転生したら、女傭兵二人に迫られてる件について   作:門番A

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この設定考えた後で、いざ執筆している最中でふと作中設定見返したら、完全に設定が食い違う事は判明したと言う……。
眷属と闇に蠢く者の関係は、この作品独自という事でよろしくお願い致します(逃避)

まあ、そんな事言ってたら紅花ルートでグロンダーズの戦いない事に投稿後思い出したんですが!!!!!


次回、青獅子編ですがめっちゃ長くなります。長くなりすぎてエタる可能性すら生まれてきてます。
……かけるかなぁ。


真実の記憶

 

 

 五年後のディミトリの幻影を打ち倒した。

 五人ならば、そうでもないし私やシェズのような傭兵がいれば左程苦戦はしなかった。

 

「……あれは」

「心当たりがあるの?」

「……ああ、頭が痛い程にな」

 

 ディミトリは難しい顔を隠さず、目を伏せた。

 ――ふと、霧が晴れた。 

 見ると、ウィルが地面に蹲っていた。

 

 

 

 

 なんだ、あれは。

 

「っぁ……!」

 

 立っていられない程の眩暈がする。

 汗が体中から噴き出して止まらない。

 俺は、ベレスと既にあっていた? いや、違う。そうじゃない。

 少なくとも、共に大修道院へ向かった事は無かった。

 ならばこれは確かに在り得た記憶の一つ。

 

「ウィル! 大丈夫……!?」

「ベレス、先生……」

「っ……! もしかして、記憶を」

 

 ああ、やっぱり。

 この人は、共にあの世界を駆け抜けたのだ。

 

「……」

 

 息を落ち着ける。やっと、心が状況を受け入れてきた。

 俺はこの手でシェズを、青獅子の生徒達を殺したのだ。

 彼女と目を合わせる事が出来ない。どんな顔をすればよいのか分からない。

 

「――大丈夫かい?」

「……思ってたより、キツい」

 

 頭痛が残る体を、立ち直らせる。

 思い出した記憶は、一つだけ。

 まだ残っている。何となく、そう分かる。

 恐らく青獅子と金鹿の記憶。

 誰を、手にかけるのか。何を思い出すのか。

 知るのは確かに怖いけれど。分からないまま生きていく事だけはもっと恐ろしい。

 

「ウィル……」

 

 ベレス先生はきっと、今の俺とは比較にならない程の記憶がある。それを彼女は、たった一人で背負い続けていた。

 小さな背中で、ずっと。

 

「まだ心は折れておらぬようじゃのう、安心したぞ?」

「この程度で折れてちゃ、合わせる顔がないんで……」

 

 ソティスの顔は、安堵の表情を浮かべていた。

 確かに、あの記憶の密度を一度に受ければ廃人になったって不思議ではない。

 

「……ウィル? 何で、目逸らすのよ」

「……過去の記憶で、貴方を殺した」

「は?」

「だからその……貴方を殺した記憶があるんだよ、俺は。

 どんな顔をすればいいのか分からなくて」

「――……ふーん」

 

 両頬を抓られる。普通に痛い。

 

「知らないわよ、そんなの。私じゃない私なんてどうでもいいわ」

「えっ」

「悩むのなら、せめて今の私を見て悩みなさいよ。傭兵なんだから、一つ違えば殺し殺されなんてのは当然でしょ。

 それぐらいの覚悟なんて普通にあるわ」

 

 シェズはごく当たり前のように、そう言い放った。

 

「……そっか」

「そうよ、別に他人にどう思われようが勝手だし気にならないけど、貴方は別。

 だからちゃんと言っておかないとね」

 

 許された、なんて訳ではない。

 俺が殺したシェズは本人にとって別人だ。だから、既に割り切っている。

 少しだけ気持ちが楽になる。

 

「ラルヴァ、この先には二つ目の記憶が?」

「うん、そうだ。行く記憶は合わせて三つ。残り二つだけど、大丈夫かい?」

「……まあ、それしかないからな。それに、まだ足りてないのがある」

 

 あの記憶だけで、ベレス先生がここまでの感情に至る理由は分からない。

 そして、俺が青獅子の学級を手にかけた時に彼らの言っていた事。

 多分その真相はこの先にある。

 

「……ディミトリ? どうかしたのか」

 

 よく見れば、僅かに表情が柔らかくなっている。

 何て言うか、少しだけ明るくなったと言うべきか。

 

「いや、ようやく気付けたと言うだけだ。随分と近くにいたのに、分からなかったのも滑稽だなと思ってな」

「……ここまで回りくどい人だとは思わなかったわ」

「見た目通りって事だろうさ」

 

 まあ、ディミトリの抱えているモノは余りにも重すぎる内容だ。それに整理がついたと言うのなら、必要以上に聞き出す理由は無い。

 

 

 

 

 また道を歩く。歩いて、ようやくたどり着いたのは二つ目の石碑。

 

「……? 何か書いてある」

「それは記憶を刻んだものだ。誰かが書き記したのではなく、刻まれた記憶が文字となって残っている。

 つまりは、何一つ飾られない真実の記録さ」

 

 どうしてか、書いてある事は読み取れる。

 内容を呑み込む前に自然と、言葉が口に出た。

 

「このだいちには、かみさまとそのかぞくがすんでいました。

 かれらは、おだやかにへいわにつつましいくらしをしていました」

 

 ……レア様達の眷属の事だろうか。

 

「あるひ、かれらはひとびとからかんげいをうけました。

 かれらはかみさまと、はなれてすごしていたにんげんたちで、おたがいにかかわろうとせずしずかにくらしていたのです」

 

 人々? 誰の事だ。

 

「かみさまはにんげんのかんげいをよろこんでうけました。うたげはつづき、ひととかみさまたちは、ともにてをとりいきていこうとやくそくしました」

 

 ……彼らは敵対していて、それを終わらせるために友好的になろうとした?

