大洗に現れた山猫   作:レオパルト

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お久しぶりです。またも代理で投稿しました、銀乌と申します。
戦車道って戦闘機とか入れちゃダメなんですかね?という事で、ルフトバッフェ機とソ連機を登場させてみました。


第3話 交錯する陰謀

──大洗学園・38(t)車内──

『向こうはチャーチル1輛にマチルダ3輛、クロムウェル1輛……マチルダとクロムウェルは何とかするとして、チャーチルをIII突の前に誘き出さないと』

 

結局、38(t)の車内に突っ込まれた俺は、みほと作戦会議をしていた。無線機から不安げな声が聞こえてくる。

 

「そりゃそうだが、こんなド派手塗装じゃすぐ発見されるぞ」

『そうなんだよね……でも、カバさんチームに市街戦があるって伝えたら、何か策があるって言ってたんだよね』

「ロクな策じゃない気がするんだが」

 

III突のチームが何を考えているかは知らないが、どう考えても不安要素しか思い浮かばない。勝敗どころか試合になるかすら怪しいといったところだろう。

 

『ところで、どうする?市街地か平原か……』

「聖グロの得意分野は知らないが、英国戦車はだいたい俯角が大きく取れる。それなら機動力に優れたこちらが優位に立てる市街戦がいいだろうな」

『そっか、砲塔だけ出されたらウチの砲じゃ貫通できないからね』

「よし、決まった。38(t)が殿軍(しんがり)を務めるから、IV号は早めに出発してくれ」

『わかった。じゃあ出発するね』

 

みほの乗ったIV号がゆっくりと動き出し、III突と八九式、M3が後に続く。

俺の乗った38(t)は、M3より少し遅れて走り出した。

住民が退避してゴーストタウンのようにひっそりと静まり返った街に、低く唸るエンジンの音だけが(こだま)する。

 

──ST.G.CL(聖グロリアーナ学園)・クロムウェルMk.V車内──

『さて、相手チームの所属車輛は……IV号D型、八九式、M3、38(t)、あとはIII突F型ね。III突とIV号以外はあまり脅威ではないけれども、一応警戒する必要があるわね』

「ダージリン様、先鋒は僕にお任せを。偵察ついでに何輛か葬ってご覧に入れましょう」

『ウェールズ、お待ちなさい。今すぐの偵察は不要よ。しばらく私と共に行動しなさい』

「……承知いたしました」

『ローズヒップと違って聞き分けが良くて助かるわ。あの娘はすぐに暴走するから手がかかるんですもの』

「ダージリン様!?」

 

すると操縦席の方から、驚きを隠せない様子の元気な声が聞こえる。

 

「落ち着け、ローズヒップ。事実だろ。いい加減、僕以外の言うことも聞けばいいんじゃないか?」

「じっとしているのは性に合いませんもの!」

『ほら、2人とも落ち着きなさい。出発するわよ』

「了解」

 

ダージリンの乗るチャーチルは、ベドフォード社製液冷12気筒エンジンを唸らせながら、40トンの巨体を揺すって動きはじめた。その後にマチルダが続き、クロムウェルはその横を所在なさげにふらふらと走っている。

 

「おいローズヒップ、ふらふら走るんじゃない。これじゃこの車輛だけ、統率の取れていない他校みたいじゃないか」

「そう言われましても、わたくし全速で飛ばすのに慣れ切ってるんですもの!」

『仕方ないわね……ローズヒップ、ウェールズ、偵察に出なさい。ただし、敵を発見しても攻撃はしないように』

 

呆れたような声でダージリンが命じる。ローズヒップは偵察を許可されたことに浮かれて気が付いていないようだが。

 

「わっかりましてございますわ!」

 

ガクン、とGを掛けながら、クロムウェルは弾かれたように戦列から飛び出した。

小高い丘をいくつか飛び越え、市街地に着くと──はたして、太陽の光を反射して金色に輝く物が目に留まった。

 

「大洗の38(t)だ!──こちらウェールズ、敵38(t)発見。八時方向、距離330ヤード。市街地に潜伏中の模様」

『こちらダージリン、了解。流石は〝猟犬〟ね。引き続き偵察を続けて頂戴』

「ウェールズ了解。300ヤード前後の間隔を取り、偵察を続行します。──ローズヒップ、38(t)を追ってくれ。詰めすぎるなよ」

「どこですの!?」

「あんなに光ってたのに見えなかったのか……まあいい、次の交叉点で左折して回り込め。そうすれば前に見えるはずだ」

「了解ですわ!」

 

角を曲がると、先の38(t)が見えた。どうやら殿軍を務めているようで、500ヤード以上先にIV号が見える。

 

「こちらウェールズ、敵隊長車発見。AT/92地点付近、九時方向へ走行中」

『ダージリン了解。気付かれていないようなら追尾しなさい。私達もすぐ向かいますわ』

「了解。偵察を続行します」

 

──と、38(t)が急に動きを止めた。交叉点の真ん中に停車したまま動かない。

 

「何だ?故障でも起こしたか?」

「その線はないと思いますわよ。前にアッサム様から聞きましたのですけど、38(t)の足回りってとても頑丈らしいですの」

「じゃ何か企んでいると?」

「わたくしはそう思いますけれど」

「しかし、あんな所で停まられたんじゃ偵察もままならんな──こちらウェールズ、そちらの現在位置座標を乞う」

『こちらダージリン、現在位置はBU/54、時速20キロで走行中。何かあって?』

 

