転生したら、女傭兵二人に迫られてる件について 作:門番A
A,モンハンやりながら今後の展開考えてたら遅くなりました。バルファルク、玉を出せ。
「ウィル」
「ベレスさん、どうかしたんです?」
ある日、闇に蠢く者の追討作戦に参加した後の事だった。
天帝の剣を持っていないこの人の姿を見るのはやっぱり慣れないと思う。
「追討戦に参加したと聞いたけど、特に何もなかった?」
「ええ、まあ。……特に何もなかったですね、強いて言えば一緒に参加した人が頼もしくて俺はほとんど露払いみたいなモンでしたけど」
「何か言われなかった?」
「いや、何も……」
ベレス先生の目はいつになく真剣である。何かあったのだろうか。
多分シナリオの雰囲気的に中盤へ差し掛かった頃なのだろうけれど。
確かに大分展開違うもんなぁ。三学級合同で参加してるし。何かやみうごさん、普通に魔獣放ちまくってるし。
「ならいい。ちょっと気になっただけだったから。
時間があったら食事でもどうかな?」
「俺なんかで良ければ」
「キミがいいんだ」
この先生、やっぱりぶつけてくる感情重すぎない?
まだ出会ってから二週間経ってないと言うのに、距離が近い。この前何て、教えても無いのに天幕の寝床まで来てたのはびっくりした。何か大事なものを無くす寸前だった。
いや嬉しいよ? 嬉しいんだけどさ、思い当たるフシが無さすぎて複雑なのよ?
「さあ、食べよう」
「はい、頂きます」
ちなみに俺が注文しようとしたのは全て、ベレス先生が先に注文してました。
怖いって。何で、俺の好物把握してるんすか。
「それにしても、キミはやはり強いね」
「まあ、何でですかね。勝手に体が動くと言うか覚えてると言うか」
正直、それに関しては本当に謎な部分が多い。
シェズと共に学級対抗戦に乱入して三学級を全て撃破したのは、士官学生での語り草になりつつある。
正直あれは、強くニューゲームやってる気分だった。後シルヴァン、急所に棒が直撃したのは本当にすまなかった。わざとじゃなかったんだよアレは。
「そうか。なら、それはきっと鍛錬の成果だよ」
「そうなんですかね……?」
「そうだとも」
何か反則してる気分でしかなかったけど……。
自然とできるようになっていた事を褒められるのは中々にむず痒い。自分の体が知らないところで知らない力を持ちだしているなんて言う事が不気味でしか無いのに。
「……よく分からない」
正直、俺の知る風花雪月とはもう勝手が違いすぎる。
エガちゃんが戦争仕掛ける前に、闇に蠢く者達が動き出してるし。教団もそれの殲滅に全力を注いでるし。そんでこんで、何か展開も色々動き出してる。
何だろうねこれ。とても嫌な予感しかしない。
「この後、訓練でもする?」
「――生憎、それは私が先約してるのよね」
ここで颯爽と俺の隣を取ってきました同僚のシェズ。
相変わらず、腕がくっつきます。パーソナルスペースなんて無いです。意味ありげな笑みを浮かべるのやめてください。
「――」
「――」
はい、火花の演出頂きました。
……どうしてこうなったのか、何故こうなったのか分からないけどさすがにここで黙ったままと言うのも情けない話である。
言うのだ、とりあえずこの先どうなるか分からないけど。とりあえず仲良くしませんかと。
「……あの、とりあえず殴り合いません?」
「え?」
「は?」
一時間前の俺、マジで馬鹿。本当に馬鹿。救いようの無い程に馬鹿。
何で仲良くしましょうと言おうとして、殴り合おうが出てくるんだよ。
そしてさ――
「キミとの訓練は楽しみだね。フォローは任せて」
「貴方と組むのは初めてだけど、意外に行けそうじゃない。今日は勝たせてもらうわよウィル」
ねぇ、何で二人がタッグ組む事になったん?
