インフィニット・ストラトス・アライズ-Dominater of Battlefield- 作:天津毬
それとゴーレム戦、今回で終わりませんでした(´・∀・`)
日本帝国長崎県五島市浜町
男女群島・国連直轄領トキオ自治区
────同・セントラル区
区役所やIS学園が所在するセントラル区では、戦闘が激化していた。
特に西部では、隣接するアッパーウィンディ区、ウィンディ区での破壊活動を終えた無人ISが雪崩れ込み、辛うじて維持されていた防衛網を食い破って行く。
…5機の暴虐の塊が、進軍する。
焼けたアスファルトの輻射熱で揺らぐ大気の向こうに、陣形を組む戦車部隊が見えた。
無人ISはそれに向かって6割程度の機動で正面突破をかける。
────対するは、区役所防衛局無人戦闘車両群。
防衛局陸戦隊の主力戦車【M551A1軽戦車】から成る戦車部隊が展開していた。
旧コロニア軍時代において地上部隊の主力を努めていた陸戦兵器を、区役所は無人ドローン化する事で運用していた。
────と、聞こえは良いが、設計思想は20年以上前の代物。
…それは良い。例え砲口径が小さいものだろうが、高い破壊力を持つ兵器であることには変わりないのだから。
…問題は、その砲は同じ陸戦兵器に対抗する為に開発されたものであり────IS等の航空機に対して使われることなど、考慮されておらず、旋回性と命中精度が劣悪という点だ。
…つまり、役に立つ立たない以前に、『ここにいるべきではない存在』ということだった。
だが今自治区防衛局には、もはやこれだけしか戦力が残っていない────。
それらを束ねる装甲バン────【02式改無人機制御指揮車】の中で、部隊指揮官は冷や汗を流しながら現状を睨んでいた。
「最初から、勝てるとは思って無かったが…!」
戦車が砲塔の照準をあわせ、主砲を一斉射。
無数の砲撃を無人ISの軌道上に叩き込む。
────それを、無人ISは跳躍してかわすと同時に、腕部機構のパルスキャノンを戦車隊目掛けて撃ち放つ…!
ここまでの
戦車後方に展開する
────しかし展開されたエネルギーシールドがそれら全てを無効化した。
…どう足掻いても、敵わない存在であると、皆が理解した。
直後────響く、レーザー照射警報。
今まで対峙していた機体ではない。
展開していた道路の果て、そこに、今対峙していた無人ISより一回り巨大な体躯と、158ミリはあろうかというレーザー砲をこちらに向けていて。
刹那────指揮官が見たのは、自分達の直上を駆け抜ける閃光だった。
、
、
、
《────マストタワー上層階の崩壊を、確認。》
抑揚のない電子音声がこだまする。
眼前には、上層階の一角に大出力レーザーが命中し、一部が崩壊した
《────引き続き、オリムラシリーズの排除を継続する。》
抑揚のない電子音声────それは少女のものだった。
ノイズにかき消されそうなその声は、どこかブリュンヒルデを思わせる。
────直後。
『アーアー、テステス。聴こえるゥ?仕事は順調かなァ?エムりん♪』
ノイズ混じりの男の声が、無線からこだました。
《────否定。
『アラララ結構手こずってるねぇー。…人格モード、オンにしたら?その方がずっと楽しいだろう。』
《────否定。
『イヤイヤイヤ、あるでしょお?エムりん。例えばサ────可愛い弟の仇に復讐したりとか。』
────男の言葉と共に、ある機体が映し出される。
…映し出されたのは、マリンゲート区より接近しつつある────日本帝国製新鋭主力アライズ【
…ピクリ、と。ある筈のない脈が強く打った様な錯覚が走る。
(────システムエラー、不明なバグコードが検出されました────)
《────不、明。
違和感を振り払うように、
『────マ、そのうち分かるよ。
狂った様に男は笑うと、無線を切る。
────関連性は無い。
────弟の仇ではない。
────きっと、ちがう。
システムエラーを起こさない為に、
そうして、再び指揮官としての自分を稼働させる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
《RQ-001B【ゴーレム(白兵戦型)】》
ーーアーカイブーー
所属先:
帰属元:国際連合本部
OS名:ヴォーパルバニー
製造元:▇▇▇█▇▇▇█▇▇██▇▇
ーーー兵装ーーー
腕部兵装右:V-G6パルスマシンガン
KRM-LB-1《六花》レーザーブレード
腕部兵装左:V-G6パルスマシンガン
KRM-LB-1《六花》レーザーブレード
肩部兵装右:
肩部兵装左:
拡張領域内:▇▇▇█▇▇▇█▇▇██▇▇
▇▇▇█▇▇▇█▇▇██▇▇
▇▇▇█▇▇▇█▇▇██▇▇
▇▇▇█▇▇▇█▇▇██▇▇
