん。いまだに間違えるから困る。習慣で男のトイレ入ったりしちゃうんだよなぁ。じゃ一時間くらいかね?」

「そうすね一時間後くらいに」

 

 という会話をして、別れたのだった。

 

(クッッッッッッソかわいい!!)

 

 風呂に浸かりつつ瀬戸は煩悩を爆発させていた。

 

「顔の良い女はそれだけで強いって言うけどさ、良すぎるんだわ……」

 

 できるならば穴が空くほど見つめていたかったが、ぐっと理性でこらえて直視し続けるのはやめていた。

 そもそも、若い頃は相応にモテていたらしい。年を取って太ってしまったというのはあるだろうが、かつては美形と呼ばれていた頃の面影のあるおっさんだったのだ。それが女体化して若返ったことで美形の女性になったというだけの話であろうが、それにしてもかわいい。髪の毛がケバいピンク色であることを差し引いてもかわいい。

 正直なところムラムラしっぱなしである。温泉で発散する程公序良俗に反することができるわけがないので、どうしてもだめならトイレを使うしかないが……。

 

「はーいい湯だわ」

 

 いい食事を取って、いい風呂に入っているのに気分がもやもやするのは、十中八九相方のせいであろう。

 一時間とは言ったが、サウナに出たり入ったり寛いだりして時間を潰したのが大半であった。

 出てみると、丁度飛鳥も出てきたところであった。浴衣を着こんでいる。

 

「時間ぴったりやねぇ。じゃ戻りますか」

「はいよ」

 

 お尻がふりふりと左右に揺れるのを追いかけて部屋まで戻る。

 

「じゃ乾杯しようぜぇ」

「おっす」

 

 あらかじめコンビニエンスストアで買っておいた酒を、部屋の冷蔵庫から取り出して洋室なのにまるで和室風の広縁(ひろえん)のチェアに腰かけプルタブを開ける。まずは銀色のパッケージが特徴的なビールからだ。

 

「かんぱーい!」

「乾杯!」

 

 前かがみになった際に胸元がちらりと見えてしまったが気にしないでおく。シャツ一枚しか着込んでいないような、ブラが見えないような……。

 だがそんなことはどうでもいい。まずは一杯。

 

「かぁぁぁぁぁ!」

 

 一気に半分ほど缶を空けた飛鳥が目を閉じて唸り声を上げれば、

 

「ぷはぁっ!」

 

 こちらもビールの喉越しの良さに顔を緩めるのだった。

 

 

 

「それでよー、ううー、会社のれんちゅうがよー」

「ええ、ええ」

「おんなになったらよーきゅうにたいどをよーかえやがってよー」

「そうすか」

「というかよー、まず警備員にとめられてよー顔なじみの兄ちゃんだったんだけどさー」

 

 一時間後。すっかりできあがってしまった飛鳥と、比較的余力のある瀬戸の構図ができあがっていた。

 顔を真っ赤にしながらアルコール度数の低い酒を進める飛鳥の机の前には何本かの空缶がある。もともと酒は強くなかったが、女の体になってもそれは継承されているらしい。やめておけばいいのにべろんべろんになっている。むろんツマミのお菓子は食べているし、チェイサーも飲んでいるが、呂律が回っていない。翌日残るんじゃあるまいかと危惧する。

 

「おまえもぉ僕のこと見て態度かわってるしよぉ、やってらんねぇんだよぉ」

「すんません」

 

 申し訳なくなり頭を下げると、けらけらと笑われた。

 

「ま、いいけど、ひっく。だって僕かわいーじゃん? 態度変わんなかったらタマついてんのかよって話よな? しこしこしてんの? 溜まってるんじゃないんですかねぇ? おじさんが手ほどきしてあげよっか? 熟練のて…………こ………くかー」

「寝るんかい!」

 

 卑猥な上下運動を手でやり始めたかと思えば急にスイッチが入ったかのようにがくんと頭が傾いで寝息を上げ始める。

 思わずツッコミを入れたがぴくりとも反応しない。

 

「はーもう! アホか飲めない癖にパカパカ飲みやがって明日二日酔いになっても知らんぞ。どうすっかなこれ……」

 

 ほったらかしにするわけにもいかないので、右往左往する。

 結局覚悟を決めたのか、まず首を、続いで足に腕を通すと持ち上げる。

 

「軽いなー……前担いだ時とは大違いだわ。あんときは腰がイカれると思ったけど……」

 

 想像よりもずっと軽く、すっと持ち上がってしまった。ふわりといい匂いもとい酒の香りが漂ってくる。

 瀬戸はベッドに飛鳥を寝かせると、布団をかけた。それから悩む。自分もここで眠るべきだろうか。いや寝よう。寝ないと明日持たなくなってしまう。照明を夜間灯に切り替えると、布団に潜り込んで目を閉じる。

 

「…………」

 

 目がさえてしまって眠れない。一時間経過しただろうか。すうすうと寝息を立てる飛鳥とは反対にうーんうーんと唸り続けるのみであった。

 

「はーもうひとっ風呂行ってくるか……」

 

 寝ることを諦めるのに二時間ほどかかった。布団を跳ね上げると、飛鳥を起こさないようにひっそりと部屋を後にする。

 ややあって、むくりと飛鳥の上半身が起き上がった。ウーンと大きい胸を張って伸びをすると、大あくびを噛み殺し頭をポリポリと掻く。

 どの段階から起きていたのか。最初からである。手を出してくるか、出してこないかを確かめるべく起きていたのだった。浴衣の帯に手を突っ込むと、虹色のラベルの小さい箱を取り出して弄び始める。

 

「ふぁー………ちっ、なんもなかったか。おじさんちょっと安心すると同時に不安だよ。こんなもん据え膳じゃないのよ。マ、出番がなかったししまっとこーねー」

 

 その箱を自分のバッグにねじ込むと、今度は本当に本格的に目を閉じて眠り始めた。

 戻ってきた瀬戸は朝まであまり時間が無くなってきた今になってやっと眠れそうだと布団に潜り込み、それから眠りについたのだった。

 

 翌日。睡眠不足の一名と、ぐっすり眠れたようで実はそんなに寝ていない一名は江の島を出発した。途中までは二人一緒であった。

 

「じゃ、また今度ー」

「うす、じゃ、また会いましょ」

 

 と軽く挨拶をして、サービスエリアで別れを告げた。そんな江の島の思い出であった。




Q.なんの箱なのだよ
A.チューイングガムでしょ。

どんな展開がいいのだよ?

  • ツーリングしまくれ
  • キャンプしろ
  • いちゃいちゃさせろ
  • R18版まーだ時間かかりそうですかね?
  • とにかく書け

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