インフィニット・ストラトス・アライズ-Dominater of Battlefield-   作:天津毬

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そろそろ整合性とか考えながらも原作から逸脱し始めてしまいました…

それでもよろしければ…。





#02 鍛錬

日本帝国長崎県五島市浜町

男女群島・国連直轄領トキオ自治区セントラル区

────IS学園・食堂

 

スペイン様式のインテリアデザインが施された食堂は、多くの生徒や職員で賑わっていた。

…その一角に箒と一夏は対面で座っており、箒は手作りらしい弁当を。一夏はトルコライス定食を食していた。

 

「スマン箒ッ!俺にISの操縦を教えてくれ!!」

 

このとーり!と一夏は手を合わせ、眼前にて弁当を食す箒に頼み込む。

それは箒はジトりと見つめながら、問いかける。

 

「…一夏。」

 

「…ハイ。」

 

「今朝再度渡された参考書を読んで、コンペートの機能について、どこまで頭に入った?」

 

「え、えーと…」

 

────あの一件の後、再度渡された参考書を一夏は必死に見ていた。

だが、本来1ヶ月程かけて見るようなモノ。

休み時間を含めても10分〜20分しか無い中で読んだ中で頭に入る量など知れている。

 

「PICってやつで飛行出来て、絶対防御ってバリアで守られてて…思考操作が主流だけど言語操作も出来て…あとは…スラスターを急噴射することで加速する瞬時加速って技量が必要になるとか…くらい、かなぁ…。」

 

「…ふむ。」

 

たどたどしく、一夏は応える。

箒はそれに短時間で最低限のことは頭に入れたのだなと理解する。

 

「アリーナで運用する分にはその程度の知識で良かろう。…しかし何故私なんだ。それだけあれば山田先生とかに頼めば良かろう。」

 

「いや、うん…その……、全部分からんとか言ってあんな顔させちまったから…」

 

…などと口にしながら申し訳無さそうな顔をして視線を下げる。

 

「なるほど、合わせる顔が無いと。」

 

「…ハイ。」

 

「────はぁ…」

 

────本当ならば了承したいのが、箒の本音だった。

…しかし、そう簡単には行かない。

一夏はこの様子だとマトモにコンペート運用が出来るまでに時間がかかる。

クラス代表決定戦まで、あと1週間。

────とてもじゃないが、間に合わせられる自信が箒には無かった。

…そしてそれは一夏も同じだ。

自業自得とはいえ、知識面で遅れている分を参考書で取り戻さなくてはならない上に、これから始まる授業にも付いて行かなくてはならない。

そこにクラス代表決定戦が加わって来たのだ。

ハードスケジュール、という一言では済ませない重圧がのしかかっている。

────とてもじゃないが、今からセシリアに追いつけるとは思えなかった。

袋小路────それが、2人の現状を表すに相応しい言葉だった。

 

(…困ったな…。私だけでは、どうにも────)

 

頭を抱え、内心呟く。

 

「おっ、ここに居たか一坊。」

 

ふと────知らない男の声がして、

 

「道生兄!」

 

一夏が反応する。

続いて────

 

「よお。随分と困っているようだな、箒。」

 

「…ナガト…!」

 

道生と呼ばれた男について来たであろうナガトを見て、箒は安堵の笑みを浮かべた。

 

 

 

────5分後。

 

「なるほどねぇ、来週までに腕磨かにゃならんワケか。」

 

事情を聞いた高木は、随分と面倒な事に巻き込まれたなぁ────と笑う。

 

「他人事だと思って言うなよぉ…いやまぁ、参考書間違えて捨てた俺も悪いんだけどぉぉぉぉ…」

 

それに一夏は凹みながら嘆きを叫ぶ。

 

「…知り合いだったのか、2人とも。」

 

そんな高木と一夏を見てナガトは口にする。

 

「ああ、道生兄は俺の親戚なんだ。父親代わりみたいなモンさ。」

 

────なるほど言われてみればと箒は、外見が似ているなと思い納得する。

────一方、ナガトは互いに敬語を一切使わない辺り、同じ血だなと内心思う。

 

「そういうお前さんはどうなんだい、八雲。」

 

「────だいたいお前らと同じだ。箒の里親をやっとる。…で、要するに来週までに技量を磨かにゃならんのだろう?」

 

────ズレた話の方向性を、ナガトは修正する。

 

「…はい。私個人としては請け負いたいのですが…何から教えたら良いか…。」

 

「ふむ…なら、まずは織斑くんの戦闘スタイルがどんなものかを考えてみることからだな。」

 

ナガトは提案するように口にする。

 

「戦闘スタイル…ですか?……一夏、お前は得意とするものはあるか?…その、例えば剣術とか。」

 

「…強いて言えば…うん…剣術、か、なぁ…。」

 

箒の問いに、一夏は歯切れ悪く回答する。

それを高木がチャンポンを食しながら、笑う。

 

「それらしいのが剣道くらいだもんなぁ、銃とかは触れた事ないもんな、一坊は。」

 

「────ふむ。つまりは箒と同じブレード使いの適正がある訳か。」

 

それらを聴いていたナガトもまた、頭を抱え出した。

 

