転生したら、女傭兵二人に迫られてる件について   作:門番A

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話かいてたら迷ったので、別のヤツ書いたら一気に筆が乗ったので投稿マン。
勢い任せに近いんで、誤字あったらすいません。


鼓動

 

 

 

 父が少年を拾ってきた。乾いた血があちこちにこびり付いていて、目には光が無い子どもだった。

 怯えたような目が酷く印象に残る。

 

「林の中にいてよ。どうにも見過ごすのも気分が悪いもんでな」

「どうするの?」

「そりゃ……どこかの村に預けでもするか、孤児院に引き渡すかだろ。俺達は教会じゃないからな」

 

 一晩、夜を明かし少年は不思議と傭兵団に馴染んだ。

 武器の整備、道具の補充など細やかな所に気の利く人物であり、瞬く間にその空気に溶け込んでいく。

 そして意外にも武の才能もあった。

 団員の一人が戯れ程度に槍を教えたところ、その動きを瞬時に吸収し自分の物としていった。それを見た者達が次々と先輩風を吹かして教えていく。

 そしてジェラルトもその一人だった。普段なら教え無さそうだが、酒に酔った彼はつい手が軽くなり自身の槍を教えた。

 父が教えた技は、私が三ヶ月かけてようやく覚えたモノ。

 それを少年は僅か数分で不完全ながら模倣した。教えた本人ですら驚き「後は経験さえ積めば、モノになる」と認めるので。

 

「――っ」

 

 胸に感じたのは激しい感情。負けたくない、追い越されたくない。

 後になって知ったが、それを嫉妬と言うらしい。

 

「勝負して」

「?」

 

 感情の動くがままに、私は彼に勝負を申し込んだ。後先何も考えない傭兵らしからぬ行動であったとは思う。

 父や周りが思わず目を丸くしてしまう程に珍しい出来事だった。

 

「……分かった」

 

 そうして始まった勝負。

 私と彼の技は、互角。一時間経っても決着はつかず。酒のつまみ程度に眺めていた傭兵達は思わず息を呑むのを忘れていたと語っていた。

 最終的には殺し合いになりかけたところを、二人とも父に気絶させられた。

 

 

 

 

 これは彼との記憶。

 私が決して忘れる事のない彼との始まりの思い出。

 

『……もう、良いのではないか』

「よくない」

 

 眼前に広がるのは彼女との世界。

 心の中で初めて少女と出会い、話す時はいつもここにいた。

 彼女は玉座に座るのではなく、私の前に立って呼びかけていた。

 

『お主は充分足掻いたであろう。それでも、あやつの運命は覆らぬ。如何なる運命を辿り、因果を追ったとしても……お主の見てきたままじゃ。

 奇跡の代償ならば、もう良いではないか……! 何故、お主が苦しまねばならぬ! 誰も、誰も覚えておらぬ! お主の苦しみも、覚悟も、記憶も、決意も、その果てに磨り潰した煩悶も! 悪魔だの何だの罵られなければならぬのじゃ!』

「私自身が望んだ事だからだよ、ソティス」

 

 一度目――彼は気が付けば消えていた。戦いの後、探しても見つかる事は無く。その消息が分かったのは、闇に蠢く者との戦いが終わった後だった。

 二度目――彼を目の前で連れていかれた。そのまま追跡し、本拠地まで探し当てて彼の下へ向かった。彼の末路を、倒した敵の頭領から聞いた。

 三度目――彼が連れていかれるのを阻止した。そうして闇に蠢く者との戦いで、私達は罠にかかった。彼は、その罠から私達を救うために消失した。

 四度目、五度目、六度目――救えない。

 悉く、私は彼を救えなかった。

 彼のいない世界は、陽が差さないも同然だった。それでも自身が選んだ道の責任を全うするために、出来る限りの事をやり切り、次の道の為に答えを探した。

 幸い、ソティスが消える事無く(・・・・・)最後までいてくれたのは大きかったと思う。

 独りは、さすがに堪えただろう。存在が大きかった父は、私を五年間守り続けてくれた後眠るように息を引き取ったから。

 

『馬鹿者……! それが答えになるか!』

「私にとっては答えなんだよ」

 

 繰り返し続ける運命。その重さすら忘れてしまうほど。

 あの士官学校での日々は、とても楽しかったのだ。今でも鮮明に思い出せる程に、あの毎日は彩りに溢れていて。

 彼がいて、父がいて、級長の三人がいて、生徒達がいて、教師達がいて。

 ――その笑顔は、皆眩しくて。

 

『そんな……そんな答えで納得するか、馬鹿者めが……!』

「ごめん」

『……良い。ベレス、儂から一つ提案がある』

「提案?」

 

 珍しい話ではない。彼女はこう見えて、視野が広い一面がある。

 きっと、貴重な話になる。

 

『――次の運命では、あやつと出会うな』

「――え」

 

 一瞬、鼓動が止まったような錯覚を覚える。

 それが意味するのはつまり。

 

『地虫……と昔の儂なら呼んでいた連中じゃが、お主が士官学校に行ってしまえば対抗出来まい。何をするにも後手になりかねん。

 あの者どもは必ずあやつと接触する。守るのが目的ならば、士官学校に向かう必要は無かろう』

「……」

 

 一理ある。今の私では、思いもよらない意見だった。

 けれど、きっと私も。そして彼女も、表情は苦しい。

 

『……あぁ、そうじゃろう。儂とて嫌じゃ。あの日々は、あの毎日はかつての感情を忘れさせてしまう程に満ちていた。怒りすら気にならぬ程の愛しさに溢れていた』

「……うん」

 

 彼女が何を言うかは分かる。

 あぁ、きっとこの選択はとてつもなく苦しいモノになる。私の心を、酷く傷つけるモノになる。

 

『それでも、選ぶのかのう。かつての日々に背を向けて、運命を選択するか?』

「……少し迷った。けれど、私は行くよ」

 

 だけど、あの日々を私がいない事で彼を救えるのならそれでいい。

 私は教師ではなく傭兵として生きる。

 剣が鞘に収まるように。ただあるべきところに落ち着くだけ。

 

『そうか……。ならば行くとするぞ、儂とてあやつがいないのは寂しいからな』

「行こう」

 

 

 

 

 そうして出会ったキミは、私の事を勿論覚えていなくて。

 けれど、優しい瞳は変わらず。その佇まいも、雰囲気も、何もかも私の知っている彼と変わらない。

 強いて言うなら、ある女の匂いが染み付いている事だけが気にかかるけど、そんなものは私で打ち消してしまえばいい。

 ――そうして、また始まった彼との日々。

 私の知らない彼ら、私の知らない彼女達。知らない笑顔、知らない生、知らない道。

 

 

 ねぇ。

 

 キミは、私が先生じゃない方が幸せだった?

 

 

 

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