マーヤが死んだって聞いた時は驚いたよ。でも調べれば簡単に入院先は突き止められたんだ。
嘘を吐いた馬鹿にはお仕置きをしなくっちゃぁね。
まぁ良いや、ここらで一度顔でも見せておこうかな。
それじゃあ本編開始だよ。
『…………………ブリ……アが……る……の…………苦…!凌………い、……よ!』
熱い…熱い…。炎と煙で前が見えない。
苦しい…苦しい…。炎の向こうに人影が見える…
『マーヤ…強く、生きて!』
あれは…
「…はッ!?」
なんだか、またあの時の夢を見た気がする。母さん達が死んでしまった事故…。クラリスさんはたまたま帰省していて、私がたまたま遊びに行っていた。そして起こった事故。研究所は炎に包まれ、全てが吹き飛んだ…。
「あれ…?」
なんで私、そんなこと思い出したんだろう?前はそこまで覚えていなかったような…。
すると病室の扉が開き、スザクがやってきた。
「マーヤ!目を覚ましたんだね、良かった…」
「私、どれくらい寝てたの…?」
もしかして三日とか寝てしまってたんだろうか。どうしよう、あんまり休むと出席日数の計算が狂ってしまう。
「三時間だよ」
意外と短かったな。逆にいえば…
「動かさないほうがいいよマーヤ。こんなおっきな弾がブチ込まれてたんだから」
スザクが指で丸を作り大きさを説明してくれる。手と足には包帯が巻かれているし、何もしなくても痛みを感じる。
再び病室の扉が開き、今度はクラリスさんが現れた。
「マーヤ!」
クラリスさんはボロボロと目から涙を流している。…また心配をかけてしまった様だ。
そんなクラリスさんを無視して私はスザクに疑問を投げかけた。
「コーネリア殿下は?作戦はどうなったの?」
「…ユーフェミア殿下に言われてランスロットで助けに行ったから間一髪のところで助けられたよ。でも作戦は失敗だね。それにしてもゼロはどうやら僕らが攻め込む事を事前し知っていたようなんだ。」
「なっ…!?一体どこから情報が漏れたの!?」
「それはわからない。」
首を振るスザクだったが、今の私の一番の懸念はスザクが情報を流したと言われることだ。スザクは日本人だし…罪を被せるには一番都合が良いから…。
未だに泣いているクラリスさんを無視しつつ、そんな風に心配をしているとまたまた扉が開いた。今度は誰だろう?
「ここがマーヤ ディゼルの病室だな?」
「ダールトン将軍!?」
「無事…というわけでもないか、だが生きていた様で何よりだ。早速で悪いが…警察の話では足と手にスラッグ弾を撃ち込まれた状態でトラックに轢かれた様だが…何があった?」
何があったか、どこから話すべきだろうか?…やはりボールスから降りた辺りからだろう
「ボールスのスロウヴァリスで自分ごと敵のナイトメアを爆散させたんです。その後敵のパイロットにスラッグ弾を撃ち込まれました。」
「ふむ、どんな相手だった?」
「緑の長い髪の女の人でした。あと、なぜかブリタニアの拘束着を着てた様な」
「…!」
…?なんか今スザクが反応したような…?まぁいいか
「ふむ、それで?」
「はい、スラッグ弾を撃ち込まれたお返しに顔面を殴ったんですけど、直ぐに別のナイトメアが来たので逃げました。逃げている途中でジェレミアさんと…」
「ジェレミア?ジェレミア ゴットバルトか?」
ダールトン将軍が聞き返してきたので頷く。
「…済まない、話を続けてくれ」
「はい。ジェレミアさんとシャーリーのお父さん…あー、私の同級生の父親と会ったんです。それで一緒に下山して、トラックが突っ込んできたので二人を庇ってトラックを止めようと…」
「…。それで、撥ねられた、と…?」
私が頷き返すとダールトン将軍は目頭に指を当てて目を瞑ってしまった。…そういえばジェレミアさん達はどうなったのだろう…?
「とりあえず事情はわかった。まさかスラッグ弾を二発も撃ち込まれた状態で自らトラックの前に躍り出たとはな…。今後は勇気と無謀を履き違えるなよ…」
そうしてダールトン将軍は去っていった。そして私の視界に映るのはクラリスさんだ。…寝たフリをしよう。
「クラリスさん、私眠いから…」
「そう…さっきの人も言ってたけど…余り無茶はしないでね…。ごめんなさい、私仕事がまだあるから…」
そう言ってクラリスさんも去っていった。
「…さっきの人、マーヤのお姉さん?」
お姉さん…まぁ、クラリスさんって童顔だしそう見えるのかな?