「────参ったな…そうなると、益々相手との相性が悪い。」

 

「はい。刀で鉄砲隊に挑む様なものです。」

 

ナガトの言葉に箒が続き、そして高木も無言でそれに頷いた。

────セシリア・オルコットの駆る専用ISブルー・ティアーズは、ラファール系列の派生機『サイレントゼフィルス』とEOSBAEs-EoS44(ブルーウェーブ)の合いの子である武装試験用ハイエンドコンペートだった。

イギリス兵器特有の狙撃戦を想定した装備構成であり、弾速で右に並ぶモノがいないレーザー兵器や支援用ドローンたるオービット兵器を搭載した、遠・中距離戦特化型機となっている。

…つまりは、近距離戦しか取り柄の無いブレード機体とは、あまりに相性が悪い────という事だった。

 

「…け、けど、懐に入り込めれば────」

 

ふと、それをふんわりとしか理解出来ていない一夏は反論する。

 

「確かにな。…だが、その前にレーザーの雨で叩き落とされちまうぜ、一坊。」

 

そこに高木が現実を叩きつけ、一夏もついに黙ってしまう。

────前途多難。

重い空気がテーブルを覆い尽くす。

 

「…高木さん。」

 

ふと、ナガトが口を開く。

 

「だから高木で良いって。で、なんなんだい?」

 

「MBDS社製のアローズミサイルランチャーとゼネラルボーニング社製のMINI-CIWS。警備課に配備されているか?」

 

「…アローズミサイルにMINI-CIWS?…なんでまた…。」

 

ナガトの思惑が分からず、高木は困惑気味に問いかける。

 

「…上手く行けば、当人の射撃能力に関係なく遠距離攻撃に対応出来るかもしれん。」

 

ナガトがそう言って────高木は理解する。

────アローズミサイル。

ドイツのMBDS社が開発した空対空/携行地対空ミサイルであり、アライズやコンペート用に手持ち型モデルも開発されている。

こちらは視線ロックオンにより目標を設定・射撃可能である為、使用者の射撃精度に関係なく視界に捉えている限り目標を自動追尾し攻撃することが可能である。

────MINI-CIWS。

アメリカのゼネラルボーニング社が開発した近接防御火器システムであり、早い話が対空ガトリング砲である。

こちらはアライズやコンペートに肩武装としてのバリエーションモデルがあり、視線ロックオンやハイパーセンサー併用探知による目標の指定が可能となっている。

こちらに至っては自動で射撃を行い目標を追尾射撃してくれる。

…つまり、どちらも使用者の射撃の腕に依存しない、勝手に遠距離攻撃を成してくれる武装という話だ。

────近接格闘しか取り柄がないであろう一夏にとっては、これ以上にない程強力な対抗手段だった。

 

「しかしナガト…、それは警備課の装備なんですよね?生徒に使わせるのは職権濫用では?」

 

────箒が御尤もなツッコミを入れる。

確かに、これでは確実にアウトだ。

 

「…残念ながら、装備の定期使用点検が警備課では遅れているらしい。

それに協力してもらう形にするさ────それに、プロに挑ませる全くの素人に多少のサポートを課したところで、文句は出まいよ。そうでなければあまりにアンフェアだからな。」

 

「…まぁ、対策も何も無いよりかはマシか…確かどちらも配備されてはいた筈だから、今から行って手配しておく。」

 

ごっそーさん、と、ちょうど食べ終わったチャンポンの盆を持ち、高木は先に席を立った。

 

「────さて、織斑くん。」

 

ナガトに声をかけられ、一夏は弾かれたようにそちらを見る。

そこには、イイ笑顔を浮かべたナガトがいた。

 

「…幸い今日は入学式当日だから午後から一年生は自由時間だ。」

 

「え、えーと?」

 

「善は急げ。とりあえず────俺と模擬戦してみようか。」

 

 

 

◆◆◆◇◆◆◆◇◆◆◆

 

────1時間後

IS学園・職員室

 

「織斑に協力、だと…?」

 

そこには、『"()の新入生"に警備部へ相談が持ち込まれ、こちらの問題の解消に付き合う代わりに短期教練を課すことになった』という旨の報告書を千冬に提出している高木がいた。

 

「貴様…警備課がそんな事をしては越権行為だろう…」

 

ギロリと千冬が高木を睨む。

────一触即発の危機。

傍らで山田先生がはわはわと慌てている。

 

「しかし織斑センセ。織斑くん、随分と面倒なプロに挑まないといけない状況じゃないか。」

 

その言葉に、千冬は一瞬押し黙る。

 

「プロ相手に挑む割に、織斑くんが現状の中途半端な状態で挑む事の方が、織斑くんはともかく、プロにも失礼じゃないかね?」

 

────コチラが一夏にテコ入れして、ようやく最低限フェアになる。

 

「それに、仮に織斑くんが勝っちまった場合、今後更に実力を付けなくてはならない────その先行投資と考えれば、安いものではないかい?」

 

────努めて冷静に告げる。

確かに、現状の一夏では勝ち筋が見えない。

だが勝ってしまった場合、織斑に発展の余地が現状のままでは見えない────事実だった。

…もし後者になれば、どうなる?