《RQ-001C【クレイドール】》
ーーアーカイブーー
所属先:
帰属元:国際連合本部
OS名:ヴォーパルバニー
製造元:▇▇▇█▇▇▇█▇▇██▇▇
腕部兵装右:V-G6パルスマシンガン
X-CG-2三連装チェインガン
腕部兵装左:V-G6パルスマシンガン
X-CG-2三連装チェインガン
肩部兵装右:
肩部兵装左:
拡張領域内:▇▇▇█▇▇▇█▇▇██▇▇
▇▇▇█▇▇▇█▇▇██▇▇
▇▇▇█▇▇▇█▇▇██▇▇
▇▇▇█▇▇▇█▇▇██▇▇
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────浮かぶ部隊内情報。
それを一瞥した
それに、やはり、自分の中でえもしれぬ異物が息を吹き返す。
《全機、データリンク。各機行動を再開────殲滅せよ。》
無人IS────ゴーレムに指示を残し、深緑のアライズを睨み付け、
《────何者であれ、障害など、あってはならない。排除する。》
◆◆◆◇◆◆◆◇◆◆◆
同・IS学園
────第2アリーナ
そこでは、
「オルコット!突入支援を────!」
一夏の怒号がした────直後。
ゴーレムに叩きつけられる
風を切るジェット音。
「うおぉぉぉぉ────────ッ!!」
それと同時に────白式が、
大気中に飛び散るタキオン粒子。
それはゴーレムのエネルギーシールドを叩き割り、ゴーレムの腕を斬り伏せる。
ゴーレムは切断された部位から、血液のように夥しい潤滑油を撒き散らす。
一夏は、白式のマニピュレーターで甲龍を抱え────
「ッ、ふ────!」
────瞬時加速。
急加速により放出されたプラズマスラスターの稲妻がゴーレム目掛けて放たれる。
それは、センサー機器を一時的に阻害する
連鎖する爆発。潤滑油の流れを遡上する業火は一気に
フレームが弾け飛び、破片が出鱈目に撒き散らされる。
白式の背後を叩き付ける嵐の様な破片は確実に機体からシールドエネルギーを削り取っていく。
「────オルコット!」
一夏の声。
それと同時に、流星群の如く。
空を埋め尽くす
…なれど健在。
エネルギーシールドを復旧した敵無人ISは、ブルーティアーズの全砲門斉射を凌いでみせる。
だが右腕を潰されて出力が落ちたのか────その場から動く事は、先程以上に困難となっている様子だった。
、
、
、
「先程同様────このまま抑え込みます!」
ビットを展開────単純なハードウェアの対応処理能力を超過する複雑怪奇な軌道から、セシリアは絶え間なくレーザーを叩き込む。
それで、一夏は鈴を抱えたまま可能な限りゴーレムから距離を取る。
『鈴!無事か!?』
充分な距離を取った後、一夏は鈴に問いかける。
『な…何よ…?!あんなの、アタシ一人でもなんとか出来たわよ…!!』
しかし帰ってきた言葉はこれである。
…息巻くだけの元気があるのなら、まぁ、無事だろう。
『鈴…お前なぁ…!』
『オルコットの案や、アンタの手助けなんか無くたって、アタシは────』
しかしそれを遮る様に。
「提案を否定されるのは結構ですが、なら代案を出してください!なければ従いなさい!」
セシリアが通信に割り込み、叫ぶ。
「具体的な何かをしなければ全員ここで死にます!わたくしはそんなこと御免です!」
それに、思わず鈴は黙りこくる。
「────織斑さん!零落白夜の発動可能時間はあとどれくらいですか!?」
セシリアが一夏に問いかける。
────零落白夜なら敵エネルギーシールドを切断できることが分かった今、何を持って倒すかはもはや自明の理だった。
しかし、零落白夜はタキオン兵器という特性上、燃費が凄まじいことや汚染を考慮して発動時間が制限されている。
…これを踏まえれば、発動可能時間次第では作戦にすらならない可能性があった。
『ちょっと待ってくれ、だいたい──── 20秒…20秒発動するだけのエネルギーしか残っていない!』
一夏が無線越しに応える。
そこで────セシリアは即断する。
「凰さん、エネルギーラインを白式に接続。SEを全て回して下さい!」
『なっ────』
言外に突きつけられた戦力外通告。
…見れば確かに、機体の装甲負荷は胸部コアパーツや頭部パーツを中心に危険域に達しており、既に機体の基礎骨格にも変形や歪みが見られた。
…この状態では、確かに戦力になるとはいえない。
しかし素直な性格でない鈴は、当然反抗を露わにする。
────だが。
「今ここで諸共殺されるか、面子を捨てて生き残る可能性に賭けるか────どちらをお望みですか?」
『ッ────!』
「…苦情は後ほどいくらでもお伺いします。ですから────今は、堪えてください。」
────ぴしゃりと、セシリアはそう告げるなり、レーザーの掃射を続けた…!
