神の一手   作:風梨

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風梨と申します。
よろしくお願いします。





第一部
第1話


 

 

 東京にある一軒家。

 小さな庭先もある和風な家屋の縁側で、『パチリパチリ』と硬質な音が鳴っていた。

 足付きの碁盤が、石や貝殻で作られた碁石を木材の身で受け止めている音だった。

 

 そんな幾つかの打音が連続した後に、悔しさから『フルフル』と身体を震わせた少年が耐えきれないとばかりに立ち上がる。まなじりを上げて、頭を掻きむしった後に勢いよく目の前に座る対戦相手──お爺ちゃんに向かって『ビシッ』と指を差しながら。

 

 

「──だぁああ! じいちゃん手加減しろよ! 可愛い孫イジメて楽しいかよ!?」

 

「はっはっは、ヒカル。勝負事ってのは本気でやるから楽しいんだぞ? まだまだヒカルには負けられんなぁ」

 

「ドケチ! 帰る!」

 

「あらあら。お爺さんったら、またヒカルを怒らせて。スイカ食べない?」

 

 身支度を終えて、すぐにでも帰ろうとしていたヒカルに居間の方で家事をしていたお婆さんから声が掛かった。

 スイカと聞いてヒカルは一瞬だけ動きを止めるが、それでも機嫌は治らず、もう一度同じ言葉を続けた。

 

「……帰る!」

 

「そうよね〜、じゃあお土産に持たせてあげるから、お母さんに渡しておいてね」

 

 予期していたとばかりにネットに入ったスイカを持ってきたお婆さんからスイカを受け取って、『ズンズン』と子供ながらに縁側の板を軋ませながら、でもしっかりとスイカを両手で抱えながら帰っていく孫の姿にコロコロとお婆さんが笑った。

 その横で、孫にヒヤリとさせられながらもまた勝利を拾ったお爺さんが孫の成長を喜んで嬉しそうに笑っていた。

 

 

 

 

「──ヒカル! あんた、またお爺ちゃんのところにお邪魔してたの? まったくもう、言ってくれないとお母さん困るわよ」

 

「いいじゃん別に」

 

「スイカまで貰ってきちゃって、お礼の電話しないとね」

 

「いーって。また行くし、そん時にでも言っとくよ」

 

「そうじゃないでしょ、お母さんからも言わなきゃいけないんだから、あんたも電話に出なさいよね」

 

「めんどくさいなー」

 

「ヒカル!」

 

「あーもう! はいはいわかったよ!」

 

 玄関先で靴を脱ぎながら小言を聞かされたヒカルはその後電話をしてスイカのお礼を言った後に、母親からスイカを受け取って自室に戻ってきたヒカルは行儀悪く寝そべりながら、真っ赤な実に水滴を滴らせるスイカを口に運んだ。

 

「ったく、母さんもいちいち大袈裟なんだよ。たかがスイカじゃん。……うめぇ」

 

 左手で持ったスイカを『シャクシャク』と食べながら、ヒカルはもう一方の手で床の上にあるマグネットの碁盤をパチパチと触っていく。

 

「んー、やっぱ、爺ちゃん家にあるやつみたいに、足付きの奴ほしーよな。マグネット盤なんてダサくてやってらんないぜ」

 

 そうぼやきながらもプラスチックの碁石を触るヒカルの手付きは澱みなく、今日の棋譜を次々と並べていく。

 全て正確に再現される棋譜。

 ヒカルは気づいていないが、それは類い稀な才能だった。

 

「……そういや、爺ちゃん家の蔵になんかねーかな? この際ボロでもいいや」

 

 パチリパチリと碁盤に石を置きながら、ヒカルはそんなことを考えていた。

 その選択がヒカルの運命を大きく変えることなど思いもせずに。

 

 

 

「──ヒカル〜! あかりちゃんが来てるわよー!」

 