織斑の発展性の無さは間違いなくクラス全体を引っ張りかねない。

そうした場合、どうなる────?

…それを考えて、千冬は諦めた。

 

「…今度は無いぞ。」

 

「それは承知したがねぇ…もちっとアイツの事も考えて設定してやれよ。織斑センセ。」

 

アイツとオレたちの頃とは違うんだから、今から厳しくする必要などないだろう────と高木は付け加えながら告げる。

それに千冬は一瞬冷水をかけられた様な反応を示し、また山田先生もその真意を察した。

 

「────喧しい。…それより、織斑のバカはどこにいる?」

 

「ん?ああ、アイツなら────」

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◇◆◆◆◇◆◆◆

 

 

 

────同時刻

IS学園第2地下区画VR訓練室

 

STAGE:3rd Arena

MODE:Induction

LANGUAGE:English

◆UNIT_DATA◆

UNIT01:Type03EⅡ_UCHIGANE-SECOND

PILOT:Nagato august yagumo

WEPON:RA)RoD-LB1_Canopus

     LA)ー

     RS)ー

     LS)Type-11 SHELL-SHEELD

     RB)RoD-OBT-2_Switchshot

     LB)RoD-OBT-2_Switchshot

UNIT02:Type03EⅡ_UCHIGANE-SECOND

PILOT:Ichika orimura

WEPON:RA)MBDS ALOWS-MISSILE/M

     LA)ー

     RS)MINI-CIWS

     LS)Type-11 SHELL-SHEELD

     RB)Type-03BLADE

     LB)ー

     BS)Type-03BLADE

 

 

────電子の海の中に構成された、学園のアリーナを模した地形。

そこを2機のコンペートが駆けていた。

…否、駆けていたというよりそれは────蹂躙、としか形容出来ない有様だった。

────大気がプラズマ化する轟音と共に青い閃光が走り、炸裂する。

 

『うっぎゃあああああ────っ!!』

 

織斑の悲鳴が上がる。

衝撃で吹き飛び、シールドエネルギーが削られる。

 

『どうした!こっちはレザバズしか使っとらんぞ!?』

 

そう言ってナガトは右手に持つ武装────ロイヤルディフェンス社製レーザーバズーカ、RoD-LB-1(カノープス)の砲口を再び一夏に向ける。

…モーターが甲高い音を立てて、砲身にエネルギーが充填される。

次の瞬間────轟音が響き、蒼条の閃光が再び一夏のいた箇所を吹き飛ばす…!

 

『ぬおわァ────ッ!!』

 

────それを一夏は間一髪で躱す。

…そもそも何故ナガトがコンペートを操作できるのか────とは、誰も口にしなかった。

それはEOSの訓練ユニットをベースに開発されたVRユニット(仮想訓練機)であり、ISコアの反応・同調を必要としない為である。

登録されたデータ上であれば、男がコンペートを動かすことも、コンペートがアライズの武装を積むというあり得ない事(イレギュラー)を実現することも可能だった。

だからナガトも一夏同様に、コンペートを動かすことが叶っていた。

 

『いやいやいやいやいやいや!死ぬ!死んじゃうって!そんなの死ぬってェ!!』

 

────その言葉を遮るように、無慈悲に放たれるレーザーバズーカ。

────それを、管制室で見ていた箒は見かねてしまった。

 

「ナガト、私から言い出してなんですが、やはりいきなりレーザーは酷なのでは?」

 

…セシリアの機体データはない為、ナガトが可能な限りイギリス製装備で固めて再現し、一夏の相手をしているのが現状だ。

…当然ながら、手加減はしている。というかしなければフェアではない。

片やこの道10年の現役職業軍人。片や中卒したての現役高校生────という肩書きの素人。

全力でぶつかり合ってはあまりにアンフェアだ。

…とはいえ…、いくらレーザー攻撃を回避することを叩き込ませる為とはいえ…これは。

────そう箒が苦言を呈し、

 

『相手さんは、これほど容赦してはくれんぞ?』

 

────そう返される。

…それは、確かにそうだ。

レーザー兵器に加えてオービット兵器の使い手でもあるセシリアの攻撃は、きっとナガトの今のものよりずっと熾烈を極めるだろう。

現にナガトは、セシリア機の再現として搭載したオービット兵器、RoT-OBT-2(スイッチショット)を使用せずにレーザーバズーカによる攻撃だけを繰り返している。

 

『────貴様のその装備は飾りかァ!?』

 

ナガトの罵倒。

続くように放たれるレーザーバズーカ。

 

『そんな事言っ…ぎゃあああああああっ!!』

 

────そして一夏の悲鳴。

…なんというか、箒は自身の感覚が麻痺していたのだなと思う。

レーザー回避訓練を推奨したのは、他でもない箒だった。

レーザーなぞ、躱せるだけの反射神経をつければどうとでもなるからだ。

だがそれは────アライズ乗り特有の感性であり、一般人がそんな事ができる筈が無いという事を完全に失念していた。

 

「すまん一夏…今度何かの形で詫びるから…。」

 

誰に聞かせるわけでもなく、ただ箒は呟いた。

その背景では、教育隊に配属された新米隊員が教官に扱かれているかの様な惨状が繰り広げられていた。

 