打てば響くように返事が返ってくるが、肝心の車輛は鈍足の一言だ。──だが、幸いにも彼女らの乗るチャーチルは、そう遠くない所にいるようだ。

 

「非常事態発生。追尾中の38(t)が交叉点で停止、敵隊長車をロストしました」

『それは十中八九……追跡がバレているわね。いいわ、38(t)を撃破なさい』

「よいのですか?」

『きっと他の車輛はもう逃げてしまっているわよ。撃破したら全速で離脱、遊撃戦に移りなさい』

「ウェールズ了解。申し訳ありません」

 

──大洗学園・38(t)車内──

「奴さん、今ごろ慌てふためいてるでしょうね」

「まーねー」

「しかし、撃たれたらほぼ確実に撃破されるぞ?」

「では、そろそろ離脱しますか?」

「ああ」

「わかりました。あ、でもその前に……」

 

そう言いながら、俺は砲塔を回転させる。

 

「撃つのか!?」

「ええ、クロムウェルの装甲は紙ですから」

 

そして俺は慎重に狙いをつけ──撃った。が、初弾はクロムウェルの砲塔を掠っただけだった。

俺は舌打ちをし、照準を調整しようとしたが──38(t)は何の予告もなしに走りはじめ、俺は砲塔内壁にしたたか頭を打ちつける羽目になった。

操縦手の小山副会長に文句を言おうとしたその時、さっきまで38(t)がいた場所を、クロムウェルの第二射が通り抜けた。

 

「と、とにかく逃げるぞ!」

「……その方がいいでしょうね。小山先輩、IV号と離れるように逃げてください。敵偵察車を攪乱(かくらん)します」

「了解」

「西住、どうする?」

『そうですね……カバさんチームの作戦を試している間に、BP/76地点の交叉点に向かい、十字砲火(クロスファイア)を浴びせられる地点をつくります。カメさんチームは敵を誘き寄せてください』

「了解。──BP/80地点へ!」

 

俺の返事を待たず、小山副会長が38(t)を猛スピードで飛ばす。だが、いくら待ってもクロムウェルは追ってこなかった。

 

「妙だな……?」

 

──親善試合会場・上空──

試合会場の上空を、二機の航空機が滑空していた。本来ならば試合会場上空の飛行は認められていないが、この二機を運用している高校の絶大な影響力故に──彼らの飛行は黙認されていたのである。

そのうち一機は、所属マークを隠した黒森峰学園所属のFw-200〝コンドル〟──その偵察機改造型だ。

その機内では、一部を硝子(ガラス)張りにした床を囲みながら、凛とした風体の女性──西住まほと、悲しげな表情を湛えた小柄な女性──赤星小梅が話し合っていた。

 

「聖グロの偵察車が攪乱されていますね。大洗は逃げおおせたようですが……?」

「いや、クロムウェルと──()()を見ろ。遊撃戦に移って、大洗を重戦車軍団の正面に誘き出そうとしている」

「大洗の38(t)も同じことを考えているようですね。どちらが勝つのか……」

「さあ、な。だが、聖グロの罠にまんまと引っかかっているようでは、全国大会での優勝はおろか、出場することさえ夢のまた夢だ」

「みほさん……」

「…………いや、あいつの事だ、うまくやるだろう。あれだけの戦力差では勝利が不可能だとしても、僅差までは持っていくはずだ」

「だといいのですが……」

 

 

そしてもう一機は、プラウダ高校所属のTu-154〝ケアレス〟だった。Fw-200の少し上方を飛び、試合会場全体を俯瞰している。そしてその客室(キャビン)では、機体下部に取り付けられたカメラが撮影した画像を見ながら、プラウダ高校の3巨頭が鼎談(ていだん)していた。

 

「Нонна, ты действительно считаешь, что Оарай потенциально может достичь национального турнира(ノンナ、貴女は本当に大洗が全国大会に出られるほどの実力があると思っているのですか)?」

「Да, Клара. Я твердо верю, что они уничтожат оплот Куроморимин(ええ、クラーラ。私は、彼らが黒森峰の牙城を必ずや破壊してくれると信じています).」

「Но......в прошлогоднем матче мы выиграли у Куромориминэ, не так ли(でも……私達は去年、黒森峰に勝利しましたよね)?」

「Если во время матча не было "несчастного случая", мы не могли выиграть у этой средней школы. Мы не должны забывать, что "победа" не была настоящей победой(あの『事故』がなければ、我々は勝てなかったのです。あの『勝利』は本物の勝利ではないのですよ).」

「ちょっと、ノンナ!クラーラ!日本語で話しなさいよ!」

 

2人の会話を微塵も理解できなかった様子のチビっ子──カチューシャが喚く。しかし、2人は全く意に介さずに話を続けた。

 

「Что(はい)?」

「Мы не можем рассказать ей о том, что мы сказали(何を話していたかなんて言えませんよ).」

 

しかし、2高校が高みの見物を決め込んでいる間にも、下で戦っている大洗学園は、徐々に徐々に、それと知ることはなしに──追い詰められつつあった。

かねてよりその低速を見越して遊軍化していたマチルダが、(くだん)のBP/76地点に近づきつつあったのである。




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