第7話までの一部に矛盾が発生しておりましたので、車輛数などを訂正の上、一部加筆を行いました。話の大筋は変わっておりませんので、そのまま第8話から読み進めても問題はございません。
かなりお久しぶりです。レオパルトです。かなりの間相方に任せていましたが、生活が落ち着き始め余裕が出来てきたので、執筆に復帰しました。次の話くらいで決着をつけるつもりです。
どうもこんにちは。伯林澪です。この話からは共著に戻ります。引き続き本作品をよろしくお願いいたします。
──大洗学園・IV号D型車内──
「──!?」
眼を皿のようにして辺りをしきりに見廻していたみほが、何かに気づいたように小さな叫び声をあげた。
──後方から迫ってくる一輛の戦車、〝猟犬〟ウェールズと〝スピード狂〟ローズヒップの2人が駆るクロムウェルMk.Vが見えたのだ。
「まずい!皆さん、クロムウェルに発見されました!アヒルさん、クロムウェルの誘導を頼めますか?」
『もちろんです!できるだけ長く引きつけます!』
「お願いします!──私たちはなるべく障害物の多い場所を通って、チャーチルと一騎打ちに持ち込みます。麻子さん、いけますか?」
「おうよ。IV号を隠せばいいんだな」
「はい。マチルダを見つけても交戦はせず、全速力で退避してください。おそらくアヒルさんチームはもって5分でしょうから、クロムウェルが離れているうちに勝負を決めたいです」
「わかった」
麻子はそう短く返すと、華麗な手捌きでIV号を
『57mm砲のスパイクを喰らえっ!』
『おりゃーっ!』
電波に乗ってとどく元気のよい声と共に、八九式の57mm砲がクロムウェルに向かって吼える音が聞こえる。──タイム・リミットは、あと5分……いや、3分もないかもしれない。八九式自体は自動車部の魔改造によってかなりの速度で走行できるとはいえ、彼女らはド素人だ。
(この荒地に通じる通路は2つ……市街地方面と丘陵地方面……どっちで待ち構えるか決めないと……)
「────殿」
(速度を優先するなら舗装道路、でも奇襲攻撃をするつもりなら丘陵から出てきた方が優位に立てるし……)
「───住殿」
(でもダージリンさんが急ぐとは限らない──)
「西住殿!」
「──えっ?……優花里さん?どうしたの?」
元気のいい声に思考の渦から引っ張り出されると、視線の先には大きな双眼鏡を持った優花里がいた。
「どうしたもこうしたもありませんよ……ほら、あそこを双眼鏡で見てみてください」
「……?」
みほがとりあえず双眼鏡を覗いてみると、強力なレンズで拡大された丘陵地にはもうもうと土煙がたっていた。
「土煙が……!」
「あれ、敵本隊じゃありませんか?さすがに単独行動はしないでしょうし」
「うーん、敵車輛なのは間違いないだろうけど……」
相手は歴戦の猛者だ。リスクをとって単独行動している可能性は無視できない。しかし──
「……うん。じゃあ麻子さん、丘陵地から出てきたらすぐ撃てるように、そこの大岩の陰まで移動してくれる?」
「ほーい」
──土煙がたっているということは、チャーチルかマチルダのどちらか1輛は少なくとも丘陵地にいるということだ。もし2輛が一緒に行動している状況でIV号が丘陵地を見張っていれば、考えうる最悪の事態──八九式を潰した3輛がまとまってIV号を狙う状態──が発生してしまう。それだけは、なんとしても避けなければならなかった。
──ST.G.CL. クロムウェルMk.V車内──
「──
車長用キューポラでウェールズが低く唸る。せっかくIV号を発見したというのに、八九式に絡まれたせいで見逃してしまったからだ。
「こんな
「時速40……いや50kmは出ていますわね。本来あの戦車にそんな速度は出せないはずですけれど」
「いったいどこをどう魔改造したらそんな速度が出るんだ……?」
「さぁ……さっぱりですわ」
「……まアいい。所詮骨董品を爆速にしたところで、素人操縦の骨董品であることに変わりはない──スクラップにしてくれよう」
ウェールズの意を汲むように、クロムウェルのロールス・ロイス製600馬力エンジンがグォォォ、と唸りをあげ、その車体を瞬時に時速65kmまで加速させる。
八九式がこちらを喰い止めようと必死の応戦をしてくるが、逃げながらの素人行進間射撃が当たるはずもなく、発射された57mm砲弾はすべて空をきる。
だが、こちらの弾も当たらない。八九式の
──〝猟犬〟と〝スピード狂〟が乗っていなければ、の話だったが。
「おい、ディンブラ*1──そこを代われ。俺がやる」
ウェールズが砲手と交代すると、ふらふらと揺れていた砲身がピタッ、と止まり──ごくゆっくりと動きだした。──普段より研ぎ澄まされた〝猟犬〟の牙は、今や八九式の喉笛に深々と咬みつこうとしている。
「ローズヒップ」
「分かってますわよ」
ウェールズの一言で、クロムウェルの走りが穏やかになる。縦横の揺れがみるみる減り、八九式の速度に合わせて走り出した。──ローズヒップの操縦はガサツなように見えるが、その根底にある操縦技術は卓越したものだ。クルセイダーを常時爆速でぶっ飛ばすのは、並大抵の
「よし──あとは直線に入るのを待つだけだ。ダージリン様が到着される前にな……」
そうウェールズが言い終ると同時に、近くにあった無線機が喋りだした。
『──こちらダージリン、セクションIX進入まで600ヤード*2』
「言ってるそばからおいでなすった……こちらウェールズ了解。現在IV号は単騎です。我々も八九式を倒したらすぐ向かいます」
『ダージリン了解。なるべく手早くね』
どうやら、役者が揃いつつあるようだ。
◇戦車紹介IV:38(t)戦車(捷→独)
ナチス=ドイツにチェコ=スロヴァキアが解体された際にドイツが分捕って生産していた戦車。元々はチェコスのČKD(チェコダ)社が開発していたものだったが、結局めちゃめちゃドイツ軍のお役に立ってしまった。涙拭けよチェコス。
死ぬほど頑丈な足回りが特徴で、その信頼性の高さから車体から上が散々魔改造された。中には「Sd.Kfz. 138/1 “グリーレ”」という名前で15cm砲を載せられた型もある(原型どこいった)。
もちろん皆大好きヘッツァーもこの車輛の派生型。へったんかわいい。
(文・伯林 澪)