 

────蒼の閃光を躱し続けて、どれくらい経つだろうか。

…もう1時間は繰り返しているように感じる、終わらない地獄。

 

「はぁっ、はぁっ…、はぁっ…!」

 

打鉄の足が止まる。

閃光が走り────一夏はそれをスラスターを吹かして躱す。

そのまま一夏は打鉄のスラスターを吹かし、地表面噴進(グラインドブースト)噴進跳躍(ブーストジャンプ)を繰り返して動き回り続けていた。

 

「止まるな…!止まったら撃たれる…!止まったら、撃たれる…!!」

 

自らに言い聞かせながら、一夏は恐怖から来る涙を目尻に溜めながら必死で機体を操作する。

既に感情は麻痺し、ただひたすらに機体の動かし方を身体が嫌でも覚えていく。

とにかく、躱して躱して躱して躱して────!

 

「はぁっ、はぁっ…!」

 

────息が苦しい。

無理に回避を続け過ぎたせいで、体力が限界に近づきつつあった。

…しかし、レーザーの被弾ないし衝撃波によるシールドエネルギー損耗量も、先程よりは明らかに減少している。

…回避のタイミングは身体が覚えつつある。

この先は多分限界だ。

だけどこのままやられっぱなしはもっと嫌だ!

だけど今なら────まだ、やれる…!!

 

「…ッ!喰らっ、えぇぇぇッ!!」

 

意を決すると、一夏は右腕に保持したMBDS製ALOWS-MISSILE/M(携行型アローズミサイル)をナガト目掛けて撃つ…!

────ナガトはそれをレーザーバズーカで容易く迎撃する。

…問題ない。

一撃で無理ならば、何度でも撃ち続けるだけ────!

一夏は続け様にアローズミサイルを発射する。

────呼応するように。

ナガトはBT《スイッチショット》を射出────ドローンを彷彿とさせる浮遊砲台が展開され、

搭載されていた20mmプラズマパルスガンが火を噴き────次々と放たれたアローズミサイルが撃ち落とされ爆煙を形成する…!

更にダメ出しと言わんばかりに、爆煙を貫きレーザーが右腕のアローズミサイルランチャーを貫いた。

 

「ッ────!」

 

すかさずパージ────直後、慣性に従って後ろへ流れ落ちたランチャーが爆散する。

しかし一夏はそれに構わずスラスターを吹かし、突貫。

ランダム軌道による回避ステップを駆使し、敵機体────ナガトの懐目掛けて切り込む…!

 

『ランダム回避が短時間で出来る様になった事は、褒めてやろう────』

 

再び、レーザーが奔る。

反射的に飛び────蒼の閃光が、シールドバリア越しに左肩を舐めとっていく…!

 

『だが、この距離じゃ躱すだけでは生き残れんぞ!!』

 

再び奔る閃光────右肩にレーザーが直撃する。

────衝撃が装甲を介して身体に響く。

────シールドエネルギーを大量に持っていかれる。

 

(クソ…ダメだ、近づいた分、当たりやすく…!!もっと、大きく飛んで────)

 

直後、シールドエネルギー危険値突入を知らせる警報が鳴り、一夏は足が止まってしまう────

 

『────だ阿呆(アホ)ッ!自分の武器をよく見ろ!!』

 

そう返され────網膜に投影されていた機体情報を再度見る。

 

 

UNIT02:Type03EⅡ_UCHIGANE-SECOND

PILOT:Ichika orimura

WEPON:RA)【LOST】

     LA)ー

     RS)MINI-CIWS

     LS)Type-11 SHELL-SHEELD

     RB)Type-03BLADE

     LB)ー

     BS)Type-03BLADE

 

 

────ソレに目を落とした次の瞬間、レーザーが叩き込まれた…!

 

「────ッ、シールド展開ッ!」

 

言語操作で一夏は叫ぶ。

────瞬間、打鉄の左肩後方に折り畳まれていた展開式多目的追加装甲が展開。

レーザーを真っ向から受け止める…!

 

「ッ……!」

 

僅かに稼いだ時間────右背部に担いでいた03式近接長刀を展開し、右腕で抜刀。

スラスターを蒸す。

レーザーを左肩に受けながら、

 

「いっっっけぇぇぇぇぇぇ────ッ!!」

 

近接刀で、ナガトを横一閃に薙いだ────!

 

 

 

 

…筈だった。

 

「────アレ…?」

 

一夏は思わず目をぱちくりとする。

ナガトは健在だ。

打鉄のフレームに刃が触れた感触も音もない。

ただ刃が空気を切った音がしただけで────。

…それで、自身がナガトではなく、ナガトの一歩前にあった空間を薙いだ────つまり空振りしたという事を理解して。

 

『織斑ァ…』

 

声の元をギギギと錆びたブリキ人形の様に見上げた。

そこには────再装填され、蒼の光を砲口奥に宿したレーザーバズーカと、ビットのパルスガンをこちらに向ける、ナガトがいた。

ヒュッ、と驚愕と共に浅い息をして、あ、やばいちびりそう。怖い…!

