神の一手   作:風梨

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約6000字



第7話

 

 

『──ヒカル、そんなとこ女の子と行ったら笑い物だ、とか言いそうなのに、よく承諾しましたね』

 

「……うるさいなー、いいだろ別に。オレが誰と何処に行こうがさ」

 

『それはもう、もちろんそうなんですが。──あ、ほら見てヒカル! あんなところに碁盤が!』

 

「後で! あかり待ってんだから──」

 

「ヒカル! ごめんね、待たせたかな?」

 

 葉瀬中の門前に2時集合。

 あの塔矢名人と打った後に、ヒカルが誘われた研究会に参加するつもりが一切ないと知って『しくしく』泣いた佐為としょうがなく対局していたら、夜にあかりが自宅に訪ねてきて、そういう約束をしたのだった。

 あかりには助言を貰ったから借りがある。

 そう思って素直に行くと返事をしたら、ヒカルが思った以上にあかりは喜んでいた。

 

 そんなあかりを驚きながらも受け入れていたヒカルの事を思い出して、『若いっていいですねぇ』と佐為は袖で口元を隠しながら微笑んだ。

 

「ん、早く行こうぜ。たこ焼き奢ってくれるんだろ?」

 

「うん、お姉ちゃんに食券貰ったから! ……でも、そこは今きたとこって言うんだって、ドラマでやってたよ」

 

「お前、またドラマばっか見てんの?」

 

「そういうヒカルは最近囲碁ばっかりだもん」

 

「……そういや、そうだなー。で、いつもお前居るよな」

 

「え!? ……そ、そうかな?」

 

「そーだよ。あ、たこ焼きの後であそこ寄るけどいいか?」

 

「あそこって、あ、また囲碁? ヒカルってば本当に好きだよね」

 

「……嫌なら別にいいけど」

 

「いーよ! 付き合ったげる! ──ほ、ほら、行こ?」

 

 そう言って、あかりはヒカルの手を掴んだ。

 たこ焼き屋も素通りして、そのまま碁盤の方に。

 ついこの間の塔矢アキラに対抗して、あかりは初めて自分からヒカルの手を握った。

 たったそれだけで、もういっぱいいっぱいだった。

 

 ヒカルもまさか手を握られるとは思っていなくて。

 けど、やっぱり恥ずかしい。

 手を振り解きたい気持ちが強いが、ここで手を振り解くのは、と躊躇するくらいの好意はあかりに対して抱いていた。

 

 双方ともがぎこちなくて、どこか遠慮し合っている。

 そんな初々しい二人の様子を見て、また佐為が袖で隠しながら微笑ましげに笑った。

 

 

 

 

「──あーっと『塔矢名人選・詰碁集』?」

 

 あかりに連れられて、『碁』と書かれた小さな四角い看板のある場所にやってきて、真っ先に目に入ったのが『塔矢名人選・詰碁集』だった。

 そんなヒカルの一言を聞いて、座っていたこの出し物をしている中学生の先輩がニッコリと笑って言った。

 

「詰碁の正解者に景品あげますよ」

 

 景品。

 そう聞いて、あかりが少し屈んで上目遣いでヒカルを見上げた。

 カッコいいところを見てみたいな、という女心だった。

 

「ねえねえヒカル、やってみたら?」

 

 可愛(かわい)らしいあかりの仕草だったが、ヒカルは背後から押し掛かる幽霊に気を取られて動揺する余地は幸いな事になかった。

 

『ヒカル! ほしーっほしーっ!』

 

「あーもー、ったく。やってみるか」

 

「うん! いいとこ見せてね」

 

「……おう」

 

『きゃーきゃー!』

 

 佐為の『きゃー』がどっちの意味でのきゃーなのか、聞いて見ようとも思ったが、どうせ囲碁のことなのでヒカルは聞くのを辞めておいた。

 

「次、いい?」

 

「どうぞ。じゃ、いくよ」

 

 中学生の先輩の並べた詰碁は思ったより簡単だった。

 これなら佐為に頼らなくても解ける。

 そう思ってヒカルは一瞬だけ考えて、『トントントン』と3手を示した。

 周囲の大人たちがヒカルの解答に反応を示した。

 