◆◆◆◇◆◆◆◇◆◆◆
セントラル区
区役所前の、開けた空間。
3車線一方通行の
────そこは、陥落寸前という状況だった。
展開していた無人戦闘車両やレーダー車両は大破し、残骸となって転がっている。
防衛対象であるマストタワーも、上層階展望台ブロックが大出力レーザーにより崩落。
僅か数台にまで数を減らした地対空車両と対空ミサイルを搭載した軽戦車、そしてようやく機能を回復したシーグランド区の空港設備より飛び立った、【
だが、それでも性能差を埋めるだけの物量には至らない。
ゴーレムのパルスキャノンにより
地上に展開する対空車両は次々とレーザーで狙い撃たれ、爆発炎上する。
────眼前に映る、瀕死の光景を見て箒は歯軋りする。
応援に間に合わなかったことへの苛立ちと不甲斐なさが混ぜこぜになった様な表情。
…対するナガトは「まぁ、こんなモンだろう」と、努めて冷静な表情だった。
自作自演とはいえ、白騎士事件時にISに挑んだ通常兵器が一方的に蹂躙された話は有名だ。
────そもそも。通常兵器でISを叩き落とせるのなら、アライズなど生まれていない。
味方が蹂躙されている様は酷く胸糞悪いが、それは同時にまだ
「────さて、もうひと仕事だ。やれるな?箒。」
『ええ────やれます…!やってやります!!』
ナガトはいつもの口調で言うが、箒は半ば怒りに満ちた声で応答する。
興奮してんなァ────ナガトは、箒の声を聞いてそう思う。
ナガトは単純に眼前の惨状を、職業軍人という視点から分析したが、箒はそんな価値観も視点も持ち合わせていない。
惨状に対する嫌悪感だけで無条件に感情を剥き出しにする。
人間としては正常だが、軍人としては未熟。
────無理もない、彼女は高校生…子供なのだから。
(青臭いのは嫌いじゃないが────戦場でそれじゃあ早死にしちまう。)
こりゃまだまだフォロー要るな────と思いながら、戦況マップを今一度視認する。
既に防衛ラインは食い破られており、後は無い。
その背後に、敵機が1機。
おそらくはコイツが指揮官機────そして同時に各アライズの所在地も更新される。
前衛4機の左翼に日方風と雷火。
後衛1機の背後にヴァイムランナー、そして右翼に海月。
…突入のタイミングが上手くいけば前衛と後衛を分断し、各個撃破が可能となる。
────ならば話は早い。
「ライカン01から展開中の全
ナガトは無線を開く。
「────前衛はこちらが潰す。後衛1機は残りで分け合ってくれ…!」
そう言うなり────ナガトは眼前のゴーレム目掛けてガトリングライフルを穿つ。
────狙って、ではない。
防衛部隊と引き離すことを目的としての牽制攻撃。
放たれた40mm対装甲貫徹徹甲弾の群れがアスファルトを叩き割り、塵柱がゴーレムの進路を阻む壁の如く立ち込める…!