 

『…詰めは甘いけどまぁ、初見にしては上出来かな。』

 

────ふと、急に褒められた。

口調も訓練前の穏やかなもので、先程までの鬼教官めいたものではない。

…それに、上出来────と褒められて、内心嬉しさが生まれた。

 

(…アレ?だったらなんで、レーザーバズーカをまだこっちに向けて────)

 

────その疑問に応えるより早く、

 

『次は間合いもうちと────詰めような。』

 

ゼロ距離から、ナガトはレーザーバズーカを一夏に撃ち込んだ────!

 

 

 

 

 

────

 

「いや無理だろアレ!無理だろ!!」

 

VR訓練室に、一夏の絶叫が木霊した。

あの直後、訓練プログラムは終了し────そうして今に繋がっていた。

 

「でもなんとなーく回避操作のコツは掴めたろう?」

 

それにナガトはUCCコーヒーの缶を開けながら、コーヒーをぐいと流し込む。

 

「…まぁ。うん、なんとなく。」

 

「うし、なら次回から俺も動いて撃つわ。」

 

「────は?」

 

…一瞬、一夏はナガトが何を言ってるか分からなかった。

しかし5秒の時間を要して────ハッとする。

よくよく思い返してみれば、ナガトは今回一切動いていなかった。

それどころか一夏はレーザーを躱す事で頭がいっぱいで、ナガトが動いていない事などつゆ程も気づかなかった。

 

「え、つまり手加減してた…?」

 

「あったぼーよ。今回は途中までレザバズしか使ってなかったんだぞ。」

 

「嘘だろ…?アレより、上が…」

 

だいぶ今回のでもキツかったのに────と、一夏はクラッと軽い眩暈を覚える。

 

「ま、即席の訓練だからな。慣れるにはもうちと時間が要るだろう。」

 

ナガトが言う。

────即席教育。

…確かに、あと1週間しか猶予は無い。いや今日を除けばあと6日。

慣れようと馴れまいと、とにかくまずは無理をしてでも身体に感覚を馴染ませていくしかないのだ。

 

「明日明後日は土日────それが実質的には自由に訓練できる最後の時間だろう。」

 

ナガトが言う。

…確かに、部活動だって放課後にやる分より土日練習でやる方が長くミッチリとやれる。

 

「────正念場だな。」

 

ふと、予定表に内容を書き込んでいた箒も呟いた。

 

「…一夏、明日から対仮想敵(アグレッサー)訓練は今日同様ナガトが、近接戦訓練は私が受け持つ。…よろしくな。」

 

「お、おう。よろしく…。」

 

────ピロリロリ。

ふと、ナガトの業務用ケータイが鳴る。

 

「────と、失礼。」

 

そう言って、ナガトは席を外す。

…なので箒はドカッと椅子に腰掛ける。

 

「…すまんな…私が対仮想敵訓練なんて言い出さなければ…。」

 

「…良いって。それにどうせ、他に対抗策無いんだろ?」

 

「────まぁな。私に出来るのは近接格闘技訓練くらいだからな。」

 

────それに相変わらず教えるのは不得意だ。と。

少し申し訳なく、箒は笑う。

 

「────とはいえ、明日明後日は対仮想敵訓練がやはりメインだろうな…。狙撃型のオルコットに対抗するには、まず立ち振る舞いのイメージが固まらねば…」

 

────それを遮るように。

 

「────はァ?!遅れるぅ!?」

 

ナガトの怒鳴る声が響いた────。

…後に分かった事ではあるが、どうも箒に与えられた新型アライズと共同試験予定の機体があるらしく────それを保有するレヴェラント連合国ドイツ連邦州の学園到着が2週間ほど遅れると、そういう話だった。

 

「はぁ、じゃあ仕方ない…ったく────

 

(────いやまぁ、コッチも1ヵ月前の東京同時多発テロで内閣総理大臣と外務大臣、財務大臣他数名の閣僚を殺られてるから、人の事は言えねぇ…しかし…)

 

「────第3次ブリテン島上陸戦に第4次マジノ線越境戦とは…。どうなっとるんだ今年の欧州は…。」

 

 

 

◆◆◆◇◆◆◆◇◆◆◆

 

────欧州大陸フランス圏

 

────現在フランスは、混迷の情勢と化していた。

第2次世界大戦以降、ナチスドイツに占領統治されていたフランスは、小惑星群衝突と第4次非核大戦を経て荒廃────。

再構築戦争後、VIC6(六人の勝者)であるレヴェラント連合国主導でEU(欧州連合)が結成され、フランスもEU・イギリス連邦資本による復興支援が為されていた。

────しかし、当時の政権はそれを拒絶した。

イギリスとの度重なる歴史上の武力衝突。

ナチスドイツに支配されていたという実情。

それらの歴史的・民族的悔恨により、フランスは復興に出遅れ、世界から取り残される事となった。

貧富格差の拡大。

破綻したインフラ。

物流輸送網の停滞。

上がり続ける物価。

本土と植民地の逆転。

デモにより閉塞する経済活動。

軍と警察による弾圧の常態化。

壊死し続ける国内情勢。

────あまりに多くの負債を抱えたフランスは時代遅れの巨人であり、だからこそ現政権は復興支援を改めて受け入れようとした。

…そしてそれを快く思わない旧政権派は、現政権に牙を剥き────花の都と謳われた国家は、内戦状態となっていた。

 