「ううん、私の保護者。両親がいないから引き取ってくれたのがさっきのクラリスさんだよ」
「…あんまり上手くいってないみたいだね」
スザクは…たまにストレートにものを言うよね…。でも、確かに上手くは行ってない。私が…一方的に避けているからだ。
「勿論ね、感謝はしてるの。でも、私はクラリスさんとは上手くやれない。」
「それは…どうして?」
私がハーフだからだなんて。ブリタニア人として生きている日本人だからだなんて…言えない。私は…卑怯だ。
スザクには首を横に振ることで答え、ベッドに横になる。
「…悩みがあるなら聞くから言ってね。じゃあ僕は学園に行くから」
そうしてスザクも部屋から去っていった。目を閉じても眠くならない。
見たことある天井を眺めていると、またまたまた扉が開き、誰かが入ってくる。今度の来訪者は…。誰だろう?知らない子供だ。
「やぁ、こんにちは」
「…こんにちは。私に何か用?」
金髪で長い髪、幼いはずなのにやけに落ち着いた雰囲気の男の子だ。それに…なんだか着てるものも高そうだ。
「僕の事、覚えてる?」
私は首を横に振る。子供達とは関わったことはあるが、私の関わった子供達はみんな日本人だ。
「ごめんなさい。どこかであったことあったかな」
「そっか。まぁまだそのときじゃないから良いけどさ。」
私は不思議な男の子に首を傾げる。この子は一体何を…あぁ、まぁこれくらいの子供はこう言う遊びをしたがるよね。男の子だし。
「それにしても酷いよね。君が死んだなんて嘘を吐くなんてさ。思わず確かめに来てみればちゃんと生きてるじゃ無いか。…まぁ、確かに普通の人だったら死んでもおかしく無い様な怪我ではあったみたいだけど。」
そして男の子はベッドから離れていき扉へと向かっていった。
「そうだ。また迎えに行くから待っててね。マーヤ」
振り向いた男の子はそう言って去って行く。…私、名前言ったっけ…?本当にどこかであったのかな。記憶がないってことは事故が起こる前とか?でも、それにしては彼は幼すぎる様な…。…いや、よくよく考えたら病室なんだから患者が誰かわかる様に名前が掲載されるはずだ。なら名前なんてわかっても当たり前だ。
そんな風に思考を巡らせているとまたまたまたまた扉が開く。今日は本当に来客が多いな…?
「久しぶりだねマーヤ」
「…!?ノネット エニアグラム卿!?」
思わず背中を預けていたベッドから上半身を跳び起こす。
「こらこら、怪我人が無理すんじゃないよ。全く、若者は直ぐに無茶するねぇ、アンタといいアイツといい…」
「…アイツ?」
「あぁ、悪い悪い、昔可愛がってた小僧でね、ライって言うんだが…ある日突然行方を暗ませたんだ。ったく…アイツも何やってんだか。ソイツもしょっちゅう無理しては怪我をしてたよ。」
ノネットさんは懐かしむ様に目を細めている。きっと大切な人だったんだろう。
「今日はどうしてエリア11に?」
「ん?今日はちょっとお偉いさんの護衛にね。」
ラウンズが出てくるということはかなりの地位に違いない…それにしては今現在持ち場を離れてるみたいだけど…。
「ん?あぁ、今は休憩だよ。ビスマルクのやつが代わりの奴がついてるさ」
「そうなんですか」
ビスマルクと言う人のことは知らないけれど、多分ラウンズの誰かなのだろう。
「ロイドに見せてもらったけど、テロリストはどうやらブリタニアの最新機にも劣らない新型を投入してきたみたいだね。一体どこにそんな技術があったんだか…。」
その後、ラウンズであるノネットさんと畏れ多くも他愛無い話をして彼女は部屋を去っていった。
…しまった。今更だけど、あの子の名前聞きそびれちゃった。
結局、動けるまで1週間はかかると言われた怪我を約半日で動けるところまで回復させ、次の日には片脚で飛び跳ねながら学園へと向かった。特徴的な赤い髪を見つけたので後ろから声をかけるとカレンが振り向き、次の瞬間目を見開いていた。
「ちょっ!?マーヤ!?あなたそんな風にここまで登校してきたの!?」
「え?うん。片脚はまだ安静にしてなきゃいけないし」
「安静と激しい運動を両立させながらあなた何言ってるのよ…」
肩を貸すと提案してきたカレンだけど、病弱な設定でそれはまずい。断るとカレンは誰かに連絡を取っていた。そして教室に向かう途中でシャーリーが現れ、私に肩を貸してくる。
「別に良いのに。体も鍛えられるし」
「ダメだよ!片手片足が怪我でダメになってるのになんで片脚ジャンプで登校してくるの!?」
「だって他に方法ないし」
そう答えるとカレンもシャーリーも黙ってしまった。うん、これは論破ってやつね。
…肩を貸すと言えば
「そうそう、シャーリー。私シャーリーのお父さんにも肩を貸して貰ったの」
「えっ?お父さんが?」
「うん、ナリタに行った時にね、たまたまシャーリーのお父さんも巻き込まれかけてたみたいで」
「なんでお父さんがそんなところに…?」
そんなこと言われても…あ、でも確か地質の調査とか言ってたっけ?