『────こちらライカン02。了解。』
『部外者だけど、お姉さんも了解────!』
『ライカン03了解────潰します!!』
各個の応答────続くように、箒が吠えて。
雷火の肩部に増設された空力制御用の主翼が開く。
主翼には
そこにあるのは、左右4基のNR-Ⅷ式レーザーターレット。
鏃にも似た形状のソレがゴーレムに向けられて。
────
大気を瞬時にプラズマ化させたソレは、高熱を伴ってアスファルトを溶解させ、衝撃波と共にゴーレムの2機に叩きつけられる。
それで1機が落ちる。
────敵機残り、4機。
だがもう1機は、エネルギーシールドをレーザー着弾面に集中展開────攻撃を相殺して見せた…!
────点と面、点と点。
レーザー兵器とは、爆発火力や装甲侵徹力による装甲破壊を目的とした面制圧実弾兵器とは異なり、ただ一点を貫く事以外を削ぎ落とした、
その性質上、均一に面展開されたシールドに対しては凄まじい貫通力を発揮する。
…だが、それはシールドが面展開されていればの話。
先鋭化し過ぎたモノは貫くには長けているが、同時に折れ易いもの。
それはレーザー兵器とて例外では無い。
────即ち、
『小賢しい────!』
箒が舌打ちし、忌々しく呟いた。
それは倒せなかったから、では無い。
────ナガトの手を煩わせてしまうことに対して、だった。
「多少は頭が回るらしい────!」
しかしそれを他所に、ナガトは笑う。
そうこなくては────張り合いが無いというもの…!
獰猛な笑みと共に、ナガトはスラスターを点火────瞬時加速で距離を詰めて、
"吹っ飛べ…!"
────
同時に炸裂する薬室内の火薬。
薬室内の圧力が、右腕に搭載された81式Ⅲ型
時速2000kmを超える加速力で、40トンもの塊が突っ込んだ衝撃に上乗せされた────右腕の81式Ⅲ型
軋む金属音を立てて、打ち貫かれたゴーレムは機体フレームが半壊する────だが、未だ稼働している。
別段驚く事はない。
重装甲のアライズやそれに該当する兵器であれば、パイルバンカーの一撃で沈まないものはごまんと居る。
そしてナガトが相対する敵は機械。
機械は人間と違い、多少機体を潰し、揺らせた程度で脳震盪を起こすことも気絶する事も無い。
────つまり眼前敵は、生半可な破壊では停止させるに至らないのだ。
それに、一撃で沈まないというのなら、やるべき事は決まっている。
"一度で沈まぬなら────何度でも、叩き込めば良いだけのこと…!"
続け様に左腕のパイルバンカーを叩き込み、今度こそ文字通り吹き飛ばす。
しかしそれで終わらない。
衝撃で投げ出され、地滑りの音と共にゴーレムは後方へ飛び────そこに、120mm戦車砲が叩き込まれた…!
────それで、ゴーレムは爆発し、ついに原型を留めぬ残骸となった。
…この間、僅か3秒。
────敵機残り、3機。
さぁ、次だ。
…ニ゛ィ、と。ナガトはセンサー越しの残敵2機に狙いを定める。
ナガトは、その場から飛び────右腕のパイルバンカーで、新たにゴーレムの胸部コアフレームを貫いていた。
タングステンの
慣性に従い、そのままナガトと日方風は疾走する。
その眼前には────4機目のゴーレムが。
ゴーレムが日方風にパルスキャノンを向ける────しかし、射撃はされなかった。
照準は日方風に。
だが────日方風が、パイルバンカーで貫いたまま前方に掲げたゴーレムが射線を阻害する。
それにナガトは再び口角を吊り上げる。
"なるほど、馬鹿正直で助かった…!"
盾として使い潰すつもりだったゴーレムを、そのままナガトは掲げたまま、瞬時加速。
時速2000キロ。
40トンと推定35トン前後の鉄塊が4機目のゴーレムに突貫し────爆音と共に、轢き潰す…!!
それで、囮として使われたゴーレムは機能を停止する。
轢かれたゴーレムは駆動系が大破し、立ち上がることもままならず、一瞬空中に投げ出された後────地面に叩きつけられる。
…砕け散るアスファルト。
…破断する四肢。
…断線する伝達回路。
せめて、あと一撃見舞おうと。
唯一無事だった肩部レーザーキャノンを起動して────ノイズ混じりの視界に、赤の機影が映る。
『────はァッ!』
────落雷かと見間違う俊速と轟音。
一瞬後、箒の雷火が放った急降下斬撃により、ゴーレムは両断された…!