 

 

────同時刻

フランス旧首都パリ市

 

煤汚れた煙が充満し、黒煙が至る箇所から上がっている。

焼け焦げた自動車や装甲戦闘車両が路上に放置されており、建物にはヘリが突っ込むようにして墜落している。

至る所から銃声と砲声と爆発音が木霊する────。

現在パリは、市街中央を横断するセーヌ川・マルヌ川を境に北部を大統領派、南部を旧政権派によって二分されていた。

────例外として。

エッフェル塔やアンヴァリッド廃兵院といったフランスを象徴する建築物が多数所在する第7区は大統領派がセーヌ川南岸でも優勢。

一方リヨン駅などの主要ターミナルやヴァンセンヌの森などが所在する第12区では、旧政権派がセーヌ川を越えて優勢だった。

セーヌ川を越えてアクセスする為の橋の爆破に失敗した第12区は、旧政権派が大挙し────街区の大半を制圧。

リヨン駅を中心に、隣接するヴァルドマルヌ県シャラントンルポン郡から鉄道網による兵站輸送を確立し、隣接する第11区の制圧を開始していた。

 

 

────旧体制派フランス軍第12空中機械化歩兵連隊第2中隊はコンペディションIS・ラファールリヴァイヴ6機を用いて、隠密性を高めるために速度を落としてリヨン通りを北へ飛行していた。

 

「敵はバスティーユ広場を放棄。レピュブリック広場に後退している。好機だ。このまま敵司令部が置かれているパリ駅を強襲する。」

 

中隊を率いる女が言う。

確かにリヨン駅を出て通りへ入ってからと言うもの、抵抗らしい抵抗はまるで見られない。

そのまま中隊はバスティーユ広場へと侵入する。

────瞬間、ハイパーセンサーの索敵画面がノイズで埋め尽くされた。

 

「ちょっと何よこれ!ハイパーセンサーがめちゃくちゃだわ!!」

 

女の1人が叫ぶ。

ハイパーセンサー、レーダーサイトよりは劣るが広大な索敵範囲をもつシステム…とされているそのセンサーは、今はノイズだらけで何も映していなかった。

 

「故障でもしたんじゃな〜い?だって下等な男が整備したんでしょ?」

 

もう1人の女がそういう。

だが、その女の機体のハイパーセンサーも調子が悪かった。

というより全員のハイパーセンサーが不調を訴えていた。

原因は整備不良────と彼女らは結論づけた。

 

「侮るな。ECMを展開された可能性もある。敵は先行した第1中隊によればEOSのみ────やつらの機動力ならばコチラには付いてこれないが、油断はするなよ。」

 

隊長の女が言う。

確かに、第2世代機のラファールなら、旧式のEOSや戦車を圧倒するくらいは容易いだろう。

────相手が、それだけなら。

 

『────へぇ、調子に乗って殺されに来たのね。』

 

────ねっとりとしながらも、支配者然とした声がオープンチャンネルで響く。

…女の声だった。

響く高熱源警報と────指揮官の僚機が、蒼条の光(レーザー)に貫かれたのは同時だった。

 

 

────同時刻

パリ東駅屋上

 

《BAEs-4【TEMPEST/Type-FS】》

ーーARMOR ENDURANCEーー

PARTICLE ARMOR:100%

COMPOSITE ARMOR:100%

UNIT FLAME:NOMAL

ーー WEPON ーー

RA)RoD-LR1_Starlight Mk.Ⅱ

LA)RoD-LB2_Intercepter

RS)RoD-ECM07

LS)RoD-LO-2

RB)RoD-OBT-2_Switchshot

LB)RoD-OBT-2_Switchshot

BS)MBDS ALOWS-MISSILE/M

 

────Main system actavate combat mode.

 

騎士甲冑でありながら無機質な複眼と、腰部にアンカーボルトの役割を果たす補助脚を搭載した────イギリス連邦軍BAEs-4《テンペストFS型》が鎮座していた。

 

「まず1機────さぁて私は何処かしら?」

 

歌う様に呟き、

 

『戯れるなッ!!』

 

敵中隊からの応答と反撃────。

パイロットの女は即座に陣地転換────駅舎の屋根から隣接するサン・マルタン運河へと飛び込み、スラスターで機体を水上に走らせる…!

サン・マルタン運河はラ・ヴィレット貯水池とアルスナル港とを繋ぐ古い水運網だ。

その過半は地下水路化されており、テンペストFSは、そこを滑る様に駆け抜けて────。

再び地上に抜けるアルスナル港へ出た瞬間空へ飛び────フランス軍第12空中機械化歩兵連隊第2中隊を眼下に捕らえた。

女は地下水路化されたサン・マルタン運河を駆け抜けたことで、アルスナル港に隣接する地上区画────敵部隊が展開するバスティーユ広場後方に躍り出たのだ。

そのまま右腕に装備したRoD-LR-2スターライトMk.Ⅱレーザーライフルでさらにラファールを狙撃────爆散すると同時に、全機がテンペストFSに気付く。

 

「んー、やっと気付いたのね。」

 

全機が振り向く、あるいは飛び上がる直前に────

 

「────良い的よ、貴女達。」

 

────更に狙撃。

…一瞬にして、2機のラファールが堕とされる。

────残り3機。

 

『なんで…なんで、アライズが…!』

 

『全機散開!固まるな────!』

 

恐怖に震える者、果敢にも抗おうとする者。

それを見下しながら女────チェルシー・ブランケットは、

 

「────ゆっくり痛めつけてあげる…。」

 

────加虐に満ちた寝蘭な声で囁いた…!

