「噓だろ…おい」
神吊は自分が見ている光景が信じられなかった
「ふむ、流石だねここまで私と打ち合えた人間は初めてだよ」
「…ありがとうございます」
現在の翡智彩里のポイント3点そして日花のポイント0点つまり日花は翡智彩里に一回も攻撃を当てることができてないのである
「すごいわね~あの翡智って子、日花がついていくのが精一杯じゃない」
「信じられねえな…いや~人間ってすげえな」
「人間…?…ああ~そういえばあの二人って人間だったわね」
「…いやアン、一応あの二人共人間だから忘れないでおいてやれよ…」
「それでも――同時にがっかりもしたね、強いといってもこの程度なら埋め合わせも出来る、君の今までの損失を考えると減給も考えることもできるよ」
「なっ!?いやいやいやそれは勘弁して下さいよ!?」
突然の減給の危機に慌てる日花
「なら1発でも当ててみたまえ、それができなければ君に意見を言う資格はないよ」
「くっ…わかりましたよ…」
そう言うと日花は目をつむり木刀を下げる
「あん?嬢ちゃんどうしたんだ?」
「ちょっとまって…何か聞こえる…」
「あ?…これは…」
「口笛?」
その口笛は日花の口から聞こえてきた
「ふーん?何を仕掛けてくるのかね?」
その口笛は30秒ほど続き唐突に終わりを告げたそして
日花が木刀を三日月の字にゆっくり振り上げ目を見開く――とともにオーラが更に上昇する
「っ!?」
その現象に危機感を感じた翡智彩里は咄嗟に防御の構えをとる――が
「がはっ!?」
一瞬で距離を詰めた日花の木刀が翡智彩里の鳩尾に入りそのまま吹き飛ぶ
「まず一本」
「うわっ痛そ~」
「痛そうというか痛いだろうな…嬢ちゃん容赦ねえな~」
「これが愛の鞭ってやつね!」
「それは違くないか?」
しばらく倒れていた翡智彩里だが
「ふっ…くくくく…」
小さな笑い声をあげながら立ち上がった
「あまり効いてなさそうだな…タフにもほどがあるだろ」
「いや…一応効いてるんじゃない?軽くだけど鳩尾押さえてるし」
「どうだろうな?まったく顔に出てないからどうとも言えねえ」
「ふふふ、いや~素晴らしいやはり君は最高だ」
「そうですか…お褒めの言葉ありがとうございます、ですが――」
「なんだい?」
「そちらも本気出さないと次で殺しちゃいますよ?」
その明らかな挑発の言葉に真顔になる翡智彩里
「翡智のお嬢さんあれでまだ本気じゃないのかよ…ってか嬢ちゃん挑発すんじゃねえよ…」
「日花逆に殺されない?すごい心配なんだけど…」
「……そうかそうか!そうだね君ほどの強者に本気を出させてこちらが手を抜くというのはマナーとしてなってなかったね」
そう言って翡智彩里は木刀を構えギラギラ目を光らせる
「では、私の10割で相手をしよう死なないでくれよ?」
「ええ、もちろんですよ」
そして打ち合いが再開し先ほどよりも強い打撃音が周囲に響く
「見た感じパワーとスピードでは日花勝ってるのよね~」
「だがあの翡智のお嬢さんはその差を技術と反射神経、そして嬢ちゃんが圧倒的に足りない頭脳で補って更に上回ってるってとこか」
「頭脳のことは言う必要あったかしら?…ねえ神吊?どっちが勝つと思う?」
「そんなの決まってるだろ?」
「そうよね?私もこれは外さない自信があるわ」
「この打ち合い勝つのは――」
「「翡智(のお嬢さんだな)(ね)」」
バチィィィィン!!!!
「ぐっ!?」
そのアンと神吊の言葉と同時に首に重い一撃を貰う日花
「今のはヒビ入ったわね」
「今の一撃を受けてヒビで済む嬢ちゃんの耐久値すげえな」
「げほっ…ごほっ…神吊…アン…そこは私と言うとこではありませんか?」
「いやだってな~これ翡智のお嬢さん勝つだろうし」
「そうよね、私達は冷静にその場の状況を考えて結論を出しただけよ?」
「……この裏切り者め…絶対勝ってやる」
「ふっ!その意気だよ頑張ってくれたまえ」
目の前の翡智彩里は本気のはずなのだが今だに涼しい顔をしている
対する日花は滝のような汗を流し息も荒い
ハッキリ言ってこのまま打ち合うのは日花にとってかなり不利である――しかし
「それでも勝たなきゃいけないんですよ…!」
そして日花はそこに残った力を振り絞るように更なるオーラを放出する
「ははっ!ただの決闘にそこまでするか…!感謝するよ桜坂日花」
そう言って翡智彩里は防除の構えをとる
「…いきます」
ダンッッッッ!!!