────敵機残り、1機。
『はぁっ…、はぁっ…!』
「ナイスタイミングだ。箒。」
ゴーレムからパイルバンカーを引き抜きながら、ナガトが箒を労う様に声をかける。
「さて、ラスト1機の処理は終わっていないらしい。そっちの応援に────」
言いかけて、言葉を遮るように警告音が鳴り、戦域マップが投影される。
それに、ナガトは言葉が詰まる。
『────ナガト?』
荒い息を整えながら、箒は不審に思い声を掛ける。
そして────絶句した。
レーダーに新たな敵影を意味する
それは、日方風と雷火に覆い被さらんばかりに展開していて────
【警告:高濃度タキオン粒子反応】
────空が、ありえない輝きを発していた。
緋色の、夕暮れ時を連想する光。
ソレが除々に収束すると、突如として視界が真っ白に
【警告:レーダーロック】
────続け様に響く、ロックオンアラート。
少し遅れて響く射撃音────あの、忌まわしい音と「クソが」という自らの声が聴覚野に突き刺さった。
現状を把握するより先にサイドブースターを全開。
箒の雷火を抱えて────天より堕つる光を回避する…!
────1万℃という恐ろしいほどの熱量を放つ光の束が、頭上から叩きつけられた。
その光条は、先ほどまでナガトのいた街区を飲み込み、瞬時に蒸発させた。
それだけでは無い。
…大気のプラズマ化とそれに伴う水蒸気爆発が巻き起こり、原爆かと見間違う衝撃波と爆風が自治区に黙示録的破壊を撒き散らす。
…爆風は乱気流となって、地上に展開していた味方無人戦闘車両やビルを紙吹雪の如く吹き飛ばす。
…街区は、水上都市を構成するメガフロート諸共ビル街を完全に崩壊する。
…あたり一面は熱風をともなった急激な上昇気流が発生し、離れた位置にいた
…辛うじて回避できたものの、高エネルギーは粒子装甲ごしでも機体の複合装甲を焼き、日方風の装甲は高熱により表面が焼けただれていた。
『な…、ナガ、ト…。これは…?!』
箒の唖然とする言葉にならない言葉が無線から漏れる。
「────
ナガトは苦虫を噛み砕いた様な顔でそう告げる。
────
タキオン粒子を圧縮し、レールガンの様に電磁誘導で加速させて発射する兵器。
極めて強力な破壊力を持ち、理論上はアライズの
…そう、言われている代物だった。
だからこそ、箒は理解出来なかった。
『なぜ、そんなものを────』
────こんな、人口密集地で。と言いかけて、それは眼前の光景を前に、言葉に出来なかった。
「さあな。まぁ、やっこさんには、そんな事関係ないんだろう────なあ、そうだろう?」
ナガトは眼前を睨み、そう問いかける。
日光にさらされ露わになった敵機の姿は、懐かしく、そしておぞましい形をした機体だった。
本体は旧式のコンペディションIS型だが、背部に突き出た巨大な構造物が目を引く。
まるで背中に巨大なビート板を背負っているようにアンバランスだ。
そこから左右にパイプが延び、右腕の大剣の如き形状のタキオンキャノンに接続されている。
左腕には、5基のガトリングを束ねた5連装ガトリングターレット。
機体の各部には明らかに増設それたと思しきブースターが取り付けられ、背面にも大型ブースターが見て取れた。
────それは良い。
一番目を引いたのは、本体の外見だった。
両腕は異形となり、機体各部は追加ブースターで埋め尽くされている。
機体のカラーリングは黒一色で塗りつぶされている。
…しかし、その騎士甲冑を連想させる機影は、すぐにその名を思い起こしてしまう。
その機体は────
『白騎士────!?』
────かつて、世界を作り替えた機体だった。
、
、
、
────ああ、やはり、間違いない。
(────システムエラー、不明なバグコードが検出されました────)
眼前の
(推奨。速やかな自我データの
────あの戦い方、あの時のヘズナルと変わらない。
イチカを殺したヘズナルと────!