 

 

────同時刻

レンヌ=ブルターニュ空港

 

パリ西南部に位置するそこには、3機のアライズが展開していた。

 

《EW-2010【WeißWolf】》

ーーHaltbarkeit der Rüstungーー

Partikelpanzerung:100%

Komposit-Rüstung:100%

Zelle der skelette:normal

ーーHeerーー

RA)EiR-MMG-ⅡⅩⅠ

LA)EW-B/HarmberdeⅢ

RS)EW-ZT/R-2

RW)WtS-Gewehr-ⅩⅥ(C.Q.B.model)

LS)EW-ZT/R-2

LW)Type-03ⅡBlade

RB)EiR-IKp-5

LB)Rheinmetall 120 mm L/44

BS)WtS-Gewehr-ⅩⅥ

  RoD-LR1_StarlightMk.1/Dp

 

 

《EiR-Type-ⅩⅥ【Weimraner】》

ーーHaltbarkeit der Rüstungーー

Partikelpanzerung:100%

Komposit-Rüstung:100%

Zelle der skelette:normal

ーーHeerーー

RA)ⅡX große Laserklinge

  GE-RBM1 Haliaeetus

LA) Type-X MMG

  GE-RBM1 Haliaeetus

RS)MBDS Wasp S.G.B.

RW)WtS-Gewehr-ⅩⅥ(C.Q.B.model)

LS)MBDS Wasp S.G.B.

LW)WtS-Gewehr-ⅩⅥ(C.Q.B.model)

RB)Ⅸ 57-mm-Plasmakanone

LB)Type VIII 120 mm Railgun

BS)WtS-Gewehr-ⅩⅥ(C.Q.B.model)

 

────Main system actavate combat mode.

 

 

《EiR-Type-ⅡⅩⅡ【Wachhund_Zweite】

ーーHaltbarkeit der Rüstungーー

Partikelpanzerung:100%

Komposit-Rüstung:100%

Zelle der skelette:normal

ーーHeerーー

RA)WtS-Gewehr-ⅩⅥ

RSA)EiR-Type-ⅩⅥ Mäusefänger

LA)EiR-Type-ⅡⅩ Hiten

LSA)EiR-Type-ⅩⅥ Mäusefänger

RS)MBDS WESPE-MISSILE

LS)MBDS WESPE-MISSILE

RB)EiR-Type-ⅩⅨ Doppelhorn

LB)EiR-Type-ⅩⅨ Doppelhorn

BS)WtS-Gewehr-ⅩⅥ

 

────Main system actavate combat mode.

 

ピッケルハウベと狼の顎を組み合わせた様な頭部パーツに、戦車を思わせる重装甲フレームを身に纏った────レヴェラント連合国オーストリア大公州軍のユーロヴァッヒェ製アライズ【ヴァイスヴォルフ】。

古代ローマのレギオン、あるいは翼人を思わせる鋭利なフォルムに銃砲火器で翼を象った────ドイツ連邦州軍のアイゼンライン社製アライズ【ヴァイムランナー】。

これらはレヴェラント・イギリス合同旅団第1戦略機動隊に所属する機体であり、今パリで交戦を開始したテンペストFS型も同様だった。

 

『────総員、傾聴!』

 

ヴァイスヴォルフの操縦者────部隊指揮官からの号令が達する。

────男の声だった。

腹の底から響く様な荒々しい声音だが、育ちは良いのか、丁寧な口調だ。

 

『────ビーレフェルト獅英合同旅団司令部から命令が下った。これより我が隊は抽出戦力としてパリ市街に突入。敵勢力殱滅に当たる。』

 

少女────ヴァイムランナーのパイロット────は、緊張からか、動悸を覚えた。

 

『────シャル、大丈夫か?バイタルが上がってるぞ。』

 

僚機────ヴァイムランナーのパイロットの男────が少女に心配そうに声をかける。

それに弾かれた様に、少女は顔を上げ、

 

「だ、大丈夫です!」

 

笑顔を作りながらそう告げる。

 

『ウソだな。』

 

────だがそれは、僚機にばっさり看破されてしまう。

 

「え、な…なんでバレたの!?」

 

『顔に書いてある。…まぁ────』

 

僚機は一瞬言い淀み────だが一拍置いて、告げた。

 

『────いざとなれば俺が盾になってやろう。お前の機体よりは、早く動けるからな。』

 

────普通逆じゃ無いの?と思わず内心呟く。

だが、それでも。

少しそれが────少女の緊張をほぐすには充分だった。

 

『おしゃべりは終わりだ。無線封止、以降は秘匿回線でのみの通信に切り替えろ。

 ────全機、滑走路へ行くぞ。』

 

────連鎖する了解の応答。

 

「了解!」

 

少女もそれに応える。

少女────シャルロット・ヴィークマンは、僚機に追随するように、灰色の煤汚れた世界へと機体の歩みを進めた…!