 何かが、何かがひっかかる。

 この先を読んではいけないと感じたが、既に口は次の言葉を紡いでいた。

 

「だまされて、どくをのんだので、かみさまはえいえんにねむりました」

 

 ――。

 

「……ソティス?」

「儂なら構わんぞ、ベレス。ウィル、終わるまで読んで良い。止めはせぬ」

 

 ――。

 

「かれらはかみさまをいけにえにくべました。ばらばらに、ばらばらに。こわれないようにばらばらに。

 からだのすみずみにいたるまで、ぶきとしてたいせつにつかいました。

 ひとびとはかみさまとともにいきたものたちを、ころしました。おんなこどもにいたるまで、めにはいったすべてを。

そしてたには、ちであかくそまりました。」

 

 ……。

 

「赤き谷のザナド……。赤き谷って、そういう……」

「……惨いな」

「成程、その虐殺で生まれたのが英雄の遺産か。……つまり俺達の先祖は、それに加担したか、口止めに利用されて……。いいように扱われていたって事かよ」

 

 ……ラルヴァは、この石碑に書かれている事は真実を記録した事だと言った。

 つまり、何者の手にも虚飾されていない。純粋な記憶。

 エーデルガルトは、この言葉に何を感じたのだろう。ディミトリは、彼らの嘆きに何をくみ取ったのだろう。

そしてクロードは、これらの出来事が何故隠されていたのかを納得した様子だった。

 

「……ソティス」

「真実じゃ。儂は、あの時毒を飲まされ、この闇に放り込まれた。覚えておるとも、魂まで凍える様なあの冷たさを。

 じゃが、ラルヴァ。お主は儂を殺した側の人物じゃろ? 何故、教える?」

 

 その言葉に、全員がラルヴァを見た。

 俺とクロードを襲撃した連中と、ラルヴァが同じ組織だと言うのならこれは裏切りに近い。

 だって、彼はまだ一度も。俺達に敵対の姿勢を見せていないのだから。

 

「僕も彼の記憶を追体験したからね。――彼は、僕にとって試作品だから」

「し、さくひん……?」

「おっと、悪い意味に捉えないで欲しい。元々僕は、ソティスとその眷属を討つべく、色々奔走していてね。

 その過程で考えたのは、彼に僕の一端――転生の力を備えさせる事だった。死んでも魂の循環を途切れさせず、武器の材として使用される人間の本質を維持し続ける。

 それで生まれたのが彼だ。そしてシェズは言うなればその観察者として選んだ器だった」

「ああ、やっぱり。私も作られてたってワケね」

「……軽蔑したかい?」

「いえ、まさか。それでも貴方を信じてるわよ」

 

 ……つまりラルヴァは、俺の記憶を体験して。

 感情論から、俺達に味方しようとしている……?

 

「……なあラルヴァ、俺が歩いた道はお前を変えてしまう程のモノだったのか」

「――ああ。女神とその眷属を討つ事よりも、僕はキミが自分の道に何を見出すのかが気になったんだ。

 それ以外は当たり前の、ありきたりな結末だったし。贄となったキミは、その後も根性でアイツを永遠に封印したんだからね」

 

 ……アイツとは誰なのか気になるけれど、今はいい。

 

「さて、長くなったけれどその石碑にもう一度触れればキミは二つ目の記憶を思い出す。

 覚悟は……問うまでも無かったかな」

「ああ、行くよ」

 

 決意を胸にして。石碑にそっと触れた。

 見えたのは。蒼い月とそれに照らされる青い獅子。

 そして、酷く懐かしい匂いだった。

 

 

 

 

 

 

 彼が闇に包まれる。また記憶を思い出しているのだろう。

 シェズは、小さく息を吐いた。さすがに色々と言われれば、混乱はしてくる。

 

「……おや、思っていたより戸惑っていないね」

「戸惑ってるわよ、けど別に。事実は事実でしょ。やっと受け入れられる余裕が出てきただけ」

 

 傭兵としての生き方は、あまり考えすぎない事。気にしない事。さすがに相方や仲間が命を賭ける様な生き方をしていれば止めこそするが、それ以外は気にせず気にならずが彼女と言う人間だった。

 その生き様に、ベレスは少しだけ微笑んで。

 

「……強いね、キミは」

「何か、貴方に言われるとむず痒いものがあるわね……」

「……まあ、不思議なものよな。儂とお主、互いに相容れぬ、会えば殺し合うと思っておったが、まさか協力関係になるとはの」

「それは僕もびっくりだよ。不思議なものだね、人間の縁は。遥か過去の因縁さえ、こうまで変えてしまうんだから」

 

 確かに、とベレスは頷いた。

 最初こそラルヴァを警戒はしていたが、実際のところそこまでの必要は無いと感じたのだ。

 もしかすると、この地から彼を生かして返してくれる鍵はこの人物にあるのかもしれないから。

 

「! この気配……来るぞ」

 

 武器を構える。

 霧から現れたのは一人の少女の成れの果て。残酷な決意の末路。

 黒き人ならざる巨体、されどその顔には見覚えがあった。

 

「あれは……私……?」

 

 

 

 

 

 

 

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