(任務放棄────ORM-1000の戦闘データをダウンロード)
ようやく見つけた仇敵に、
長年探し続けていた────我が弟の仇を前にして、衝動など、抑えられる筈がなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
《FIS-1Q【
ーー装甲耐久ーー
粒子装甲:100%
複合装甲:100%
機体骨格:異常なし
ーーアーカイブーー
所属先:
帰属元:国際連合本部
OS名:G.D.モデル1064(=ORM-810)
製造元:▇▇▇█▇▇▇█▇▇██▇▇
ーーー兵装ーーー
腕部兵装右:Type-01タキオンキャノン
腕部兵装左:
格納兵装右:V-G6パルスマシンガン
格納兵装左:V-G6パルスマシンガン
肩部兵装右:
肩部兵装左:
背部兵装右:ATI-VLM-M5スパイダー垂直発射ミサイル
背部兵装左:タキオン粒子制波ユニット
拡張領域内:▇▇▇█▇▇▇█▇▇██▇▇
▇▇▇█▇▇▇█▇▇██▇▇
▇▇▇█▇▇▇█▇▇██▇▇
▇▇▇█▇▇▇█▇▇██▇▇
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(────機体全システム、チェック終了)
《ようやく捉えたぞ────イチカの仇。》
あるはずのない表情筋が、おぞましく歪む。
当初の目的────オリムラシリーズの排除など、彼女にはもはや関係無かった。
今
(────ターゲット確認、排除開始。)
《────死んで貰おう…!》
そして────およそ
、
、
、
《────死んで貰おう…!》
通信に割り込んできた声は、ノイズ混じりの合成音声だった。
────いや。どこか、聴き覚えが無くはない女の声。
だが今はソレどころではない。
声を放った黒騎士は、不自然に機体を振るわせて右手のタキオンキャノンを構える。
同時にハウリングを何重にもしたような耳障りな電子音が街区に響き渡った。
砲口に粒子の収束が始まり、臨界に達すると強力な閃光が放たれる────ハズだった。
タキオン粒子は、タキオンキャノンの放熱版と思しき突起物に収束し────
「っ────────!!」
────その真意に気付いたナガトが斬艦刀を抜くのと、黒騎士が斬りかかったのは、同時だった。
豪ッ、と。
鉄塊と鉄塊のぶつかり合う轟音が、大気を震わせる。
衝撃波はそのまま爆風となり、周辺建築物のガラスを吹き飛ばす。
『ナガト────!』
思わず、眼前の光景に我に帰った箒が加勢を試みる。
だが────
「────来るんじゃねぇ!!」
────ナガトの怒声が、それを制止する。
「お前はライカン02とお喋り娘の手伝いに行け。コイツはなんとかする…!」
『しかし────』
────死んだらどうするつもりだ、と箒は言おうとして。
「命令は発した!行けッ!!」
だが遮るように、有無を言わさない鬼気迫る声でナガトは怒鳴る。
『────っ…!了…解!』
そう言って、箒はその場を離れる。
黒騎士が更に剣圧を強め、それをナガトは受け流す。
急な力点の変動。
それにより黒騎士はバランスを崩し、隙を露わにする。
見逃す事なく、ナガトは────右の拳を、胴体に叩き込む…!