 

 

 

 

 

 




〜あとがき〜

◉ナガトと箒のナゼナニ劇場④

▪︎ナガト
「聞いたぞ、前回は惚気話を垂れ流しただけらしいじゃないか。」

◽︎箒
「惚気なんかじゃありません!…ってもう始まってるし!!」

▪︎ナガト
「ふむ、では今日はどうするかね…」

◽︎箒
「では今回はレーザー兵器について解説して下さい。」

▪︎ナガト
「レーザー兵器ぃ?普通過ぎないかソレ。」

◽︎箒
「ナガト、読者さんの世界でレーザー兵器を主力とする軍隊はまだ居ませんよ。」

▪︎ナガト
「それもそうか…じゃあ簡単に解説するか。」

◽︎箒
「よろしくお願いします!」

▪︎ナガト
「まずそもそもだが、発端はイギリスの《狙撃戦ドクトリン》の確立からだ。」

◽︎箒
「イギリス機のとこになると時折出てきますけどなんですかソレ。」

▪︎ナガト
「読んで字の如く、遠距離から敵を迎え撃つことに特化した戦術だ。」

◽︎箒
「でもソレならミサイルでも良いのでは…?」

▪︎ナガト
「ミサイルより砲による迎撃の方が的確な距離まで詰められていたら?」

◽︎箒
「それは……、イヤでも、無いでしょう。イギリスの近くに敵対国家とかそんな無いですし…。」

▪︎ナガト
「うん、読者さんの世界ではな。」

◽︎箒
「…え?」

▪︎ナガト
「第2次世界大戦時にまで遡るが────この世界ではナチスドイツが勝っちまったんだ。」

◽︎箒
「え?第2次世界大戦時点で原作世界や現実世界と分岐してるんですか?」

▪︎ナガト
「うん。で、イギリスはブリテン島を死守することには成功したが、お隣フランスは完全失陥。
ヴィシーフランス(後のブルグント公国)って言うナチスドイツの傀儡国が誕生するに至っている。
ちなみに、フランスとイギリスを隔てるドーバー海峡は最も幅が狭い場所は20kmしか無い。
そしてそこから100km圏内には────首都ロンドンだ。
第2次世界大戦時も、ブリテン島本土航空戦といって、ロンドン上空で熾烈な航空戦や爆撃なんかも敢行されていた。
だから首都を守ることは、極めて困難なんだ。特に、ミサイルも無い当時では。」

◽︎箒
「────あ」

▪︎ナガト
「で、時代が進みミサイルが生まれ、それで潰すにしても、当時は精度が低く、外す可能性が高かった。現実世界でも、ミサイルの有用性が実証されたのは1980年代になってから。こっちの世界だとその頃には小惑星落下でそれどころじゃなかったから、未だ大砲が主流だったんだ。
そんな環境だから、まずは高精度の砲狙撃戦で敵上陸部隊とカチ合う必要がある。
だから、イギリスは狙撃戦ドクトリンを重要視し、その延長線としてレーザー兵器が誕生した。
…というわけだ。」

◽︎箒
「アレ?でも今回のラストではドイツと味方になってるし、フランス北岸も味方のようですが…」

▪︎ナガト
「それはまぁ…狙撃戦を専門にし過ぎた弊害だな…。」

◽︎箒
「というと?」

▪︎ナガト
「イギリスは確かに高精度狙撃砲を作る技術に長けていた。だがそれ以外はめっきりだったんだ。
…つまり、専門性が狙撃兵器に偏り過ぎた事で、それ以外のドクトリンに対応することが困難になったんだ。」

◽︎箒
「あ…」

▪︎ナガト
「そして今は軍備より復興だという時代、当然狙撃以外のドクトリンを磨くにしても、予算の不足で現存戦力を維持するので手一杯なイギリスは、狙撃専門道を突き進むしか無かった────という、ちょいと悲しい現実がある。」

◽︎箒
「なんか、レーザー兵器の話なのにそんな裏話があったとは…」

▪︎ナガト
「まぁ話を戻すが、レーザー兵器自体は弾速が光速域である事もあって、実際狙撃には向いてるからな。ほぼ回避不能だ。」

◽︎箒
「なるほど…。」

▪︎ナガト
「こんなところか、じゃあ締めよう。」

◽︎箒
「はい!まとめると、レーザー兵器は
 ・イギリスの狙撃戦ドクトリンの末に生まれた。
 ・弾速が光速なので基本は回避不可。
 こんなところでしょうか。案外少なかったですね。」

▪︎ナガト
「おう。レーザー兵器が産まれた理由自体は大した理由じゃないからな。あくまで、どうしてレーザー兵器が求めなければならない環境だったか、の方が重要だったりする。
…OBT兵器についても設定はあるが、それはまた追々…な。」

◽︎箒
「はい!最後までご視聴ありがとうございました!!」

次回もよろしくお願い致します。

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