「お──っ」

 

「正解正解。早いじゃないか」

 

「えらいえらい」

 

「わーっ。私、まだわかんないかも……」

 

 周囲の大人達や最後のあかりの声に少し気をよくして、ヒカルは景品を受け取る。

 

 が。

 

「ぶっポケットティッシュ!? 詰碁集じゃないの?」

 

「あはは、今の問題じゃ詰碁集はあげられないよ。もっと難しいのやってみる?」

 

 中学生の先輩が笑ってそう言って、ヒカルは何度も頷いて答えた。

 

「オッケー、もっと難しいのね。ほんとに大丈夫?」

 

 チラリと先輩が見るのは背後のあかりだろう、とヒカルは当たりをつけた。

 問題ない、と示すようにもう一度大きく頷いた。

 

「わかった。じゃ有段者の問題だ。ボクでもこれは梃子摺るかな。3手まで示してね」

 

 示された問題に、ヒカルは少しだけ思考する。

 そして3手を示した。

 解答はまた正解だった。

 

「おお! また正解か」

 

「やるじゃないか坊主」

 

「いいぞ坊主、その調子だ」

 

「……やっぱり、ヒカル凄いかも」

 

 正解したヒカルに、先輩が良い笑顔で缶ジュースを渡した。

 

「うん、正解。キミ、小学生だろ? 中々やるじゃないか。はい、缶ジュース」

 

「ええ? 缶ジュース!?」

 

「えっと、不満?」

 

「不満っていうか、詰碁集がもらえる一番ムズカシイのやってよ。オレが欲しいのそれだし」

 

「一番難しい……って、こんなの解けたら塔矢アキラ並みだよ? 本当にいいの?」

 

 また背後のあかりを見て言う先輩に『ムッ』としながら頷いた。

 

「いいの! って、塔矢アキラ? あいつってそんなにスゴイの?」

 

「え? うん、もうプロ試験に受かるんじゃないかとか。大人相手に指導碁みたいなことやってるとか、ウワサだけは聞くよ。彼はアマの大会には出てこないから、情報が少ないんだ」

 

「あー、そういや大会出たのかって聞くと変な顔してたっけな……」

 

 ヒカルのまるで塔矢アキラを知っているかのような口ぶりに先輩は疑問を表情に浮かべた。

 

「……キミ、塔矢アキラと知り合いなの?」

 

「知り合いっていうか、まぁ。オレ2回アイツに勝ったし」

 

「に、2回?! 塔矢アキラにかい!?」

 

「え? うん。まぁ1回目はあいつも油断してたかもしれないけど、2回目はマジだったぜ」

 

 信じられないと顔に描いてある先輩の表情だった。

 掛けているメガネの位置を『クイっ』と直して、気を取り直すように先輩が続けた。

 

「……それなら、この難問も解けるよね。さぁどうぞ。第一手が鍵だ」

 

 信じてなさそうな様子に少しムッとしたが、言ってもしょうがない。

 そもそも佐為が打ったのだし、固執(こしつ)するほどの事でもないと思い直して盤面を見る。

 

 ……中々の難問だ。

 ヒカルはそう思って長考に入ろうとしたが、その前に。

 

「第一手は……ココだろ」

 

 唐突にだった。

 フラリと訪れたであろう人物が、咥えていたタバコを碁盤に押し付ける。

 そしてその場所は正解だ。

 

「おめー、こんなのも即答できねーのに、塔矢アキラに勝っただぁ? ケッ、やめちまえやめちまえ、囲碁なんて辛気くせーもん!」

 

「ああっっ! 何をするんだ!」

 

 中学生の先輩が、慌ててタバコが押しつけられた位置を布で拭う。

 

「ふん! 塔矢アキラなんざ、あんなヤツ、オレに負けたサイテー野郎だ! しかも、どうやらお前みたいなザコにも負けてるらしいな? 随分下手くそになっちまったみたいだが、まぁ当然か。石ころの陣取りなんてくだらねー。将棋の方が1000倍オモシロイぜ」