 翌日早朝。

 チュンチュンと小鳥が囀る音が聞こえる中で、ヒカルは目を覚ました。

 ただし、母親の大声付きだったが。

 そんな爽快とは言えない朝。ぼんやりと寝起きの視線を彷徨わせて小首を傾げる。

 

「んぁ。……あかり? なんかあったっけ?」

 

 起きてお腹をボリボリ掻いて、ぼやっとした顔で適当に着替えて下に降りればいつも通りのあかりが居た。

 

「おはよ」

 

「うん、おはよう。今日だったよね、フリーマーケットの日?」

 

 まったく準備の整っていない様子のヒカルを見て、あかりが少し自分の記憶に自信をなくして小首を傾けた。

 あかりから聞かされて、ヒカルは目を見開いた。ようやく今日が何の日だったかを思い出して、大声を上げながらハッとしたように口元を押さえた。

 

「……ああ!! そうだった!」

 

「忘れてたの……?」

 

 少し涙目になったあかりに焦って、勢いであかりの手を掴んで玄関の扉を開いた。もうぼやっとした表情は消え去って、いつもの溌溂とした、というには焦りの色が濃かったが、押しの強い雰囲気を取り戻していた。

 

「母さん! フリーマーケット行ってくる!」

 

「ちょっと、朝ごはんは!?」

 

「いいよ適当に済ませる!」

 

「適当にってあんた、お金持ってないでしょ……」

 

 母親が言い終えるのも待たず、ヒカルはあかりの手を掴んだまま走り出した。開いた玄関から眩しい朝日が飛び込んでくるが、僅かに目を細めながら光の中に飛び出していく。

 釣られて走り出しながら、あかりが少しだけ頬を赤く染めた。

 掌から伝わってくる体温にドキマギしながら困惑と嬉しさの滲んだ声を掛ける。

 

「ちょ、ちょっと、ヒカル?」

 

「いいからいいから。うちの母さん、ああ成ると長いの知ってるだろ? さっさと行こうぜ」

 

 そう言って走り出したヒカルに連れられて、あかりも一緒に駆け出した。まだ早朝、一緒にいられる時間はたっぷりとある。

 駆けていくあかりの足取りはまるで羽のように軽かった。

 

 

 

「──へぇ〜、結構いっぱいあんじゃん」

 

「大きなイベントみたいだよ。公園全部貸し切ってるみたいだもん」

 

「ふ〜ん、詳しいな」

 

「う、うん。まぁそこはほら、ね」

 

 事前に下調べしたなんて、ちょっと恥ずかしい。頬を染めて視線を外して、そう匂わせるあかりにも気がつかず、ヒカルは立ち並んでいるフリーマーケットを物色していた。

 

「おお〜、なんだこれ? 見ろよ、あかり。変な仮面があるぜ」

 

「もう! そんなこと言っちゃ失礼でしょ!」

 

 これってデートなんじゃないかな、と『ドキドキ』してるあかりにも気が付かず。

 ヒカルは好奇心の赴くままに、あかりを連れてフリーマーケットを歩き続けた。見渡す限りの品々が広がる光景にワクワクとした気持ちを抑えられないように瞳を輝かせる。

 

「でもヒカル、お金あるの? フリーマーケットってタダじゃないんだよ?」

 

「失礼な奴だな、それくらい俺だって知ってるさ。──じゃーん、これなんだ?」

 

 そう言ったヒカルが取り出したのは3枚の人の描かれた紙幣。

 小学生なら紙幣を持っているだけでも驚くほどの大金なので、あかりも思わず大きな声を上げた。

 

「……え!? せ、千円札が3枚も!?」

 

「ふふん、軍資金は十分! さ、他の見に行こうぜ」

 

『ズンズン』と進んでいくヒカルに慌ててあかりがついて行って、少し心配そうにヒカルを見た。

 

「ヒカル、さっきのお金どうしたの? 正直に話せばお母さんだって許してくれると思うよ?」

 

