ファミリア・テイル   作:烏兎 満

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第十一話 二つ名

 オラリオより遥か上空のバベルのある階にこのオラリオに住んでいる神々が宴会を開催していた。

 

 それは三ヶ月に一度開催される神会(デナトゥス)と呼ばれる神々の宴のようなものであり、その目的は実に自由気ままな神々らしく特にないらしいのだが、この神会ではひとつだけ決まることがある。

 

 それは、下級冒険者が上級冒険者の仲間入りをした際の上級冒険者が持つ『二つ名』を神々が決めることである。つまり、『Lv1』の冒険者がランクアップを果たして『Lv2』となった時の『二つ名』は、神々が決めているのである。

 

 そして、神々はその子供たちの主神にとってとてつもなく恥ずかしい厨二病的な『二つ名』をつけることでその主神を困らせるという神会では、一番盛り上がるイベントのようなものであった。

 

 そのため、アフロディーテはただ一人の眷属であるロアがランクアップをしたため参加しなければならなかったのである。

 

 アフロディーテは、前回の神会を予定が合わないとか言って招待状をビリビリに破いてそのお誘いを蹴っ飛ばしたのだが、流石に世界最速ランクアップとなると参加しなければ後々面倒になることは目に見えていた。

 

 神々は暇だから下界へと降りてきたのだ。そして、神々の暇潰しは、下界の子供達であり、その子供たちの中に世界で一番の成長を見せた子がいるのならば、ちょっかいを出したくなる神もいるだろうし、奪おうなんて考える神もいてしまうだろう。神は大体クズだから。

 

 そんな考えもあって、自分の眷属ということを示して牽制を入れなければならない。

 

 この前ロアにものすごい高い洋服を買ったことで怒られてしまったが、あれはロアとのいつかするデートのためのものなので、少しお粗末な格好でパーティー会場へと赴いた。

 

 パーティー会場にやってくると、まず目に飛び込んできたのは豪勢な料理たちである。きっと、この日のためにオラリオの料理人たちが手によりをかけて作ったとても美味しい料理なのだろう。

 

 最近はかなり贅沢をできるぐらいにお金も貯まってきたものであり、たまーに豊穣の女主人で持ち帰りにした料理をロアと一緒に食べたりしたのだが、ここまで豪勢な料理たちを目の当たりにしてしまうと、無意識に口の中に唾が溜まってきてしまう。

 

「あら、アフロディーテじゃないの。下界に降りてきていたのは知っていたけれど、あなたの眷属が一人だけなんて珍しいわね」

 

 目の前の料理たちに目を輝かせながら、涎の垂れそうな勢いでその豪勢な料理たちを凝視していると、同じ美の女神であるフレイヤが物珍しげにアフロディーテに話しかけてきた。

 

「久しぶりね、フレイヤ。この超絶最強美少女女神の私に話しかけるなんていい度胸してるじゃない。………それより、ここの料理は食べてもいいのよね?」

 

「変わらないわね。あと、それを言うなら超絶乞食腹ペコ美少女と名乗った方が今のあなたにはぴったりよ」

 

 フレイヤの皮肉めいた言葉など聞く耳を持たずに、そのテーブルの中央にどっしりと構えている大きなチキンの一部をスライスしてから側にあった皿に骨つきの鶏肉を取り寄せると、美の女神とは思えないほどの食いつきでガツガツと胃の中にかきこんだ。

 

「ものすごい勢いで食べている神がいると思ったら、アフロディーテだったのね」

 

 鶏肉に食いついていると、呆れた視線を向けてくる赤髪で眼帯をつけているヘファイストスがミアハと共にやってきた。

 

「そなたの食べる姿はさながら獣のようだが、そんなに美味しそうに食べてくれると料理人たちもきっと喜ぶであろう」

 

「はぁ。あ、そういえばアフロディーテの眷属がランクアップしたんでしょう?あの子うちの経営してるテナントにも来てくれて、装備を買ってくれたのよね」

 

 二人の神がアフロディーテに向けて話しかけるが、アフロディーテは目の前の食事に集中しているらしく、二人を無視して黙々と食べ続けて肉の部分がなくなり、骨だけになるとようやく二人の方向に向き直り、その口の周りについた汚れを近くにあったティッシュで拭き取り、聞く体制をとった。

 

「で、なんの話だっけ?」

 

 ヘファイストスは呆れたようなため息を吐いて、ミアハは困ったような笑みを浮かべ、それぞれが違った反応を見せる中、フレイヤは他の男神たちの元へと行ってしまい、フレイヤと入れ替わるようにある神が三人の元へと訪れた。

 

「なんや、アフたんやないの。こっちに降りてたっちゅうのは聞いてたが、まさかアフたんの所の子が世界最速とは面白いこともあったもんやなぁ」

 

 細い糸目のお胸ぺったんこのロキが、珍しく女性らしい衣装でワイングラスを傾けながら、アフロディーテにちょっかいをかけてきた。

 

「えぇ、そうよ!私のロアは、最強なのよ!」

 

 もし、ロアがこの場にいたのなら「頭痛が痛い」とか言いながら頭を抱えていただろうが、生憎とこの場にロアはいない。

 

「へぇ、まぁ、世界最速と言ってもうちのファミリアよりは弱いんやから、最強は言い過ぎやって、アフたん」

 

「は?私のところが最強なんだけど?」

 

「ん?うちのとこと戦争遊戯(ウォー・ゲーム)するか?」

 

「胸がないくせに偉そうなこと言わないでちょうだい」

 

「は?」

「あ?」

 

 と、低レベルな争いごとをしている女神たちを差し抜いて、ロアの『二つ名』がさまざまな神によって討論されていた。

 

 アフロディーテはあまり理解していないだろうが、ロアの達成した四ヶ月ちょっとでの『Lv2』到達は、このオラリオの歴史の中でも成し遂げたものがいない快挙であり、その快挙を成し遂げたロアの『二つ名』を決めるこの神会の話し合いでは、このロアに面白い『二つ名』を与えてやろうと息巻いている神々が大勢いるのである。

 

「やっぱり『隼』とかどうよ?」

「それはちょっとつまらないぞ!」

「いや、『黒槍(ブラック・スパナー)』ってやつもかっこよくない?」

「なんか平凡なんだよなぁ。誰かもっといいのないか!?」

 

 神々の『二つ名』を決める話し合いは、いつまでも続くと思われたが、一人の神がある『二つ名』を提示した。

 

「『雷撃(スパーク)』というのはどうかしら?」

 

 その声を上げた神は茶髪のロングヘアの美しい髪を靡かせながら、その瞳から滲み出てくる慈愛の眼差しが神々(男神たち)の心を奪った。

 

「それだ!」

「それでいこう!」

「アストレアさんバンザーイ!」

「流石アストレアさんだ!」

「俺の母親になってくれー!」

「膝枕して、よしよししてくれー!」

「やはりアストレアは男神達(オレたち)の母になってくれるかもしれない存在なんだー!」

 

 一人邪神っぽいやつがいたが、それでも満場一致で可決し、ロアの二つ名は、『雷撃(スパーク)』となったのであった。

 

 ちなみに未だにアフロディーテとロキは醜い争いを繰り広げていた。

 

 

 

 




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