 

「な、なんだと!!」

 

 ヒカルは新たな乱入者に対して食ってかかった。

 

 ヒカルは塔矢に勝った。

 佐為が打ったからだが、それでも勝ったのは事実だ。

 その時にヒカルは塔矢の事を認めていた。

 だから、塔矢のことをバカにされて、囲碁のことまでバカにされて、ヒカルは頭に血を昇らせた。

 

 けれど、ヒカルがそれ以上の言葉を続けるよりも前に、またタバコを押し付けてきた将棋の駒が描かれた和服を着た男が中学生の先輩に向けて話し出した。

 

「んで、筒井。囲碁部をつくるってのはどうなったんだよ。三人揃えて団体戦に参加できれば部として認めてくれるって必死だったじゃねーか。条件次第で出てやってもいいぜ。オレの囲碁の腕は知ってるだろ、お前の1000倍強いぜ」

 

「碁盤にタバコを押し付けるようなヤツの助けなんているもんか!」

 

「ケッ、よくゆーぜ! このあいだ大会に出てくれって頭下げにきたのは誰だよ」

 

 その通りだった。

 中学生の先輩──筒井はつい先日この男に頭を下げてまでお願いしていた。

 けどそれも、過去の話だ。

 碁盤を大切にしないヤツに頼んだ自分が情けない。

 筒井はテーブルに置いてあった詰碁の本を掴んで、将棋の駒の描かれた和服の男──加賀に押しつけた。

 

「ホラ! 詰碁の景品! これ持って、さっさとあっち行け!」

 

「へいへい。……『塔矢名人選詰碁集』?」

 

 それまで飄々としていた態度を崩さなかった加賀が、それを見て表情を一変させた。

 どこか余裕の無さすら感じさせる様子で『ギリっ』と奥歯を噛み締めて。

 次の瞬間には手に持った詰碁を『ビリビリ』に破き始めたものだから、それを目の前で見たヒカル、あかり、佐為、筒井の4人は悲鳴のように驚きの声を上げた。

 

「くだらねェっ! 言ったろが! オレは囲碁と塔矢アキラが大っ嫌いなんだ!!」

 

 そんな加賀の様子に今まで頭に血を昇らせたまま黙っていたヒカルが口を開いた。

 

「塔矢アキラが大嫌い? なんだよ、お前、塔矢に勝ったんだろ? なのに、なんで嫌いとか言ってるんだ! ……アイツの才能に嫉妬してるのか!」

 

「このオレが、あいつに嫉妬だと……? よく知りもしねえガキが、調子に乗るんじゃねえよ」

 

「ふん! お前みたいなヤツに塔矢が負けるもんか!」

 

「くっくっく、バカな小僧だな。オレが嘘なんざ吐くわけねーだろが。おい、いいかよく見てな」

 

 そう言い放った加賀が、白い碁石を一つ手にとって曲芸染みた手つきでジャグリングを始めて、両掌の中に碁石を隠した仕草をした。

 

「どっちだ? 石はどっちの手に入ってる? 当てたら何だって話してやらあ。その代わりハズしたら今度は碁盤じゃなくお前の手にタバコを押し付けてやる!」

 

「……ああ! 当ててやるよ!」

 

「キ、キミ!? やめるんだ、加賀はやるといったらやるヤツだぞ!?」

 

「ほぉ、覚悟しろよ? 筒井が言ったが、オレはマジで、やるといったらやるぜ? その覚悟があるんなら当ててみろよ。人を嘘つき呼ばわりしやがったんだ、そのくらい覚悟してるよなぁ?」

 

 加賀の目は本気だった。

 勝負事の経験が浅いヒカルでもそれはわかった。

 背後からあかりがヒカルの手を掴んで、止めるように促すが、ヒカルに止まるつもりはない。

 こんなヤツ相手に退いたなんて、自分がきっと許せなくなる。

 