 心配そうな視線も相まって、ヒカルがあまり良くない類の行為に手を染めたのを確信しているかのような言い方だった。

 

「だぁああ! なんでそーゆー発想になるんだよ!」

 

「だ、だって、あのヒカルだよ!? お年玉なんてその日に使い切っちゃうもん!」

 

「それは! ……否定しねぇけど。これは! 俺が稼いだお金!」

 

 堂々とヒカルがそう言い切ったが、それでもあかりの疑念が全て晴れた訳ではなかった。

 ヒカルのことを疑っているというよりも、ヒカルを()()()()()からこそ、お金なんて貯められる訳がないと思っているからだった。そんなヒカルが聞けば脱力感からずっこけてしまいそうな事を思いながら、あかりはすごく心配そうに言葉を続ける。

 

「……何したの?」

 

「……まだ疑ってんのかよ。接待料だよ、接待料! 爺ちゃんと囲碁打ったら貰えるんだ。ま、腕上げたって思われたらとか、何回かやったらとか、色々ルールはあるけど、ちゃんとしたお金だよ。……これで安心したか?」

 

「うん! なーんだ、そういうことだったんだね」

 

 正論であれ、疑われたことで大声で怒鳴って機嫌を悪くすることもある年齢が小学生だ。

 あかりの追求は十分にそれに近い行為だった。

 けれど、ヒカルはそれ以上は怒らずにきちんと説明した。

 言ってしまえば、それだけのある種普通の行動だが、ヒカルがその行動を無意識にせよ選んだのはあかりが疑念を持っているとフリーマーケットが楽しめないと判断したからである。あかり自身はそこまで詳しい考察をしていないが、雰囲気でなんとなく感じ取った。

 

 なんだかんだ言って、ヒカルは察しが良いのをあかりは知っているから。

 それに優しい。

 そんなヒカルだから、あかりも離れられないのだ。

 ニコニコと機嫌を良くして笑いながら、あかりはヒカルの後に付いて行った。

 

 

 

「──ねぇほんとにいいの?」

 

「いーのいーの。けど、どれもこれもパッとしないなぁ」

 

「もう! ちょっと見直したと思ったらすぐこれなんだから!」

 

 フリーマーケットで、あっという間に三千円を使い切ってしまったヒカルはお爺ちゃん家の蔵に来ていた。

 碁盤を探す、なんて目的が頭の隅に残っていたのも理由だが、何よりの理由は明らかだった。

 そう。軽くなった財布がヒカルに言うのだ、太らせろーと。とどのつまり、古物商で売るための品物を物色するために蔵に入っていた。

 

「お、これって碁盤じゃん。へぇかなり古そうだな。じーちゃんが昔使ってたヤツかな? お宝ブームに乗って売っちまってもいいけど、俺が使ってやってもいいかもな」

 

「ふーん、それは売らないんだ」

 

「んー、こないだ社会のテストで8点しか取れなくてこづかい止められてんだけど、碁盤は欲しいんだよなー」

 

「もう……」

 

 呆れたと肩を竦めるあかりをよそに、ヒカルはその辺にあった布を手に持って碁盤を『ゴシゴシ』と拭いていた。

 けれど、いくら拭っても取れない汚れに怪訝な表情を浮かべた。

 

「それにしても全然落ちないぞ、この汚れ」

 

「……? 汚れてなんかないよ?」

 

「えー!? きたねーよ。ほら、こことか血のアトみたいに点々と……」

 

 ヒカルが指差す場所を見るが、あかりには何も見えない。

 だから、困惑を強めてヒカルに場所を聞き直した。

 

「どこ?」「ここ」「どこぉ!?」「ここだってば!」

 

 そんなやりとりの中。

 あかりに()()()新しい声が混じった。

 女のような、若い男のような。不思議な声音だった。

 

『見えるのですか?』

 

「だーかーらーさっきからそう言って……」

 

『私の声が聞こえるのですか?』

 

「へ?」

 

『私の声が聞こえるのですね』

 