そのまま、右腕のパイルバンカーを点火して────だがそれは、
マニュピレーターの殴打と共に、黒騎士は背後へ飛び、パイルバンカーの直撃を躱したのだ。
だが
《────殺す…殺す…殺す…!》
再び合成されたノイズ混じりの声。
ぶつぶつと呪詛を紡ぐ不快な電子音を発しながら、黒騎士がナガトに突進する。
────それは、うなり声か雄叫びか。
「ちい────っ!」
ナガトは
なれど、放たれた40mm侵徹徹甲弾は。
その弾速を上回る速力をもってほとんど回避される。
(…なんなんだ。コイツ…)
…先程相手をしていたゴーレムよりは、やや人間味があるように感じられた。
しかし、その機動は人間が取る螺旋というよりは、まるで稲妻だ。
弾道を完全に見切ったうえで、大気中を絶縁破壊しながらジグザグに進む稲光のように、弾道を縫うように肉薄する。
ハイパーセンサーですらターゲットを補足しきれずに激しく照準がブレた。
…まるで。
…まるで、"人間を限りなく完璧に模倣した機械"が動かしているような────その考えが脳裏に浮かぶと同時に、視界を黒騎士が埋め尽くす。
瞬時加速によって距離を詰められたと、そう理解するのと────大質量の金属塊がぶつかる音が頭に響くのは、同時だった。
「がっ────」
────思わず溢れた苦悶の声。
黒騎士はラグビーのタックルよろしくナガトを日方風ごと押し倒し、馬乗りになると、右腕と一体化したタキオンキャノンを棍棒のように叩きつけてくる。
衝撃で砲口がつぶれようが着弾観測用精密部品が壊れようが関係なしに、キャノン放熱版にタキオン粒子を集中展開────急造のブレードで何度も叩き続ける。
その行動は、おおよそ合理的判断をするために創られた
────それは、明白な
無機的なはずの機械が、もっとも単純かつ非合理的な行動をもって、自らの感情を発散させる。
それも、
────なるほど、
ようやく、斬艦刀でその殴打を防ぎながらナガトはこの機械の行動原理を悟る。
人間を限りなく完璧に模倣した機械であれば、元となった人間がいる筈だ。
…それも、アライズに恨みを抱く人間が。
────ならば、元となった人間の思想信条が反映されても不思議ではない。
…だがそれでも疑問は残る。
黒騎士が降下して来た際、近くには箒もいた。
しかし、箒を追う素振りも見せなかった。
それどころか残り1機のゴーレムと対峙している
アライズ乗りが報復対象であるならば、あの時味方が近くにいるゲラルトや楯無を先に始末するのが筋としては通っている。
────なのに、味方を全滅させたコチラにわざわざ殴り込んで来た。
…あまりに不可解だ。何故、勝率が低い方に攻め行ったのか。
…というか何故ナガトを集中的に殴っているのか。
確かに、恨みは山の様に買ったが、機械にまで恨まれる筋合いは無い。
《殺す…殺す…殺す…!殺してやるぞ!イチカの仇!!》
────再び奔る怨嗟の慟哭。
…ああ、なるほどな。
それで、ナガトは再び理解した。
怨恨の対象は、
そしてそれは正解であり────不正確だった。
確かに黒騎士は
だがしかし、黒騎士が報復の標的に定めているのはただ一人────八雲ナガト=アウグストだったのだ。
「は────」
乾いた笑みが溢れた。
ナガトは敵の真意と、正体を把握する。
なるほど、お前は────
「────
────思わず頭に血が昇る。
ナガトは背面のプラズマスラスターを起動させる。
マウントポジションをひっくり返すために大推力で押し返しながら、日方風の頭部を黒騎士の頭部に打ちつける…!
「今更何しに来たんだ────えぇ?!」
怒気と殺意を孕んだ声でナガトは叫ぶ。
それとほぼ同時に、黒騎士もバックブースターを全開にする。
────ブーストをブーストで押し返す。
合理性のカケラも無い対決が幕を開けた。
《うる、さい…!私の家族を殺して…!お前たちだけ、のうのうと…!!》
怨嗟と共に黒騎士は非常識的な速度で対応した。
人間には真似できないほど早い判断に背筋にうすら寒いものが走る。
────ああ、懐かしい。
刹那の時間で二つのスラスターが限界領域で点火し、お互いの機体を強烈な加速で押し出す。
加速初期とはいえ、アライズを
「────────!」
恐ろしいほどのエネルギー同士をもってお互いの機体がぶつかり、150Gに匹敵する加速度が全身をひき肉にせんと襲い掛かる。
殺人的な超音速加速領域で衝突し、2機はビリヤード球のようにデタラメに弾かれた。
────ナガトはそのまま、時速1000kmは下らない速度で低層ビル数棟を薙ぎ倒す…!