 ヒカルは塔矢アキラに勝ったのだ。

 そんな自分が塔矢をバカにする相手に退いたら、塔矢のことまでバカにされた事を許すようで、それは到底受け入れられない。

 佐為の力を借りたとはいえ、いや。だからこそ、自分がこんな奴相手に引くわけにはいかないと闘志を燃やした。

 

 最初は塔矢の才能に嫉妬してた。

 だけど今は認めてるから。

 

 ヒカルは半ばヤケクソに加賀の左手を叩いた。

 

「こっちだ!!」

 

 驚いた顔で、加賀は左手を開いていく。

 そしてそこには『何もなかった』

 

「……お前の度胸は認めてやるよ」

 

 そして右手も開いた。

 そこにも『何もなかった』

 筒井が悲鳴のように叫んだ。

 

「あっ石がないっ!?」

 

「こんな手に引っかかるとは……。ギャハハ、揶揄い甲斐のある奴だぜ! 囲碁なんかやめて将棋にこいよ。オレが一から教えてやっからよ!」

 

 インチキでまともに勝負するつもりすらなかった加賀に『ムカムカ』とした気持ちが湧き上がってくる。

 その気持ちのままにヒカルは糾弾した。

 

「お前に習うくらいなら一生将棋なんか覚えるもんか!」

 

「んだと!?」

 

「塔矢に勝ったって? どーせ今みたいにインチキしたんだろ! それとも塔矢が本気じゃなかったんだ! お前なんかどーせ囲碁から逃げて、将棋に行ったんだろ! このペテン師!」

 

「言いやがったな小僧! そこまで言うならオレの実力を見せてやる! ──どけっ筒井!」

 

「ああっ!?」

 

「ほら打てよ! オレが負けたら土下座でも何でもしてやらあ! その代わりお前が負けたら、インチキ呼ばわりした事を謝罪しながら、冬のプールにでも飛び込みやがれ!」

 

「ああ! プールでもなんでもやってやるよ!! その代わり負けたら土下座だからな!?」

 

(佐為!!)

 

『わーい、対局対局♡』

 

 佐為はこんな時でも対局が出来るのが何よりも嬉しいらしいが、ヒカルはそんな佐為にも目もくれず、盤面に向き合って集中しながら一手目を放った。

 

 

 

「──……マジかよ」

 

 加賀は冷や汗を流して盤面をじっと見つめる。

 途中までは多少押されながらも、引き離されない程度の戦いになっていた。

 それが変わったのはヨセに入る少し前の段階。

 ある局面での一戦だ。

 複雑な盤面だったこともあるが、ちょっとした一手からいとも簡単にハメられた。

 そのせいで石の流れが完全に断ち切られて、そこから一気に崩された。

 戦場となった右辺の加賀の石が、尽く死んでいく様に冷や汗が抑えきれない。

 

(ハメ技だと……?! このオレが、こんなガキにハメられるなんざ! 情けねえ!)

 

 プロとアマの違いを挙げるのならいくつも候補が挙げられるが、その一つがこの『ハメ』である。

 相手の手を誘導して、逃れられない必殺の形にしてしまう。

 読みと知識がなければ不可能な技である。

 プロの対局はこのハメ合いを制したものが勝つと言われるほどの技術である。

 それを、ヒカルは使っていた。

 

 そして一度ハメられて崩されたのなら、囲碁のルール上挽回するのは困難を極める。

 他の局面で勝つしかないからだ。

 だが、もう終局に近い状態。

 ここから取り戻すのは仮に佐為であっても不可能。

 

「……くっ!! ……ありません……」

 

 加賀の実力は中学生にしてかなり高い。

 アマとしては有段者レベルである。

 それでも佐為には当然ながら勝てない。そんな彼が、佐為ですら覆せない盤面を勝利に導くことなど当然出来ない。

 そして、加賀は不可能を不可能と判断できるだけの棋力を持っていた。

 それ故の投了。

 

 佐為は一局を終えて『るんるん』と楽しげに跳ねながらヒカルに話しかけていた。

 

『ヒカルぅ! この者との一局は楽しかったです! 私の一手一手に面白い手を返してきました! ……けれど、本当はハメなんて使いたくなかったのですが……、どうしてもダメでしたか?』

