ファミリア・テイル   作:烏兎 満

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自分的に今回出来がいい


第十四話 新たな仲間

 闇派閥の襲撃を食い止めてから数日。

 ロアは自分の愛用している槍をヘファイストスに預けてメンテナンスを頼んでいるため、ダンジョンに潜ることができない。ヘファイストスからは一週間程度待ってほしいと言われて、ヘファイストス自身も忙しいんだなと思い、この一週間の予定が一気に開いてしまった。

 そもそも、ロア自身毎日狂ったようにダンジョンへと潜っていたため、ダンジョンに潜る以外にやることがなく、暇を持て余していた。

 

 しかし、この休みを生かしてロアはあるファミリアの団長を訪ねようと考えるが、そこの団長は今は忙しいと言われてしまい、本来は顔を合わせることも困難だと言われたのだが、ロアの世界最速ランクアップという肩書きに興味を示したのか五日後に予定を空けてもらえることに成功した。

 その団長の名はフィン・ディムナ。現オラリオ最強派閥の一角【ロキ・ファミリア】をその小人族(パルゥム)の特徴である小さな体躯からは想像のつかない強さと最強派閥をまとめ上げる頭脳を持ち合わせるLv.5の冒険者だ。

 彼を訪ねる理由は自分の独自の槍の技術では、いつか必ず限界が来ると感じたからである。インファント・ドラゴンとの闘いで魔法にしか頼れなかった自分はもっと強くなる必要がある。そのため、純粋な力よりも技術を磨く方が強くなるための近道だと考えて、小柄な体躯を生かして巧みに槍を扱うフィンに教えを乞おうと思ったからだ。

 ロア自身、フィンとは面識もなく【ロキ・ファミリア】とも一切の関係もなかったが、都市最強の槍使いといえばフィン以外にいないと最近少し仲良くなったケーレから教えてもらい、思い立ったがすぐに行動を実践して【ロキ・ファミリア】へと一直線に訪ねたのだ。

 

 そして、今日は本当に暇なのでアフロディーテからの提案で初デートに赴いていた。

 

「ふっふーん!どう?この私の衣装!かなり高かったけど、良いと思わない?」

 

 アフロディーテはロアへとその美の女神にふさわしいスタイルを惜しげも無く露出させた衣装を見せびらかして、ロアからの感想を聞く体制を取る。

 

「……良いと思うぞ。ただ、少し露出が多くないか?」

「これでもかなり抑えた方なんだけど?あと、レディの新衣装に向ける感想がそれだけってどうなのよ」

 

 アフロディーテは機嫌が悪くなってしまったようで、ぷくぅと頬を膨らませると、ぷいっとロアにそっぽを向く。

 ロアはすぐに機嫌が悪くなる主神に思わず苦笑いを浮かべると、正直な感想をアフロディーテに伝える。

 

「いや、本当に良いんだ。それしか言葉にできなくてな。一つ気になることはディーテの露出した部分を他の奴らに見られるのが、嫌なんだ」

 

 アフロディーテは膨らませていた頬を縮めキョトンとした表情をとると、ニヤリと笑ってロアの脇腹を肘でぐいぐいと当てられる。

 

「なによ、私の彼氏みたいなこと言っちゃって!」

「実際、今日はそのつもりで来たんだが?」

 

 アフロディーテはロアの思いもよらない発言に目を見開いて驚いてしまったようだ。さながら今まで初心だった子供がいきなり大人の女性を口説いてきたような感覚を受けて思わず頬を赤らめてしまう。

 子供のような身長だったロアの体は十一歳を迎えたことで、アフロディーテと目線が同じぐらいに身長が伸びており、そのロアの返答を真に受けてしまい、頬に少し熱が溜まる。

 

「え、ちょ、いきなりそんなこと言われても、困るのは私なんだけど…」

「ははは、ディーテもこんなに可愛い反応するんだな。じゃ、今日は俺がエスコートをしよう」

 

 アフロディーテの手を優しく握ってアフロディーテを導くように先導する。握った手からはすべすべとしたとても触り心地の良いアフロディーテの温もりを感じて、あんな口説き文句も言って見せて手も握って見せたが、少しドキドキしてしまう。

 

 主神とのデートでは、服を選んだり、『豊穣の女主人』で食事を取ったり、城壁に登りオラリオの景色を拝んだりもした。

 一日のうちに二人でできうる全ての娯楽を楽しみつつ、今まで以上にオラリオに触れたためかオラリオの活気が少なく、少しずつ悪の勢力の強さが増していっていることを肌で感じる機会でもあった。

 