「ヒカルー、やっぱりそんなアトなんて……」

 

 知らない声。

 あかりではない、誰かの声。

 

『ゾッ』としたヒカルは碁盤を背にして、辺りを見渡す。

 だが、当然ながら誰の姿も見えない。

 ヒカルの背中に冷や汗が流れた。

 

「あかり、この蔵の中に誰かいるぞ……。誰だ? じーちゃんか? かくれてないで出てこい!」

 

「ぇえ! やだぁ! もう! ヒカル変なこと言わないでよ! ……わ、わたし帰るよ!」

 

 ヒカルの言葉にも、あかりの言葉にも、その『何か』はまったく反応しない。

 

『あまねく神よ。感謝します』

 

 背後からその一言が聞こえて、再び『ゾクリ』とヒカルの全身に震えが走った。

 振り返れば、烏帽子を被って白い袴を着た、女なのか、男なのか、よくわからない幽霊が立っていた。

 

 喉の奥が『キュッ』と閉まる。

 足が竦んで動けない。

 見上げるようにしてヒカルは幽霊を見ていた。

 

 そして。

 

 幽霊がヒカルの中に『入ってきた』

 

『今一度……、現世に戻る』

 

 微かな意識の中で、そう聞こえた気がした。

 暗転する視界。

 視界と音で自分が倒れたのがわかる。

 

 遠くからあかりの声が木霊のように聞こえてくる。

 

 ヒカルの中に、囲碁の霊が宿った瞬間だった。

 

 

 

 

 しばらく経って。数日を掛けて紆余曲折、ヒカルとその幽霊はある程度打ち解けた。

 お互いに碁が打てることがわかってから、一局打ってみるか、となるのは当然の流れだった。

 そして、実際に対局した後にヒカルは思わず盤面をひっくり返さんばかりに、自分自身がひっくり返った。

 

 

「──だぁああ!! 佐為、お前めちゃくちゃ強いじゃねーか!! なーにが大昔の碁打ちだよ! 騙された!!」

 

『そ、そんなことを言われても、御城碁を打っていたとも、ちゃんと言いましたし……、もしかしてヒカル。もう御城碁はなくなってしまったのですか?』

 

「知らねーよ! 俺、爺ちゃんとしか打ってねーもん。囲碁になんて興味ないね」

 

『そ、そんなぁ』

 

 佐為の悲しみがヒカルに伝播してきて、急激に気持ちの悪さが込み上げてきて口元を両手で抑える。

 

「うっ!! ……わかった、わかったから落ち込むなって……。もう学校の教室の時みたいなことは勘弁しろよ」

 

 脳裏に思い描いたのは、今日の昼頃に学校で起きた、ヒカルのゲロ吐き事件だった。思い出したくもない記憶なので早々に掻き消して、ため息を吐きながらヒカルは立ち上がる。

 

『ひ、ヒカルぅ!』

 

「えーっと、じゃあ、爺ちゃんなら知ってるだろ、たぶん。会いに行こうぜ」

 

 

 

 

 

 

「──御城碁ぉ? はー、お前からそんな言葉が飛び出すなんて驚いた。急にどうした? こづかいは増やさんぞ?」

 

「うるさいなー、いいだろ別に。で、もうないの?」

 

 不機嫌そうに顔を顰めたヒカルに、呆れた祖父がため息を吐きそうな雰囲気で続ける。

 

「そんなの、とっくに無くなっとるわ。いつの時代の話をしとる? 数百年も前の話だぞ?」

 

「ふーん、それってすごかったの?」

 

「そりゃ、すごいも何も。その時代の最高の舞台よ。碁打ちの中で知らない者は居ないってくらい有名な、あの『本因坊秀策』が打っていた事もある、それはそれはすごい舞台だわ」

 

「ふーん……。爺ちゃんくらいの実力じゃ、出れるわけないか」

 

「阿呆! レベルが違うわ!」

 