 

(ダメ!! こいつは塔矢のこともバカにしやがったし、何より碁盤にタバコ押し付けたんだぜ? これくらいのお仕置きは必要だっての)

 

『……それは、確かにそうなのですが……』

 

「くそォ!!」

 

『ダン』と加賀がテーブルに両手を打ちつけた。

 負けは負け。

 勝負事の結果は絶対だ。

 そういう意識があるからこそ、加賀は悔しさに拳を振るわせた。

 ヒカルはその様子を見て、性根の悪い奴じゃないんだろうな、と思った。

 だから、純粋な疑問として加賀に声をかけた。

 

「なぁお前、なんでこんなに強いのに、塔矢のことバカにするんだよ。……オレの一手一手に面白い手も返してきたし、ほんとになんでだ?」

 

「……負けは負けだ! いくらでも話してやらあ!」

 

 不機嫌そうに仏頂面を浮かべながら、加賀は約束通りに語り出した。

『土下座』を有耶無耶にするためでもあったが。

 

 昔、父親に言われて将棋をやりたかったのに、囲碁教室に通わされていたこと。

 そこで加賀はNo2だったこと。

 No1には塔矢アキラが居て、どうしても勝てなかった事。

 父親にはNo1になれと言われ続けていたが、塔矢アキラのことは内心で認めていたこと。

 そんな塔矢アキラに、父親との『塔矢に勝てなければ家に入れない』という会話を聞かれて、勝ちを譲られたこと。

 

 そんな事を、加賀は不機嫌に顔を歪めながらも正直に語った。

 

 

「……そっか。やっぱお前も塔矢のこと認めてるんだな、うん。あいつはやっぱりスゴイ奴だ」

 

「アホか!! 今の話を聞いてなんでそういう結論になる!? お前はアホか! オレはアイツが大っ嫌いなんだよ! 理由は言っただろが! ……他に聞きたいことはねぇのか」

 

 大嫌いとは言っても、認めてないとは言わない。

 そんな加賀にヒカルはもう一つだけ質問した。

 

「もう囲碁はやらないのか?」

 

「……あー。そうだ、オレに勝ったんだ。お前ちょっと耳貸せよ」

 

 加賀はそう言ってニヤリと笑って、ちょいちょいとヒカルと筒井を手招きして3人で顔を寄せた。

 

 

「団体戦ん!?」

 

「そう。オレに、筒井に、コイツ。認めたくねーが、実力順ならコイツが大将。オレが副将。筒井が三将だな」

 

「小学生に大将をやらせるわけにはいかないよ! バレたらどうすんだ!」

 

「じゃ、コイツ三将な。で、筒井が副将。大将はもちろん、このオレだ」

 

「ちょっと待て加賀!」

 

「た、大会!? そんなの出ねーよ! オレ、小学生だぞ!?」

 

「んだよ、オレの実力は認めてくれたんだろ? なら、一肌脱いでくれてもいいじゃねーか」

 

「うっ! まぁ、それはそうだけど……」

 

「よし!! 決まりだ。筒井、どーせ部員なんか一人も集まってないんだろ、よかったな大会参加で部ができるぜ」

 

「か、加賀……! でも、そんなこと……!」

 

「それにお前、コイツの力見てみたいだろ? ……塔矢アキラに勝ったってのも恐らくマグレじゃねえ。もしかすればマジで本気の塔矢に勝ったのかもしれないだろ。あの海王には塔矢アキラもどきみたいなのがゴロゴロしてんだ、見てみたいだろ? ──で? いつだよその大会は」

 

「うっ。……今度の日曜日。10時からだよ」

 

「場所は?」

 

「──海王中学」

 

 それを聞いて、加賀はニヤリと笑った。

 面白くなってきたと思いながらの笑みだったし、なんやかんやで『土下座』を有耶無耶に出来たという安堵の笑みでもあった。

 そして、舞台は海王中学へと移る。

 





高評価、感想ありがとうございます。
引き続きお楽しみください!

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