その音とともに日花が直線に飛び出す
そしてそのまま振るった木刀を翡智彩里は木刀で受けそのまま受け流す
「私の勝ちだ」
その宣言とともに木刀が斜め下から日花に向かう――しかし
「オラアァァァ!!!!」
「なっ!?」
受け流したはずの日花の木刀が翡智彩里の木刀を弾く
(強引に方向転換したのか…!)
「昇進貰ったああああ!!!」
今度は日花の木刀が翡智彩里に向かう
「はあああ!!」
「ちっ!」
しかしその一撃も体を捩じり回転させた翡智彩里木刀の一撃に阻まれる
だが負けずに日花は連撃を放つ、それを翡智彩里は受け流し、受け、躱しながら応戦する
その人の戦いとは思えないほどのぶつかり合いで周囲には豪風が吹き荒れる
「ちっ!目に砂が入ったぜ」
「大丈夫~?」
「大丈夫だが…風が強くて直視できねえ」
「ドンマイ~でももうすぐ終わると思うわよ」
「あん?ってことはやっぱり翡智のお嬢さんが勝つのか?」
「それは見ればわかるわ」
ダダダダダダダダッ!!!!
そう打撃音が連なって聴こえてくる打ち合いも15分続いている、その打ち合いの中で最初に変化に気が付いたのは意外なことに打ち合っている当人達ではなくアンであった、そしてその次に気が付いたのは翡智彩里だ
「……なるほどね」
「?…なんですか?」
「いや?最初に謝っておこうと思ってね」
「もう勝った気でいるんですか?」
「いや、もうすぐわかるよあと78撃ってとこかな?」
「?」
ダダダダダダッッバキッッッッ!!!!
「え?」
その音とともに両者の木刀が半分から上が吹き飛んでいた
「……」
「……」
そしてしばしの沈黙
「わ…」
「わ?」
「私の風太郎と草太があああああ!?」
木刀が折れたショックで日花は膝から崩れ落ちた
「あっはっはっは!まあ、あれだけ打ち合えばいくら硬い木刀でも折れちゃうさ」
「ごめんよ~風太郎…草太…」
折れた木刀に向かって涙目で謝り続ける日花とケラケラ笑う翡智彩里
「これって引き分けでいいのか?ってかアン木刀が折れることわかってたのかよ?」
「まあね~私、物の寿命も見えるのよ」
「マジかよ…」
アンの意外な新能力に驚きを隠せない神吊
「と言っても壊れそうな物だけだけどね?木刀だったら後500回打ち合ったら折れるくらいにならないと見えないし」
「いや、十分すごいと思うんだが…」
「ううっ…ごめんよ~ごめんよ~」
「日花くんまあまあ楽しかったよこんなに楽しかったのは1週間前に父相手にオセロで全部真っ白にしてやった時以来だ誇っていいよ」
「……そ、そうですか」
「それと昇進はまたの機会にね?」
「ですよねー」
その追い打ちの言葉にさらに落ち込む日花
「んん~久しぶりに体を動かしてすごく気分がいい、今日はよく寝れそうだ」
そう言って翡智彩里は会社に帰っていった
「……」
「嵐みたいな人間だったな」
「日花大丈夫?」
「全身痛い…心も痛い…」
「見た感じ結構体中にヒビ入っているみたいだから早く翡翠の医療室に行きましょ」
「うん…」
そう言って日花は立ち上がり会社に向かってトボトボ歩いて行った
その戦い後に翡智彩里決闘事件(アン命名)は日花の心に深い傷を残し幕を閉じたのであった
淫妖蟲~斬~15話:高嶺の翡智さん②をみていただきありがとうございます!決闘回ですので意外と早く終わりましたね次回は未定!どんな話を書こうか迷っています!新キャラはまあ考えてますが出るのはまだまだ先ですかね?ではまだ次回!