「……ねぇ爺ちゃん。勝ったらって約束。まだ有効だよね? お金はいいからさ、勝ったら碁盤買ってよ、足付きのやつ」

 

 悪どい事を思いついたように、ヒカルが『ニヤリ』と笑った。

 お金のためならいざ知らず、碁盤のためなら佐為が実力を抑えるなんて事はない。

 順当に楽しみながら佐為が打てば、ヒカルでもわかるくらいの盤面が展開された。

 

 そして。

 その圧倒的な棋力を以って作り上げられた碁盤を眺めながら祖父は唸った。

 その声を聞きながら、ヒカルは冷や汗を『タラタラ』と流す。

 やべえ、勝ちすぎた、と。

 

「……ヒカル。お前、昨日の今日で、これか?」

 

「あー、そう。成長期っていうじゃん? 閃いたんだよね、うん」

 

(さすがにバレたか? 佐為ってば、いや。『本因坊秀策』ってば、ほんとに強いんだな……)

 

 冷や汗を頬から垂らしながら言い訳のようにそう言ったが、祖父は俯いて碁盤を見つめたまま動かない。

 結果は白番の7目差でヒカルの勝ち。

 コミを入れれば12目半の差が付いている。

 ただ内容は囲碁暦の長くないヒカルでもわかるくらいの、完勝に近い。それこそ12目差なんて目じゃないほどの隔絶とした差が隔たっているのがヒカルには理解できた。

 

 久しぶりの囲碁である。

 ノリにノリすぎた佐為が全力で打っていることに気がついて、慌てて『指導碁』を打つように言ったが、時すでに遅い。

 

 歴然とした実力差を見せつけてしまった。

 どうなる、と恐る恐る祖父を見れば、まだ俯いたままだったが、ヒカルのそんな視線に合わせるように『ガバっ』と顔を上げた祖父を見て思わず目を閉じた。

 

 そして。

 

「ヒカル!! お前、すごいぞ!? 才能があると思ってたが、ここまで成長が早いとは思っとらんかったわ!! いやぁすごい! ──ばあさん! ばあさん! これを見ろ! ヒカルがすごいぞ!」

 

 呆気に取られて、縁側から居間に駆けて行った祖父を見送って、ヒカルは思わず足を崩した後に安堵して笑った。

 

「ははっ、そりゃそーだ。幽霊に取り憑かれて、そいつが代わりに打ってるなんて誰が想像できるんだっての。あー、びびったー!! 佐為、お前さー、ちっとは手加減しろよ。バレたらめんどーだろうが! 程々に勝つんだよ!」

 

『そ、そんなぁ。私としては精一杯頑張りましたし、きっとヒカルのお爺さまにも満足して頂けたと思うのですが……』

 

「満足も何もないの! バレたらもう打てなくなるんだからな、気をつけるよーに!」

 

『うぅ、わかりましたよぅ』

 

『しくしく』と背後で泣いている佐為に少し居心地悪くしながら、ヒカルは爺ちゃんが戻ってくるまで縁側に座っていた。

 微風(そよかぜ)が頬を撫でる。

 足を投げ出して座って、両手を左右の後ろに突いて、そのまま体重を後ろに傾けて。

 

 季節は冬。

 肌寒い風に晒されて、けれどヒカルは身を縮める事もなく受け止めていた。

 何となく、そんな気分だった。

 

(なぁ佐為。お前ってどれくらい強いんだろーな)

 

『どうでしょうか。140年の歳月が流れていますから、定石も変わっているでしょうし……』

 

(ま、そりゃそーか。……囲碁教室でも行ってみるかぁ)

 

『囲碁教室!? 今ではそんなものがあるのです!?』

 

 興奮し始めた佐為を適当に宥めつつ、ヒカルは祖父が帰ってくるまで、冬風を感じていた。

 もしかしたらそれは、大きな時代の風を感じていたからなのかもしれない。

 

 佐為という、囲碁界に訪れる新たな風を。

 

 

 


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