「────────…っ!」
肺が呼吸機能を一時的に喪失し、酸素の供給が停止する。
鈍い音が頭のなかを駆け回る。
バイタルアラートが遠くで鳴っている。
立て続けに起こる強烈な衝撃に、ナガトは気を失いかけており姿勢を制御できない。
それでも、日方風のサードアイ・カメラから脳へ直接届けられる視覚だけははっきりとしていて。
────視界の端には砲身の歪んだタキオンキャノンをこちらに向けている敵機が見えた。
肉体がない機械は脳震盪を起こさない。
あの激しい衝突のなかでも、適切に機体を制御し、敵に向けて照準をあわせることができる。
「くそ、が────」
朦朧とする意識のなかで、
黒騎士のタキオンキャノンに、圧縮されるタキオン粒子が輝く。
しかし、回避したくとも身体が動かない。
(────困った、死ぬわコレ。)
走馬灯が流れて来そうな境地にて、ナガトは悟る。
だが、何を思ったのか────黒騎士は圧縮されていたタキオン粒子を、キャノン放熱版に集結させ、タキオンブレードを形成したのだ。
「は────」
あくまで、剣で俺を殺すつもりなのかと。ナガトは獰猛に笑う。
黒騎士は迷いなく日方風目掛けて突撃して来る。
その時にはもう────ナガトも体勢を立て直していた。
だが、その程度でどうこう出来る話ではない。
依然としてナガトはジリ貧だ。
────現状の機体性能では追い付けない。
────もっと強いのが要る。
────汚染を撒き散らさない範疇で。
…なら────と、決断したナガトは機体のOSに思考伝達でパスコードを打ち込んだ。
それと同時に、黒騎士のタキオンブレードが振るわれて────!
《────【
〜あとがき〜
◉ナガトと箒のナゼナニ劇場⑩
▪︎ナガト
「なんか前回は高木とお喋り娘に乗っ取られたらしいな。」
▫︎箒
「もしかしたらこれを機に私たちクビになる可能性もあるそうなので、頑張りましょう。」
▪︎ナガト
「うん。で、今回は前回リクエスト頂いた『この世界の自衛隊について』を解説していこうか。」
▫︎箒
「はい!…とは言ったものの、こちらの日本帝国自衛隊と視聴者様世界の日本国自衛隊はどう違うんですか?」
▪︎ナガト
「言う程違いはない。強いて言えば、実戦経験があること、くらいかな。」
▫︎箒
「歴史の教科書で習いましたが、帝国自衛隊は1960年代の南米大戦と1986年からの第4次非核大戦、そして2012年の再構築戦争で実戦を経験してるんでしたっけ?」
▪︎ナガト
「その通り。…他には、外部派遣隊という部署の存在が大きいな。」
▫︎箒
「外部派遣隊…初めて聞く単語ですね。」
▪︎ナガト
「端的に言えば、海外派遣専門義勇兵だな。紛争地における平和維持活動をするにも、平和憲法9条が足枷となるから、暫定的に義勇兵になってもらいましょうってこった。
もちろん、国が積極的に支援してるから実質、国営傭兵みたいなモンだが。」
▫︎箒
「この世界でも憲法9条あるんですね…」
▪︎ナガト
「ま、第2次世界大戦で敗戦国となった以上は切っても切れないだろうよ。」
▫︎箒
「ちなみに他には?」
▪︎ナガト
「んー……、既に死んでる様な話なんだが。」
▫︎箒
「はい。」
▪︎ナガト
「戦時下においては、自衛隊は帝国軍に改組される。つまり、戦時下という特殊環境においてのみ、自衛隊は明確な国防軍事組織として機能する。という法規定が、あるにはある。」
▫︎箒
「ふむふむ…でもなんでそんな死に設定みたいな風に言うんです?」
▪︎ナガト
「だってこの10年間戦時下になってねぇもん日本。」
▫︎箒
「あ……なるほど。」
▪︎ナガト
「まぁ、それくらいが良いさ。俺らは必要とされない方が良い。ヒトはそれを、平和って呼ぶからな。」
▫︎箒
「……。」
▪︎ナガト
「さて、まとめちまおう。」
▫︎箒
「あ、ハイ!
帝国自衛隊と現実世界の自衛隊の違いは、
①基本的には変わらない。
②実戦経験が豊富。
③外部派遣隊という国営傭兵部署がある。
④戦時下には明確な軍隊として機能する。
…こんなところでしょうか?」
▪︎ナガト
「うむ、では〆るとするか!」
▫︎箒
「次回でゴーレム戦…終われますかね…?」
▪︎ナガト
「どうだろうなぁ…。とりあえずは、次回もお楽しみに!」
次回もよろしくお願いします。