【完結】高い買い物をするはめになった   作:飛沫

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イチャイチャ(?)回


高い買い物をしない日の過ごし方

 休日。買い物と一週間分の作り置きを終えた俺は、キッチンで大きく伸びをした。これで、休みの間にやるべき仕事は片付いた。今回は連休なので、思う存分ダラダラ出来る。とはいえ、その前に望月の食事を用意しないとな。

 自分の食事の用意を終えてから、小さな鍋に観用少女専用のミルクを注いで火にかけ、温まる間ぼんやりしながら牛乳パックを眺める。

 この牛乳、観用少女にとってほぼ唯一の食事源となっているからか、非常に栄養たっぷりだ。以前、好奇心から蒲生たちと一緒に飲んでみたのだが、メチャクチャ濃厚で旨かったのを覚えている。蒲生は「これを風邪気味の時なんかに飲めば、直ぐに良くなるんじゃないか」 とおそらく冗談半分で言っていたんだろうが、俺は風邪を治す手段としてはかなり有用なんじゃないかと思う。試す機会があるか解らんが。

 つらつらと考え事をしている内に、ミルクが温まったので、マグカップへと移して望月への元へと持っていく。さて、望月は……いたいた。

 

「ほら、望月。食事にするぞ」

 

 声をかければ、椅子に座ってタブレットを眺めていた望月が、此方を見る。マグカップを置いてやれば、頷いてからテーブル周りを片付けてくれたので、空いたスペースに俺の食器も置き、食事をする。

 手を合わせて食べはじめれば、望月もマグカップを手にして一気に飲み干した。そして、手持ちぶさたのようにマグカップを両手で弄りながら俺の様子をじっと見ている。あんまり見られると、流石に食べづらいな……。

 

「そうだ望月、もらった砂糖菓子も食べるか?」

 

 ふと、思い出した事を口にすれば、頷くのが見えたので棚を開け小袋を取り出す。この中に入っているのは、様々な動物を象った砂糖菓子。その中から熊と鼠の形をしたものを取り出して、皿にのせる。

 この砂糖菓子は、観用少女の為に作られた特別な物だ。立ち位置としては補助栄養剤のようなものらしい。人間でいうところの、サプリメントといったところか。

 愛情はたっぷり注いでいるから、本当ならば砂糖菓子なんかに頼らなくてもいいんだが、賞味期限が近いから半額にすると店長に言われたので池田さんと折半して買ってみることにしたのだ。で、食べさせた結果は『可愛い(綺麗)な少女が、可愛い形をした菓子を食べる姿は超絶可愛くて世界遺産級』ということが判明した。

 SNSに上げて自慢できないのが悔しい、いや上げることじたいはそんなに難しくはないんだが、身バレの可能性を考えるととてもじゃないが出来ない。金持ちなんかと違って、セキュリティは普通程度だ、特定されて待ち伏せされる程度ならまだアレだ(本当は嫌だ)が、望月に何かしようとして、傷でもつけられでもしたら。それ以上に、知らない人間の暴力を受けたショックで『枯れ』でもしたら。やだやだ、考えるだけで恐ろしい。

 ブルブルと首を振って嫌な考えを追い払ってから、望月へ砂糖菓子を渡す。皿を受け取ると、じっと砂糖菓子を眺めてから鼠の形をした物を両手で持ち上げて、カリカリと音を立てて齧り始める。リスやハムスターが、両手で種を掴んで食べる姿を想像してくれたら解りやすいだろう。余談だが、池田さんの白妙ちゃんはガリガリと一気に噛み砕くらしく「情緒がない」と嘆いていた。砂糖菓子のオマケで貰った香り玉もガリガリと噛み砕いたらしいので、固形物は噛み砕く癖があるのかもしれない。とはいえ、決められた物以外を食べさせれば最悪『枯れる』可能性があるので試すことなんて出来ないが。

 そんな事を考えながら、砂糖菓子を齧る望月を眺めていると、食べ終えたのか皿を戻してきた。受け取って洗っていると、タブレットを持ってきて真剣な表情で動画を見ていた。

 ……今は一体何を見てるんだろうな。特に好みのジャンルもないみたいだから、オススメで出たものは片っ端から見ているようだが。訊いてみるか。

 

「望月、今日はどんな動画を見ているんだ?」

 

 傍に寄ってタブレットを覗き込めば、パッと画面を隠される。な、何だひょっとしていかがわしい物でも見ていたのか? 確かに年齢制限的な物はかけてなかったが。

 衝撃を受けていたら、椅子から降りた望月が床に転がってパシパシと床を叩く。ん、隣に来いってか?

 不思議に思いながらも、とりあえず誘われるままに望月の元へ行けば、さっきまで隠していたタブレットを見せてきた。そこに映っているのは、俺と同じくらいの年齢の男がうつ伏せになって寝転がっていて、俺の姿勢とタブレットを見比べながら、腕を掴んで引っ張ってくる。

ひょっとして、この俳優と同じ格好をさせるつもりか?

 

「あー、こうでいいのか?」

 

 画面を見ながら似た格好をしてみると、何度も頷く望月。タブレットを操作して、少しだけ早送りをすると、今度は若い女が寝転がっている男に寄りかかる場面が映し出され、同じようなポーズで俺に寄りかかり、再現できたことに満足げに目を閉じる。前後のストーリーがさっぱりだが、満ち足りた表情を見る限り、お気に入りの場面を作ることができてかなり嬉しいみたいだ。

 数分間この姿勢を維持した後、望月がタブレットを操作して別の動画を見せてきた。今度は女子高生が向かい合って手を繋ぎながら、額をくっつけているシーンか。

 

「よーし、こうだな」

 

 それからしばらく、望月がやりたいシーンの再現をして過ごした。どれも見たことのない映画(多分)だったので、どんな状況でこのシーンになったのかごさっぱりだが、男同士や女同士もあったので、仲の良い友達同士のじゃれ合い的な場面なんだろう。どれもこれも、結構親しげにくっついているモノばかりだったからな。




「だてくんとおきにいりのえいがの、こいびとどうしのしーんをさいげんしたよ!」
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