「やっぱり、オラリオにしてはまだまだ活気が足りない感じもするわね」

「あぁ。道行く人が暗い表情をしていることが多い。これから少しでも闇派閥の勢いが増したのなら、どうなるか想像もしたくない」

 

 少し、ロアの心に不安が渦巻き険しい表情に歪めるとアフロディーテはそれを感じ取ったのかすでに暮れ方でオラリオの空がオレンジ色に染まりつつある夕日に照らされた顔は優しい微笑みを浮かべる。

 

「心配ないわよ。あなたが今胸に秘めている感情は、とても素晴らしく美しいもの。都市の平穏を破壊せんとする悪から、笑顔を守ろうとするあなたの行いはとても尊きもの」

 

 夕陽に照らされて赤く輝く我が主神の笑顔は、とても綺麗で何より美しかった。

 

「だから、その感情のままあなたが行動すれば、きっと都市の平穏は守られるわ。でも、無茶はしないでよね!」

 

 救われた気がした。闇派閥から笑顔を守るために人を守り、助けてきたが闇派閥の勢いは少しずつ増しているような感覚を持っていた。

 

 本当に人を笑顔にできているのか。

 

 誰かを助ける度に自分の胸には不安が溜まっていった。でも、アフロディーテからの言葉を受けてその不安は嘘だったかのようにすーっと消えいく。

 やはり、我が主神には敵わないなと思いながら言葉をこぼす。

 

「ありがとう、ディーテ」

「ふふん!この私にかかればどんな不安や悩みだって解決よ!」

 

 自信満々な笑みでさえ愛おしく感じ、沈んでいく太陽を他愛もない会話をしながら、二人で見届けた。

 

 

☆☆☆

 

 

 アフロディーテとともに初デートからの帰路についていると、暗い夜道の背後から声をかけられた。

 その声は若干息が切れており、切羽詰まった雰囲気を醸し出していたので闇派閥かと思いアフロディーテを後ろに立たせて、いつでも魔法を展開できるように構える。

 

「や、やっと見つけました!兄貴!」

 

 そのロアを兄貴と親しみを持って呼ぶことを許可した覚えはないが、この元気いっぱいな青年の声は間違いなく聞いたことのある声であった。

 

「確かお前は…」

「自己紹介がまだでしたね!俺の名前はルドロット・ケイレーンです!暗黒期を終わらすために、このオラリオへと参上しました!」

 

 元気のいい聞いてもいないことを大声で話し始めて、敵ではないと感じてすぐに肩の力をぬく。

 

「ふーん、面白そうな子ね。ロアの知り合い?」

「たまたま助けてやったやつの一人だ」

 

 アフロディーテはこのルドロットを興味津々な眼差しでロアの背中から覗き見る。

 

「あの子、本気でオラリオを救おうとしているのね。結構強かったり?」

「いや、雑魚」

「ちょ、ちょっと!酷くないですか兄貴!?」

 

 事実だしな、と厳しい現実を突きつけるように言ってのけるとルドロットはショックを受けたようでガーンと落ち込む。

 

「あ、兄貴!頼みがあります!俺をファミリアに…」

「断る」

 

 ルドロットの頼みを一瞬で切り捨てる。

 

「な、なんでですか!」

「お前は弱い。それに、俺はファミリアを増やす予定はない」

「そんな………」

 

 ルドロットはさらに落ち込み、希望の綱を絶たれたためか酷く悲しそうな表情を浮かべると心ここに在らずといった具合でロアたちに背を向ける。

 

「ちょっと、それは言い過ぎじゃない?」

「ディーテ、事実だ。それに、弱い奴を仲間にしても単なる足手まといだ。その心意気こそ立派だが、仕方のないことだ」

 

 アフロディーテはロアへと不満をぶつけるが、ロアの言っていることも的を得ているためそれ以上は強く言わなかった。

 

 その時、路地裏から小さな子供が飛び出してきた。もうオラリオは夜の闇に包まれており、このご時世もあって子供が一人ということは信じられないことだった。

 

「た、たすけてぇー!?」

 

 その子供は必死に助けを求めているが、路地裏から飛び出してきた男に捕まってしまい、刃を突き立てられそうになる。

 

 間に合わない。ロアのLv.2での敏捷を最大限に生かしたとしても、その子供へと迫り来る短剣を止めることができない。

 

 それでも、ほんの僅かな奇跡を信じてロアは駆け出した。

 

 世界がスローモーションに動き出す。

 