ベレス先生は言うまでも無いけど、シェズは普通におかしい。何で目の前に剣振ってるのに真横から斬撃飛んできてるんだよおかしいだろアレ―フェリクスが再現しようと頑張ってたけどどう足掻いても無理だと思うの―。
いや、よく考えたら先生もおかしいわ。戦場で兵士めっちゃ薙ぎ払うし、地水火風の魔法が来るしで敵対関係にあった時はやばかった。ベレス先生来たら、何故か俺とシェズが駆り出されてた。
そして今回はそのシェズも敵である。ギャラリーも止めてくれや真面目に。俺、普通に死ぬやん。
「彼と二人の手合わせでしょ? 興味あるに決まってるじゃない」
「あぁ、俺も同じだ。こんな光景を見逃すなど、騎士の名折れだからな」
「個人的な興味としては凄く惹かれてね。矛と矛がぶつかりあったらどうなるかなんて、気になるに決まってるだろ?」
エガちゃんもディミトリもクロードもなに面白な顔してんの? 後の五年間もそのままでいてくれよ。
「ベレスー! シェズー! 頑張れー!」
「ウィルー! 負けるんじゃねぇぞ! 男の意地見せてやれ!」
「お前の勝ちに全て賭けたんだ、頼むぜ!」
楽しそうだねキミ達。
賭けたやつ覚えとけよ。後で夕食に辛子を山ほど入れてやるから。
「……」
ああ、クソ。こうなったら腹括るしかない。
やってやるよ!
さあ持ってくれよ俺の体ァ!
シェズはいけましたが、先生にはあと一歩届きませんでしたチクチョウ。
我ながら初見殺しもいいレベルの白兵戦ですら、見切られてました。あの人、強すぎない?
やはり強くなっていたと高ぶる心を抑えつける。
帝国のベルグリーズ伯と同盟のホルストから仕込まれ最早二人に並んだと呼んでも過言ではない白兵戦、王国の蒼獅子部隊の目標かつ模範も同然であった槍術。まだこの世界では見てはいないが、剣術も恐らく私の知っていた彼に並ぶ筈だ。
「やっぱり強いですね……動きに粗があったかなぁ」
「あれで粗なんてある筈ないじゃない……」
訓練の振り返りを食堂で行う。
――とは言っても、私がやっていたのはズルに近い。
彼の動きを私が忘れる筈もないのだから。
それでありながら、二人がかりで押されていたのはやはりさすがと言わざるを得ない。
「にしても強いですね……。ネメシスとかと戦っても勝てるんじゃないんですか?」
「ネメシスって言うと英雄戦争のよね? まさか、死人が蘇るワケないじゃない」
ネメシス――確かエーデルガルトから聞いた話だ。
生憎、あまり興味はない。
そもそも会った事も無い伝承の人物に、そこまで思わない。
「まあ、そりゃそうだけど……。あぁ、でも悔しいなさすがに」
「今日私達が勝てたのはたまたま運が良かっただけだよ」
「運も実力が伴って初めて拾えるモンですよ。負けは負けですし」
あぁ、そうだった。彼の口癖だ。
一度追い詰められた彼から吐き出された本音を思い出す。
『俺は、自分が嫌いですよ。終わりの運命を知っておきながら、それを許容した。消えていく命が目の前にある事を知りながら、それでも見なかった事にしようとしてる自分が心の奥底から一番憎いんです』
違う、そんな事は無い。それでもキミは私と共に行くと言ってくれた。
『――死ぬのが、怖かったからですよ』
違う違う違う。
キミが恐れているのはそれじゃない。
自分の死を恐れる者が、最期に笑って消えていく筈が無いのだ。
だから私は――
「ベレスさん?」
「……あぁ、ごめん。少し考え事をしていた」
「大丈夫ですか? もしかして打ち所が悪かったとか……」
少し顔を慌てさせる彼。
思わず頬を緩めてしまう。
大丈夫だ、今度こそ救う。今度こそ助ける。今度こそ終わらせる。
英雄の遺産なんてモノに、キミを奪わせたりはしない。