「なんか地質がどうとか言ってたよ。」
「地質?お父さん、地質関係の仕事なんてしてたっけ…?」
まぁ、親の仕事内容なんて一々把握しているのも珍しいだろう。シャーリーの話だと単身赴任してると言ってたし。
そんなこんなでその日の授業は終わり、生徒会活動の時間となっていた。
「マーヤさん、お怪我大丈夫ですか?」
「心配してくれてありがとうナナリー、平気平気!私、体は頑丈だからさ」
「そうですか…」
私がどんなに平気と言ってもナナリーは困った様な顔をしている。うーん、困ったな。
「こらこらナナリー、本人が平気だと言ってるんだ、あんまり心配しても迷惑になっちゃうだろ?」
ナナリーの頭を撫でているのはルルーシュだ。ナナリーへの声は優しく笑いかける様なものだが、実の表情は割と険しめ、私の怪我を気にしてくれてる様だ。
暫くしてメイドさんがナナリーを連れて行くと、ルルーシュから話があると言われた。何事かと思っていると案の定怪我のことの様だ。
「その怪我、お前程の筋組織を貫通して怪我を負わせるとは…何があった?」
「あぁ、これ?黒の騎士団にやられたの。緑の髪の人が私みたいな肉ダルマ相手用の特殊弾って言ってた。熊でも倒せるスラッグ弾なんだって。ルルーシュも気をつけてね?」
まぁ、軍人の私とは違い、一般人のルルーシュがスラッグ弾を装填したショットガンを持った相手に襲われるなんて事はそうそうないとは思うけど。
「…お前、スザクもだが…技術部とか言ってなかったか?」
「え?う、うん…それは…ごめん。本当のことではあるんだけど、嘘も…混じってる」
特派は技術開発部ではあるものの、データを取るために実践投入も辞さない。実戦に出ればこういうこともあるのだ。
「なぁ、マーヤ」
「うん?何?また呼んだだけって奴?」
「…って無視?ねぇ、ルルーシュ」
「…いや、その、言い難いんだが…軍を辞める気は無いのか?」
「ないよ?」
私は即答した。私は契約をしたのだ。私が縛られる代わりに陽菜達の生活は守られる。租界にある施設で不自由なく過ごしてもらうためならこの身が犠牲になろうと構わない。卑怯者だからこそ…それを曲げたら私はもう私でいられなくなってしまう。
「それは子供達のためか?」
「うん、陽菜達の…ってあれ?ルルーシュにその話したことあったっけ?」
「…あっただろ。まぁ無理するのは構わないが…お前が傷つくと悲しむ奴はいる、ナナリーも…その、陽菜とかいう子供達も自分達の為にお前が傷つくのは嫌なんじゃないか」
それは…そうかも知れない。けど…じゃあどうすれば良いのだろう。私が、私なんかがどうやったら陽菜達を幸せに出来るのだろう。
「…済まない、俺も用事があるから」
去っていったルルーシュのやたらと広い背中を見送る。
答えは出ない。ならば今まで通り契約を果たすしかないだろう。
ライ君は名前だけの登場です。本編には出しません。