 アフロディーテは迫り来る残酷な未来を想像して悲しみに顔を歪める。

 子供は自分の胸に刺されそうになる短剣から逃げるように目を固く瞑り、抵抗すらできない。

 男は狂気的な瞳を子供へと向けて躊躇なく短剣を振り下ろす。

 ロアはその残酷な未来に抗うように、間に合わないと思う自分の心を殺して駆ける。

 

 刹那、何者かが容赦なく男を蹴り飛ばす。

 

「ぐぅっ!?クソが!誰だぁ!」

「か弱い子供に、無抵抗な子供に短剣を向けるなど、この俺が許さない!うおおおおぉぉお!」

 

 ロアですら防げなかった子供の未来を救ったのは先程ロアの拒絶を受けて立ち去ったと思われていたルドロットであった。

 蹴り飛ばされた男は、ルドロットに標的を変えてその短剣を手に飛び掛かってくる。

 その動きからは神の恩恵をもらわなければできない敏捷さを感じて、この青年では太刀打ちできないと悟ったロアはさらに加速して駆けるが最初の一撃は間に合わない。

 せめて一撃だけでも防いでくれと願いながら駆ける。

 

 ルドロットは迫り来る短剣を背負っていた大剣を素早く抜き放ち防いで見せるが、力の差は歴然であった。大剣は一瞬で弾かれた後、短剣で腹を突き刺された。

 

「ゴハッ!?……まだだ…!」

 

 言葉ではまだできると言っているが、すでに腹部からは血がドバドバと垂れ流れてしまい、動くことすらままならない。だが、ルドロットは背後にいる少女を男から守るために男の腕を掴み、その場から一歩も動かさない。

 

「行かせる、わけには……いかない…!」

「は、離せっ!」

 

 次の瞬間、ようやく辿り着いたロアの膝蹴りで顔面を抉られて、地面へと叩きつけられた男は一瞬で意識を失った。

 

 大量出血の影響で倒れ込んだルドロットに、いつでも誰かが傷ついたように持ってきていた高級回復薬を腹部にかけると傷はみるみるうちに治っていく。

 

「ぐ、はっ!こ、ここは…?天国…?」

「地獄だよ、バーカ。敵うわけもない相手によくそこまでやれたな」

 

 ロアはルドロットの無茶に悪態をつきながら、少女の元へと向かうとその少女はなんとロアの顔見知りであった。

 

「お前、もしかしてシティアか?」

「…え?ロア兄?」

 

 ロアがいつかの時に闇派閥の男から守った少女シティアだった。

 

「ロア兄!また助けくれたんだね!」

「………いや、助けたのは俺じゃない。今ここに倒れ込んでいるこいつだ。勇敢だったぞ」

「そうなの?」

「そうだ。だから、こいつに向ける言葉、わかるよな?」

「……うん!」

 

 シティアは未だに倒れ込んでいるルドロットに駆け寄って感謝の言葉を伝える。

 

「私を助けてくれてありがとう!お兄ちゃんがすごかったのは見れなかったけど、ロア兄がユウカンだったって言ってたよ!」

「……君が無事でよかったよ。本当に助けたのはそこの兄貴だよ。俺なんてまだまださ」

「いや、俺だけじゃシティアを救えなかった。全部お前のおかげだ。ありがとう」

 

 ロアは素直にルドロットに感謝を伝えた時、後ろからアフロディーテが息を切らしながら追いついてきた。

 

「はぁ、はぁ。二人ともお見事ね!さすが私の眷属だわ!」

 

 アフロディーテはロアを褒め称えると、ルドロットに向き直る。

 

「そして、あなたはもっとお見事よ!本当に素晴らしかったわ!」

「ロア、わかっていると思うけど…」

「あぁ、大丈夫。ちゃんとわかってる」

 

 ロアはアフロディーテが言いたいことを瞬時に察知して、その気持ちが自分と同じことを確認すると、ようやく起き上がってきたルドロットにその瞳を向ける。

 ルドロットもロアの真剣な空気に気づいたのかビシッと姿勢を正す。

 

「お前をうちのファミリア、【アフロディーテ・ファミリア】に入団することを許可する。ようこそ、歓迎しよう。そして、これからよろしくな」

 

 ロアはロアの言葉を理解できないようでポカンとしているルドロットに向けて手を差し伸べる。

 ようやくロアの言っていることを理解したようで、感極まったように涙を目尻に浮かべると、うわずった声でロアと固く握手をする。

 

「は、はい…!これからよろしくお願いします!兄貴っ!!」

 

 こうしてロアたちに新たな仲間、ルドロット・ケイレーンが【アフロディーテ・ファミリア】の新メンバーとなったのであった。

 




ファミリア作るぞー!
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