──ドイツ・テンペルホーフ国際空港──
2008年に新空港開業に伴って閉鎖されたテンペルホーフ国際空港は、ドイツ戦車道協会管轄としてその機能の一部を復活させていた。IATAコード「THF」も復活している。
ドイツの首都・ベルリンの地で、〝西ベルリンを救った空港〟は寂れつつもなお、当時の威厳をたもっていた。
そして、薄暗い国際線出発フロアの天井から懸吊された反転フラップ式行先表示板の最上段には、〈THF→IBR/SWZ8560/DEPARTING〉の文字が表示されていた。
その下では、一人の女性が誰かと通話をしている。
「
『大丈夫だ。それに──アレは元々あいつの力を発揮させるために購入したものだ。今の我々が採用しているドクトリンには合わん』
「うむ、わかった。お前がよいのなら構わんよ──随分と物好きな奴だな、お前は。ま、たまにはドイツに寄るといい。歓迎するぞ」
『ああ、ありがとう。しかし当分はそちらへ行けそうにないな……いろいろ立て込んでいるんだ』
「そうか……まアクリスマスにでも来るといい。ヴァイナハツマルクト*1で旨いグリュー・ヴァイン*2でもご馳走してやろう。いい店を知ってる」
女性はそう言って電話を切ると、微笑をふくんだやや物憂げな顔をして窓の外を見つめた。滑走路には「例の荷物」をつんだボウイング767-300F型機が、離陸準備をすっかり済ませて駐機している。
やがて──
『SWZ8560, Wind 050 at 7. Cleared for take-off RWY 27R(SWZ 8560便、風は50度より7ノット。滑走路27Rより離陸を許可する)』
『SWZ8560 roger. Cleared for take-off RWY 27R(SWZ 8560便了解。滑走路27Rより離陸を許可)』
定型文で航空無線が交わされると、SWZ 8560便――白地にバルケン・クロイツを描いた優美な貨物機は、2基のP&W JT9D-7R4エンジンを一杯にふかし、滑走路を辷りはじめた。11tの